2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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世界的なイノベーション&クリエイティブの祭典として知られる「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」。2024年も各界のクリエイターやリーダー、専門家らが多数登壇し、最先端のテクノロジーやプロダクト、トレンドについて講演を行いました。本記事では、世界中の次世代のユニコーンリーダーを特定し、投資するアン・ハイアット氏が登壇。マイクロソフトCEOやIBMの前CEOの事例から、優秀なリーダーが持つ知性についてお伝えします。
アン・ハイアット氏:5つの性格特性の2つ目は知性です。これもおそらく驚かれることではないでしょう。もちろん、知性は起業家にとって特別なものです。しかし、ユニコーンのリーダーになるために必要な真の知性とは、大量の情報を処理し、独自の観察に絞り込み、他の人が見逃している機会を見出すことだと思います。
これまでになかった点と点を結びつけ、誰もやったことのない道を切り拓くこと。私がチームを雇う時、あるいはCEOのクライアントを引き受けることを検討する時、そのような知性を求めています。
さて、ゴルディロックス(三段階の選択肢があった場合、人間は無意識のうちに真ん中を選んでしまう傾向があるという心理効果)の原則に戻りますが、知性の熱すぎるバージョンは、あらゆる可能なデータを分析しようとして、結局、どうすればいいのか迷ってしまう人です。正しいデータを収集したか、行った大きな賭けがうまくいくかどうかで悩んでしまうのです。
そして冷たすぎるバージョンでは、決してスタートしません。情報を収集せず、新しいアイデア、新興技術、人々、才能、トレンドに触れることもありません。したがって、私にとって知性とは、可能な限り多くの情報を集め、ビジネスプランを強化するために使うものです。知性の良い例の1つは、マイクロソフトのCEOであるサティア・ナデラです。
彼は実に変わった道を歩んできました。サティアは早くからテクノロジーの世界を志し、インド工科大学を受験したのですが、入学試験に落ちてしまったのです。大学は、自分が属していいかどうかを証明する知的機関です。ですから多くの人は、「自分はこの世界でやっていけるほど頭が良くないのだろう」「インド工科大学が私を不合格にしたということは、私は不適格なのだ」と受け止めたかもしれません。
しかし、彼はそのようなことをする代わりに、従来とは異なる道を歩み、技術者としてのキャリアをスタートさせたのです。マイクロソフトで22年間働いた後、3代目のCEOに選ばれました。そして、彼はマイクロソフト社内の非常に困難な文化を引き継いだのです。
申し上げたように、私はワシントン州レドモンド出身で、初期のパーソナル・コンピューティング革命のエネルギーと熱気に包まれていたのですが、奇妙なことが起こりました。人々は輝きを失い、色あせ、会社は非常に重苦しく、ピボットするのが遅くなりました。サティアが受け継いだのは、このような内部対立を抱えた会社でした。
そして彼は、より多くの組織が行うべきすばらしいことを行いました。彼は、「知ったかぶり文化」から「学び合い文化」への文化的転換と呼んでいます。これはスタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエック教授が書いた本です。私の人生を変えた本を1冊選ぶとしたら、彼女の『マインドセット「やればできる!」の研究』を挙げるでしょう。
序文を読むだけで、私にとっては、心が爆発するような本でした。学習と知性をめぐる考え方には2つある、と彼女は述べています。1つは固定的な考え方で、人は生まれつき不平等であるということ。これはインポスター症候群(仕事で成功し、評価をしっかり得られているのにもかかわらず、自分自身を過小評価してしまう心理状態)の原因です。
しかし、固定概念から成長概念に移行することはできます。成長マインドセットを持っている人は、努力と練習と苦難とピボットによって、自分の才能を伸ばすことができると信じています。努力次第で、時間をかけて自分の知性を高められるのです。これが、サティアがマイクロソフトにもたらした文化的転換なのです。
90年代の(マイクロソフトの)とてもおもしろい話があります。新しいグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI:アイコンやボタンなどを用いて、直感的にわかりやすくコンピューターに指令を出せるようにした、ユーザーインターフェース)を開発するために人を集め、UX/UI研究を行って、人々がどのように反応するかを調べました。
そして、UI研究者は、これを構築したエンジニアの元に戻り、「10人中6人が、これをわかりにくいと感じています。それを理解できないようです」と言いました。 すると、主任エンジニアは研究者に「どこで6人のバカを見つけてきたんですか?」と言ったのです。これが知識人文化です。
私たちが本当にすべきことは、「私たちはあなたより賢いから使い方を教えてあげる」という態度を改めることです。そして、「ユーザーはプロセスの一部であり、もしわかりにくいのであれば、それはデザインの問題である」という事実を受け入れることでした。
わかりにくいとすれば、ユーザーが愚かだったわけではなく、設計上の問題でした。これは完璧な要約だと思います。
また、IBMの前CEOであるジニー・ロメッティは、インテリジェンスという概念に関して本当に重要なことをしたと思います。彼女もまた、テクノロジーの世界に入ったのはとても意外なことでした。
彼女が幼い頃、父親が一家を去り、ホームレスになってしまったのです。彼女の母親は高卒で、仕事の経験はゼロでした。ジニーはとても頭がよく、自分自身でチャンスを作る必要があることに気づきました。
そこで彼女は一生懸命勉強し、学校にも真剣に通い、大学の工学部で唯一の女性になりました。ほとんどのクラスで、女性は彼女だけか、せいぜい2人くらい。だから彼女は、自分が貢献したこと、言ったこと、質問したことすべてが(相手の)記憶に残るとわかっていました。
それで、彼女は自分の不利な点を利用して、念入りに(就職の)準備をしたのです。他の誰もが、「自分はこのクラスにいるに決まっている」「あの仕事に就くに決まっている」「この昇進を勝ち取るに決まっている」とか思っていましたが、彼女はそんな人たちを出し抜いていました。そしてそれ以上に、彼女は彼らよりも(仕事に)情熱的でした。
安全を保障するものを持っていなかったから、彼女は自分で機会を作らなければならなかったのです。そして、彼女が技術部門のリーダーになった時、適性と学歴はまったく違うものだと気づいたのです。
そこで彼女は、伝統的な4年制大学の教育を受けていない人たちのために、非伝統的な道筋を作ったのです。それは、彼女や彼女のチーム、そして成長のために本当に重要なコアスキルを学ぶ機会を与えられるようなものでした。こうして彼女はリーダーとして認められるようになり、技術の行く末を予測したのです。
彼女は、普通なら無視されるような人々にチャンスを与えたのです。だからこそ多様性が重要なのです。ジニーのように複数の道を本当に受け入れている人ほど、良い例はないと思います。彼女は時代の20年先を行っていたと思います。
特にAIに関しては、4年制大学では新興技術のペースについていけないかもしれません。そのため、技術系に入るには、私たちはこれまで以上にレベルアップやスキルアップを図り、従来とは異なる非伝統的な進路が必要です。
私は、将来のチャンスは現在の専門知識の外にあると確信しています。この部屋にいるすべての人が、ここ1〜2年、あるいは2〜3ヶ月の間に、人工知能に対して不安を感じたことがあるのではないでしょうか。
「自分のキャリアを将来にわたって維持するために必要なスキルとは?」「物事が急速に変化していく中で、どうすれば私は組織内でかけがえのない存在になれるのか?」と、少し脅威に感じるかもしれません。
つまり、ドゥエック教授が話していたマインドセットを完全に受け入れることです。新しい分野に進み、新しいことを学ぶことは、脅威ではなく、刺激的なことなのです。
私はアンドリュー・ヒューバーマンの大ファンで、Spotifyのリスナーランキングで上位1パーセントに入っています。他にヒューバーマンのファンはいますか? 「Huberman Lab」のポッドキャストを強くお勧めします。彼はスタンフォードスタンフォード大学の神経科学者です。
彼は、今日の私たちのような大きな目標を持ち、できるだけ効率的になりたい人々のために、驚くべき新興研究について話しています。彼のサイトで、9ステップの神経可塑性(個人の経験に応じて脳の接続を変化させる能力)のスーパープロトコルをダウンロードできます。
ただ、私のウェブサイトには、このトークで紹介したすべての情報源の要約、5冊の本、17の記事、3つのポッドキャスト、さらにいくつかの新聞記事が含まれています。ウェブサイトの「無料リソース」セクションで、それらをダウンロードできます。9つ全部を見る時間がないので、私のお気に入りの2つだけお話ししましょう。
1つは実験についてです。計算モデリングによると、人間は失敗する確率が約15パーセントあると、最も効果的に学ぶそうです。でも、自分の人生で15パーセントの誤差をどう生み出せばいいのかわかりませんよね。そこで私は、自分のキャリアが今どのレベルにあるのか測りたい時や新しいことに挑戦したい時、新しいスキルを身につけたい時にカレンダーの点検をしました。
自分のカレンダーにあるすべてのミーティングを見て、1日のうち何パーセントが天才の領域にいるか、割合を出します。天才の領域にいる時、私は自分が何をすべきかを正確に知っているので、すべての質問に答えられます。もちろん、私の仕事の役割として、特定のKPIを達成するために、1日のかなりの部分がその状態である必要があります。でも、80パーセント以上だと飽きてしまうんです。
ヒューバーマンによると、(失敗する確率は)15パーセントより高くあるべきだそうです。新しいスキルを身につけたり、機能横断的なプロジェクトにボランティアとして参加したり、コンフォートゾーンの外に出てみたり。新しいカンファレンスに行ってみたり、何か新しいことを経験してみたりすることが、この割合を高める指標となるでしょう。
先ほど申し上げたように、私は今はスペインに住んでいます。スペイン語で恥をかく機会は毎日あります。過去形の文法を間違えてしまうのですが、それは15パーセントの確率を起こすチャンスなんです。
ミスをすると、脳の中で信じられないようなことが起こります。休眠状態だった脳のニューロンが目覚めるんです。そして、ミスをした直後にすぐに修正することで、その情報を保持できる可能性が10倍高くなるのです。
この神経のプロトコルは、学習したことを本当に定着させるチャンスとしてとらえられます。つまり、過去形の文法を間違えて恥をかき、「ああ」と言いながらもう一度やり直すと、それが定着しやすくなり、同じ間違いをする可能性が低くなるのです。この15パーセントのルールは学習効果が高いのです。
私の2番目のお気に入りはギャップ効果です。ギャップ効果とは、私たちが現在の状況と目指す場所を結びつけているところです。この効果を出そうとする時、私たちは気まずい瞬間を味わうでしょう。例えば、スペイン語で複雑なものを学ぼうとしていて、間違えた場合を考えてみましょう。もし今、あなたが圧倒され、思考回路を失ったとしたら、一時停止のスイートスポット(最適な時間)は10秒です。
例えば、ピアノや外国語の練習をしているとしましょう。一時停止して、脳がバックグラウンドで回転するようにすれば、その瞬間から神経活動が10倍回復します。
会議で意思決定が複雑だったり、ミスをしたりした時に、無理をして発言したり、自分の足跡を隠そうとしたりするよりも、一時停止をすることです。そうすると、脳と海馬の神経細胞は、深い眠りについた時と同じくらい、神経を発火(ニューロンが電気信号を発すること)させるのです。
ギャップ効果はほんの10秒、間を置くだけでいいのです。その瞬間の気まずさや沈黙を受け入れ、自分の足跡を隠そうとせず、脳を回転させ、学習効果を10倍にしましょう。9つのプロトコルはどれもすばらしいですが、ギャップ効果は本当にすごいです。
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