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社長へ捧げます「言うことを聞かない幹部を変える」セミナー(全2記事)

仕事ができる優秀な人ほど、部下を育成できない理由 幹部・管理職に「変われ」と言う前に、見直したい組織のあり方

幹部が思うように動かない、人材の離脱が止まらない、社長の思いが社員に届かないなど、経営者が抱える悩みは多岐にわたります。そこで今回は、株式会社PDCAの学校 代表の浅井隆志氏が、その原因と対策法について解説。本記事では、管理職の9割以上がプレイングマネージャーである日本企業の課題点を元に、組織開発のポイントを探ります。

「強く指摘して辞められたら、正直困る」という本音

浅井隆志氏:みなさん、こんにちは。株式会社PDCAの学校代表取締役、浅井隆志でございます。本日は社長向けということで、おそらく役員の方や幹部の方もいらっしゃるんじゃないかなと思います。

「言うことを聞かない幹部、言うことを聞かない管理職の方をどう変えていくか」にテーマを絞って、お伝えしていきたいなと思っております。

まず、今日はどういう話をしていきたいのかということなんですが、そもそもなんで幹部は動かないのか。それから幹部はなぜ人を育てないのか、なぜ考えないのか。ダメだしばかりで大変恐縮でございますが、具体的な対策についてお話をしていきたいなと思っております。

まずみなさんに質問させていただきたいんですが、幹部に言いたいことを言えてますか? 逆に言うと、幹部の方は社長の代弁者になってますか? 自分の言いたいことを代わりに言ってくれていますか?

それから今、これは非常に多いですね。「忙しい」という言い訳を許していないかどうか。「そうだよね。今は確かに業務がひっ迫しちゃってるからしょうがないよね」というところを、許しちゃってるかどうか。

さらに「あんまり強く指摘して辞められたら、正直困るしな」というのは、リーダーシップのパワーの源泉が揺らいでしまうわけですよね。

このあたりを自問自答していただきまして、「自分はちゃんと言えてるかな」「厳しいこともちゃんと指摘できてるかな」「幹部は自分の代わりに代弁者になってくれてるかな」ということに思いを馳せていただく。モヤモヤとしているから、今日はご参加いただいてるんじゃないかなと思います。

「余計な遠慮」が発生する会社は伸びない

ちなみに僕は、さまざまな企業さまのお手伝いをさせていただいておりますが、トップや役員の方が部下の幹部社員や管理職に対してストレスを感じている状況だと、会社は伸びません。

もちろんいろんなストレスはありますよ。ストレスがゼロになることはありませんが、言いたいことが言えない、ちょっと遠慮しちゃう、言い方に気を遣っちゃってるとか、「もっとこうすればいいのに」ということが実行できない。

「ある程度、みんなの意見を聞かないといけないのかな?」と、余計な配慮が生まれてる状況は良くないストレスだと思うんですね。こういう状況だと、正直会社は伸びないので、これを改善していただきたいんです。

ちなみにこれは一般論になりますが、多くの経営者層・社長役員の方が幹部社員の方に求めることは何かというと、5位が「ビジョン、経営の柱を作り出す」。4位が「経営側と一般社員の橋渡し」。代弁者、翻訳、仲介役になって、ちゃんと伝えてほしいということです。

それから3位が「ちゃんと人を育ててほしい(部下の面倒を見る人)」。2位が「目標達成をする人」。1位が「課題解決に自らあたり成果を上げること」。おそらくみなさんも、このあたりは不満があるんじゃないかなと思っております。

「会社の器は社長の器」

じゃあ一方で、幹部社員や管理職の会社に対するネガティブな意見にはどういうものがあるか。実際に私がコンサルティングをさせていただく際に、いろんなアンケートを実施させていただくんですが、よくあるのが「管理職として何を求めているかわからない」という意見はすごく多いですね。

「社長。(管理職が)『わからない』と言ってますよ」と聞くと、「いやぁ、言ってるつもりなんだよ。だいぶ言ってるんだけどな」と言います。「だいぶ言ってる」「いや、わからない」のずっと平行線です。正直これは、社長も経営者層の方も含めて改善しなければいけないところもあるかもしれないですね。

次に「社長から部会育成と言われるが、どのようにしたら良いかわからない。結局数字しか見られないので、数字を優先する」。「育てろ」と言われても、育て方がわからないということですよね。

自分より上の人たちがやってないからやっても意味がないし、もっと上の人たちの仕事だと感じている。「人を育てろと言いますが僕の仕事なんですか? それは役員の仕事じゃないですか?」と、自覚がないということですね。

それから「自分が昇格したら行う。今の自分の業務ではない」。同じようなことです。結局、自覚がないんですよ。朝令暮改なんて言葉がありますように、「求められたことが急に変わって困る」と、コロコロ変わった指令についていけない。

じゃあどうしていくのかという話なんですが、まず大前提として、一般的な言葉ですが「会社の器は社長の器」というものがあります。社長の力量は管理職幹部の力量、すなわち鏡である。管理職・幹部の力量は社員の力量ですので、当然社長自身も変わっていただく必要があります。

幹部に「変われ」と言う前に、社長が見直したいこと

大変恐縮なんですが、一方的に「変われ」「もっと行動しろ」と言う前に、社長も表現の仕方を変えたり、もう少し行動で表す部分がないと、幹部に「変われ」と言ってもなかなか難しい。両面が必要であるということですね。

幹部が動かないというのは、そもそも目標を逆算して計画立案することができないんですよね。「論理的な思考や方法がわからない」「達成の報酬が不明確」。このあたりが非常に不明確で身動きが取れない。ということは逆に言うと、目標の設定の仕方や逆算した行動計画に、社長は介在しているかどうか。

物事の捉え方や取り組み方について、具体的に社長が教えてあげるとかアドバイスをあげたり、気づかせてあげることができているかどうか。

(社長が)「これをやってくれ」というものをやったら、(管理職・幹部には)どういう報酬、もしくは本人にどういうメリットがあるのかという説明は、すごく大事になってくるんじゃないかなと思っております。

こういうことがちゃんと伝わっていると、どういう状況が作れるのか。本当に一部ではございますが、コンサルティングをさせていただいている企業の、いち課長が作っている目標設定です。

組織の目標達成をどうしていくのか、部下の育成をどうするべきか、定量的な目標、定性的な目標、行動計画をきちっと作るわけですね。

そうすると、社長はこの進捗を見守っていけば、管理職や社員がどういう動きをしているのかが手に取るようにわかるので、軌道修正も簡単になってくる。ということは、まずは「把握」をしていかないといけないですよね。

把握していくためには効率的にやっていく必要がありますので、システム化とか、ある程度の可視化や言語化を会社の中で進めていく必要があります。

効果的なアプローチは褒める・認めること

ちなみに社員を動かしていく大前提として、ここは押さえておいていただきたいんですが、組織の均衡条件というのものがあって。会社が社員に対する誘因を出します。誘因というのは、魅力的な何かのことです。

当然、これは人によって違いますよ。報酬、福利厚生、労働条件とか、ただ認められる、褒められる、期待される、スキルアップができる、キャリアアップが図れるとか、誘因にはいろんな要素があります。これをきちんと提供して、社員は(初めて)貢献してくれます。

誘因が上回って、貢献以上の誘因を提供していないと、人はまず動かないという大前提があります。なので「貢献」のほうが上回ることはまずないわけですね。

労働条件や報酬・対価だけで誘因を提供すると考えていくと、人件費、労務費のコストがずっと右肩上がりで会社が疲弊してしまいます。なので、目標達成を一緒にしていきたい、ビジョンが魅力的、理念に共感しているという点で(誘因を)やっていかないと難しい。

幹部に対するアプローチとして「認めてあげる」「褒めてあげる」というのは、けっこう大事なんじゃないかなと考えております。

そもそも管理職・幹部は“人の育て方”がわからない

じゃあ、管理職・幹部がなぜちゃんと人を育てないのかというと、幹部が教育を受けていないからです。教育を受けてないから属人的、いわゆる自分の感覚で、自分が生まれ育った環境がやられたことが正しいので、それを繰り返すわけですね。

昭和の教育で育ったから昭和の教育を繰り返すから、パワハラになったりするわけですよ。ということは、教育の方針や教育の仕方は、社長なり役員の方が幹部社員にきちんと教えてあげる。「そもそもどういう教育なのか」を伝えてあげることはとても大事ですね。

それから、管理職は人を育てる社員をマネジメントしていく役割ではあるんですが、やらないですよ。やり方がわからないというのもあるし、それが自分の役割だということを認識していないんですね。

これ、よく僕は説明をするんですが「プレイングマネージャーの壁」というものがあります。係長以上が管理職だと思っているんですが、管理職の役割は「組織の業績の責任」「人材育成(部下の指導育成責任)」「部下の保護管理責任」。

「保護管理責任」というのは、心のメンタルケアも含めて、心身ともに健康管理をしていくこと。今はこれが問われているわけなんですが、多くの管理職の方はだいたいプレイヤーの延長線上で管理職になっていますよね。

プレイヤーとして優秀で、そこそこの社歴と年齢があるから「はい、じゃあ君が主任ね」「はい、次は係長ね。部下・後輩いるんだから頼むね」と、プレイヤーの延長線上で仕事をしてしまっているので、人を育てない。こういう状態に陥ってしまっているんです。

日本企業の管理職は9割以上がプレイングマネージャー

背景としては、日本の企業の管理職は9割以上、ほぼほぼプレイングマネージャーなんです。管理職にアンケートをとっても明白になっているんですが、管理職で一番できていないことは、部下のキャリア形成や人材育成に対する支援。どうしてもプレイヤーとして成果を出すことを優先してしまっている。

これは、プレイヤーとしての業務、プレイヤーとしての成果しか評価していない会社の問題でもあるんじゃないかと思います。

逆に言うと(評価項目を)ひっくり返して10:0にして、「プレイヤーとして成果を出しても評価しません。人を育てて、部下に成果を出させたら評価します」みたいに会社が変えていかないと、幹部も変わっていかないところがありますね。

今度は、なぜ幹部が自分で考えて行動しないのか、なぜ考えて意見を提案してこないのか。なぜ自分発信で課題解決をしないのかというと、「会社の理念やビジョンについて深い理解がない」「社長に対する理解や信任がない」。

これを言っちゃうと元も子もないですが、社長の考えをちゃんと組み取ってないわけですよ。このあたりも、どう理解させていくのかをきちんと考える必要がありますよね。

企業理念が浸透してる会社は、成長率が高く活気もある

ちなみにちょっと余談になりますが、理念、ビジョン、業績の関係性のデータが明白になっています。読み上げますと、企業理念が浸透してる会社は、浸透しない会社と比べて2.6倍で成長、4.3倍で社内に活気があるんです。

「社内コミュニケーションか。よし、コミュニケーションだ」じゃなくて、社長が何を考えて、何を目指しているのかを伝えていく。これはすごく大事ですね。これが(従業員数が)5人、10人だったら、会社の理念やビジョンは正直いらないですよ。なんでかというと、日常会話で自分の考えや思い、方針を直接伝えられるから。

これが30人、50人、100人、それ以上になってくると、直接伝える機会がないから、企業理念、ビジョン、行動指針を作って広めていくしかないんですね。または会社の会議やミーティング、目標管理、面談に社長が積極的に介在をして、メッセージを発信していくことはものすごく大事になってきます。

トップのマネジメントとして大事なことは、社長の思い、考え、嫌なこと、望むこと、何が情熱的にさせるのか、どういうふうにやっていきたいのかをとにかく伝えていくこと。これがやはり経営者の一番重要な観点です。

中小企業の社長はだいたいプレイングマネージャーです。僕もそうですからね。だから現場で忙しく走り回るし、いろんな対外的な付き合いや接待、金融機関との付き合いもある。走り回る姿を見せることは確かに重要ではありますが、内側の社員に向けたメッセージ発信はすごく大事ですね。

ということで、これをちょっと参考にしていただければと思います。僕はよく会社さんの行動指針や心得を作って、重点的施策を講じていきます。以前僕が作った例は、上場企業の役員の心得です。これを社長が一つひとつ解説しながら伝えていくことは、月に1回ぐらいは必要なんじゃないかなと思いますね。

ちなみに(次が)幹部社員・リーダーの心得です。これは僕なりの浅井バージョンというか、僕が関わった企業さまでお作りしたものです。こういうものを、会社独自で作って浸透させていく。

浸透はどうしていけばいいのかというと、社長がしっかりと動いていただくのが一番いいですね。これは永遠の課題でありますが、意識醸成を作っていかないと幹部は変わらないんですよ。

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