2024.10.10
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田ケ原恵美氏(以下、田ケ原):イベント『シゴトイノベーション』の最初のセッションのテーマは、「仕事にイノベーションを起こすには?」。このセッションに登壇した足立光さんのプロフィールをご紹介します。
P&Gジャパン、戦略コンサルティングファームを経て、化粧品メーカー シュワルツコフヘンケル社長・会長に就任。その後、日本マクドナルド上級執行役員・マーケティング本部長、『ポケモン GO』で知られるナイアンティックのシニアディレクター等を経て、2020年よりファミリーマートのエグゼクティブ・ディレクターCMO兼マーケティング本部長になられました。
その他、ヘアケア/ボディーケアブランド「BOTANIST」を展開するI-ne(アイエヌイー)社外取締役、スマートニュースおよび生活協同組合コープさっぽろのマーケティング・アドバイザーも兼任されています。では、その足立光さんと、フジテレビ 「#シゴトズキ」の清水俊宏さん、そして我らが入山マスターが登壇したセッションの模様です。
清水俊宏氏(以下、清水):ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクターCMO兼マーケティング本部長の足立さんです。みなさん、拍手でお迎えください。
足立光氏(以下、足立):よろしくお願いします。
(会場拍手)
清水:ここからはオープニングセッションとして、「仕事でイノベーションを起こすには?」というテーマで、ぜひお話をうかがいたいと思っているんですね。ファミリーマートに行かれてからも、ファミマルのブランディングとか、いろんなことをされているなと思うんですけど。イノベーションの第一歩は、足立さんの中ではどういったところから始まると思いますか?
足立:「自分がこれをやったら、会社としてもっと良くなりそう。おもしろそう」ということを、自分自身のリスクでやっていく。そうすることによって、いくつか当たりが生まれて、それを大きくして横展開していくことで、どんどん確率が上がっていく。そうすると組織全体がそっちを向いていくという、そんな流れだと思っているんですよね。
入山章栄氏(以下、入山):今日のテーマが「働く」「仕事」なんですけど、イノベーションというか、おもしろいことや新しいことをやっていく時に、足立さんが一番心がけていることは何ですか?
足立:楽しくやることです。正確に言えば、楽しそうにやることかな。
清水:なるほど。
足立:やっぱり、楽しくない人には付いてきてくれないと思っているし、楽しくない会議では、それこそ何も進化が生まれないんですよ。だから、笑いから入るみたいなことも含めて、楽しそうにやっているってとても大事です。
改革には比較的痛みが伴う場合もあるじゃないですか。それでもけっこうポジティブにやっていくのがとても大事なんですよね。じゃないと、なかなかみんながそっちを向いてくれない。
それから、仕事でいろいろなことをやっていると、当たることもあるし、当たらないこともありますよね。(2つ目は)当たったことをちゃんと盛大にお祝いしてあげる。仕事ってわーっとあるので、意外とだーっと流れていくんですよ。でも、うまくいったことをちゃんと認めてあげて、かつお祝いをしてあげる。
入山:お祝いって例えばどんなものですか?
足立:ふだんは会議ではあんまり褒めないんですけど、うまくいったやつは盛大に祝う感じです。
入山:パーティーをやったりするんですか?
足立:この2年間はパーティーをできなかったんですけど、最近は祝勝会みたいなことをやっています。やはりそういう達成感がないとなかなかやってられないし、人は人に認められたい動物なので、そこはとても大事だと思っています。
足立:3つ目は、なんでうまくいったのか、なんでうまくいかなかったのかを、いろんな方に全部共有していくことなんですよ。
なので、普通はうまくいった・いかない、またはその理由は担当者しかわからないんですけど、関係各部署を含めて百何十人に言っているんです。それでレビューしていくことで、うまくいった・いかなかった、その背景・理由、次への改善点を、みんなで一緒に学んでいく。
そうすると、やはり組織の全体のいわゆる知見の拡大がとても早いんですよね。「どこがうまくいったから成功したのか」、または「どこがうまくいかなかったら、駄目だったのか」ということを共有することは、カテゴリーを越えてとても意味があると思っています。
入山:僕、足立さんとは実はリアルでは今日初めてお会いするんですけど、SNSでつながっていて。足立さんの行動を見てみると、死ぬほど移動されていますよね。
清水:ああ、確かに。
足立:2つぐらい理由があるんです。実は東京にいると、日本の「普通」が見えなくなることがあって。
入山:なるほど。
足立:東京というのは特殊なところなんですよ。別の世界とは言わないですけど、売れているものは違うし、置いているものも違うし、本当に東京は日本の一部でしかないということを、よく認識しますね。
もう1つ理由があって、けっこういろんな方にお会いしに行っているんですよ。同じ業界、同じ世代だから(イノベーションが)生まれないと思っているんです。なので、できるだけ違う業界、あとは上と下両方あるんですけど、違う世代。そしてできれば違う国。この3つの方にお会いすることを、けっこう一生懸命やっています。
清水:良質な出会いに変えていくコツは何かありますか?
足立:「会いたい」と思った方には執拗にアプローチして、「もう1回会おう」と言う。おもしろい方っていっぱいいらっしゃるんですけど、おもしろい方には会いたいじゃないですか。かつ違った業界だと、まったく知らなかったことがそこにいっぱいあるんですよ。
そうすると、「これはこういうことで流行っているのか」「これが売れているのか、売れてないのか」「じゃあこれって、うちの業界に当てはめたら何だろう?」とまた考えるパターンなんですよね。若い方って、なかなか会いたいと思っても、先方に会ってもらう理由が弱いんですよ。
入山:なるほど。
足立:でも僕も含めていろんな方々がいらっしゃって、要は「こいつ、おもしろいな」と思ったら会ってもらえるんです。人が人に会うのって、「その人に会ったら得か」「その人に会ったらおもしろいか」のどちらかしかないと僕は思っていて。
若いと、「自分に会ったら得です」ってなかなか言えないじゃないですか。実際そんなに実績もないし。でも「おもしろい」だったら言えるんですよね。
僕は「自分自身のマーケティングが大事」と言っているんですが、やはり若い方は自分自身をどうマーケティングしていくか、どうおもしろいと思ってもらうか、またはユニークだと思ってもらうかがけっこう大事だと思います。じゃないと、(仕事をする時に)呼んでもらえない。
入山:僕は、足立さんがたまたま今アドバイザーをやってくださっているコープさっぽろという、北海道最強の生協の理事をやっているんですね。そこの大見英明さんというトップがいて、よくお話しするんですけど。
大見さんが、「入山くん。俺、今ね、『ジャンプ』をすっげー読んでるんだ」と言うわけです。(大見さんは)もう64歳なんですよ。「いや、どういうことですか?」と聞いたら、足立さんに「お前ら、とにかく『ジャンプ』を読め」と言われたと。
大見さんは真面目なので、必死になって読んで、「『ワンピース』っておもしろいんだな」みたいな話をしているんですけど。あれは足立さんがアドバイスをしてくださったんですよね。
足立:今流行っているキャラクターって、8割方『ジャンプ』から来ているはず。『鬼滅(の刃)』もそうだし、『呪術廻戦』も、今だったら『SPY×FAMILY』もありますね。
なので、実は今流行っているキャラクターのことも含めて、マンガの中身って比較的世相を表しているんです。かつ、今後2年間ぐらいに流行りそうなものってだいたいそこにあるんですよ。だから、それを読まないのは、今後のトレンドとかを考えていく上で、とてももったいないと僕は思っているんですよ。
イノベーションって結局、毎日どこかで何かしら生まれているんですよね。なので、今何が流行っているか、常に自分で体験しておくことがとても大事だと思っているんですよ。
入山:なるほど。
足立:なぜかと言うと、流行っていることは、多くの人が心を動かされたことなんですね。それを体験した上で、「なんでだろう?」「なんでこれが流行っているんだろう?」と考えることができるので、とても刺激になるんですよね。
清水:最後に、まずイノベーションとは何で、何をすべきか。キーフレーズみたいに言うと、どんなことになってきますかね?
足立:正直日本では、というか世界中そうなんですけど、「イノベーション」と「リノベーション」って、けっこう混同して使われていると思っているんです。リノベーションはいわゆる改善をどんどん進めていくことなんですよね。イノベーションはどちらかと言うと、多くはひとっ飛びにポンと飛ぶ話をしていると思っています。
僕はけっこう「リノベーションがないところにイノベーションは生まれない」と強く思っているんですよ。なので、常に改善していく。またはいろんな分野を見ながら、新しいものを採り入れて少しずつやっていくことで、どこかでぽんと(イノベーションが)生まれると思っているんです。
やはり、いきなり飛ぶことだけ考えるとなかなかうまくいかないものですが、他の業界でやっていることを自分の業界でやったら、イノベーションかもしれませんよね。なので、改善をしながら、いろいろなところに網を張って、自分の業界でやってみたら、もしかしたらそれがボンと行くかもしれない。
でもそれは、たぶん日々の改善またはリノベーションの中からしか出ないと思っています。
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