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退職代行に怯えない組織になるために(全3記事)

「退職代行」を使われた管理職の本音と葛藤 メディアで話題、利用者が右肩上がり…企業が置かれている現状とは

メディアでも話題となり、企業側も問題意識を持っている「退職代行」サービス。本イベントは「退職代行に怯えない組織になるため」と題し、退職代行ビジネスの現状と人材定着の施策について探りました。本記事では、退職代行を使われた企業側・使った従業員側の本音に迫ります。

今、企業が問題意識を持っている「退職代行」

新保博文氏(以下、新保):「退職代行に怯えない組織になるために」のオンラインセミナーを開始したいと思います。私は株式会社Work with Joyの新保でございます。よろしくお願いします。

松島一浩氏(以下、松島):Zenken株式会社の松島でございます。よろしくお願いします。

新保:よろしくお願いします。今日のセミナーはランチタイムですので、お食事しながらという方もいらっしゃいますし、半分ラジオ感覚でもいいかなと思いながら、私と松島さんでいろいろと話をしたいなと思っています。

松島さん。いきなりですが「退職代行」のキーワードを聞いて、やっぱりみなさんドキッとする方も多いかなと思うんですが、どうですか?

松島:そうですね(笑)。みなさん、問題意識は本当に高いんですよね。前回も(イベントに)すごくたくさんご参加いただいて、反響がすごかったですね。

新保:そうですね。前回出た方からも「今回って同じなんだっけ? どういう内容なんだっけ?」というお問い合わせを私もいただきましたよ。

松島:僕は昨日、最新の退職代行の会社のYouTubeを見たんですが、やっぱり論調は一緒です。実際に退職代行の会社が企業に電話をしている様子を流して、(企業側が)それに慌てふためいたり、ちょっと怒っていらっしゃったりする様子を流すYouTubeがあって。

コメント欄を見ると、「こんな上司、辞められて当然だ」「もっとがんばってください」「必要な仕事だ」みたいな感じなんですよね。

新保:なるほど。

退職代行の問題はセンシティブで言いづらい

松島:退職代行問題について、企業側、人事側、経営者側がXとかで発信をしても、ちょっとセンシティブで言いづらいというか。「企業側はどういうふうに向き合いますか?」という、そこに対しての逆サイドの意見が、あまりにも示唆が少ないなと思って。新保さんと僕が飲みに行ったら、いつも退職代行の話をしているから(笑)。

新保:そうですね(笑)。

松島:そう(笑)。だから逆サイドの意見というか、どういうふうにそうならない組織を作りますか? というところ。現状を理解した上で、それをどうするかを前向きに考えていく機会がやっぱり必要だよねという、そんな場が今日です。

新保:そうですね。まさに今おっしゃっていたことと被っちゃうんですが、勧善懲悪でいうと、どちらかというと「企業側が悪いよね」みたいな感じです。企業側の発信はみんなしないし、しても変に賛否(が分かれる)というか、若干炎上気味になったり。

松島:そうですね。

新保:だから、この話題を人事の方や経営者の方とすると、やっぱりすごく食いつくというか。私と松島さんも毎回こういう話をしているので、オタクまではいかないですが、かなり調べています。「そんなことがあるんですよ」と言っても、「えー!?」って、よくランチ交流会とかでは言われますね。

松島:人と組織にちゃんと向き合っていたり、退職代行を経験されて「痛い思いを二度としたくないな」という方がいらっしゃいます。組織というものに対してどうあるかを、もう一度向き合っている方はいらっしゃるので、そういう人の何かしらのヒントになったらいいなという思いで、今日はいい時間にできればと思っています。

新保:そうですね。退職代行対策と書いていますが、対策というよりは、いい組織にして、ちゃんと(人材の)定着や活躍について、今日は少しでもみなさんのヒントになるような話ができればなと思っています。

退職代行を使われた管理職の本音

新保:では、本編に入らせていただきます。今、少し出ましたが、退職代行を使われた側の管理職、現地の方の話を聞くと異口同音ですね。「入社以来、丁寧に教えてきたつもりだったのに、退職して業務が回らなくなるけど、やっぱり直接言ってもらえないのがショックです」。これはすごくわかります。



一方で、私や松島さんが退職代行を使った人側に聞いてみると、もちろん「当然の権利でしょ」「使って何が悪いんですか?」みたいな人もいるんですが、6〜7割は「直接言えば良かったな」「気軽に使ってみたけど、ちょっと後悔」みたいなことを言っていて。それはたぶん、いろいろな人間関係のところもあるだろうしと思っています。



後悔しちゃう仕組みになっているところについて、後で「こういう流れだからそうなっちゃうよね」ということをご説明したいなと思っています。

今日のセミナーの開催の背景なんですが、本当に最初のきっかけは、新宿でやった「部下のハートに火を付ける会」。(開催は)2024年の3月とかでしたっけ?

松島:そうですね。

新保:3月ぐらいにやって、初めて私と松島さんがそこで(出会いました)。松島さんが主催していて、人づてに「その会がある」ということで(聞いて)行って、意気投合して。すぐに飲みに行って、退職代行の話になったのがきっかけです。なんですが、冒頭のトークでお話ししたとおり、みなさんきっとモヤモヤがあるなと思っています。



「退職代行を使うのって良くないよね」と言うことを老害とか、「使う側がいけないんだよね」みたいに、返す刀でやってくるので。それをあえて言わないとか、言わまいと思っている方もいらっしゃるかなと思っています。逆に「そこまできたか」「今の若い人はコミュニケーションができないよね」「目が覚める時が来るよね」と、もう諦めている。

これは実際に私の知り合いの社労士の方が言っていましたが、「いつか目が覚めるんですよ。もうそこまで(時代は)来ていますよとなっている」と。そこまで言う人はいないかもしれないんですが、ちょっと諦めているというのはあるんじゃないかと思っています。

利用自体を全否定しているわけではない

新保:でも、みなさん本音はやっぱり退職代行なんてないほうがいいし、今日来ていただいている人事の方や管理職の方々からすると、退職の無理な引き留めはしないですが、減らしたほうがいいですよねというのが背景です。

なので我々としては、まずは冷静に現状をまずは見つめましょうというところです。それを踏まえた上で対策を打っていくしかないので。

たぶんみなさん「こういうのを見たくない」と思っているところもあると思うので、先ほど言ったようなYouTubeとかXをいろいろ見てきて、知識としてまずは現状を知っていただきたいなと思っています。

一方で「退職代行の対策」みたいなことを言っていますが、それが必要な方はやっぱりいらっしゃる。使っている方を全部否定しているわけではなくて、「どうしても言えない」「ものすごい引き留めがあって、使わざるを得なかった」という人もいるのは我々も理解しています。

当然、市場がそれだけ大きくなっていて、ニーズがあるということは理解しておりますが、ちょっと過度な使われ方というか、ずれというか、すれ違いが起きているなという思いはございます。

今日の流れとしては、今、申し上げたように現実を直視しましょう。「退職代行ってこういうものですよ」という本当に初歩的なところから、どういう仕組みなのかをご説明します。それだけではなくて、退職の傾向とか、退職代行って事象としては起きているけど、どういう背景・構造があるんだろう? というところを我々が調べてきました。

そこを私から共有させていただいて、若手社員定着における具体的な対策事例は、松島さんがご自身でも徹底的に、毎年のようにいろんな打ち手をやられていると思います。他社さんの事例を聞いて、それをご自身も参考にしたり、他社さんにアドバイスをしたり、いろんな事例をお持ちです。

なので、話を聞いているとこれだけでも尽きないんですが、今日はたくさん(事例を)ご用意してきましたので、「明日からこれは使えるな」とか「来週か使えるな」というものを持ち帰っていただければなと思っています。

メディアでも話題、利用者は右肩上がりで増加

新保:では、さっそく退職代行の現実でございます。「冷静に」と言いつつ、みなさまにとってちょっと刺激的な内容になっているかもしれません(笑)。

松島:(笑)。

新保:(退職代行は)メディアでも話題ですよね。もともとネットメディアでは、けっこうみんな「こういうのあったな」となっていたんですが、2024年ぐらいからマスメディアでも(話題になりました)。

マスメディアで1個、2個取り上げると、他も波及していくという傾向があるんですが、テレビでだいぶ民主化されているというか、サービスとしてかなり認知が上がったかなと思っています。

とある企業は、SNS上で今日の利用者数を毎日公表しています。それを見ると、2024年の2月はこのぐらいで、時期的なものも当然ありますが、4月、5月がグイッと上がっている。これはたぶんゴールデンウイーク明けですね。



それが終わったあとに1回落ち着くんですが、7月ぐらいにまた上がって、そのあとも伸びているという状況でございます。これ(グラフ)は私たちが毎日カウントしたんですが、伸びているなという実感があります。

仕組みとしては、もうご存じの方も今日はいらっしゃるかもしれません。ひょっとしたら「もう退職代行さんがうちに来たよ」という会社はご存じかもしれませんが、希望者がいたら代行会社がいます。(退職代行の)会社さんがあって、依頼をされて、(企業側に)連絡する。本当にこのまま代行です。



連絡をした時に「どういう手続きが必要ですか?」「うちのこの書類に書いてください」という話を聞いて、それを伝達します。なので、基本的には伝達、事務連絡をしている状況です。

退職代行の主な3つの種類

新保:あくまでも事務連絡だけをして、退職届の提出や貸与物の返却はご自身でやっていただくんですが、けっこう郵送が多い状況です。それで、離職票や退職書類が会社から送られてくるという仕組みですね。なので、もちろんそれぞれサービスが違うんですが、基本的には伝達するというやり方です。

種類としては3つぐらいあって、弁護士さんがやる。弁護士さんは法的代理権がわかるので、いろいろな交渉ができます。当然、弁護士さんのサービスなので料金の目安としては5万円ぐらい。



労組(労働組合)系とは何かというと、団体交渉権というものを持っているので、有給消化や退職日などの限られたところに関しては交渉できます。それで(料金目安は)2万円、3万円ぐらい。これは会社によってもまちまちでございますが、こういうものがあります。

今、テレビとかですごく広がっているのは民間の会社です。これは本当に事務の代行なので、交渉をする権利がなく、基本的にはそこには入れません。なので安くできますよということです。

ただ、下に書いてあるんですが、連絡が来てしまって、事業者の違いで交渉するとかもなくて、代行会社から連絡がきたら「わかりました」という落胆とともに、そうせざるを得ないというところです。

そんなに差がないのかなという感じで、すでに途中で揉めているとかであれば、弁護士さんのところによって違いはあるのかもしれないですが、退職を伝えられるという点では(事業者ごとの)大きな差はないかなと思っています。

市場規模は100億円を超える見込み

新保:民間の企業に関しては、特に資格とかはございませんので、めちゃくちゃ乱立状態です。2022年でもこれだけのカオスマップで、もっと増えている状況です。最近聞くと、フリーランスで個人事業としてやっている人もいたりする状況で、参入障壁としては極めて低いんです。究極、電話とメールさえあればできちゃうという状況でございます。

さらに乱立していて、市場規模についての調査はないんですが、私はもともとコンサルタントをやっていたので、こういうのを計算するのが大好きなので(データを)見たんです。

ざっといろんなデータで2つのアプローチをやったんですが、数十億円の後半から200億円ぐらいの間の計算になります。もちろん過程の数字をちょっと変えるだけで変わってくるんですが、100億円前後はあるだろうなと見ています。



さらに退職代行の会社が最近何をしているかというと、人材紹介さんと提携しています。つまり、「辞めたので新しい仕事が必要ですよね」となると、その市場はかなり大きい。

人材紹介は手数料がだいたい35パーセントとかが水準になってくるので、「1人決まりました」となって、100万円の成功報酬があれば、それを提携でもらいますよという状況になっているので、けっこう大きい市場とつながっているのが今の状況です。

なのでここでのポイントは、これだけの市場でビジネスとして成立している。要は、誰かが退職することでお金をもらえる人たちがいるというのがポイントになってきます。それがビジネスになるとどうなるかというと、当然いろんなサービスが出てきます。

これは退職代行とは違うんですが、社会保険給付金をサポートしますよと。辞めた時にお得にというか、「ちゃんともらうものをもらいましょうよ」というものも(ビジネスとして)あって。これはこれでいろんな広告がされていて、そういった広告を見て「こんなにもらえるんだったら辞めるか」みたいなこともある状況です。

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