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『部下との対話が上手なマネジャーは 観察から始める』出版記念イベント(全3記事)

正義感や競争心が強すぎて、職場で孤立してしまうパターン “覚醒モード”がいきすぎている人への対処法

本イベントは、『部下との対話が上手なマネジャーは観察から始める ポリヴェーガル理論で知る心の距離の縮め方』の出版を記念して開催されました。同書籍の著者で株式会社ロッカン代表の白井剛司氏が登壇。本記事では、マインドフルネスを実践するポイントについて解説しました。

前回の記事はこちら

「覚醒度」が高すぎず低すぎない、最適な状態をキープする

白井剛司氏:今度は全体を俯瞰で見るような流れになってきますが、自分のモードは瞬間、瞬間に変化していきます。まず3つのモードでは、赤が覚醒度が高く、青は覚醒度が低い。緑はこの真ん中の状態なんですね。本当にリラックスして力が抜けているのは青の状態かなと思うんです。緑はちょっと動きがあって、最適な状態。

だから、例えばテニスプレイヤーの方は、身体を動かしながら相手のボールを待ったりしますよね。そんな状態がたぶんこのリラックスしてるけど動いている状態かなと思います。大事なポイントは、なるべく緑の状態に長くいることです。

でも決して赤がダメなのではなくて、赤にいることをまず自覚するのが大事ですよね。ここに長くはいられないし、長くいると、今度は一気に青になってしまう場合もあります。

あとは、赤になると自分ではこらえきれなくなって、相手にぶつけたり、自分に対して攻撃的になったりする場合も出てきます。例えば0〜10の数字で表して、「今8とか9がけっこう続いてるな」とか自分なりにとらえると、ちょっと変わってくるかなと思います。

ビジネスでは交感神経優位の状態にいることが多い

緑については、「こんな状態で自分もいられたらいいよな」と思いますよね。ここで特にみなさんにお伝えしたいのは、働いてる人たちの多くは、やはり忙しいので赤の状態にいる時間が長いということです。ずっと働いてると、ドーンと落ちていく時もあると思うんですけど、大事なのは、身体が自分を守ろうとしてるってことなんですよね。

オフィスでは赤の状態の方が多いから、「ヤバい。自分が(青の状態に)落ちてしまったら、周りに迷惑をかけてしまう」って、自分を責めてしまいがちですよね。

でも、自分の身体が「休みたい」という守りの状態になっているので、その身体の声を聞いてあげることが大事かなと思います。なので青や赤がいけないってわけじゃないです。僕も会社員時代はずっと赤だったかなと。それで、瞑想して青にいって……みたいな、両極端の人生を送っていました。

どれが悪いってわけではないんですが、この3つをわかって、緑の状態をなるべく覚えている。実は子どもの頃はこれを知っていたはずなんですよね。だけど人によっては、ずっと赤にいて、緑を忘れちゃってる人がけっこういます。

僕はマインドフルネスを始めて8年目ぐらいで、ようやく緑のモードが「こういう感じなんだな」ってわかりました。けっこうわからない人が多いので、エクササイズで理解してほしいと思います。

リスクがあることにも前向きに挑戦できる、赤と緑のブレンド

俯瞰の2つ目で、緑、赤、青の「ブレンド(掛け合わせ)」という概念があるんですよね。自分を守ろうとしてることは同じなので、どれも大事なんです。「緑にいればいい」って思うかもしれませんが、赤の交感神経と緑が掛け合わさると、チャレンジとか遊びがある感じ。だから仕事がこのモードでできると、「リスクもあるけどやってしまおう」とか「仲間と一緒にチャレンジしていこう」って気持ちになりやすいです。

でも赤の時のチャレンジって、やはり失敗すると怖いから「もっとがんばらなきゃ」って感じになりますよね。だから赤だけの質感と、赤・緑の質感はちょっと違うってことをわかっていただけるといいかなと。

青は疲れてしまっているのもあるし、人と会いたくない時もあるかもしれませんよね。一方で、緑が混ざることで、そうした自分のつらい気持ちをわかってあげると、またちょっと違うかなと思いますね。

僕も「赤にいて疲れちゃったから、青で引きこもって瞑想する」みたいに行き来してることがけっこう多かったんですが。今はなるべく青・緑でいようとしていて、このゾーンの違いがわかってきました。

この掛け合わせで言うと、身体は緑で頭が赤みたいな見方もできるんですよね。平常時は緑でも、だんだん競争心が湧いてきて、「チャレンジ・遊び」になる感じです。これがさらに忙しくなってくると、だんだん赤になってくる。この右図は推移ではなくて、これは分類だと思ってください。

赤と青を行き来してる状態は要注意

一方ここの赤と青の間。これがちょっと大変な状態。身体は動けないんだけど、周りを見ると忙しそうだから「迷惑をかけられない」っていう状態。これはけっこうつらいんですよ。だから赤・青を行き来してる状態ですよね。がんばっているんだけど、だんだん身体がついていかなくなる状態です。

あとはもう完全にダメになって、身体が止まるって感じです。回復する場合もあるし、そのままメンタルがかなり不調になってしまう場合もあると思います。そうすると、身体を休めることによってだんだん元気になってきて、頭も安心して休める状態になります。

これは順番じゃなくて、瞬間、瞬間にいろんなところにいく感じです。あとここは迎合と言って、(青・緑は)身体が動かない。また、(赤・緑は)身体はすごいカッカしてるんだけど、他人を前にすると、表情は社交的みたいな状態になります。

周囲に攻撃的で孤立してしまうリーダー

あともう1個、「達成/獲得モード」はちょっと違っています。身体も真っ赤で顔も赤い。だからちょっと興奮気味で、仕事で言うとモチベーションがある状態で、褒められるようなところもあるんですけど、ちょっといきすぎちゃっています。

緑・赤はわりとバランスよくみんなのことを考えながらがんばっている状態で、赤・赤(達成/獲得モード)は1人でがんばるし正義感に燃えている。ちょっと人に対して攻撃的で孤立しちゃうようなリーダーがこうなっている場合もあると思うんですね。

自分の「達成したい」っていうところに寄りすぎて、競争心が強すぎて孤立しちゃっている。赤は覚醒しているんですけど、いきすぎると孤立しちゃうところもあります。僕はけっこうここの状況もあったんですが、「自分はどうかな」と振り返ってみてください。そして、そういう状態の人がいたら、心配してあげる。自分がクールダウンしたり、させてあげることも大事かなと思います。

この順番とは逆のパターンもあって、青から緑、赤から緑に戻ることもあります。だからここの状態を自分で理解していくことです。刺激が起こると、自分を守ろうとして身体が先に反応し、そのあとに心が反応します。

怒ってる人や落ち込んでる人に対しては、性格とかパーソナリティの問題だと思いがちなんですけど。そうではなく、1つの反応なんだというふうに見て、自分のことも受け止めると、ちょっと変わってくるかなと思います。

マインドフルネスを実践するポイント

あとマインドフルネスですね。今日はあんまり時間がないので、ちょっと体験重視で、あんまり概念的な説明はしません。

マインドフルネスは、始めはアメリカで火がつきました。「意図的に、今この瞬間に価値判断を下すことに注意を払う」という定義があったりします。ただ、ある程度経験を積まないとわからないところがあったりするんですよね。例えば「今この瞬間」について、過去・未来にいかないってことはわかるんですが、特に「価値判断を下すことなく」とかは、なかなかわからないと思うんです。

なので初めての人には、「マインドフルじゃない状態」を伝えています。過去の後悔や未来のビジョンや不安(に気をとられている)。注意が過去や未来にいって、目の前のことに集中できなくて、注意散漫な状態です。

あと頭の中でずっと考え事をしていて、「部屋の鍵をかけたかどうか忘れちゃた」みたいなことも、よくありますよね。あとは習慣的なパターンとか、思い込みで動いてしまう無自覚な状態。こういったことが、マインドフルネスじゃない状態です。

DMW(ディス・メディカル・ワークショップ)では、「今、ここに心を込めている」と言っています。すべての意識・注意を「今、この瞬間」に込めているということですね。

マインドフルネスをすると、自分の状態に気づきやすくなる

今日僕がここまでで紹介してきたことのすべてが、マイドフルネスかなと思ってるんですね。なんでかと言うと、僕は人材育成を十数年やってる中で、マインドフルネスはものすごいスキルというよりはOSだなと思ったんですよね。

ただ、企業で伝えるにはなかなか難しかったんです。やはり練習の時間もけっこうありますし、僕だったら1日1時間か1時間半ぐらいやってる時もあるんですけど、そこまでしないとできないのかっていう話になっちゃう。

なので僕がお伝えしたいのは、別に瞑想しなくても(自分の状態が)わかるようになるということです。それでもし必要であれば、マインドフルネス瞑想をやればいいかなと思うので。マインドフルネスっていうのは、今日お伝えしてることすべてと、今に心を込めている状態。それが大事なことです。

マインドフルネス、瞑想・エクササイズの基本的なことで言うと、自分にとって集中しやすい、注意を向ける中心対象を1つ設けます。例えば呼吸とか身体の感覚、椅子との接地面。今立ってる方、座ってる方も、足と触れている床の感覚とかお尻の感覚がありますよね。あと音とかもあります。

これはなんでもかまいません。一般的には呼吸がよく薦められますけど、呼吸に限らずどこでもかまいません。自分の好きな場所が1個か2個あるといいかなと思います。これに注意を向けてると注意が逸れてきます。逸れるのも自然な働きなんですね。逸れたら中心に対象を戻す。これをやっていく感じです。

なんでここでマインドフルネスの話があるかと言うと、これをやっていくと、自分が赤か緑か青かがわかります。さらに言うと、身体がこわばっている、汗をかいているっていう状態がわかるようになります。今の自分の状態や今起こってることに気づきやすくなるんですね。

気持ちがたかぶっている時にやるエクササイズ

それでは、2つのエクササイズにいこうかなと思います。あんまり解決策みたいにしたくないんですけれど、1つは赤のたかぶってる時にやるエクササイズです。

混乱したりイライラしてる時に、中心対象に注意を向け、逸れたらまた戻していく。これをやると、少し気持ちが落ち着くこともあります。落ち着くための安心材料を確保するところもあります。

そして中心対象を自分なりに感じていきます。アンカーというのは、さっき好きなところを見つけてくださいって言いましたよね。お尻と椅子の接地面や呼吸。呼吸もいろいろあって、鼻や喉の空気の出入りや、胸やお腹が膨らんだりへこんだり。どこかの皮膚の感覚、音。

ここで中心対象に注意を向けるエクササイズをやってみましょう。もし注意が逸れたらまた戻していきます。

参考動画:エクササイズ①cアンカーを感じる(いろんなところで試してみる)

……ありがとうございます。今日初めての方もいらっしゃるかもしれませんし、もうたくさん経験してる人もいると思うんですが、どうだったでしょうか。

アンカーは錨(いかり)ですよね。これがあるとどんなに波が荒くても、船はちゃんとグリップが効いていて、流されないですむ。だから、自分が混乱していたり焦っていたりする時も、自分のお気に入りのアンカーをいくつか持ってるといいと思うんですよ。

「こういう時はこれ」というように、ちょっと呼吸が苦しい時は音にするとか、2つぐらいあると自分のお守りになるかもしれません。あと、もし今赤のモードだった場合に、(エクササイズを)やってると、少し緑の感覚を感じられるかもしれません。5分もやれば変わると思うので、ぜひ試してみてください。

日々を心地良く過ごすためには

今度は緑の感覚を感じるような、Resourcingという瞑想です。スポーツ選手のイメージトレーニングみたいな感じだと思ってください。呼吸はあまり考えず、自分が過去に経験した、友だちやお子さん、動物への感謝。優しくされたことや、相手に優しくしたこと。仕事や部活で、過去にすごく優しくしてもらった先輩や上司。そういったことを思い出して、イメージに浸ってみてください。

これを5分間やっていきますので、お付き合いください。

(エクササイズ中)

参考動画:エクササイス③aa Resourcing(short)

……はい、ありがとうございます。ちょっと眠くなった方もいらっしゃるかもしれません。映像のイメージって最初は難しいので、わかりにくいこともあるかもしれませんが。これが緑の体験をしていただいたということです。これはやればやるほど、身体が緑の状態になりやすくなるので、練習だと思って(やってみてください)。僕も最初はぜんぜんわからなかったんですけど、やっていくとだんだんわかってきます。

僕はマインドフルネスを10年間やってきたんですけど、最初はとにかく忙しくて悩みが多かったので、悩み解消のために瞑想をやっていました。「効果で量を追う」というのは何かと言うと、(マインドフルネスの効果で)集中力が上がるので、その集中力を仕事に使う。そうするとだんだん疲れてくるので、リラックスを求める、みたいなことをやってましたね。

そのあと3年ぐらいマインドフルネスの勉強を続け、MBSR(マインドフルネスストレス低減法)を学び始めて、こういったやり方の限界を知ったことで、緑の体験も増えました。なるべく効果を出すために、量から質に転換していこう、と思い始めてから変わってきたんですが、そこまで5年ぐらいかかりました。

今はなるべく心地良く過ごすために、緑の時間を増やすことをしています。緑に慣れてくると、緑からちょっと外れた時に「あ、ちょっと緊張してるな」ってわかるようになるんですね。

あとは、「嫌だな」って思うような自分を、日々発見する。昔だったらけっこう嫌だったと思うんですが、今はつらくもなくて。「こういう自分がいるんだな」みたいに、ありのままの自分を発見することの大切さを、今忙しくて悩んでいる人に伝えたいと思います。ということで、これで終わりです。ありがとうございました。

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