2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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司会者:株式会社北の達人コーポレーション代表取締役社長、木下勝寿さんにご登壇いただきます。
木下さんは、一度独立するも事業に失敗しフリーターに。無一文の中、Eコマースに商機を見いだし1人で起業。独自のWebマーケティングで東証プライム上場を成し遂げ、一代で時価総額1,000億円企業に導かれた経験をお持ちです。
本日は、「奈落の底から業績13倍へ 北の達人コーポレーション社長が語る『チームX』の舞台裏」と題しまして、中小企業も実践できる売上アップのための具体的な秘策をご紹介いただきます。それでは木下さん、どうぞよろしくお願いいたします。みなさま、拍手でお迎えください。
(会場拍手)
木下勝寿氏(以下、木下):株式会社北の達人コーポレーション代表取締役社長、木下勝寿と申します。今日はよろしくお願いします。
今日のお話は、『チームX ストーリーで学ぶ1年で業績を13倍にしたチームのつくり方』という本のお話になります。当社に起きた出来事、それをどのように乗り越えていったかというお話です。
正直、我々の会社の恥部を晒す内容にもなると思うんですけども、この恥部をどうやって乗り越えていったかをみなさまにお伝えすることによって、少しでもみなさまのお役に立てるんじゃないかと。あえて恥部を晒しながらこういうお話をさせていただきます。
まず、このチームXの「X」とは何なのか。いわゆる変革を意味するトランスフォーメーションを1字で表す略語になります。デジタルトランスフォーメーションをDXと言いますが、あれと同じと思っていただければ。チームXというのはチームの変革、チームのトランスフォーメーションを表す話です。
木下:簡単に自己紹介をさせていただきます。北の達人コーポレーションという会社の社長兼WEBマーケターで、WEBマーケティング部の部長もやっています。1人で起業しまして、一代で東証プライム上場企業に育て上げた現役社長120人のうちの1人ということになります。
いろいろ賞をいただいたり書籍を出させていただいたりしております。実は出身が関西なので、イントネーションが関西弁になる場合がありますが、なにとぞご了承ください。
どんな会社なのかというと、事業内容は、化粧品・健康食品のブランド「北の快適工房」というブランドをやっています。こちらのD2Cという、Direct to Consumerですね、自社で企画して自社で商品を作って、自社でインターネットを通じて販売している会社になります。
製造自体は外部にお願いしているんですけども、自社ブランドとして、販売に関してはインターネットを通じて、直接お客さまに我々自身が販売をしております。
設立が2002年の5月。そして、本社が東京の中央区銀座と北海道の札幌市にあります。両本社制ということですね。今、写真に写っておりますのが東京本社で、歌舞伎座タワーの17階にあります。年商が146億円ということで、上場の市場が東証プライム市場と札幌証券取引所で、288名の従業員がいます。
そしてEコマース事業に特化した商品開発ということで、化粧品および健康食品を作っているんですけども。いわゆるお客さまの具体的なニーズに応える商品というところで、化粧品というとけっこう化粧水とか乳液とか美容液をイメージされると思うんですが。
そういったものではなくて、シワ専用とかシミ専用の商品、もしくは手の甲専用の商品とかっていう、ちょっとニッチな商品を作っています。
我々は「びっくりするほど良い商品ができた時にしか発売しない」というルールで作っていまして、当社独自の基準があります。800項目の基準をクリアした商品だけ発売するやり方でやっております。
木下:そして当社、北の達人コーポレーションに起きていたことですが、2002年に設立をし、2015年に当時の東証一部に上場。東証一部というとけっこう大きな会社をイメージするかもしれませんが、当社が東証一部に上場した時は、まだ売上が20億円ぐらいの会社だったんですね。
非常に高収益だったので、そんな小さな会社でも上場ができたんですけども、そして、東証一部に上場した翌年の2016年から2020年にかけて、Webマーケティングを強みに、業績を20億円から100億円へ一気に拡大しました。4年間で一気に5倍ですね。当時から、日本で最もWebマーケティングに強い会社の1社と言われるようになりました。
そして一方で、2020年の後半、生命線である新規の集客が伸び止まることが起きました。Webマーケティングでたくさんの新規の集客をしていたんですけども、突然、新規の集客がなかなか伸び止まってきた。
原因としては、行き過ぎた効率化と急激に大きくなってきたことによって、教育がぜんぜん追いつかず、組織が機能不全を起こしてしまったんですね。
そして、2020年から2021年ぐらいに停滞ムードが出てきて退職者が続出してきました。そして、2021年12月、新規の集客がついに最盛期の6分の1にまで落ちました。最盛期はだいたい1日に1,000人ぐらい集客していたのが、160人まで落ちました。
売上自体は6分の1に落ちたわけではなくて、定期購入がベースの売上になっていますので、過去の定期購入のお客さまがいらっしゃるんですけども。新規のお客さまが6分の1に減るってことは、このまま行くと先々の売り上げが6分の1に減るということが明確になった時でした。
木下:そして、どのようにチームXを行っていったかということなんですけども、まず既存のやり方が通用しなくなってきたので、新人を中心にした社長直轄チームを発足させたんですね。
既存のメンバーは既存のメンバーで今までのやり方を一生懸命やっているんですけども、これが通用しなくなってきた時に、新人をそこに配属してしまうと、うまくいかないやり方をみんなが覚えてしまう。既存のやり方は既存のやり方でやっていかないといけないんですけども、新人を別チームにして、新しいやり方を新人に教育していきました。
そして、2021年中盤頃、KPIマネジメントの導入によって組織を改革していきました。組織が小さい時は、誰が何をやるべきかは明確にわかりやすいんですけども、大きくなってくると、全員が全体の一部しか仕事をしていないみたいな状態になってきますので、何をすべきで何をしてはいけないかがわかりにくい。
ここでKPI、数字で判断できる仕組みを入れることによって、各メンバーが自分の考え、自分の判断で動けるような体制を組んでいきました。そして、2022年初めから中盤にかけて、若手のリーダー、エースが台頭してきました。そして、共通言語を作っていくことによって成長できる土台を作っていきました。
そして、2022年10月15日、若手中心のチーム構成で、ついに3年3ヶ月ぶりに1日1,000人の集客に成功しました。過去の最高時点に元に戻せたんですね。
そして、その約3ヶ月半後、2023年1月29日、1,000人突破の3ヶ月半後に、新規集客が過去最高記録の3,426人、1年前の同日が278人だったので、実は1年で13倍にまで伸びたという成果を出すことができました。
木下:ではどのようにしてこのV字回復を成し遂げたのかというお話をしたいと思うんですけども、課題、解決策が5つずつあります。
まず、どんな企業にも可能性のある「5つの企業組織病」ということなんですけども。これを全部説明すると、本当に時間があっても足りないので、3つだけ紹介したいと思います。
まず、「お手本依存症」ということで、正解例のお手本がないと何もできなくなってしまう状態。入社して配属され、仕事を教えられる際に、「これを参考にして」と(よく言いますよね)。当社の場合、通販なので広告のクリエイティブ(の仕事がありますが、これ)はゼロから教えるのではなくて、すでにある成果の出ている広告を見せて、「これを参考にして」って作らせていました。でも、「先行事例を基に作っていくもの」という仕事のやり方の癖がついてしまうんですね。
なので、そのやり方が通用しなくなった時に、「じゃあ、何を参考にすればいいですか?」みたいになってきました。
木下:そして次、「数字万能病」ですね。デジタル化が進んで多くのものが数値化されたことによって、数字だけで判断できると誤認するようになってきました。現場、現物を見ずに判断することで、間違った判断が横行するようになってきました。数字は有能ですけど万能ではありません。
例えば、広告クリエイティブを出して、成果が上がらなくなりましたって時に、数字だけを見て、「成果が上がらないですね。これは駄目です」って言ったりするんですけども。
例えば、広告の実際のクリエイティブを見てみると、「スマホだと文字が見にくいから成果が落ちているだけであって、文字のサイズを変えれば元に戻るんじゃないか?」とか、現物を見ればすぐにわかるようなことが(あります)。数字だけで判断することによって、正確な判断ができなくなるということですね。
小林製薬の小林(一雅)会長が、ある書籍で「POSデータっていうのは、死に筋製品は教えてくれるが、明日からの売れ筋予測には有効ではない」と言っていましたけれども、数字でわかることと数字ではわからないことが明確にあります。
木下:そして、「フォーマット過信病」と言いますけども、1つの勝ちパターンがすべてに当てはまると過信してしまうこと。何に対してもまったく同じアプローチをしてしまうということです。
例えば、通販の世界ではよくあるのが、いろんな広告のクリエイティブを出していくんですけども、例えば、広告代理店の方が「化粧品の広告の勝ちパターンはこれですよ」みたいなことを言ってくることがあるんですね。
でも、化粧品といっても、メーキャップ化粧品もあればスキンケア化粧品もあります。そして、クレンジングもあれば美容液もあります。美容液も成分ごとによってどういう成分が入っているか、特徴がぜんぜん違ってきます。
勝ちパターンというベースになるものは、ある程度の方向性として傾向はあったりするんですけども、例えば、化粧品でも美容液とクレンジングでは保湿を表す表現方法が違うんですね。「しっとり」と「もっちり」っていうのが、美容液の場合とクレンジングの場合はぜんぜん違っていたりします。
なので、勝ちパターン自体は否定するものではないですけども、化粧品の勝ちパターンみたいに大雑把なものとして認識すると、誤認をしてしまう。例えば、「自動車の勝ちパターンはこれです」と言いながら、ダイハツの軽自動車の広告とフェラーリの広告を、同じフォーマットに当てはめているようなものです。
これは私自身も実は経験がありまして、新卒で入ったリクルートで営業マンをやっていたんですけども、大型受注を決めた先輩にその時の企画書とかプレゼントークとかを教えてもらうんですね。それを基に自分がいろんなところに行って、企画書とかプレゼントークとか決めぜりふを言うんですけども、ぜんぜん通用しないんですよ。
これは当然で、その大型受注した会社と、今目の前にいる会社っていうのは、もう課題も価値観も予算も担当者の立場もまったく違うからなんですね。というように、プレゼンは顧客の課題に応える場です。
クリエイティブもテクニックをユーザーにぶつける場ではなくて、ユーザーの心のインサイトを形作る場なので、まずユーザーありきでそれをいかにやっていくか。なので大枠のフォーマットは存在はするんですけども、そこまでフォーマットが全部に当てはまるかというと、実はそんなに当てはまらないんです。そういう失敗をたくさんしてきました。
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