CLOSE

HQ Unleash 2024~個の力を解き放つ経営~(全4記事)

社内で「絶対流行らない」と言われたLINEのオリジナルキャラ 期待されていない中で爆発的なヒットにつながった決断

本イベントは、「多様性を事業の力に変える組織経営」をテーマに、組織経営に関わるビジネスパーソンに向けて開催されました。エール株式会社取締役の篠田真貴子氏とLINEヤフー株式会社上級執行役員CEO室長兼人事総務グループ長の稲垣あゆみ氏が登壇。本記事では、稲垣氏が考えるLINEのヒットの理由や、国民的サービスに成長するまでの経緯について語られました。

LINEが国民的サービスに成長するまで

坂本祥二氏(以下、坂本):それではみなさん、よろしくお願いいたします。本日は大きく対談パートを2つに分けてやれればなと思います。前半は稲垣さんに、特にLINEが国民的サービスになるまでのお話をお聞きします。稲垣さんは、この何十年かのIT業界で一番の成長じゃないかなと思うくらいのところを牽引してこられました。

それから、組織経営・多様性をテーマにお話しできればなと思っています。後半は、篠田さんにお話を聞いていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。LINEは今ではもう当たり前に使っていますが、10年以上前にできたサービスですね。そこの急成長されていた時期のお話を、ご自身のご経験も含めて、お聞きできればと思っております。稲垣さん、よろしくお願いします。

稲垣あゆみ氏(以下、稲垣):あらためまして、LINEヤフー株式会社の稲垣です。よろしくお願いします。

私は今、CEO室長と人事総務グループ長という肩書きなんですけれども。LINEのサービスが始まってから2021年までは、LINEの企画の担当としてずっと勤めてきています。これは私が実際に自分のスマホで撮ってる写真なんですけれども(笑)。LINEのサービスが始まったのが2011年の6月23日です。

その年の七夕に私が神頼みしたのが、「早くLINEのユーザー数が100万人を突破しますように」ということでした。その時確か、9月ぐらいまでに「100万いけ」みたいな話がありました。

2011年当時は、確かスマホの普及率が20パーセントか30パーセントぐらいの時期です。私自身もiPhoneを初めて買ったのが2009年か2010年だったので、「何のアプリを入れたらいいの?」という感じでした。ネットの会社で周りはけっこうスマホ率が高かったので、ランチをしながら「おすすめのアプリは何?」とか言っていました。

週末に会社以外の知り合いに会うと、「それ噂のiPhone?」みたいなことを言われて(笑)。早めにそういうのを使って、情報交換してるみたいな時期ですね。なのでまだそんなにみなさんがスマホを使ってない中でも、100万人を数ヶ月で突破しなきゃいけないので、「いや無理でしょ」と思いながら最初に願掛けしたのが、この年の七夕でした。

公開半年で1000万ダウンロード突破

稲垣:それで2011年12月に、グローバル全体でダウンロード数が1,000万を越えたんですね。9月に100万をギリギリ越えたので、急に年末までの目標が500万に上がったんです。なんかずるいなと思いましたね(笑)。

坂本:さらっと言いましたけど1,000万人って本当にすごいですよね。

稲垣:1,000万をやっと越えた時の、2012年のキックオフが会社でありました。ただLINEのプロダクトのメンバーはみんな忙しかったので、誰もキックオフに参加してなかったんですけど(笑)。

キックオフをやっているさなかに、「あゆみ、今キックオフで『LINEの次の目標は1億ユーザーだ』って言われてるよ」みたいなメッセージがいっぱいきまして。LINEを作ってるメンバーが知らない中で発表された感じでした(笑)。それで100万ユーザー突破が叶ったので、2012年も「1億ユーザー突破できますように」と(七夕の短冊に)書きました。

篠田真貴子氏(以下、篠田):1年で100万から1億って、ちょっとおかしいぐらいすごいですよね(笑)。

坂本:当時、社員とかチームで言うと何人くらいですか?

稲垣:確か2011年ぐらいの時は、社内も200人ぐらいですかね。ワンフロアに開発がいて、営業の人がいてみたいな。みんなだいたい知り合いぐらいの規模感でやっていました。2012年は、さすがにちょっと増えてきた感じですが、まだ200~300人ぐらいだと思います。

中東でフィーバーが起こり、ダウンロード数が爆増

坂本:LINEさんってグローバルなサービスですし、けっこう最初から国籍とかも多様性のある環境だったんですか?

稲垣:LINEの最初のプロダクトチームは、日本人、アメリカ人、韓国人、中国人、みんな本当にいろいろでした。共通言語はみんな日本語でしゃべっていたんですけれども。日本語と英語でLINEアプリを使えるようにしていたので、日本向けでリリースはしましたが、グローバルで使えるサービスでした。

このユーザー数が1,000万いった理由としては、9月か10月に、最初に中東フィーバーがきたんですよ。LINEを作ってる側も、なんでいきなり中東でこんなにフィーバーになったのかは、誰もわからなかったんですけど。たぶんどこかのブログで紹介されたりして、急に中東でダウンロード数が爆増する事件が起きました。

そのあとは東南アジアのいろんな国、今日はシンガポール、今日はマレーシアみたいな感じで、どんどん近隣の国でApp Storeのダウンロード数が一番になっていくのが、秋に起きました。

日本でももちろん増えてはきてたんですけれども、ほかの国でどんどんユーザー数が爆増していましたね。なので作ってる側としても、「日本で市場を取るぞ」というよりは、最初から「いろんな国で使われるサービスを作ろう」ってところはあったかなと思います。

LINEのヒットの背景にある「スタンプ」

坂本:ありがとうございます。ちょっと簡単に概要というか、当時の雰囲気を思い出していただきました。本当にいろんな予想外のことが起きている中で、最終的にはものすごい国民的サービスまで育てあげられましたが、その急成長する中での組織の状況というかモチベーションを教えてください。

特に今日のテーマであるダイバーシティや、イノベーションを支える、事業の力になっていくもの。ご自身のご体験も含めて、どんな状況だったかおうかがいしてもよろしいですか?

稲垣:「LINEがなんでヒットしたと思いますか?」って質問は、たぶん何百回も受けたんですね。

坂本:ごめんなさい(笑)。

稲垣:(笑)。毎回聞かれるので、自分でも「何だろう」と考えていました。逆にみなさん、何だと思われますかって聞きたいぐらいですけど。「スタンプが良かった」って話はたくさん言われました。「じゃあなんでスタンプが良かったんだろうか」っていうのも、2011年〜2012年によく取材で聞かれたので考えていました。

実は2011年の6月にLINEをリリースして、10月に初めてスタンプの機能を入れたんです。たぶんみなさんのLINEのアプリの設定から、最初の「お知らせ」までさかのぼると、その時の記事がまだ見れると思うんですけれども。

絵文字が主流だった時代にスタンプ機能を作る

「無料通話機能リリース」ってタイトルでたぶん出してます。なので我々はスタンプ推しではなかったんですね(笑)。かつ、今LINEでスタンプを送ろうとすると、スタンプだけのキーボードに変わりますが、当時は絵文字が主流でした。さっきも言ったように、7~8割がガラケーを使ってらっしゃるので、「通信キャリアの絵文字の互換性が……」みたいな時期です(笑)。

篠田:ありましたね、忘れてた。

稲垣:あと若い子たちが使ってたのがデコメで、ユーザーからは「絵文字を入れてください」という声を一番いただいていました。なので「スタンプが欲しい」っていう声はなかったんです。

稲垣:私も仕事でチャットをしている時に、顔文字を一番使ってたんですね。なので絵文字と顔文字と、あとスタンプに切り替えられるキーボードを、リリースした年の10月に入れたんですよ。最初は、「あいうえお」と入れる入力キーから切り替えた時に、最初に出るデフォルトのタブは絵文字でした。今はすぐスタンプに切り替えられるようになってるんですけど、その時のユーザーの声を聞いて、絵文字を入れてたんですよね。

なので、その時いくらユーザーに聞いても、みんな「絵文字をください」と言っていて、「スタンプをください」はほとんど声がありませんでした。ただ、メッセンジャーの機能として、何かしらそういう絵を送る機能はあったほうがいいよね、となって、スタンプを作り出しました。

社内で「絶対流行らない」と言われていたLINEのキャラクター

稲垣:でもスタンプのコンテンツをどうするのかが、けっこう揉めたポイントだったんです。うちの韓国のデザイナーが、今で言うLINEのキャラクターを作りました。あの白い丸いやつとか、クマとかウサギのやつですけど、当時は名前もなくて、「あの丸いやつ」とか「白いの」とか言われながらやっていました(笑)。

(会場笑)

稲垣:そこで出てきたデザインは、当時の日本の絵文字の「かわいい」カルチャーとか、デコメのトーンとはぜんぜん違っていたので。社内で当時20代のPR部門やマーケティング担当の子たちは、「絶対流行らないです」って言っていましたね(笑)。

篠田:申し訳ないけど、ぱっと見、いかにも日本で嫌われそうなテイストに見えちゃう。初めて見た時は、やっぱりちょっとぎょっとする感じでしたもんね。

(会場笑)

稲垣:そうです。なので社内でも、「本当にこのよくわかんない白い丸いやつでいくの?」みたいに話題にはなっていたんですよね。みんなから「あゆみさん、なんとかあれを止めてください」ってすごく相談されてました(笑)。

あの白い「ムーン」っていうキャラクターは、「次のスタンプの機能では、何の絵柄がいいですか」っていうユーザーリサーチでみなさんから回答をもらった時に、一番人気がなかったんですよ。

誰もいいねって言ってくれなかったので、この根拠を持って、「デコメっぽいキラキラしたかわいいやつを入れないと、日本じゃ流行らないです」ってなんとか説得しようかなって思ってたら、最後のリサーチの女子高生の回がすごく盛り上がって。

今のLINEのキャラクターを見て、「すごい、何これ超おもしろい」みたいにすごく盛り上がったので「あ、これは意外といけるんだな」とそのまま出しました。いったんその路線で出して、ダメだったら違う絵柄も入れようという感じでやったんですよね。LINEを振り返ると、それがとても良い決断だったと私は思ってます。

期待されていない中でたまたま出てきた成果

稲垣:もしあの時にデコメをLINEのスタンプにしていたら、ここにいらっしゃるみなさんの多くは、絶対に使わない機能になってたんですよね。「怒ってる」「泣いてる」「笑ってる」みたいな、すごくニュートラルでちょっと突飛なものにできたこと(が良かった)。おそらく日本人しかいない会社で、普通に調べていくと、あの時の流れではデコメになってたはずなんですけど。

そこがLINEの、本当にたまたま出てきた成果で。そんなに大期待されてるわけではない機能だったのに、爆発的に引っ張っていく元になったかなと思います。性別とか年齢に関係なく、みなさんがスタンプを通してコミュニケーションをするところ。

やはりLINEで何か送ると、「ありがとう」が「ありがとう!」なのか「ありがとう……」ってトーンなのか。「ごめんね」が本当に「ごめんね……」って思ってるのか、ちょっと拗ねてるのかっていう機微を伝えられるようになった。

そういうことで、みなさんからの「身近な友だちとの関係が良くなった」とか「夫婦喧嘩が減った」みたいな実感値というか、自分の身近な人との関係性が良くなっていった経験。それがすごくLINEを紹介してくださるパワーになったな、というのが私の考察です。

なので最初の1年とか2年ぐらいは、本当におもしろいぐらい、週末が一番LINEのダウンロード数が増えたんですね。おそらくオフラインでお友だちと会う時に、LINEを勧めてくださる方がけっこういらっしゃるのかなって、当時は思ってました。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 日本の約10倍がん患者が殺到し、病院はキャパオーバー ジャパンハートが描く医療の未来と、カンボジアに新病院を作る理由

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!