2024.11.29
“マニュアル作成が進まない問題”をAIで解決 管理者の負担も軽減できる、先進AIツール活用法
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堂上研氏(以下、堂上):新規事業を生む上で僕が10年間いろいろ試行錯誤、失敗を繰り返してわかってきたことなんですが、「外圧」というものがめちゃくちゃ重要だということがわかったんですね。
「外圧」という言葉があんまり良くないかもしれないんですが、博報堂の中で考えてしまうと、自分たちの価値観だけで物事を判断をしてしまうことがあって、間違った判断をしてしまう。守屋さんには「堂上さん、普通にやればいいんだよ」ってよく言われたんですね。
佐古雅亮氏(以下、佐古):「普通にやればいい」?
堂上:そう。僕は「普通にやればいい」がずっと理解できなかった。新規事業においての普通と、広告会社の普通がぜんぜん違うものなんです。
僕は広告会社における普通しか知らないので、新規事業における普通がわからないから、ついつい広告会社の普通でやってしまって、新規事業における普通をやれなかったんですよね。そこに、例えば守屋さんが「外圧」になってくださるとか。
あと、今回の事業を立ち上げる上でチャレンジしたのが、博報堂の資本以外に、外の株主にも入っていただいた。ある意味外の力をお借りしながら、仲間を集めながら起業に至ったところがあって、これは挑戦でした。外の株主がまた「外圧」になってくれる循環をつくりたかったのです。
大企業でやれること、スタートアップでやれることで言うと、外でやって、かつ大企業のリソースを活かしてやれるというのが、僕の中では大事かなと感じたのが大きいですね。
守屋実氏(以下、守屋):この「普通」の議論、長かったんですよね。
(一同笑)
佐古:そうですか(笑)。
守屋:だって、商売をやるということはお客さんがいて、そのお客さんが価値を感じるからお金をもらえるわけじゃないですか。
佐古:そうですね。
守屋:だから、顧客に対して新価値を創造しなきゃダメだと思うんですよ。打ち合わせをしていると、「いや、社内が」「社内が」という話が多いので、「というか、客の話をしようよ。普通にやろうよ。普通に」っていう、これが通じない。
堂上:これを理解するのに5年かかったかなと(笑)。
(一同笑)
堂上:そうですね。
堂上:あともう1個。スクリーンを見ていただければと思うんですが、企業におけるイノベーション事業はどういう仕組みができるのかというのを、僕らの中で考えたんですね。
団子っぽく書いていますが、経営者は投資・投機、金をかけて新しい事業を作る。例えば一番早いのはM&Aです。CVCを作って、そこで出資して、そこのスタートアップのエクイティを取りにいくというものが、一番わかりやすい話ですね。
企業は人材教育も新規事業と置いていたりすることが多くて、そこで時間をかけなくちゃいけないのに、時間もかけない、金もかけない。なのに「新規事業を生め」みたいな話が、もう普通に起こってしまうわけですね。
ここを金をかけてやるのか、時間をかけてやるのかをきちんと把握しながらやらなくちゃいけないということで、ミライの事業室では「教育はなしにしよう」「もう少し金をかけるところをやろう」とか。資本の使い方という意味で言うと、人、金、判断基準を新規事業ならではの頭に変えていかないと、なかなか前に進まなかったというのがありますね。
スタートアップと大企業でやる大きな違いで言うと、僕らはすでに3,000社以上のクライアントがいるというところです。ECOTONE社ができて、博報堂のメンバーを通して、一緒にトップの経営者に直接会いにいける。それってスタートアップはなかなかできないわけですよね。
佐古:できないですね。
堂上:あと、僕らはいきなり大きな資本をボーンといただいて、一緒に事業を立ち上げることができた。それもスタートアップだと、最初に資金調達をして、キャッシュフローがかつかつの中でやらなくちゃいけないところがある。我々は、人も金もオフィスなどもいろいろな資本をかけさせてもらえたり、社内のリソースを使わせていただける。
そうすると、普通に僕が会社を辞めて事業をやるよりも、大きなビジネスというか、産業を生むかたちにできるんじゃないかなと。
佐古:それはそうですね。
堂上:これはある人からお話しいただいたんですが、「堂上さん、もし会社を辞めて独立しても、井戸は掘れるかもしれないけれども、ダムは作れないよね」と言われました
佐古:わかりますね。
堂上:僕らは大企業の中でダムを作る視点を意識しながら、みんなを巻き込みながら一緒にビジネスをやっていきたいなと思ったという意味で、企業内起業を選んだという感じですね。
佐古:なるほど。
守屋:これ、やはりいいですよね。
佐古:そうですね。
守屋:なんでわざわざ会社の中でやるんだと。いろいろと面倒くさい話があったり、理解してもらえないことがあって、「じゃあ、外でやればいいじゃないか?」という話になるんです。ただ、外には外の良し悪しがあって、中には中の良し悪しがある。
守屋:今の話で言うと、「博報堂です」と言った時に、100年以上の歴史があるから「よくわかんねぇな」とはあんまりならないじゃないですか。
佐古:ないですね。
守屋:「堂上です」と言ったら、「よくわかんねぇな」って話はあるじゃないですか。
(一同笑)
守屋:そういうのも含めて、やはり(社内と社外にはそれぞれの)良し悪しがある。「この事業をやる時にどうすることがいいんだろうか?」「顧客をどうしたら満足させられるんだろうか?」と考えた時に、やはり社内という選択肢はあるんだと思うんですよね。
佐古:ちなみに、私はそれで辞めちゃったパターンです。
(一同笑)
堂上:辞めたパターン。それで起業したパターンですもんね。
佐古:はい、辞めちゃいました。
堂上:ぜんぜんそれを否定するつもりはないんですが。もう少し言うと、僕は博報堂に恩義も感じているのと、もともとミライの事業室を立ち上げた時に「博報堂の第二創業にしたいんだ」という思いはあった。第二創業になるようなものを5年間ずっと考え続けてきたというのが、起業に至る上で大きかったですね。
佐古:ありがとうございます。
佐古:実際、この2、3年ぐらいはビジネスコンテストみたいなものもすごくあって、3回転ぐらいするとアップデートするタイミングが出てきて、「出口戦略」というのをすごくよく聞くようになりました。
例えば事業部で引き取るパターンとか、スタートアップ化するパターンとか、アップデート化をちょうどしているみなさんが聞いていらっしゃると思うので、「どんな組織設計にしようかな?」って、たぶん悩まれていると思うんですよ。
ただ、今のお話だと、お客さまのためにどの事業をどういうかたちでやるのが一番いいのかは、事業によって違うんですよね。そうしたら、あんまり杓子定規にバチッと決めずに、いろんな選択肢を用意するのが良さそうだなと。
守屋:手段先行しないほうがいいですよね。
佐古:手段先行しないほうがいい?
守屋:いろんな手段があって、その手段に全部カタカナの名前がついているじゃないですか。そうすると、例えば「カーブアウトとは何なのか?」「オープンイノベーションとは何なのか?」というのを一生懸命やっている、受験生みたいなことになっているんですよね。
それよりは、「あんたは何をしたいの? 誰が客で、何の価値を届けたいの? それをやるんだったらこのほうがいいんじゃないの?」って、主従をあんまり逆転させないほうがいいですよね。
堂上:そうですね。僕らも、その手段を話している時間が長かった感じがしますね。
堂上:あと、この5年間でせっかく出島組織としてのミライの事業室ができたんだから、事業は生まれるもんだという意識がすごく強かったんですよね。
そこにステージゲートを設定したり、僕らなりのクライテリアを設定したり、予算を取ってきて「これを一緒にやろう」って決めていく。常にPoC、PoBをずっと繰り返しているうちに、ピボットしながら繰り返していくんだけど、なかなかグーッと事業を伸ばすためのアクセルを踏むことはできない。
それはなんでできないのかというと、社内でリスクを考える人たちが必ずいる。これはすごい素敵なアドバイスをいただいているのですが、そこで同じ場所でぐるぐるまわって、前に進めなくなってしまうのです。
スタートアップに行くと、自分で自由に決められるのである程度できる。だから、それはスタートアップ側のいいところだったりする。社内でやると、そのリスクと向き合わないといけない。やはり、それはいろいろとアクセルを踏みつづけるために変えなくちゃいけない、と思っています
守屋さんを含めて、我々が一緒に相談させていただいている人たちが言ってくださったんですが、「堂上さん。それはブレーキを踏むんじゃなくて、『こういう視点も気をつけておいたほうがいいよ』というアドバイスをしてくれているんだよと思って、『ありがとう』と思おうよ」というアドバイスをいただいたんですね。
「リスクをおかさないことがリスク」と思っていた僕が、「そのリスク、気が付かなかったな。どうしたら乗り越えられるだろう、これは感謝するべきなんだ。」というふうに思うようになったら、急にみんなが仲間になってきてくださるかたちになっていって、「あっ、そういうことか」と。
「すみません。ご指摘いただきましてありがとうございます」という会話が生まれるようになりました、それはすごく良かったなと感じますね。
佐古:いい言葉ですね。
堂上:もう……ありがとう。
佐古:(笑)。そうですね。
守屋:その環境で(新規事業を)生むのであるんだったら、その環境をうまく利用したほうがいいと思うんですよね。
佐古:そうですね。
守屋:ずっと毒を吐いていても、しょうがないっちゃしょうがないじゃないですか。自分ががんばろうとしていると、誰かしらは応援してくれる。誰かが応援すると、その隣の人も応援してくれて、そのうち潮目が変わる瞬間が来ると思うんですよね。そういうことを諦めるとけっこう苦しくなるので、諦めないほうがいいと思います。
佐古:なるほど、諦めないほうがいい。
堂上:そうですね。
佐古:ありがとうございます。時間も迫ってまいりつつあるので、最後のセッションテーマの「起業家精神は育めるか?」というお話にも移っていきたいと思います。
守屋さんは、これまでいろんな会社さまを見られてきたと思うんですよ。起業家精神は、そもそも大手企業さまでも育めるのか育めないのかで言うと、まずどちらですか?
守屋:「育める」ですね。
佐古:「育める」ですよね。育むタイミングにはいろいろあると思うんですが、育むことがとても得意な会社さんって、傾向があったりするもんなんですか?
守屋:いや、そんなに会社(による傾向)という話じゃないとは思っているんですけどね。
佐古:あっ、違うんですね。
守屋:例えばですが、代理店なんかは人が資産で、人がいろんなことをプロデュースしてがんばる。ということからすると、比較的(新規事業を)やりやすい会社なんじゃないかと思っているんですよ。
守屋:例えば商社さんなんかもそうで、いろんなものを持ってきて総合的にプロデュースするということで言うと、新規事業を作ることにかなり近いじゃないですか。だからそういうのはあるんですが、それよりは個々人に由来するもののほうが強いんじゃないかと思っているんですね。
佐古:なるほど。
守屋:起業家精神を育むというと、どうしても研修っぽいほうに行くんですよね。何かしら先生がいて、生徒さんがいて、教えると「育む」みたいな話になるんですが、「いや、だからもう学生じゃないんだから」って思うわけですよ。
佐古:なるほど。
守屋:そうじゃなくて、大企業みたいなデカいガタイの中には、すでに起業家精神を持っている人がいるので。出現確率は低いんですが、そもそも母数がデカいからいるんですよね。そういう人が何かをやり始めると、周りの人は必ず影響を受けるわけです。
例えば堂上さんがこうやって、時間はかかったけれども一歩を踏み出してやっているじゃないですか。当然、堂上さんの周りの人は「そういうことか」って思うわけですよ。
こうやって人は人に影響を受けながら、どんどんどんどんそこから熱量が対流し始めて、やがて会社の中で一定程度の大きな流れを作っていく。今、堂上さんはそれを作っている。まさにその中心にいると思うんですね。
堂上:そうですね。この問い、僕自身はめちゃくちゃ難しいというのが本音でして。あるタイミングで「起業家は本当に博報堂の中にいるのか?」って疑った時があって。
佐古:そうですか。
堂上:もう自分自身がやるしかないなって。さっき「700日」という数字が出ていましたが、ちょうど2年前に「このミライの事業室から大きな事業を作るぞ」というものが700日の中で出なかったら、僕と守屋さんは博報堂を辞めようと話をしていたんですよね。
佐古:その話題、そういう話だったんですか。
守屋:そうなんです。
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