2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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本イベントは、『部下との対話が上手なマネジャーは観察から始める ポリヴェーガル理論で知る心の距離の縮め方』の出版を記念して開催されました。同書籍の著者で株式会社ロッカン代表の白井剛司氏が登壇。本記事では、観察に役立つポリヴェーガル理論と、自分の状態を自覚するための3色のモードについて解説しました。
白井剛司氏:では、(職場に安心感やつながりを作るための)「観察」とは何だろうということですね。3つの段階があるんですけど、1番目は自分の言動パターンに気づくことです。「自分は、人から何か言われた時に『いや、そうじゃないのに』と思ったり、『こう返さなきゃいけない』と思ったりする」と気づく感じですね。
あと萎縮したり、腹が立って感情的になったり、それを我慢しようとしたりしていることに、自分なりに気づく。まずは自分に注意を向けます。2番目は、自分(の状態)に気づけるようになってくると、自分を大事にできます。だから疲れていることや、無理しすぎていることがわかります。あと「楽しいな」と感じていることもわかります。
自分に注意が向けられると、だんだんと相手との時間を心地良くしていこうとなります。「自分」から「自分と相手」というふうに、相手の存在が見えてくる。自分の心地良い・心地悪いがわかってくると、相手の調子良い・悪い、心地良い・心地悪いも見えてくるので、まず自分が基本なんですね。
これをずっとやっていくと、3番目の相手の言葉には表れていない感情や、本当に思っていることが見えてきます。そこを尊重すると、相手との距離が縮まっていくと思います。
そして、彼と彼女と私がいる中で、「どんな時間を今過ごしてるのか」という「今」にフォーカスが当たってくると思います。ここで関わってくるのが、思考や感情や身体の状態。呼吸が早いとか、ちょっと浅くなってるなとか、肩に力が入っているなとか、しゃべってる時に気づいてくるんです。
ただ、「わかりはするけど、けっこう難しくないですか?」というところがあって。僕もずっとマインドフルネスをやってたんですけど、やはりなかなかできないです。瞑想をやってる時はできるんだけど、日常ではもうまったくできなくなっちゃうんですね。
そこで出てくるのが今回の本にある、自分の身体の状態を3つの色で表すものです。その前に、観察には、まずポリヴェーガル理論という、自律神経の理論があります。今までビジネスであんまり扱われてこなかった、身体の状態を知っていくことで観察していきます。
身体の状態は「ポリ語」と紹介してるんですけど。ポリヴェーガルをもっとわかりやすく、キャラクターっぽくしてるんですね。赤と緑と青がありますが、あとで説明します。
そういうふうにシンプルにして伝えるとわかりやすいかと思って、今回本を書くに至ったわけです。神経科学とかセラピストの方々は学んでいるかと思いますが、(ステファン・)ポージェス博士という方がこの理論を打ち立てました。
国内でこの理論を広めている、SE(Somatic Experiencing:ストレス関連障害の治療を目的とした代替療法の一形態)の方々や、第一人者の方が何人かいると思います。津田(真人)先生が有名だと思うんですが、僕は津田先生のセミナーに何回か通っていて、すごくわかりやすかったです。
ポージェス博士の本はなかなか難しい。津田先生の本はわかりやすいんですが、まだ私や人材育成の世界とはちょっと距離があったんですよね。そんな中で、四葉さわこさんという方が(自律神経の)モードを3色に(整理)しました。
そして、今回監修をお願いしたDMW(ディス・メディカル・ワークショップ)のお二人が、「ポリ語」というかたちでシンプルな3色で表しました。こうしてメンタルヘルスや学校や医療の世界の方に広めたり、私は企業・産業の方にもお伝えしています。
自律神経はみなさんご存知かもしれませんが、身体のモードのことです。交感神経はアクセルです。テンポが上がってちょっと興奮した状態になります。一方で副交感神経はブレーキ、ある意味リラックスみたいなところはあるかもしれません。「ポリ・ヴェーガル」とは、複数の迷走神経のことです。副交感神経の中の80パーセントが迷走神経で、身体のいろんな場所に神経が届いています。
もうちょっとシンプルに従来の考え方で言うと、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキと言われます。アクセルはポリヴェーガル理論と従来の考え方のどちらにおいても変わらなくて、何かピンチになった時に発揮する防衛反応です。
そして、ブレーキは実は2種類あるというのが、このポリヴェーガル理論の考え方で画期的なところです。ここは従来の考え方と同じで、防衛反応として敵がいる時とかピンチの時にアクセルが出ます。
一方で、もっと脅威的な事態やどうにもならない時とか、アクセルがずっと続いていて疲れちゃう時に、自然に身体の活動を止める働き(急ブレーキの防衛反応)があります。
あともう1個はぜんぜん別で、緩やかなブレーキと言っています。これはリラックスしたり安心したりする時。例えば、猫や犬を抱き抱えた時に、すごく安心してリラックスして寝たり、喉をゴロゴロ鳴らしてるみたいな時は、抱いてる自分も安心します。その時のモードですね。
猫で言うと、興奮してキッとしている(アクセルの防衛反応)とか、固まっている感じ(急ブレーキの防衛反応)。あとはリラックスしている状態の、緩やかなブレーキ。猫だけじゃなくみなさんにも、この3つが瞬間瞬間では起こってるんですよね。
あと防衛というのは戦う場面だけではなくて、ミーティングの最中や仕事をしていて時間がない時も、気づくとこのモードになっていることがあります。今、自分がこの3つのモードのうち何なのかを感じることで、観察がすごくやりやすくなります。
こんな感じでポリ語は(モードが)3つあります。交感神経はがんばってる神経ですよね。別にミーティングで喧嘩しなくても、議論すること自体も赤(交感神経優位)の状態かなと思います。
これが続くと、休む、止まる、省エネというふうに、大人しくなって動きが止まってくる。動かなくなるのは、自分の命や身体を守るためのものであったりします。やはりビジネスパーソンもずっと赤のモードでいると、急に動けなくなったりします。その時に「がんばらなきゃ」という葛藤があるかもしれません。
一方で緑は、安心とか平和・仲間、つながりのモードです。仲間と一緒で安心してリラックスしている。リスクテイク(リスクに立ち向かうこと)もちょっとできるような、好奇心がある状態なのかなと思います。
(人は)この3つの状態が瞬間、瞬間で移り変わっている感じです。一つひとつで言うと、赤が「身体」、「考え」、「感情」に分けられます。能動的に動いているということですね。リーダーシップでも「戦う・逃げる反応」みたいなことを言われたりします。だから、これ(赤の状態)は顔が怒ってるような感じで、心拍数が上がっている、呼吸は浅くなっている。
眼球は鋭くなって、ちょっと飛び出ることもあります。そして、肩に力が入っている。内臓はあんまり動かなくなるので、食欲がなくなっている。呼吸は浅く速い。それで、眉間にしわという感じですね。
考えが「~すべき」「~はダメ」「~しなさい」とか「負けたくない」みたいな感じですよね。それだけではなくて、ビジネスでは思考がすごく活発になると思います。あと感情は、イライラしたり、怒り、憎しみ、殺意。戦うだけではなくて「もうこれは太刀打ちできないな」と思うと、逃げたり焦ったり、怖くなったりします。
一方、さっきの赤のモードが長く続いたり、状況がどんどん悪くなっていって「もう自分ではどうにも太刀打ちできない」という時は、青のモードになります。これは身体が動かなくなる感じです。倦怠感があったり、寒気がしたり、低血圧。頭が真っ白で考えられないとか。
だからすごくピンチになった時、例えばプレゼンテーションで答えられないような質問をポンと投げられたり、とっさに発言を求められたりする状況。僕はよく頭が真っ白になってフリーズしちゃうんです(笑)。
固まってしまって、みんなが「おーい、大丈夫か」ってなるモードがあると思うんですよね。たぶんみなさんキャパシティがギリギリの時に、そういうことがあると思うんです。これがその状態で、疲れが続くとなる時もあるし、自分の苦手な状況になった時になることもあります。
考えは消極的だったり否定的だったり、自分を攻撃したりすることもあります。この時の感情はここに書いてある「憂うつ」や「悲しみ」ですね。諦め、不信感、自分を否定したり「消えたい」「死にたい」みたいなところもあるかもしれません。
この身体と考えと感情は全部連動してるんですよね。動物の身体の働きで言うと、この写真のオポッサムやモルモットもそうらしいんですが、敵が来ると死んだふりをする。死んだふりというか、強敵が現れると自然にそうなっちゃうと思うんですよね。そしてこうなる(動かなくなる)だけではなくて、臭い匂いもするらしいんです。
哺乳類の働きとして「死んでる生き物は食べない」習性があるらしいんですよね。なので本能的に身を守るために、こういうモードになっています。だから人間も、どうにもならない時に動けなくなってしまうことがあるんですね。
一方、緑はこんな感じで、柔らかい穏やかな表情をしています。赤と青の間ぐらいで、瞳孔が開いて輝いている。抑揚のある表情豊かな声、ゆったりとした呼吸、笑顔、オープンな姿勢。
考えで言うと、「何だろう」とか「みんな集まれ」。好奇心もあって、「どんなことが起こるかな」「まずチャレンジしてみよう」、感謝。人とのつながりがあって、「守られている」「おかげさま」という感じですね。
感情は穏やか、平和、感謝、愛。あとは好奇心。ポジティブと言えばポジティブだと思いますね。安心して人とつながってリラックスしている状態かなと思います。
緑色はコミュニケーションに関連する場所にけっこう集まっています。迷走神経はどちらかと言うと、顔に集まってるんですね。ですから仲間と接して、顔を見て安心したりリラックスしたりする表情に表れます。あとは鼓膜、耳で聞いて安心することもあると思います。
あと肩、首、喉。(相手が)安心した状態で(言葉を)発していると、その声を聞いただけで安心できますね。そんな感じで、緑はコミュニケーションに関係しています。
ここからだんだん大事になってくるんですが、観察するだけじゃなくて、考え方もちょっと変わってきます。この理論は津田先生の資料をDMWのお二人が作って、僕がまたそれを使わせていただいてます。
自律神経が刺激を受けて、頭にいくと心理的な反応に、身体にいくと生理的な反応になっていき、最終的に身体や心のモードが赤、緑、青になっていきます。つまり、刺激があると、自律神経を経由して、考えや身体の反応が起こり、3つ(の状態)になるという順番です。
反応についてみなさんにご理解いただきたいので、ここで質問です。もしみなさんの前に、こういう(腕を組む)男性がいた時。「何色のモードだ」とか「考えがこうだ」とか、どんな状態だと思われますか?
多くの方はこれを「怒っている」と答えますが、人によっては「悩んでる」と思う人もいるんですよね。私の経験上、カウンセリングやってる人とか、2割ぐらいはそう答えるかなと感じます。あとは過去の経験で、知り合いに腕を組む癖がある人がいた場合は、その人のイメージや印象を挙げる人もいると思うんですが。
実際にこの人が怒ってるか悩んでるか、格好つけてるかはわからないですよね。多くの方はこれを「怒ってる」と見ると思うんですが、怒られたり、嫌な思いやつらい経験をした人は、これを見てやはり警戒しますよね。
だから、(人は自分自身の)過去の体験を踏まえて、今効果的に動くように反応する場合があります。マインドフルネスをやってる方はご存知と思いますが、反応、自動反応、自動思考ですね。見ただけでパッと過去の経験を引き出して、身体が反応していきます。
ただ観察するだけじゃなくて、ここの考え方に僕はすごく影響を受けました。外部刺激と内部刺激の2つがあるんですが、外部刺激は外の気温が暖かいとか寒いとか、人が怒ってるとか。さっきの眉間にしわが寄ってる人がいるとか、感覚でとらえたものです。
今度は、それによって自分の中で感情や思考がうごめいて内部刺激になっていく。力んで心地悪くなってきて、余計嫌な思考が立ち上がったりと、ぐるぐるしていくんですよね。
この赤、青、緑のモードが回っていって、刺激によって次の瞬間の自分が作られていく。「自分の身を守ろう」という働きや「安心を得るための働き」によって、この3つのモードがあるんですね。
だから何か悪さをしようとか、相手を攻撃しようという思考で動いているわけではないんです。過去のいろんな経験によって、刺激に反応していると思ってもらえると。一番お伝えしたいのは、この「反応」って見方があると、自分自身も許せるようになるということです。
あと相手の言動(も許せるようになります)。ちょっと自分が不利になると、いきなりマウンティングしてくる人がいるかもしれません。でも別に暴力的な人というよりは、何かマウンティングせざるを得ないような過去の経験があったと思うんですよね。
だんだん、そういうふうに人を見られるようになる。あと自分のことにも寛容になれます。自分に対しても相手に対しても、「刺激があって反応する」というとらえ方をすると、ちょっと受け止め方が変わってきて楽になります。
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