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4月の新人研修で伝えたい! 企業で生きるために必要なアンガーマネジメントスキルとは〜オンボーディングを実現する企業が、新入社員に伝えること〜(全3記事)

週1回の1on1よりも、毎日5分のムダ話のほうが効果的 新人研修を成功に導くコミュニケーションのポイント

4月の新入社員受け入れを控える人事担当者などに向け、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の代表理事・安藤俊介氏が「企業で生きるために必要なアンガーマネジメントスキル」について解説します。本記事では、新入社員を迎えるにあたって企業側に求められるコミュニケーション術などを語りました。

前回の記事はこちら

新入社員を迎えるにあたって、組織側に必要なこと

安藤俊介氏:オンボーディングに必要なことは4つあると思っています。1つ目は「同じところ」が見つけやすくなる仕組みがあるかどうか。冒頭から言っているとおり、人間関係作りにおけるポイントは、「同じところが見つかるかどうか」と「違いに対する許容度が上がるか」です。

同じところを見つけやすくなるためには、「自分と何が一緒なんだろう?」と、組織側と同じところを見つけやすくしてもらう仕組みが作れるかどうかです。新人の子からすると「この組織って、自分が考えていることと似ているところがあるんだな。同じところがあるんだな」と思えば、好意を持ちやすくなります。

新人の子たちに対して、組織が同じところを見つけやすくするということは、組織がその子たちに対して好意を向けるということですからね。

好意を向ければ好意が返ってくるので、まずは組織が「何が一緒なんだろう?」と、新人の子たちをよく見る。そして「今の組織にも同じところがいっぱいあるんだよ。みんなと一緒なんだよ。共通項があるよ」というものが見つけやすくなる仕組みがあること。いきなり新人の子たちを否定することから始まってしまうのは、ぜんぜん違いますよね。

2つ目は「違い」に対する許容度が上がることです。とはいえ、全部が同じになるわけではありません。もちろん違いはあるんですよ。ただ、「自分と違ったら即ダメ」ではないわけですよね。「違うけど別にいいんじゃない?」「違うし違和感は感じるけど、でもその範囲ならいいか」と思ってもらうことです。

実は「組織に対する違和感」って、持っておいてもらわないと改善点につながりません。全部が一緒になってしまうと、それはそれで良くないですから、違和感は持っておいてほしいんです。

一方で、好意よりも違和感のほうがはるかに大きくなってしまったら、そこにいる理由がないので辞めます。違和感を持っておいてもらってもいいんですが、ちょっとでも違ったら「はいダメ」ではなくて、違いに対する許容度を上げてもらうことが重要なんです。

違いに対する許容度を上げるためには、何をしなきゃいけないのか。まずは組織が違いに対する許容度が上がっていること、そして違いに対する許容度を上げる方法を見せることができているかどうかです。だから、まずは組織側ができていることが必要です。

新人に対してやるべきことは「リフレクションのサポート」

3つ目は「自己成長実感」。これは、自分が成長する実感を持ってもらえるかどうかです。そして4つ目は「社会的エンドースメント」。エンドースメントとは支援や契約という意味で、「社会的にそこにいることが正しいんだよ」「社会的にあなたがやっていることは必要なことなんだよ」というものがあるかどうかです。

今は風潮的に、ESGといった社会や環境に貢献している会社、企業、組織が求められています。必ずしも環境や社会貢献という大雑把な言い方じゃなくてもいいのですが、社会的エンドースメントとして「あなたがやっていることって社会的に必要なことですよ。求められていることですよ」というのが伝わることが大事です。

この4つがオンボーディングに必要なことかなと考えているのですが、実現するためには(スライドの)真ん中に書いてあるリフレクションが必要なんですよ。

企業として新人の方々に一番やってほしいのは、リフレクションのサポート。リフレクションというのは、自分自身を見つめることです。「自分はいったい何を考えているんだろう」「どこに行きたいんだろう」「何を欲しているんだろう」「日々何を感じているんだろう」という自分の振り返りは、子どもの時にはあまりやっていないんですよね。

最近ようやく非認知能力に目が向けられるようにはなってきているのですが、僕ら大人の世代、だいぶ上の中高年層もそうですが、自分を見つめる習慣がほぼないんですよね。

組織として、自分自身を見つめるリフレクションのサポートをすることにより、同じところが見つけやすくなるし、違いに対する許容度が上がります。また、自己成長実感を持つことができるし、社会的エンドースメントを感じられることにつながっていきます。

求められるのは「聞き上手」な人

もちろん、組織として計画的にスキルを覚えてもらうのは大事ですが、よりやっていただきたいことはリフレクションです。(新しく会社に)入ってくる人たちが「自分はいったい何なんだろう?」という、振り返りをすることをサポートする。

その風土があると、すごく居心地がいいんですよね。これはアンガーマネジメントをやっていると本当に実感できます。自分を見つめることができる場所は、自分にとってすごく居やすい場所になります。なので、組織や企業として、リフレクションのサポートが1つの大きな鍵になると考えています。

人間関係作りが上手い人は、結局はコミュニケーション上手な人なんです。冒頭の話に戻ると、まずは「違い」よりも「同じところ」に目が行く。そして「話上手」より「聞き上手」なんですよね。

多くの人は話をしたい、話を聞いてほしいと思っているのですが、人の話を聞きたいと思っている人は少ないんですよね。特にみなさんは、これから上司として、あるいは先輩として若い人たちと付き合う中で、こちらが言うよりも話を聞き続けるんです。

聞き上手であることは、実はリフレクションのサポートになるんですよ。聞き上手は質問が上手い人なので、ずっと質問してあげる。「それはどういうことなの?」「それってどういう時に感じているの?」「それは何?」など、いろんな質問の仕方がありますが、こちらが話をするというよりも、聞くことを心がけていただきたいと思います。

リフレクションが上手になっていくと、人は同じところを見つけやすくなるし、違和感や違いに対する許容度も上がるし、自己成長実感も感じやすくなりますし、社会的エンドースメントも感じやすくなります。その結果、オンボーディングもしやすくなると思っています。

コミュニケーションは「質より量、時間よりも頻度」

結局、良好なコミュニケーションが生まれる前提条件はふだんからの人間関係なので、コミュニケーションは質より量、時間よりも頻度。これが大事だと思っています。

ですから「1週間に1回、1on1のミーティングをやりますよ」「1週間に1回、1時間、丁寧に1on1をやっています」というより、毎日5分でいいからムダ話をしているほうが、よほど人間関係は作りやすいです。

頻度を高くして量をやったほうが、同じところが見つけやすくなります。時間が空くと違いに目が行くようになりますので、できる限りコミュニケーションの頻度を上げる。そして、丁寧さよりも量を増やすことをこれから意識してください。

最後に、毎日やってほしいトレーニングです。「ログを書いてほしい」という話もしましたが、変化(違い)に目が行ってしまう人は何をやったらいいのか。実は、違いに目が行く人って「変化に弱い人」なんですよね。変化に強くなると、違いに目が行かなくなるというよりも、目が行っても違いが受け入れられるようになります。

アンガーマネジメントのトレーニングではブレイクパターンがあるのですが、「毎日何か1つ違うことをやってみる」。通勤経路を変えてもいいですし、毎朝見るテレビを変えてもいいですし、毎朝飲むコーヒーの味を変えてもいいですし、それを紅茶に変えてもいいです。何でもいいので毎日1つ違うことをやると、変わることに対して強くなります。

また冒頭の話に戻りますが、違いが気にならなくなります。違いが気にならなくなると、同じところが見つけやすくなります。同じところが見つけやすくなるということは、相手に対して好意を投げられるんです。そして、人は「変法性の法則」が働くといわれていますので、好意を投げれば好意が返ってきます。

人間関係の分断を生む原因は「べき」という言葉

今日は新人研修をテーマに、アンガーマネジメント的な知見から、何を考えたらいいのかお話ししてきました。「べき」という言葉が、違いに目が行く大きな原因になってしまうので、そこと上手く付き合えるようになると人間関係作りは上手くいきます。

当然それは、これから入ってくる子たちとの関係作りにおいてもすごく大事になってきますので、ぜひそんな点を気にかけていただければいいかなと思います。

今日は時間が限られていますので、アンガーマネジメントの中心についてお話ししました。実はアンガーマネジメントには「衝動のコントロール」「思考のコントロール」「行動コントロール」の3つのコントロールがあるのですが、今日は思考のコントロールの一部分を抜き出してお話ししました。

本格的にトレーニングをしたり、チームビルディングしたりする時には、ここの部分をもう少し膨らませます。あるいはもう少しトレーニング的にやったりもしますので、興味を持っていただいたのであれば「トレーニングはこうしたらいいですよ」といった話もできるかと思います。

ということで、私からのお話はこれまでとさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

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