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小早川優子さん×なつみっくす 経営学の視点から考える、内向型を活かしてリーダーシップを発揮するヒント ~多様なリーダーが活躍する社会へ~(全3記事)

自信がない人ほど、いいリーダーになれる2つの理由 経営学の観点から見た、「内向型」を活かすリーダーシップ

本イベントでは、『なぜ自信がない人ほどいいリーダーになれるのか』著者で、ワークシフト研究所代表の小早川優子氏と、『I型さん(内向型)のための100のスキル』著者・なつみっくす(鈴木奈津美)氏が登壇。多様なリーダーが活躍する社会に向けて、経営学の観点から内向型を活かしてリーダーシップを発揮するヒントを語ります。本記事では、多くの人が囚われがちなリーダーシップ像についてお伝えします。

経営学の観点から見た、「内向型」を活かすリーダーシップ

なつみっくす氏(以下、なつみっくす):一般社団法人母親アップデート代表理事をやってます、なつみっくすと申します。よろしくお願いいたします。

4月に『I型(内向型)さんのための100のスキル』という本を出版をいたしました。出版記念ということで、今回は小早川優子さんとの対談という非常に光栄な機会をいただき、楽しみにしておりました。小早川さんには、後ほど自己紹介とご活動についてお話しいただければと思います。

今回の目的としては、多様なリーダーが活躍する社会に向けて、経営学の観点から、内向型を活かしてリーダーシップを発揮するヒントをおうかがいしたいと思います。組織に所属している方も、そうでないフリーでお仕事をされている方も、いろんなケースがあるかと思うんですけれども。私自身も、画一的なリーダー像にけっこう悩まされてきました。

「リーダーに向いてない」と思いながら、キャリアアップをしたい思いもあり、すごくもがいていた中で、優子さんのご本に出会いました。長年リーダーシップやワーキングマザーに対するアクションをずっとやられており、尊敬の眼差しで見ておりました。

ここにご参加いただいてるみなさまも、いろんな課題・活動をお持ちだと思います。みなさん同士でエンパワーしあえるというか、エネルギーをもらえたり、気づきがあるような1時間にできればなと思っています。

この後優子さんに自己紹介いただきまして、テーマに沿ってトークしていきながら、みなさまからのご質問も含めて対話していければなと思っています。ということで、優子さんにバトンタッチをさせていただいてよろしいでしょうか。

『なぜ自信がない人ほど、いいリーダーになれるのか』著者が登壇

小早川優子(以下、小早川):ありがとうございます。では、ここから簡単に私の自己紹介をさせていただきます。私はリーダー層の多様化を目指すワークシフト研究所の代表をしております。2015年に起業して、今年で9年目を迎える会社でございます。

先ほどちょっとご紹介いただきましたけれども、2021年12月に『なぜ自信がない人ほど、いいリーダーになれるのか』という本を出版しました。この本の内容に関しては、後ほどなつみっくすさんといろいろお話しさせていただければなと思っております。

私自身は外資系金融機関に15年間勤務していたり、その間にビジネススクールに行って、育休も2回取っています。ぱっと見ると、キラキラしたプロフィールのようによく思われます。

ただ実は、この裏に隠れた本当の自分がこっちかなって感じです。私はこのキャリアの中でいろんな葛藤があったのですが、一番大きかったのが、第二子出産後に、あまりにワンオペが大変で、夫と大喧嘩したことがあります。「離婚もして、会社も辞めてやる!」みたいな、人生をひっくり返したいみたいな時があったんですね。

離婚はしなかったのですが、仕事は辞めました。ワンオペで回せない自分の罪悪感とか、よくわからない怒りがあり、何らかの仕事をしようと、フリーランスになりました。ただ最初からうまくいくことってあんまりないですよね。最初はぜんぜん何も売れないし実績もないし、という中でちょこちょこやっていたんですけども。

子育てしながら働くことへの葛藤

小早川:ちょっとうまくいき始めた時に第三子妊娠で、40歳でしたのでけっこう体力的にもくたくたで、2人の子どもを育てながら、ほとんどワンオペで妊娠生活に入りました。この妊娠がまた辛くて、そのフリーランスの仕事もほとんど辞めざるを得ない状況になりました。

「子どもを育てながら働くってこんなに大変なの?」というのもありますし、ワンオペしなきゃいけなかったこともあって、もう憤りみたいなのがずっとあったんですね。そうこうして第三子が生まれて半年くらい経った時に「育休プチMBA®」に出会って、起業に至ったのが今の状況でございます。

「育休プチMBA®」というのは、静岡県立大学の准教授をしてます国保祥子というものが作ったプログラムです。育休期間を、休職じゃなく両立のための準備期間にする。育休者特有の壁を乗り越えられるスキルを、楽しみながら、かつ仲間とコミュニケーションとかネットワークを作りながら習得していくプログラムです。

これは本当にすばらしくて、弊社のBtoCのプログラムはだいたい2万人ぐらいがすでに受講されていて、今年(2024年)は10周年記念もあります。「プチMBAマスタープログラム」という、両立をしながらリーダーを目指す人たちを育てるための半年間のプログラムもあります。こういった経験があり、私がこの本を書くのに至った感じかなと思います。

このあたりは後ほどいろいろお話しさせていただければなというふうに思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

世界的に見ても優秀なのに、自信がない日本の女性

なつみっくす:ありがとうございます。今「育休プチMBA®」のことやご著書のことをお話しいただきましたが、優子さんご自身のリーダーシップについて、変化があったタイミングや(本を書いた)きっかけを、まずおうかがいしてもよろしいでしょうか。

小早川:たぶんみなさんもそうだと思うんですけど、自信満々でみんなを力強く引っ張っていくのがリーダーだと思っていたんですよね。私は外資系でしか働いたことがないんですけども、それぞれの国の男性・女性みたいな群で分けていくと、日本の女性は一番優秀だなって、私はずっと思ってたんですよ。でも日本の女性は、どうしても職位が低いので、もったいないなぁと思っていました。

でも、自分も含めてみんな自信がないんだな、というのがだいぶ前から頭の中にありました。弊社のプログラムってだいたいコーチングもついているので、私はこれまで何千人の方とコーチングをさせていただいてるんですが。9割5分、「自信がない」って言うんですよね。

でも実際のプログラム入っていろんな課題とかを見ると、みんな優秀なんですよね。「これはなぜだろう?」と思っていました。

一方で、夫も出世して職位が上にあがってるんですけども、「いや、実は僕だって自信ないよ」と言っています。「これはもしかして、自信がないのをうまく使ったほうがいいんじゃないか」と考えました。

自信がない人ほどいいリーダーになれる理由

小早川:あとは、昨今のリーダーシップ。この本にも書いてありますけれども、みなさんリーダーシップって強く引っ張ることだと思うかもしれないんですが。2000年以降のリーダーシップは、どちらかというと、部下の人たちを信じて託す。

ビジョンを掲げてみなさんを成長させて、自分が引っ張るんじゃなくて後押しするリーダーシップを経営学で学んでいました。この掛け合わせを考えると、自信がない人のほうがうまくできるんじゃないかと。

アメックスにいた時、すごくいいリーダーの方は周りを後押しするのがうまかったんですよね。そういうのを見てて、この本のタイトルに至った感じです。

なつみっくす:なるほど。外資系での気づきみたいなことですね。私も新卒から20年ほど外資系の会社に勤めてまして、やっぱり文化の違いや、日本の女性の職位が低い問題は同じような課題感を持っていたので、すごくわかるなって思いました。やっぱり自信がないって発言は、男性からはあんまり聞いたことがないですね。

小早川:うん。なくても言わないですよね。たぶん言ったらプラスにならないって(思っている)。実際そういうところもあると思うんで。なので、この本を書いて意外な発見があったのは、男性からの反響が思ったより多かったことです。「実は僕、これなんです」とか、何名かの方に言われたり、男性から取材やお仕事をいただいたりしました。

なつみっくす:男女問わずというか、やっぱり目に見えぬリーダー像に縛られているのはすごくありますよね。ではなぜ自信がない人ほどいいリーダーになれるのか。「なんでなんだろう?」と思われている方もいらっしゃるかなと思います。そのあたりの解説をいただいてもよろしいでしょうか。

小早川:ありがとうございます。大きく2つあるかなと思います。1つ目は、これからは今までの方程式では通用しない、変化が激しくて曖昧性が高く、不確実性が高いVUCAの社会になっていく。かつ100年時代っていう組み合わせで、太くて短い人生よりも、細くて長い人生にシフトしていかなきゃいけない。

細くて長い人生だと、信頼が必要になってくる。自信満々でやって「あ、失敗しました。でも立て直します」みたいなブルドーザー的にやるのではなくて、自信がないけどコツコツやっていくほうが時代にフィットするのが1つあると思います。

引っ張るリーダーではなく“下を耕すリーダー”が必要な時代

小早川:実際に投資のリターンで、効果を調査する研究がいっぱいあるんですけども、自信があるグループよりも自信がないグループのほうが、長期の投資効果が高いんですよ。これは短期じゃなくて、長期っていうのがやっぱりポイントだと思います。

私たちの人生は長いし、細く長くやっていかなきゃいけないとなると、ちょっとずつの投資で確実にリターンを得るほうが、経済的合理性にもかなっているし。社会の変化を考えれば、戦略的にもかなってるかなって思います。これが大きく1つですね。

もう1つ、これと重なるとこなんですけども、社会ってもう成長期じゃなくて、成熟期ですよね。成熟期の私たちは、新しいものや付加価値のあるものをどんどん作っていかなきゃいけないわけです。

付加価値ってどこから来るのかというと、今まで挙がってなかったマイノリティの意見を引き出して、小さなイノベーションを起こしていくことが必要になってくる。かつ、変化が激しいので、リーダーが今持っている過去の知識でやりくりしても、限界がある。

なので、自分より若いとか、この分野ですごく強みがあるよねみたいな、それぞれの強みをうまく活かして組織を運営したほうが、生産性が高くなるわけですよね。そのためには、先ほどの引っ張るリーダーではなく、みんなに自分の意見を言ってもらうような、下を耕すようなリーダー像が必要になる。

そうなると、もっと他の人に議論してもらう場所を作らなきゃいけない。自信を持って引っ張るよりも「自信がないから君の意見をちょうだい」と言えるリーダーが、組織の面でも重要になってくる。この2つが大きなポイントかなと思います。

なつみっくす:なるほど。ありがとうございます。1つ目の短期じゃなくて長期で見てリターンがあるんだよって話や、2つ目の成熟期でみんなの意見を聞いていくお話は、本当にそのとおりだなって思いました。

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