2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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『鬼時短: 電通で「残業60%減、成果はアップ」を実現した8鉄則』の出版を記念して、麹町アカデミアが主催し、開催された本イベント。『鬼時短』著者で、Augmentation Bridge(AB社)代表/元電通・労働環境改革本部の室長の小柳はじめ氏と、編集者の桑原哲也氏が登壇しました。本記事では、「選ばれる会社」になるために経営者が取り組むべきポイントについて語りました。
小柳はじめ氏(以下、小柳):この本は「8つの鉄則」というかたちになっています。時間の関係もあるので細々とは説明しませんが、どの鉄則も、具体的な時短術を展開する前にすべきことが書いてあります。まさに「掃除用ロボットを動かす前に、まず部屋を片付けるにはこうすべき」という内容ですね。
でも、これは会社の片付けだから「はいはい、片付けるよ」とはならない。「じゃあ明日から時短します」「しょうがねぇな」みたいにはいかないんですよね(笑)。だから主に「経営者のあなたが前に出て、逃げずにやらなきゃダメですよ」ということを、手を変え品を変え書いています。
ただ、鉄則8の「『内部統制』という言い訳を封じよう」という章は、「たぶん全部ボツだろうな」と。この内容を本にしてもらえるとは思いませんでした。内部統制がダメだとか、「J-SOX法(内部統制報告制度)くたばれ」とか言ってるんじゃないです(笑)。
桑原哲也氏(以下、桑原):僕は読んでみて普通に「おっしゃるとおりですね」と思いましたよ。
小柳:鉄則8のやることとして、「トップが内部統制チームと話をする」というものがあります。内部チームの方々も、もういい加減、悪者扱いされることに辟易していらっしゃいます。むしろ会社を良くしようと思う気持ちは人一倍ある人たちなんですから。
内部チームは「どうやったらこれが罰にならないで済みますか?」という積極的な相談を待っているんですよね。でも、そういった相談をせずに「どうせ怒られる」と思って、「これは変えてはいけない」と考えてしまう。それは変えるべきだという話です。
この鉄則8を載せてもらえただけでも、本当にうれしかったです。だから、「大きな会社の社長とか経営幹部は、逃げずにがんばれ」と励ます本なんですよね。
桑原:社長さんのデスクにそっと置いておく、という伝え方もあるかなと思います。
(一同笑)
小柳:「どうしてこの本が置いてあるのか、まず考えてくれ」みたいな(笑)。
小柳:ちなみに、例えばどういう具体策があるのかという話は、この本では書き切れていないです。具体策については、先達のすばらしい本がいっぱいありますから、それを読んでいただくのも良いでしょう。でも、僕らAB(Augmentation Bridge)社もお客さんにいろいろと導入させていただいているので、いくつか「これは本当にいいですよ」という例を紹介します。
例えば「山仲さん、悪いんだけど〇日に会議があるから資料を作ってほしいんです」となったとします。「直前に提出されても困るから、前日にはレビューさせてね」「はい、わかりました」と。こういう時は絶対に「いつまでに、こういう書類を作ってね」と言うじゃないですか。
でも、山仲さんなら4時間でできると。これを把握していることは上司として大事なことだと思うんですよね。これが1つ目です。
ただし、通しで4時間の作業をさせるわけにはいかないので、「悪いけど1時間×5コマを取ってくれないか」と伝える。繰り返し言うけど、会議が1週間後だからといって、「6日後に資料を見せてほしい」とするのは、やめたほうがいい。
つまり、「6日後に資料を見せて」ではなく「1時間×5コマをカレンダーに設定しよう」と。会議や1on1と一緒で、カレンダーに予定を入れます。「俺は資料作りの場にいないけど、俺の言った仕事のためにあなたの時間を取ってください」と決めるんです。これが2つ目です。
そして3つ目が肝なんだけど、資料作りを5コマとした時の、最初の1コマが終わったところでレビューします。だいたい出来上がったところでレビューすると「山仲さん、これちょっと違うんだよな……」となって、結局、徹夜することになる。
最初の1コマ目を作った段階で「ごめん、俺の言い方が悪かったけど、こうではないんだ」「なるほど、こういうふうに誤解したか」と、方向修正してあげる。そうすれば、少なくとも残りの4コマは良い方向に進む。
このやり方はめちゃくちゃおすすめで、「やってください」と言った会社はどこも導入してくれていて、「最初からこうすればよかった」と言ってくださっています。
桑原:部下の視点からしても、上司に過剰に仕事を振られすぎないお守りにもなりますね。
小柳:そのとおり。①のところで折衝があるわけです。上司と部下の間での「私は(作業に)10時間かかります」「いや君なら5時間でできるだろう」「せめて8時間はほしい」みたいなやり取りです。だから、事前にきちんと時間を決めましょうという話です。
時間でアサインしていくコンサルティングファームのような企業さんでは、むしろ当たり前のことかもしれません。でも、一般企業でも取り入れたほうが良いと思い、非常におすすめしています。
中には「いや、私には必要ない」というスーパープレイヤーはいるので、その人には「山仲さん、会議があるからその前に用意してね」で済むのですが。そうではない人がすごく多いのに、みなさんスーパープレイヤーにアサインするのと同じように指示を出す。
アサインされてやったら、直前にレビューされてダメ出しをされる。そういう提出期限の間際にレビューを入れるようなやり方は、やめましょうという話です。
小柳:本にも書いた事例の②は、噴水型の「オプトアウト」稟議です。会社に申請を出す時、担当者は稟議のドラフトを書きますよね。そうすると、だいたい文句をつけてくる部署は決まっています。法務や経理、最近だと環境やガバナンス、サスティナビリティですかね。
そしてその部署の実務者が、事前に審査をするんですよ。審査した結果「いいよ」となったら、申請した担当者の上司の名前で、関連部署の決裁者全員に通達されます。現場ではレビュー済みだし、事務方レベルでも問題ないとなりました。
しかし、次がポイントです。(関連部署に一斉通達された)数日以内に、連絡を受けた幹部が異論を唱え、非承認となる。この「数日以内に」という点は、会社によって異なると思います。こうして「俺は嫌だ」と非承認の声をあげなければ、自動的に承認されるのが噴水型の「オプトアウト」稟議です。
逆に「オプトイン」は、幹部が「俺は良い」と言ってくれたら次に進められる。これは噴水型ではなく、ロープ型です。申請を上げて、まず法務に行き、経理や内部監査室に行き、それで却下されて「はい、やり直し」となる。最初から承認の流れを見せてくれたらいいんですがね。
それから、「なんちゃってオプトイン」もあります。一応「いい」と言われて次に進むのですが、ノールックでプッシュしている人とか、アシスタントにハンコを渡していて、アシスタントの人が中身を見ずに右から左にやっている場合もあります。
そういうなんちゃってオプトインをやってるぐらいなら、オプトアウトにしましょうという話です。「文句があるなら、稟議の期限の3日間以内に言え」というやり方ですね。1本のロープではなく、最初に全部出す噴水型の稟議の出し方はめちゃくちゃ評判がいいです。ワークフローシステムで柔軟に組み直せる場合もあるので、おすすめしています。
それでさっきの話ですが、(こういう場合に)内部統制の人が文句を言うことはないです。みなさん、絶対に内部監査部が文句を言うと思って尻込みされますが、「文句なんて言われないから言ってみようよ」と。とにかく「内部統制という言い訳を封じる」のは、すごく大事だと思っています。
小柳:あと、鬼時短にはそれなりのIT投資が必要ですが、政府の補助金もあるから活用してほしいです。特に今は、生成AIが動画まで作っちゃうので本当にすごいですよね。クリエイティブ業界もすごく変わっていくと思います。
鬼時短の業界ではこのAIと、さっき説明した「言われたとおり、とにかく文句を言わずに休まずやり続けるロボット」を組み合わせるやり方もあります。
お客さんや社内からの質問や意見は、当然のことながら非構造化されています。「これはどのようになっていますか?」ということから「てめぇ、ふざけるんじゃねぇよ。どうしてくれるんだ。責任者出てこい」に至るまで、千差万別です。それらを生成AIで、「この人の言っていることは、こうです」と翻訳する。
我々にわからせるために翻訳するんじゃなくて、RPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)がわかる定型命令に変換して、アウトプットする。
これはもう本当に多くの会社さんが実用化していて、日本の伝統的な企業さんでもバンバン導入しています。あとは顧客の注文をリアルタイムで連動させながら、すごく難しい在庫の管理をさせる。今まで熟練の人しかできなかったものが(AIで)どんどんできます。
こういうのって、本当に結果が目に見えるものなので、「ROI(投資利益率)はどうなんだ」とか「プロコン(ロジカルに議論を戦わせるための2つの比較検討材料)が」とか言う人との戦いになります。とはいえ結果が出れば、反対していた人も「俺は反対したことはない。最初からいけると思っていた。今はもうAIの時代じゃないか」と絶対に言うので、おすすめです。
小柳:『君のお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』は、結局どういう話なんでしたっけ?
桑原:今その話するんですか(笑)。要は、お金には価値がなく、みんなでお金を貯めても意味がない。あとお金で解決できる問題はないという話です。
小柳:「君のお金はいったい何のためにあるんだ」というのはつまり、お金そのもので解決できることはない。結局、人が動いてやるんだっていうことです。『世界は贈与でできている 資本主義の「すきま」を埋める倫理学』という(本の)話を含めて論じていらっしゃる本なんですが、会社って何のためにやっているんだと思うんですよね。
「いやいや、それは儲けるためというか、儲けをサステナブルに積み上げていくためでしょう。それが企業価値の増大ってもんですよ」という話だと思いますけど。まさにこの本(鬼時短)は1兆何千億円ファンドのレオス・キャピタルワークスの藤野(英人)さんが、全部読んで帯を書いてくれたんですよ。
だから、帯を書く時間が遅れたんだよね(笑)。「ごめん、ちょっと良いところだから待ってて」「もう印刷所が待ってるんですけど」みたいな。すごく真剣に読んでくれて、この「全経営者必読! 即効で永遠に効くメソッドだ」というコピーをつけてくれました。
拙著なんかと並べて申し訳ないんですけど、藤野さんの書籍に『「日経平均10万円」時代が来る!』というベストセラーがあります。この本には「ようやく日本の会社が世界中のお金を集めていく時代が来たんです」ということが書かれています。そしてそのとおり、現実に今、日経平均4万円を超える状態になっているんですよね。
まさに『鬼時短』で言っているのも、会社が選ばれる存在にならなきゃいけない時代というか。選ばれたらそこに大きなチャンスがあるけど、選ばれないと大変なことになる時代になった。だからこそ、経営者に読んでほしい本ということで、藤野さんも快く帯を書いてくださったんですよ。
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