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だかぼくオープン講演「上司との難しい人間関係を解決しよう」(全3記事)

とにかく労力がかかることを嫌う上司を動かす技 相手の「抵抗因子」を取り除き、自分の意見を通すには

幸せ視点の経営を学ぶ、革新的なオンラインスクール hintゼミの主催で行われた本イベント。新著『小さくはじめよう 自分らしい事業を手づくりできる「マイクロ起業」メソッド』を出版した、ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授の斉藤徹氏が登壇しました。本記事では、関わり方が難しい上司の3つのタイプを解説しました。

前回の記事はこちら

丸投げ、過干渉、高圧的……難しい上司の3つのタイプ

斉藤徹氏:難しい上司とお話をする時は、上司に権限があって、こちらがコントロールできる部分は限られています。だからこそ、この真実性、論理性、共感性を持って、自分が信頼されるコミュニケーションをする。これが今日の一番の肝です。では具体的に見ていきます。

いろいろ問題があるように見えたとしても、基本的に自分も上司も「組織を良くしたい」「価値を生み出したい」という思いは一緒だと思います。だから、「もっと組織を良くするための力になりたいんです」「このチームの力になりたいんです」「やる気に満ちたチームにしたいんです」という思いで、真実・論理・共感を大切に、情熱を込めて伝える。

すると、きっと状況は変わり、関係性は変わっていきます。少なくとも僕だったら、「自分と同じ視点で考えてくれる社員がいたんだ」と感激すると思います。

僕の今日のお話は、難しい上司との対立をすすめるわけではありません。上司は上司で人生の主人公として生きていて、いろいろ問題を持って苦しんでいる。だから「信頼関係を作っていこうじゃないか」と。そのためにどうコミュニケーションすればいいのかを、これから話していきたいと思います。

さて、ここから具体的に実際のコミュニケーション例をお伝えします。今回は上司を3つのタイプに分けてみます。どうでしょう。みなさんの上司は、丸投げだったり放任だったりするタイプでしょうか。それとも部下に押しつける過干渉タイプの上司なのか。高圧的で業績偏重なのでしょうか。

部下から見た、上司との人間関係の問題を類型化するとこうなります。

まず「無関心ゾーン」の上司がいます。丸投げ放任主義で最低限のことしかしないように見える上司ですね。「定年までの残された期間を無難に過ごしたい」といった思いが背景にあることが多いです。

それから「同調ゾーン」にいる上司は、会社にどう評価されているのかを大切にしているように見える上司ですね。上意下達で上からの意見を押しつけてくる、同調を要求する、仕事に過干渉するなどの傾向があるタイプです。

最後に「達成ゾーン」にいる上司。このタイプは結果がすべてで数字主義。高圧的で、業績がいい部下を偏重します。冷たく感じることが多いタイプです。ではこの3つのタイプの上司について考えていきたいと思います。

それほど難易度が高くない「無関心型上司」

まず「無関心型上司」はこんな感じです。プロジェクトの進捗が遅れぎみの時に、「その件でご相談があります」と上司に言ったとすると……。上司は「なんだ、どうしたんだ」と。「いや、お客さんからの要望が多くて、プロジェクトが遅れちゃっていて、このままじゃ予定どおりの納品が難しいんです」「それは大変だな。なんとか頼むな」と。

「人手も足りなくて、どなたかヘルプをいただくことはできないでしょうか」「うーん、でもみんな他のプロジェクトも任せているからな」「ヘルプできそうなメンバーはいませんか」「どうだろう、ちょっと聞いてみてくれる?」と。

「あぁ、相談しても意味なかった」という上司の方、いらっしゃいませんでしょうか。でもこれは(対応する)難易度はそんなに高くないんですよ。

中難易度の「同調型上司」

さて続いては、中難易度の押しつけ・過干渉が多い「同調型上司」のケースです。どういう感じかというと、「プロジェクトの進捗が遅れぎみで、その件で相談があります」と相談すると……。

「それはこの前、部長にうまくいっていると報告したばっかりなのに、どうしたんだ」と。「でもお客さんからの要望が多くて、このままでは予定どおりの納品が難しくなりそうなんです」「なんだ、これまでそんな報告はなかったじゃないか。大丈夫なのか」と。

「はい。なんとか現場で対応しようとしてたんですが、ちょっと限界が来そうで」「いや、報連相が足りないんだよ。現状の問題点をまとめて、報告書を作ってくれるか」。

「いや、それはちょっと。今、かなり手いっぱいなんで」と言うと、「現状を部長にも報告しなくちゃいけないだろう。そこは優先度を上げてくれよ」「わかりました」となる。結局「やぶ蛇になっちゃった」というやつですね。こういうタイプは難易度中です。

一番対応が難しいのは「達成型上司」

一番難しいのは「達成型上司」ですね。「プロジェクトの進捗が遅れぎみなんです。その件で相談があります」と言うと、ギラッとにらんで「どうしたんだ」と。

「お客さんからの要望が多くて、このまま予定どおりの納品が難しそうなんです」「あのプロジェクトはもう売上確実として見込んでいるものなんだよ。確実に結果を出してくれ」「いや、そうしたいんですけど、現状かなり厳しいかもしれません」「リーダーなんだから、最善の対策を考えるべきだろう。必達で頼む」と。

「お客さんと相談の上で、品質重視で納品を遅らせるという選択肢はありですか」と言うと「いや、それはだめ。もうカウントしているし、数字を立てているんだから。もしそうなったら、君の評価に影響するよ」「わかりました」となります。「あぁ~」という感じですね。これはちょっと難しいですね。

上司に話しかける前にやっておくこと

このようにいろいろなタイプの上司がいます。ここからどう対応すればいいのかを、今の対話を元に1つずつ対策を考えていきます。

ただ、上司とお話しする前に、1つ気をつけておきたいのは、事前に心を整えておくこと。今みたいな会話になると、どうしてもカーっときちゃうじゃないですか。だから、そういう話になりそうな時は、「どうせこういう反応が来るだろう。難しい局面になるだろう」と思って、一呼吸を置いてみることが大事です。「自分の心が整っているかどうか」と内側に意識を向けることをおすすめしています。

今に集中すること、マインドフルネス。それからあるものに感謝する、ありがたいという気持ちです。そして他者を思いやる慈悲の心。まさにお釈迦さまが言ったことですね。

1つずつ説明していきますね。「プロジェクトがうまくいっていない」という場合、不満や不安がうずまいているんですけど、これを今に集中するところから始めます。いろいろな方法がありますが、意識を内側に向ける。まず呼吸に意識を集めて落ち着きを取り戻し、五感に意識を集中します。

今に集中するとは、頭の中から過去と未来を取り除くことです。取り除いた上で、自分の視点を今のどこに向けるか。ないものに向けるのか、あるものに向けるのか。これでだいぶ違ってきますね。

だいたいは「どうすればいいんだ」と、欠乏感に目がいきますよね。(スライドの)コップの(水の)ないほうに目がいく。上司の足りていないところやお客さんの問題ばかりに目がいきがちです。

ここで、「ちょっと待てよ」と「ある」ほうに目を向けてみる。「いや、上司もがんばっているところもあるよな」「縁の下の力持ちだったり、実は苦労してるところもあるよな」「励ましてもらったこともあったな」と。そっちに意識を向けていきます。

意識をあるものへの感謝に移すと、自分の心の奥にある穏やかな価値観とつながれます。するとだいぶ楽になりますね。その上で最後のひと押し。他者を攻撃するんじゃなくて、他者の気持ちを思いやる、慈悲の心です。意識を相手の視点に移すということですね。

「無関心型」の上司は「労力を使いたくない」という思いが強い

よくよく上司の立場になって考えてみると、こういう怖い上司もいろいろな悩みを抱えているんですよね。

このおじさん(上司)も主人公として生きています。想像すると、「けっこう辛いこともいろいろあるんだろうな」と思えてきますよね。そうするとちょっと心が落ち着いてきます。事前にこんなことを考えて、心を落ち着けてから上司と話してみましょう。

ではここから具体的な話になります。さっきの3つのタイプの中の「無関心型(丸投げ)」から先に話します。それから「同調型(押しつけ)」「達成型(高圧的)」の順でいきます。

まず丸投げタイプですが、もう何を言っても「ちょっと聞いてみてくれる?」とか「任せているから」と言う。これはなかなか厳しいですよね。上司の丸投げを感じる場合はどうすればいいのか。さっきの3つのポイント(真実性・共感性・論理性)でいきましょう。真実性という意味では、やはりバッドニュース・ファーストです。これはどんな上司も同じです。

バッドニュース・ファーストとは、問題があるんだったらできるだけ早くその事実を伝えること。これは上司が怒ろうが無視しようが、すごく大切なことです。

その上で、共感性はそれぞれの上司によって変わってきます。無関心型の上司は、あまり労力を使いたくないんですよね。だから労力を使いたくないところに共感をしてあげる。そこを少しカバーすると良くなってきます。

それから論理性は重要です。単に「なんとかしてください」じゃなくて、こちらのほうで選択肢や計画を提示して、丁寧な対話をし実現性を感じてもらう。

実は真実性と論理性はどの上司も同じなんですよ。ただ共感性は上司のタイプによって、相手の抵抗因子が異なるんですね。それをちょっと考えていきます。まずは「無関心型」の場合は、とにかく労力が嫌なんです。

「任せてくれる良い上司」と発想を転換させる

そういう場合はどうすればいいか。「プロジェクトの進捗が遅れぎみで、その件でご相談があります」「なんだ、どうしたんだ」「お客さんの要望が多くて、すごく苦戦してます。必要工数の予定表とのギャップを表にしたので、ご覧いただけますか」と見てもらう。

そうすると「ああ、これは大変だなぁ。でもまあなんとか頼むな」とちょっとわかってくれます。この時、むしろ「あ、この人は全部任せてくれるんだな」と思ったほうがいいですね。干渉しないので、任せてくれる良い上司だと捉えてしまいましょう。

「はい、わかりました。お任せください。顧客満足とチーム成果をともに満たす作戦を考えてみました」と、事前に論理性を考えることがとても大切です。

これで「お、さすがだね」となります。あとは「計画実施にあたり、ご相談があるんです。この期間、あのチームのAさんの手を借りて、顧客の要件整理と優先度調整を実施したいんですけど、どうでしょう」と。

「実はAさんには事前に打診して前向きな感触を得ているので、許可さえいただければできるんです」と言うと、こういうタイプは「Aさんがいいと言っているなら問題ないよ。そのあたりは任せるから、最善を尽くしてくれるとうれしいな」「はい、承知しました。ベストを尽くします」となります。

この必要工数の予定表とのギャップを表にしたのが、真実性ですね。それから論理性として、顧客満足とチームの成果をともに満たす作戦を考えたこと。これがすごく大切ですよね。

その上での共感性が重要なんです。つまり事前にこちらで打診して、前向きな感触を得ていること。丸投げタイプの人は労力がかからないこと、自分が何もしなくてもうまくいくことをすごく望んでいるので、それをちゃんと伝えて安心してもらう。このタイプは提案すれば積極的に権限委譲してくれるので、絶好の機会だと捉えて、「いい上司なんだ」と思えばいい。

労力をかけたくないタイプから「イエス」を引き出すコツ

さっきから何回か抵抗因子と言いましたが、(この抵抗因子とは)『「変化を嫌う人」を動かす: 魅力的な提案が受け入れられない4つの理由』という本から引用しています。(この本によると)、変化を嫌う人にはいくつかのパターンがあります。

まず今みたいな無関心型の上司だと、労力が抵抗因子になっていることが多い。変化に必要な努力やコストがあると、ちょっと面倒くさくなる。そういう人は変化を嫌うんです。でも労力をなくしてあげれば、その人は「OK」と言うんですね。

例えば本人の労力を最小限にするために、不要なプロセスを徹底的に省いちゃう、こっちが全部やっちゃうとかね。もしくは、「そうすると、ちょっと面倒なことになりますが……」と、「NO」と言ったほうが労力が高いようなコスト面を伝える。

あとは「いつ何をすればいいのか」、具体的なイメージが湧くようにきちんと伝えてあげると、特に自分は何もしなくていいことがわかるので、安心するんですね。それから行動し忘れを防ぐために、最適なタイミングで行動を誘発するきっかけを作ってあげる。こういったことは、労力が抵抗因子になっている人の場合にはすごく有効なんです。

変化が嫌いな保守的なタイプの「抵抗因子」を取り除くには

次に惰性的で変化が嫌いな人、すごく保守的な人ですね。慣れているものにとどまろうという欲求が強い。同調型の上司はこの傾向が強いですね。新しいことはあんまりやりたくない人です。そういう人は何回も時間をかけて、何度も伝えることが大切です。どんな人間でも何回も違う角度から話されると、だんだん身近で当たり前のことのように感じてきます。

それからスモールスタートで、「実験的にこういうことをやってみませんか」と、抵抗感の小さいことから始めてみる。あとその人が信頼している知人や、その人と同じ経験を持つ人から伝えてもらったり。

あと複数の選択肢とそれぞれの優劣を示す。それによって自己決定の欲求を満たすこと、つまり「自分で意思決定した」という感覚を持ってもらうことも重要です。これは達成型の上司に多く、感情的になりやすい人のケースにもあてはまります。

変化や変化を強制されることに対する反発に関しては、傾聴することがすごく大切ですね。部下に対してもそうですけど、上司に対しても、「どういうことが障害になっているんだろう」「どんなことに不安を感じているんだろう」と、共感しながら傾聴することが大切です。

できるだけ反発を感じさせない話し方をすることも大切です。おすすめしたいのは、イエスアンド方式です。イエスと言ってアンドでつないで、またイエスを引き出す質問をする。また上司をプロセスに巻き込み、対話しながらアイデアを考える方法も有効です。

変化を嫌う人には、抵抗因子を考えてそれを排除することが重要だと(本に書いてあります)。おもしろい本だったので、ぜひご覧いただければと思います。

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