2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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中土井僚氏の著書『ビジョンプロセシング』の出版を記念し、これからの時代の未来との向き合い方を探究するトークイベントが開催されました。『プロセスエコノミー』などの著者でIT批評家の尾原和啓氏、READYFOR創業者の米良はるか氏と中土井氏の3名がトークセッションを行い、「答えはないのに、ゴールを示すべき」というジレンマの乗り越え方について探りました。本記事では、中土井氏が提唱する「SOUNDメソッド」について解説します。
中土井僚氏(以下、中土井):私の中で、未来との向き合い方が人間にとってすごく大事なんじゃないかって思ったきっかけが、書籍(『ビジョンプロセシング』)の中でも紹介している「タスク・アセスメント」という考え方なんですね。これはけっこう古くて、1980年代にトーマスさんとベルトハウスさんがエンパワーメントの研究の中で提唱しています。
権限委譲という観点で見た時に、権限が委譲されたら人は働くと思っていたところ、権限をただ渡すだけでは働かないよねということで、彼らはモチベーショナルなものとしてエンパワーメントを考えました。「それは、与えられたタスクをどう認知しているかによるんだよね」と考えたという話なんですよね。
この4つが、私の中では非常におもしろいなと思っていて。自己効力感は、自分の手のうちにそのことが入っているか。影響は、全体目標に対してその手段は合理的で、意味があるかどうか。自分で決めたか(自己決定感)、自分の価値観にとって大事か(有意味感)が関係があると思っているんです。
それが、先ほどのWillとShouldとCould beとCanと関係が深いと思っていて。この4つをうまくマネージすれば、先行き不透明かどうかにかかわらず、人はエンパワーされ得るんじゃないかなと思っているんですね。
それがある意味、お二方が言ってくださったことと関係があるだろうなと思うのとともに、これを大きくマクロレベルで回すことと、日々の活動の中のミクロレベルで回すことは、両方とも必要だと思っていて。
中土井:米良さんの社会全体のことを考えての話だったり、ご病気なさった時の話は、大きくWillを見たところからのShouldやCould beを見て決められていると思うんですが、これは日々でも必要があると思っているんですね。
PDCAサイクルやOODAループに代わるものとして作り出せるんじゃないかと思って、それに代わるものとして、「SOUND」という言葉でプロセスを表現させてもらったんですね。それが、この「Should」→「Will」→「Could be」→「Should」→「Can」という流れなんです。
最初に問題認識を棚卸し(Should)して、「どうしたいんだっけ?」と自らに問うて(Will)、「今後どうなるんだっけ?」を見極めて(Could be)、自分たちがすべきことを決めて課題を決めて(Should)解きにいく(Can)。そのプロセスをクルクル回していくことが、今後は大事なんじゃないかと思っているんですね。
米良さんが組織運営でされていることだったり、組織の現場の人たちがやっていることは、それに近いことをされているような感じがするんですが、どうですかね?
米良はるか氏(以下、米良):そうですね、かなり近いと思います。この本の中では「長期は見通せないよね」という話があると思うんですが、私たちは「こういう社会にしたいから」というもののバックキャストで、「この3年でこういう状況になってなきゃいけないよね」と長期で考えるのがすごく好きで。
「状況」と言っているのは、「こういう世の中にしたい」ということで、そこに向けてどういう事業的なマイルストーンを作っていかなきゃいけないのか、その時、社会はどうなってなきゃいけないのかを考えて組織を作っているところがあります。
そうすると、例えば私の中では「この3年間でこういう状況を作っておくべきだよね。そうすると、こういう役割が必要だよね」みたいなところが、ある種の「べき」みたいな部分です。
「じゃあ、そういうことをやるべきだよね」って私がミッションを渡すんですが、そのミッションの中で、「自分だったらこういうふうにやるよ」ということを自分で考えてもらう。
その上で「じゃあ、それをどういうかたちで実現するんだろう?」というところを、ある程度一緒に見通しして、あとはお任せする感じで、それがどう進んでいくかは一応見ていくという感じですかね。
中土井:おもしろい。
米良:なので、今の上のほうのプロセスはかなり近いなって思いました。
中土井:なるほど。
中土井:尾原さんが、私と米良さんが合うんじゃないかと見立ててくださったところから始まっているわけですが、もともと思っていた感じと、実際に今の対談を進めてみて、今は尾原さんからはどう見えていらっしゃるのかが気になっているのですが、どんな感じですか?
尾原和啓氏(以下、尾原):一番おもしろいなと思ったのが、米良さんと中土井さんが合うのは、米良さんがやっているREADYFORというプラットフォームに集まってきている人たちの中で起こっているチーミングが、これからの組織開発のヒントになるんじゃないかと思っていたんですね。
実はいろんなものの逆転現象がインターネットで起こっていて。設備型産業の時代って、設備を計画的に打つことが大事だったから、イノベーションって軍や政府とかでトップダウンで行われていたんですよ。
中土井:なるほど。
尾原:インターネット以降、アプリやゲームを作ったり、コストがどんどん安くなってきたことで、ユーザーサイドから新しいテクノロジームーブメントが起こるようになったんですよね。だから今って、最初にイノベーションを一番ぶっ込まれるのはTikTokですよね。
それと同じで組織開発も、READYFORみたいなプラットフォーム上にチーミングで集まる人の働き方のほうが、むしろ理想の組織開発が行われている。それを会社という組織開発に当て込んだら、きっと化学反応が起こるだろうなと思ってセッティングしたら、なんともうすでにREADYFORという社内の中にあった。
中土井:本当ですよね。
尾原:「ビジョンを問いとしてやることが楽しい」という旗の中で集まってくるし。
尾原:言い方は悪いんですが、クラウドファンディングって、「ほかのスタートアップに比べてすぐに上場できるぞ」「すぐに儲かるぞ」という感じがあんまり世の中にしなかったのが、余計に今の見えにくい未来の中の理想的な社内組織にもなっているんだな、すげぇなって思いながら聞いています。
中土井:本当ですよね。
米良:すばらしいご指摘だと思います。そのとおりです(笑)。でも、最後に言っていただいたところは、自分にとってはかなり良かったなと思っていて。
スタートアップって、基本的にはIPOとかを一応ゴールとして置かれるんですよね。そこがゴールだったら、そこから逆算するという思考にしかならないので、本当に思考停止になる。ベースとして、「日々新しいことを、今ないものにチャレンジしていこう」というふうにはなりにくいと思いますね。
今、徐々に変わってきているなと自分たちが思うのは、スタートアップのエコシステムがかなり成熟してきていること。あとは、シリアルアントレプレナーみたいな人たちが、そんなにIPOを急いでやるのではなくて、自分のクレジットを基に大きいことに勝負するようになってきている。
中土井:なるほど。
米良:最終的にはめちゃめちゃ大きくなるわけですが、もっと長期スパンで「会社を、社会に本当に必要なものに育てていく」という気概でできるんですが、数年前ぐらいまでは「置かれたゴールを達成しないと、次のステージなんか行けないじゃん」という感じだったと思うんですが、だいぶそれが変わってきたと思います。
長期思考で、本当に社会にとって必要なものをちゃんと作る。そこに向けてファイナンスの手段も増えてきていると思いますし、集まる人材の変化もすごく大きいんだろうなと思います。
そういう意味で私たちは、自分の志向としても「短期的に早くIPOしなさい」ということはあんまりなかった。それよりも世の中にある課題や、「『世の中がこういうふうになればいい』という大きい問いを解くんだ」というつもりでどんどんやってこられたのは、大きかったかなと。
中土井:なるほど。
中土井:ちょうどQ&Aの時間にもなりつつあるんですが、どうしても1個だけお伝えしたいなと思いました。米良さんのお話もそうですし、尾原さんの話をうかがっていても思うのは、マインドセットがずいぶん変わってきているんだなってすごく感じたんです。
私の周りでもクラウドファンディングにチャレンジした方は多くて。それこそプラットフォームでREADYFORさんを使っている人も多かったりするんですが、初めてクラウドファンディングをやって成功した人たちって、そのプロジェクトが成功したこと以上に、「お金に対する観念が変わった」っておっしゃる人がすごく多いんですよね。
米良:言っていただけますね。
中土井:おそらくそれがすごく大きいような気がしていて、READYFORの中で働いている方々も、やはりマインドセットがずいぶん違うなって感じがしたんですよ。
そういう意味で言うと、「これまでのマインドセットの人たちがどう変わっていくのか、スタンスを変える必要があるのか」を私はビジョンプロセシングという書籍に著したのに対して、米良さんはそれを仕組みというかたちで作っていらっしゃるのがすごいなと思います。
どうにでもなり得るマインドセットに対して、尾原さんはテクノロジーという観点から「こうなっていくのがより望ましいよね」というものをいろいろシナリオとして描かれていたり、道筋を示されている感じがするのが、すごくおもしろいなと思いましたね。
尾原:そうですね。
尾原:僕も、質問へ行く前にちょっと一言。逆に言うと今日のお話って、聞かれている方からすると違和感があるかもしれなくて。
世の中の変化って2段階あるんですよね。次の生き方がネイティブな人たちが集まって、初めから次の生き方をベースにしたやり方でやっていく。それと、昔のゲームルールで成功しちゃっているところから、次のゲームルールにどう変容していくかという2つがあって。
そういう意味では、想定以上に今日の米良さんの話って、次のチーミングのあり方にネイティブ……。
中土井:本当ですよね。
尾原:うん。だから逆に言うと、次の組織のあり方にネイティブなことに憧れを持つと、今の自分たちから変容したいという気持ちが生まれてくるので、そこはすごく大事だなと思う。
あと、今日は時間がなかったのであんまり深堀れなかったんですが、昔の成功体験でできた組織からチーミングに向かっていくためにはどうするか。ボトムアップに誰もができるかたちでまとめているのがSOUNDメソッドだというのが、ものすごくびっくりしたところでした。
中土井:ありがとうございます。
尾原:そこらへんは今日はあまり議論できなかったんですが、ぜひ本を読んだりしていただいて、実感を持っていただければなと思いますね。
中土井:ありがとうございます。うれしいです。
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