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奈落の底から業績13倍へ 北の達人コーポレーション社長が語る「チームX」の舞台裏(全2記事)

チームにマイナスの効果をもたらすリーダーの特徴 木下勝寿氏が明かす、絶対にリーダーにしてはいけない人10ヶ条

日本のトップリーダーの会談から真のイノベーションを担う次世代リーダー誕生のヒントを探る場として開催された、第4回 日本を変える 中小企業リーダーズサミット。本セッションでは、北の達人代表の木下勝寿氏が、中小企業のセールス&マーケティング戦略を語ります。 本記事では、奈落の底からV字回復を遂げたという同氏が、KPI設定のポイントやリーダーに選んではいけない人の条件を明かします。

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奈落の底からV字回復を果たしたポイント

木下勝寿氏こういう課題を抱えたチームをどのように改善していったか、チームXの5つのポイントですね。これも3つだけ紹介したいと思います。

まず、一番重要だったのがKPIですね。要はたくさんの人が仕事をしている中で、一人ひとりに対してきっちりと数字ベースで、「自分がうまくいっている、いっていない」が判断できる状態にしていく。そうしないと、個々人の価値観、判断基準で動いてしまって、必要性がないことにものすごいパワーを割いていたりするんですね。

きっちりとKPIを設定することによって、「あなたはこれをやるのが仕事です。この数字がこう出ていればうまくいっています。この数字がこう出ていなければうまくいっていません」って判断できる状態にしていたんです。

メンバーが優秀であるほどスピーディに崩壊していくKPIの罠

KPIを設定している会社さんはたくさんあると思うんですけども、このKPIはすごく危ない部分があります。それは、KPIを設定すると部分最適化が加速します。簡単に言うと、「これさえやっていればいいですよ」ってわかりやすく指示することによって、「わかりました!」ってみんながすぐ走ってくれるんですけども、この設定を誤ってしまうと、メンバーが優秀であればあるほどスピーディに崩壊していきます。

要は、部分最適を突き詰めていくと、全体最適になるように設計する必要があります。具体的に当社でどんな問題が起きたかというと、広告を運用していくチームがあります。ネット広告で広告を費用を投下して運用していくんですけども、最初、新規のお客さまの獲得人数のKPIの設定を、過去6ヶ月間に獲得した人数の平均の1.2倍を目標に設定しました。

メンバーが「わかりました!」って言ってだーっと拡大に走ってくれて、非常に獲得人数が増えたんです。一人ひとりがんばってくれたんですけど、一方で、採算オーバーがたくさん出てきたんですね。

要は、1人のお客さまを獲得するのにかけていいコストは設定があって、1人のお客さまを獲得する(のにかけていい)コストはCPOっていうんですが、この上限のCPOを超えた獲得が、バンバン増えたんです。

それによって、新規集客の獲得も増えたんですけど、それ以上に広告予算を使いすぎて採算性がめちゃくちゃ悪化してしまったんです。「このままいくとすごい赤字になってしまう」ってことで、このKPIの設定方法を変えまして、上限のCPO以内の獲得件数を最大化する。そして、上限のCPOを超えた獲得件数を差っ引くというルールに変えたんです。

それによって、上限のCPO以内で(獲得数を)最大限にしながら、赤字案件を最小にしていくというかたちで動くようになっていきました。

KPIを「1回設定して終わり」にしない

こういう感じで、KPIは1回設定して終わりではなくて、KPIを設定した後の動きを見ていきながら、全体最適になっているかどうかを確認していく。もしそうなっていない場合は、ここをチューニングしてPDCAを回すのが、すごく大事になってきます。

そして、例えばクリエイティブチームのKPIってどんな感じだったかというと、みなさまもスマホとか見ていると広告を見ることがありますね。

当社の場合、広告を見てクリックした人がBLPというページに飛びます。これはブリッジLPというんですけども、広告から飛んだ先のランディングページですね。

こちらは、このまま直接販売して買うページではなくて、お客さまに商品の説明とかを啓蒙していくページです。そして、ここを経由した後に販売用のページに行くという作りになっています。

そして、販売用のページに来て、商品の価格とかがあってショッピングカートがついて、お客さまが購入するという流れになっています。

クリエイティブチームのメンバーは、この広告とかBLPとかHLP(販売LP)とかを作っているんですけども、最初に、実際に1人のお客さまが購入した場合に、HLP、BLP、広告を作った人たちに0.33ポイントずつが付与されると。こうして、全員が力を合わせることによって、0.33ポイントずつ行きますよというかたちにしました。

BLPとかHLPは長いページを作ることになります。これだったら広告を作るほうが楽にポイントを稼げるなってことで、みんなが広告をバンバン作るようになったんですね。

ところが、BLPとかHLPを作っている人は、その広告の飛び先として指定されるので、自分のところで1回いいページを作ってしまえば、みんなが広告を作れば作るほど、自動的に自分のところにポイントが還元される仕組みになっているんですね。

それを見た人が、「これは広告を作るだけじゃなくてBLPとかHLPを作ったほうがいいんじゃないか?」ということで、今度はちょっと難易度の高いBLPとかHLPの作成に、みんながチャレンジするようになっていきます。

BLPとかを作っていくと、誰かが自分のところに広告を作ってくれて成果が出てくる。こんなふうに、(社員が)徐々にポイントを上げていこうとスキルアップを図るような仕組みにしていきました。

KPI設定で「どんなズルができそうか」メンバーで共有

一方で、こういうポイント制でやっていくと、「まったく新しいクリエイティブを作るよりは、過去に当たっていたクリエイティブを踏襲したものを作ったほうが、成果が出やすいんじゃないか?」と、みんなが過去に作ったものばっかりを真似するようになってきました。

当社では、過去に作った広告とかクリエイティブを真似してやることによって同質化が起き、成果が出なくなってきた経緯がありましたので。「これはこのまま進んでいくと逆効果だ」っと、今度は過去に作ったものをベースに広告を作った場合は、過去に作った人に対しても加点が飛ぶような仕組みに変えたんです。

それによってベテランの人は、自分が作った、いい成果が出た広告を新人とかに「これを真似すると成果が出やすいよ」と言います。それによって過去に作ったものを真似した人が成果を出すと、自分にもポイントがつくようになるんですね。

新人はいきなり失敗するよりは、先輩のものを真似していきながら徐々にオリジナリティを重ねていくようなポイントの制度にしています。

常にこういうことをやっていくと、各メンバーのスキルによっても最適なKPIが違ってきますので、我々は定期的にKPIを変えています。

KPIを変える時に最初にやることが、「こんなKPIを設定しようと思っているんだけども、例えばどんなズルができますか?」って聞くんです。「例えばこんな抜け道があると思います」みたいな感じのことをみんなが言ってくれると、「なるほど、そういう問題が起きてくるか」と、ブラッシュアップしていきます。

現時点での達成度が一目でわかるようにする

そして、KPIの重要なこととして、ポイント2。わかりやすく「見える化」することです。例えば、今月の売上目標が1,000万円。現在が20日、実績は600万円という場合、この状態はうまくいっているのか、うまくいっていないのか。「即答できますか?」って言われると、計算が速い人はパッと即答できると思いますけど、多くの人は「微妙」って感じですよね。

なので、今うまくいっているかどうかを即答できる状態にする。そして、今すぐ何をしないといけないかがわかる状態にするのが、すごく重要です。こんな表があります。こちらは残り営業日数を書いています。例えば1ヶ月(の営業日)は30日じゃなく、例えば20日間となっていますけども。

一番右側の列に、標準達成率という欄を設けています。これは、各営業日で均等に受注していたとしたら、その日で何パーセントになっているべきかがわかります。

9月20日の時点では達成率が65パーセントになっていないといけないという状態ですね。ところが、さっき申し上げた20日の段階で600万円というのは60パーセントなので、これは5パーセント遅れているという状態です。

この表でうまくいっているか、いっていないかが一目でわかるんですけども、具体的に何をどう変えていかないといけないかが、この右の表になります。

残り売上としては400万円です。残り営業日数は7日間です。平均1日売上ノルマ、今後7日間で57万円売っていかないといけません。平均1日売上実績、今までの20日間でいくと46万円でした。つまり、1日のノルマ差額が11万円ですね。今までは46万円平均で来たけども、これからは57万円平均でいかないと達成できないのが、一目でわかる状態です。

なので、表があって右側は毎日自動的に変わるかたちにするのが大事なんですけども、KPIを設定した時は、今うまくいっているかどうか、そして、うまくいっていないとした時に何をどう変えないといけないかが、一目でわかるようにするが、すごく大事だと思っています。

社内で「共通言語」を持つ重要性

そして、次は共通言語化。いろんな研修とかありますけども、その一番の目的は共通言語化だと、私は認識しています。私ももともとリクルートに勤めていた時に、研修とかをやっていたんですね。

でも2泊3日の研修でメンバーが劇的に変わるかっていうと、もちろん1人、2人ぐらいはけっこう劇的に変わることがあるんですけども、大半の人は、「わぁ、いい研修だったな」と思っても、劇的に変わることってほぼないんですね。

ところが、この研修を通じて共通言語を持つことによって、概念を一言で共有できるチームになるんです。なので、これによって後々、徐々に伸びてくることがあります。なので、共通言語というのは、概念を一言で共有できるようにすることです。暗黙知を形式知化するとも言っていますけども、あえて造語にするのがすごく大事です。

私自身が本を出したりしている理由も、実は共通言語を作ることが目的なんです。具体的に申し上げますと、例えばエモーションリレーという定義があります。

エモーションリレーとは、ユーザーが広告を見てクリックをして、さっきのブリッジLPに飛んで、読んで、納得して、HLPに遷移していく。HLPを読み終わって購入ボタンを押すまでの各ステップを、違和感なく読み進めていく流れを、エモーションリレーと言っているんですね。

「広告ではこう言っているのに、BLPに来たらそれに対応する内容がない」って場合に、エモーションリレーが途切れているって言い方をしたり。広告やBLPやHLPのエモーションリレーがつながっているかチェックするという言い方をしています。

この言葉があることによって、クリエイティブをチェックした時に、「これはエモーションリレーが途切れているよね」「エモーションリレーがちょっとおかしいよね」っていう言い方ができたりします。

例えばこんな感じです。広告のコピーでは、「母(53歳)が最近明るくなった秘密とは!?」と書かれているんだけども、BLPでは母のことが一切触れられていないまま終わることが、けっこうありました。

なんでこんなことが起きていくかっていうと、結局組織が大きくなってくると分業制になっていくから。広告を作る人とBLPを作る人とHLPを作る人が別々になっています。

それによって、特に新人とかが入ってくると、広告を作ることに必死になって、飛び先とのつながりを考えずに作ってしまうことがあるんですね。この時に、「いや、エモーションリレーが途切れているよ」って言い方をします。

一気にチームの認識が合致した「エモーションリレー」

他には、例えば広告の画像が20代の女性の鉛筆風のイラストだったんですけども、飛び先のBLPのファーストビュー、クリックして飛んだ最初のページが50代の女性の顔だったとか。もしくは、BLPの最後のボタンが「今すぐ購入する!」ってなっているのに、飛び先のLPがアンケートになっていたとかですね。

こういった時にエモーションリレーが途切れたり、薄まったりする、エモーションリレーにバグが起きると言っています。これが以前から、ずっと当社では起きていたんです。

最初、「導線が崩れている」って言い方をしていたんですね。「この流れは導線がおかしいよね」って言った時に、人によっては、クリックの飛び先のリンクの設定のことだと思っていて、「リンクはちゃんとつながっています」みたいな。

「いや、そうじゃなくて中身が……」みたいな感じでいくと、「いや、中身もカラーを合わせています」みたいなトンマナの話になったりして、「いや、そうじゃなくて……」みたいな感じになっていました。

メンバーが集まって、「内容の流れがつながっているか」の言葉の定義を明確にしていかないと、こういうことが起きてくると。じゃあ、つながりを1つの言葉で表せないかってことで作ったのが、このエモーションリレーって言葉です。

このエモーションリレーという言葉ができたことによって、新人でもこのエモーションリレーがつながったものをきっちり作れるようになってきて、劇的にスキルがアップしました。

なので、共通言語とか、例えば職人的な技みたいな部分を共通言語化させることによって、一気にチームの認識が共通化できて、レベルが上がるということを経験しました。

チームにマイナスの効果を生むリーダーの特徴

そして、最後。3つ目の風土。これはすごく大事でして、やはり大きな成果を上げようとした時に、みんなが「やっていこうぜ!」みたいな風土になっているかどうかがすごく重要なんですね。

その風土に一番影響を与えるのがリーダーなんですよ。どんな人をリーダーにするかによって、ものすごく変わってきます。

例えば、メンバー10人のチームがありました。ここに難問が降りかかってきました。この時にチームリーダーが諦めてしまうと、ほかの9人のメンバーも免罪符を与えられるんですね。「もう諦めていいよ」って免罪符が与えられてしまったことによって、ほかの9人も問題に取り組まなくなってしまいます。

必ず解決しないといけない問題の場合は、リーダーの上司が取り組むことになるんですけども。リーダーだけじゃなくて、ほかの9人もみんな動かなくなってしまったので、上司1人で臨まないといけなくなります。

この諦めてしまうリーダーがいなかったとしたら、この9人も戦力化できたんですけども、諦めてしまうリーダーがいることによって、全員がマイナスになってしまうんですね。

リーダーはプラスの効果もありますけども、マイナスの効果もあります。なので、こういう場合は、もうリーダーがいないほうがよかったってパターンなんですね。なので、リーダーを選ぶ時は、他者への影響を一番に考えることがすごく重要だと思っています。

絶対にリーダーにしてはいけない人10ヶ条

リーダーの選び方なんですけども、この1番のタイプと2番のタイプの方がいらっしゃるとします。この、A、B、C、D、E、Fって項目は、それぞれの能力に対して点数化しています。1番の方は、A、B、C、D、Eそれぞれの項目が、5点とか4点とか、かなり成果が出ています。そして、Fの項目だけ極端に低い。でも、合計すると25点でした。

そして、2番の方は、A、B、C、D、E、F、すべてにおいて平均的で、3点です。合計18点なので、総合点数でいくと1番の方のほうが高いです。どちらを選ぶべきか、結論から言うと、私は2番の方をリーダーに選びます。

それぞれの人たちの部下がどれぐらい成長するでしょうかってことなんですが、まず1番の部下は、全体が1点になる。そして2番の部下は、全体が3点になります。

要は、リーダーの一番悪いところに合わせて成長していく感じになります。もちろんすべての人がそうではなく、リーダーを超えてくる人もいます。ただ、リーダーを超えていく人は、たぶんこのチームから離れて別のリーダーになっていきます。なので、一般的なメンバーはリーダーに合わせて成長していくんですけど、一番低いところに合わせていくんですね。

子どもが親の真似をするのと同じような部分だと思います。プレイヤーとしてはいいところを伸ばして悪いところに目をつぶるのが大事なんですけども、管理職やリーダーは、悪いところを潰すのが最優先になってきます。

そして、絶対にリーダーにしてはいけない人10ヶ条。すぐに諦める。できない言い訳をする。危機感がない。成果が出ない理由を外部要因にする。やるべきことを「自分がやらなくていい理由」を見つけてやらない。ミスをしても謝らない。ミスをしても、バレないようにごまかす。人が見ていないところでサボる。うそをついてごまかす。トラブルから逃げる。

まずは、あなた自身がこれに1点でも当てはまっているところがないか、見てみてください。そして良いリーダーになってほしいなと思っています。

最後に、1社1社のチームXが日本の変革につながります。今日、この話を聞いていただいたみなさん自身が、ぜひ取り組んでいただきたいと思っています。まずは、あなたの会社からチームXに取り組んでください。どうもありがとうございました。

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