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マッキンゼー流 明日から使えるメンバーを活かす3つの行動(全2記事)

タスクの伝え方が部下のモチベーションを左右する マッキンゼー流、メンバーが動き出す仕事の振り方

次世代の変革をリードする20~30代のハイクラス向けキャリアアップ支援サービス「MELIUS(メリウス)」のマネジメントセミナーに、元マッキンゼーで現在はMELIUS事業責任者を務める田中直道氏が登壇。不満を生むタスクの渡し方とその改善策や、メンバーに理解され行動を促すフィードバックの仕方などを語りました。

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部下を深く知る理想のマネージャーはエレベーターピッチで語れる人

田中直道氏(以下、田中):では次のセッションに移ります。ここからは、リスペクトを持った上で、メンバーに対して具体的にどのような行動を取るべきかについてお話しします。本日お伝えするのは、以下の3つの行動です。



「見る」「指示する」「関わりを持つ」。これらを順に説明させていただきます。

まず1つ目の「見る」についてですが、ここで言う「見る」は、単に物理的に目で追うという意味ではありません。もっと広い意味で、メンバーに「関心を持つ」、あるいは「面倒を見る」ということです。

ここで言う「見る」という行動は、単なる業務管理の話ではありません。例えば、その人のバックグラウンドやモチベーション、得意なこと、好きなことや嫌いなことをどれだけ知ろうとしているか、という点が重要です。

マネジメントの究極のかたちとして、理想的なマネージャーは、メンバーのAさんについて「Aさんってどんな人ですか?」と聞かれた時に、30秒から1分の「エレベーターピッチ」で説明できる状態です。

「Aさんはこういうことをやってきて、こういうことが得意で、こういうことをやりたい人です」というように簡潔かつ具体的に言える。これが、メンバーをしっかり知れている状態だと私は考えています。



(スライドの①)「関心を持つ」とは、その人をしっかり知ろうとする姿勢を持つことです。「Aさんはどんな人なのか」を深く理解しようとする姿勢が、この「関心を持つ」という行動の核だと思います。

(スライドの②の)「理解する」は、まず本人に直接聞くことが重要です。一次情報を重視するということですね。もちろん周囲からの意見を聞くのも有用ですが、本人にしっかり話を聞くことで得られる情報は非常に大切です。例えば、1on1の場を定期的に設けることで、週次や隔週で直接話す機会を持つことが効果的です。

(スライドの③の)「関わる」は、しっかりフィードバックを与えることです。ただし、抽象的なフィードバックでは相手に伝わりづらいことがあるため、具体例を交えて伝えることが重要です。

例えば、ミーティング中の発言や行動で気づいたことがあれば、その場でメモを取って、後でフィードバックする際に、「あの時の発言や行動について、こう感じた」という具体例を添えて伝えるようにしています。

これら3つの行動、「関心を持つ」「理解する」「関わる」を通じて、メンバーにしっかり向き合い、気にかける。これが「見る」という行動の全体像です。

メンバーが納得して動き出すゴールの伝え方

田中:次は「指示する」についてです。その人のことを気にかけた上で実際に指示をしていく。シンプルに言うと、「目的、背景からしっかり伝えて腹落ちしてもらいましょう」ということです。タスクだけを振るのではなく、しっかり前段のところから説明していくということですね。



(スライドに)「『指示する』にあたり、4段階のプロセスを意識する」と書いていますが、重要なのはこのステップそのものではなく、「ゴールを明確に伝える」という点です。今回のセミナーの参加者にはエンジニアの方やSaaSソリューションを販売している企業の方が多いと思いますので、そういった事例を想定しながら具体的に説明していきます。

例えば、直近3ヶ月で顧客の解約率が上がっている状況があったとします。この背景をマネージャーとしてしっかり説明することが最初のステップです。「現在解約率が上がっており、その原因を突き止める必要がある」と現状をチームと共有します。

その後、「解約の原因を突き止めて改善のアクションを見つける」という目的を伝えます。この目的を共有することで、タスクの意義を理解してもらいます。次に、成果物のイメージを具体的に伝えます。「例えば、解約した顧客を業界ごとや契約時期ごとに分類し、3ヶ月前と現在の変化を比較分析してほしい」といった方向性を示します。これにより、どのようなアウトプットを目指せば良いかが明確になります。

さらに、具体的なプロセスを共有します。「データベースにアクセスして顧客データを取得し、それを指定した軸で整理し分析を進めてほしい」と手順を詳しく伝えることが大切です。必要に応じて使用するツールや補足情報も説明します。

経験豊富なシニアスタッフは背景を簡潔に伝えるだけでも自律的に動ける場合が多いです。「解約率が上がっているので原因を突き止めたい」という一言で十分かもしれません。

一方、ジュニアスタッフには具体的な手順をハンズオンでサポートする必要があります。それぞれのスキルや状況に応じてどこまで説明すれば伝わるのかを意識することが、指示を出す際のポイントだと思います。

メンバーにタスクを渡す際のポイント

田中:いったん止めましょうか。何か質問があればどうぞ。

司会者:この考え方は、例えばコンサルティング業界や他の業界でも応用できるものなのでしょうか?

田中:この考え方はどの業界や職種でも普遍的で応用できるものだと思っています。例えば、コンサルティングファーム時代の話になりますが、コンサルタントの成果物の1つにPowerPointの資料があります。SaaS業界ではシステムが成果物になりますが、コンサルティングでは提案書や資料が成果物になるんです。その資料の一番上、タイトル部分に当たるのが「メッセージ」ですね。

例えば、「今後企業がこういう成長をしていくので、こういうアクションを取るべき」というメッセージがあるとします。ここをマネージャーが簡潔に伝え、「このメッセージを伝えるために資料を作ってほしい」とメンバーに指示を出すとします。そのメッセージさえ伝われば、そこから必要なデータを引っ張ってきて、自分で資料に落とし込める。これが一人前のコンサルタントの姿だと思っています。

ただ、そうしたメッセージだけでは伝わらない場合もあります。「どういうデータを取ってきて」「どういう構成で見せるべきか」というところまで詳しく伝える必要がある場合もありますよね。

相手のスキルや経験を見ながら、背景の説明で十分なのか、具体的なプロセスを詳細に共有するべきかを判断し、対応を変える。このように相手のレベルを見極めながらコントロールすることが重要だと思います。

司会者:ありがとうございます。

メンバーを活かす4つの関わり方

田中:続いて、「関わりを持つ」についてお話しします。これは、相手に興味を持って指示をした上で、その後どのように向き合い、付き合っていくかという部分になります。

指示出しについては、マネージャーの気質に影響されるところも多いのかなと思っています。細かく管理したい、いわゆるマイクロマネジメントを好む方もいれば、放任主義の方もいます。このあたりは人それぞれのやり方があると思いますが、いったん理想論として話を進めます。

このスライドにあるように、私は二軸で整理して考えるのが良いのではないかと思っています。



横軸は「メンバーの業務スキル」、右に行くほどスキルが高く、左はジュニアの方を指します。縦軸は「業務の重要度」で、上に行くほど重要度が高く、下に行くほど重要度がそれほど高くないものになります。

一番右上のケースでは、業務の重要度が高く、かつメンバーのスキルも高い場合です。この場合、プロジェクト管理を行うイメージです。基本的にはその人に任せますが、成果物のクオリティを定期的に確認し、必要に応じて壁打ちをするなど、しっかりと管理していきます。

次に、右下の場合。メンバーのスキルは高いけれど、業務の重要度がそれほど高くない場合です。この場合は放任主義で問題ないと思います。最低限の関与で進めるかたちになります。

一方、左上のケースでは、メンバーのスキルが低く、業務の重要度が高い場合です。この場合は、マネージャーがかなり介入しなければなりません。目的を共有するだけではなく、その目的を達成するための具体的なプロセスを一緒に描き、場合によっては手を動かしてサポートする必要があります。

最後に左下のケース。業務の重要度が高くなく、メンバーのスキルも低い場合です。この領域では、その業務をメンバーの成長機会と捉え、任せてみるのが良いと思います。最悪失敗してもフォローできる範囲だと割り切り、成長のために任せるかたちを取ることが重要です。

マネージャーになった時、ただ上から順番に仕事を振るのではなく、一度立ち止まって「どの業務がどれくらい重要か」「振り分けるメンバーのスキルセットはどうなっているか」を考え、それを意識して業務を差配することが非常に重要だと思います。

部下のモチベーションを左右するタスクの伝え方

田中:ここまでで何か質問はありますか?

司会者:一貫して、田中さんは人のキャラクターやスキルをしっかり見極めて、いろいろと工夫されてきたんだなと感じました。特に今のスライドの内容は、難しいとか悩ましいと感じる方もいらっしゃると思いますが、ここが大変だったとか、逆にうまくいったご経験があればぜひ教えてください。

田中:このスライドにある内容は、たぶんみなさん頭では理解している部分だと思います。業務の分類やスキルのレベル分け自体はできると思います。たとえば、「この人はベテラン」「この人はジュニア」、あるいは「この業務は重要」「これはそうでもない」というのは、それぞれの土地勘でわかる部分かなと。

ただ、本当に重要なのは、それをどうコミュニケーションに落とし込むかだと思っています。

例えば、前職のマッキンゼーでの経験ですが、コスト削減のプロジェクトを例に挙げると、削減額が数億円単位になるような施策は非常に重要で、失敗できない内容です。一方で、10万円単位の施策は、必須ではないかもしれません。ただ、チャレンジの機会としてジュニアに任せよう、という判断をすることがあります。

ここで大切なのは、それぞれそのタスクをどう渡すかです。数億円単位の施策を「重要だから任せます」と言うだけでは、その人にとっては重要性が伝わるかもしれませんが、他のジュニアメンバーが見た時に「自分にはそんな重要なことを任されていない」と感じ、モチベーションを下げてしまう可能性があります。

また、ジュニアメンバーにタスクを渡す時も、「金額が小さいからやってよ」と伝えるのではなく、「この金額は小さいかもしれないけど、これは中長期的に非常に重要な投資で、今仕込んでおくことで将来的に成長につながる」といった意義付けをして伝えることが必要です。

さらに、場合によっては、「この前の1on1であなたが伸ばしたいと言っていた部分に、このタスクは役立つと思う。一見小さい仕事かもしれないけど、一生懸命やってみてほしい」と伝えることもあります。「短時間でこれをうまく終わらせることが、あなたのこういうスキルを伸ばす上で非常に重要だ」というかたちで、明確な意義を持たせて渡すことが大切です。

このように、タスクを渡す際のコミュニケーションに気を使うことが、非常に重要だと感じています。

司会者:ありがとうございます。

リスペクトを持って取るべき3つの行動

田中:あっという間に30分が終わろうとしていますので、ここでまとめに入ります。今日お伝えしたことは大きく2つあります。



1つ目は、「相手をリスペクトしましょう」ということです。ロジカルな考え方だけではなく、人はエモーショナルな部分で動くものです。その感情をしっかり理解し、相手を想像しながら行動を取ることが大切です。

2つ目は、「3つの行動を取る」ということです。まず、相手をしっかり気にかけ、知ろうとする。相手がどういう人なのか、どんなバックグラウンドを持ち、何を考えているのかを知ろうとする姿勢が重要です。そして、関わりを持つ際には、ゴールからプロセスに分解し、「なぜこれをやるのか」を順序立てて説明していきましょう。

また、指示をする際には、相手のスキルや業務の重要度に応じて、適切に差配することが求められます。任せた後も、相手をしっかり想像しながらメッセージを伝え、相手が納得しながら進められるようサポートすることが大切です。

これらが、マネージャーとして取るべき行動のポイントだと思います。本日の内容がみなさんの実務の中で少しでも参考になれば幸いです。

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