2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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神田尚子氏(以下、神田):EVOL株式会社 代表取締役CEO、そして慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究所研究員でいらっしゃいます前野マドカさんから、「ウェルビーイング・リーダーシップ」と題しましてお話をいただきます。前半はマドカさんのお話、そして後半はみなさま方の質問をおうかがいしていきたいと思います。それでは前野マドカさん、よろしくお願いいたします。
前野マドカ氏(以下、前野):みなさんおはようございます。ただ今ご紹介いただきました、前野マドカと申します。実は私は今真夜中の2時半、イギリスのロンドンから登壇させていただいております。
夜中なんですけれども、本当にとても楽しみにしておりました。きっとあっという間に終わってしまうかもしれないんですが、楽しくお話をさせていただきたいと思います。
では、「ウェルビーイング・リーダーシップ ~ありがとうがチームの成果につながる秘訣~」ということで、私のほうからお話しをさせていただきます。
9月1日から武蔵野大学にウェルビーイング学部ができまして、私はそちらでも教壇に立たせていただくことになりました。「自己理解入門」、自己肯定感のお話をさせていただくんですが、ウェルビーイング学部は初めての取り組みですので、私も楽しみにしております。
常日頃は、ウェルビーイングに関する教育と研究を行っております。研究でわかったことを、このようにみなさんにお話しをしたり、プログラムにして企業に届けたり。あとは学校教育とウェルビーイングということで、私も学校で講演をさせていただいたりしております。あとは書籍を通してみなさまにお伝えしているんですが、プライベートでは28歳の息子と24歳の娘と義理の母と夫と、一緒に幸せに暮らしております。
みなさん、あなたにとって幸せに生きるとは? 幸せに働くとは? 「働く」ということは、ざっくりとでも1日の3分の1(8時間)を取っているので。
やはり「仕事がつらくても、プライベートが充実していればいい」という時代ではなくて、「幸せに働き、幸せに生きる」ということが、幸せな人生を送るのにとても大事なことだと思います。「幸せに働く」というのがピンと来ないこともあるかもしれないんですが、今、ウェルビーイングがやっと認知され始めました。
前野:今日のコンテンツは「ウェルビーイングの基礎」と「ウェルビーイングな企業の事例」と、「ウェルビーイングなリーダーとは」ということでお話しをさせていただきたいと思います。
そもそもの、「ウェルビーイングの基礎」。「ウェルビーイング」というのは、体がいい状態であること、そして心がいい状態であること、そして地域社会がいい状態であること。こちら全部を包含しております。
よく「幸せ」っていうと、「happy」「happiness」とイメージする方が多いと思うんですが、こちらは感情としての幸せなので、それだけではなくて、もうちょっと長期的なスパンで、「いろいろ人生あったけれども、なかなかいい人生だったな」と思えるような幸せのことを示しております。
こんなウェルビーイングを目指すんですが、なぜ今企業で注目されているのかといいますと、こちらは2023年の5月にオックスフォード大学とハーバード大学のウェルビーイング・リサーチ・センターから報告された、企業業績の関係性ですね。
健康経営について、「あなたは幸せですか」と調べたんですが、そういった幸せな社員が多い会社は企業価値が高かったり、株価のパフォーマンスが高かったり、あとは収益性が高かったとわかりました。
ですから、カンパニー・ウェルビーイングを目指さない手はないということで、欧米では取り組まれております。日本もやっとそこに追いついてきたところですね。もちろん、全体で見たらまだまだなんですけれども。
ウェルビーイングと生産性とのつながりということで、こんなふうに良い状態でい続けることで、安定したパフォーマンスの向上が目指せます。
心も体も社会的にもいい状態が続くと、アイデアが浮かびやすくなり、新しい商品や生産性を高めるアイデアを実践できたり、俯瞰して物事を見やすくなる。幸せな人は俯瞰力が高まりますので、部分最適ではなくて全体最適で考え、戦略性が高まります。
前野:そして、メンバーとの関係性がいいということなんですが、幸せな状態だと利他的で親切になります。あとはいつも感謝の気持ちでいると、やはり(相手が)相談しやすくなり、課題が早く解決します。やはり上司がご機嫌でいてくれる、いつもいい状態でいてくれると、いろいろな問題を早急に見つけることができると思いますね。
(心も体もいい状態だと)病気になりにくい。幸せな人は免疫力が高くなって長寿という研究結果もありますし、免疫力が高まる。とにかく病気にならないということは、長期的にも、効果的に仕事が進みますよね。このように、いい状態でいると、本当にさまざまなところに効果があるんです。
あとは、「『幸せ』は『健康』と似ている」ということで、これはぜひ覚えていただきたいんですが、みなさんは無意識のうちに、自分で健康をコントロールされているんですね。
睡眠と食事と運動が大事とわかっているので、食べ過ぎたら「次の日は少なくしよう」とか、運動が足りなかったら、「もうちょっと一駅歩いてみよう」とか、睡眠不足だったら、「週末は寝溜めしよう」とか。「いつも健康でいるぞ」と思わなくても、そうやってちゃんと自分でコントロールしているんですね。
それと同じように、今ではしっかり幸せのメカニズムが科学的にわかっています。幸せについての知識も本やメディアでいくらでも得られます。そして健康診断を受けるように、幸福度診断、心の健康診断を受けていただいて。これはまた無料で、みなさんがいくらでも受けられるようになっております。
そして幸せに気をつける。それがわかった上で、自分で意識して改善していく。または職場で改善していくことが大事になってきます。これが「ウェルビーイングサークル」です。私たちのほうで作ったものなんですけれども、今は20万人の方が受けております。
その平均値が出ておりまして、個人のウェルビーイングを測るものですね。企業の人事部で測るとかも今ではできるようになっておりますが、そちらは無料ではなく少しお金はかかります。
経営や人事や健保ということで、さまざまな働き方改革。あと、みなさん人的資本経営にも取り組んでいますが、これはウェルビーイングな働き方をすると、すべて叶ってしまうんです。
前野:ウェルビーイングのサイエンスでさまざまなことがわかってきているんですね。幸せな社員は創造性が高かったり、組織を活かしたり、健康で長寿。それからパフォーマンスが高く、離職しにくい。幸せな人は利他的。あと、幸せな人はうつになりにくいということです。
そして、こちらが企業の方には一番ピンと来るのではないでしょうか。幸せな社員は、そうでない社員に比べて創造性が3倍。これは本当に大事なことで、創造性が高い人は幸福度と強い相関があるという研究結果があります。
やはり異文化の時代とかバリューの時代とか、コロナがあった時に、まだ誰も経験していないようなことや、流動的にどんどん変動していく世の中でも、自分が新しい方法を思いついて、会社の仲間と一緒にそれを作り出していく。新しい手を打つことができるので、創造性が高いのはとても大事なことです。
そして、幸福度が高い社員は生産性が31パーセント高いという研究結果があります。これもざっくりと10時間でやっていた仕事が7時間で終わってしまうということで、自分の時間を持てたり、また新たに違う別な副業をやったり、そういったプラスアルファの時間ができますので、本当にすばらしいことだと思います。そして、売上が37パーセント高かったり。
あとは、幸福度が高い従業員は欠勤率が低くて離職率が低い。そして業務上の事故が少ないという研究結果もあります。幸せな人がパフォーマンスが高いということは、みなさんも自分のチームとかを見ていておわかりになると思うんですね。
もしくはご自身がそういった方だと、本当にいろいろなことが正のスパイラルに入ってうまくいくということを体験されている。
前野:私たちが幸福学(Well-Being Study)でお伝えしているのは、こちらの1枚にまとまっています。「地位財型」の幸せ、長続きしない幸せを目指すものではないんですが、どうしても私たちは、目に見える一番わかりやすいこちらの幸せに引っ張られてしまいます。でも、なぜ幸せじゃないのか。それは、他人と比べられる財だからです。
一方、「非地位財」型の幸せということで、長続きする幸せというのは、私たち自身にしかないものや、安心・安全な環境、そして健康な体、身体に基づくものがありますが、心的要因に関する私たちが研究した結果を、この下にあります4つの因子でご紹介したいと思います。
こちらは「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」と4つありますが、これを覚えていただいて、ぜひ自分の心をコントロールし、いい状態に持っていくために使っていただきたいと思います。
学術的には「自己実現と成長」。強みや主体性ですね。やらされ感で仕事をしているのではなくて、ワクワクしながら自分で主体的に関わっていけているか。そして、その中で成長を感じられるか。この「成長を感じられるか」ということが、とても幸福度と強い相関があります。
やはり私たちは、成長を感じられた時にドーパミンも出ますし、フロー状態に入ってワクワクしながらわーっとやる。これが大事なんですが、一方でそれだと、バーンアウトしてしまうことがあるんですね。フロー状態に入ってそこに気づけない、自分が疲れていることに気づけなかったりするんです。
前野:2番目の「つながりと感謝(ありがとう因子)」は、オキシトシンやセロトニンが出てくる因子です。優しい気持ちになったり、温泉に浸かったり、人と対話をしたり、いろいろなことに感謝したり。そうしますと、オキシトシンとセロトニン、脳内ホルモンや幸せホルモンが出てきます。ですから、ドーパミンとオキシトシンとセロトニンのバランスを取っていただきたいんです。
よく企業で従業員満足度の調査をした時には、仕事に対しては別に不満はないのに、幸福度を測ると実は低いという方がいらっしゃって、「なぜなんだろう?」と。「成長を感じられない」というところにポイントがあるのではないかと、私は思っております。
やはり、今ある仕事に満足してしまって、卒なくこなし、仕事が終わってプライベートが充実している。でも、なんとなく何かが足りない。それはやはり、仕事における成長だと思うんですね。仕事というのは、成長を感じられるすばらしい場であって、これを活かさない手はないと思っています。
そして、「前向きと楽観(なんとかる因子)」ですね。ここは自己受容の因子で、自分のいいところも悪いところも含めて、自分のことを好きである、受容しているということが、チャレンジできる原動力になりますから、ここもとても大事です。
前野:そして最後、「独立と自分らしさ(ありのままに因子)」ですね。自分らしくいる、自分の基軸がしっかりしている、人と比べないことがとても大事になってきます。
ふだんは忘れていてもいいんですが、自分が何かにつまずいた時、この4つの指標を思い出していただいて、自分自身を捉え直していただく。部下からの相談なども、この4因子で捉え直してお答えしていただけると(いいかと思います)。これは幸福度が向上するという研究結果に基づいておりますので、ぜひみなさん、うまく使っていただけたらと思います。
「ありがとう因子」が関係性の質で、あとは個人のあり方なので、これを企業で使っていただく場合には、まずは「ありがとう因子」を整えてから、他の3つをやっていただきたいと思います。
整えずに「ありのままに因子」だけを磨いていくと、わがままな状態になってしまいます。「自分らしい」というのは決してわがままなことではありません。第2因子と第4因子をセットにするとわがままにはなりませんから、安心していただけたらと思います。
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