2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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市橋直樹氏(以下、市橋):みなさん初めまして。NTT西日本イノベーション戦略室で室長を務めております市橋です。今日はよろしくお願いします。また、出口先生、渡邊さん、ドミニクさん、引き続き最後のセッション、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、今回、なぜこの「ウェルビーイングとビジネスの未来」というタイトルにさせていただいたかについて、お伝えできればと思います。
私はこの「QUINTBRIDGE」の運営をNTT西日本の中でやっていってるんですけれども。今日ご参加の方々は、それぞれ何らかの組織、大企業やスタートアップ、NPOなどに所属しておられる方が、ウェルビーイングという観点に興味を持って来ていただいていると思います。
よく最近言われるのが「ウェルビーイングって、結局それで儲かるの?」という話ですね。「それをやっていくと何かいいことあるの?」と。みなさん会社の中で、特に今日来ている方は「それに取り組んでいかなきゃ」と思われていたり、会社の中でうまく説明しきれないとか、そんな悩みを抱えられてるんじゃないかなと思います。
そこで今回、ヒントとか気づきとか得られたらいいなと思って、このタイトルにさせていただきました。少し前置きが長くなりますが、今までの経済って、高度経済成長から停滞している30年と言われています。やっぱり僕たちはずっと、その前の30年をどうやって取り戻すかをすごくがんばって考えてきてて。
でも、そろそろそうじゃないんじゃないかなと思っています。株主至上主義だったアメリカとか欧米のほうがむしろ先に転換を始めていて。ダボス会議とかグレート・リセットみたいな言葉が2~3年前に言われました。
ダボス会議で(クラウス・)シュワブ会長が、これまでの成長主義の世界経済システムはもう限界に来てるんじゃないかと。持続性に乏しく、もはや時代遅れとなってきたと。これからは人々の幸福を中心とした経済を考え直すべきだということを言われた。これがグレート・リセットということで注目を集めました。
市橋:この人々の幸福を中心とする経済って何なんだろうかと考えると、経済成長の話ではなくて、どういうことなんだろうかと言った時に、これが結局、今日のお話であったウェルビーイングな社会や経済。
ウェルビーイングを単に個人の健康とか医療ではなくて、社会全体で捉えるということではないかなと、私は「QUINTBRIDGE」をメンバーと一緒に運営しながら感じています。
人々の幸福を中心とする経済はウェルビーイングをビジネスに埋め込むことや、ビジネスに人間性を取り戻すことだと思っていますが、これを進めていこうとした時に、指標で示せないんですね。「GDPがこれだけ増えました」とも言えないし、「対前年比売上がこんなに伸びました」とも言えないので。
どうすれば経済に、ウェルビーイング感が増してきたかを言えるのか。こんな見方をしたらいいんじゃないですか、とか。こんな活動ができてたら、社会に人間性が取り戻されてウェルビーイングができているとか。ひょっとしたら後々こんな指標に現れてきますよとか。
そんなところをぜひ3名の方々から、実体験等も踏まえてお話しいただきたいなと思っております。それでは、渡邊さんから。
渡邊淳司氏(以下、渡邊):はい。私自身はビジネス分野ではないんですが、グループやコミュニケーションという視点から考えてみました。これは日本の人口の動態図です。
これを見ると、右のほうでいきなり高くなっていきなりまた下がっていく、とんでもないとんがり方をしています。1868年に3,300万人だったのが、いきなり2004年に1億2,000万人と4倍近くになって。さらに2100年にはまた半分以下で5,000万人を割るという。
上がったり下がったりジェットコースターみたいな状況になっている中で、人口が増えてる時はまさに何がアウトプットされるか。要するに、そこからどういう売上や利益が上がるのか、アウトプットを1つの物差しで測ることができたのですね。
渡邊:一方で、人口が減っている中では、目の前の人を全部置き換えるみたいな考え方はもうできません。
むしろ協働者として、もしくはSelf-as-We(「われわれ」としての「自己」という概念)として、目の前の人たちとともにどういうふうに能力を発揮するか、チームがどのように持続していくかを考えざるを得なくなっています。そこでは、アウトプットではなく人々の内部状態を測ることが必要になります。
今まではアウトプットや生産性の視点から「いくら儲かりました」とかだったんですけど、それだけじゃなくてこれからは内部状態を測ることが必要になります。内部状態の一番小さいレベルが、個人の満足度、主観的ウェルビーイングですが、それだけではなく。
例えばチームの状態の測り方として、「間主観」というのがあります。ある人が「自分が満足してます」という指標だけでなく、傍から見てその人が満足しているように見えるかという指標です。これはどういうことかと言うと、本人の捉え方と、周りから見た時の「その人がどうか」が一致してるかということです。
その他にも、関係性を評価する指標もありますし、さらには客観的にそのチームがどれだけ持続できるか。離職率とか内部状態がどのくらい健全かみたいな。何をアウトプットしますかというのと、どういう内部状態かという両方が大事になってくる。それをアンドで捉えなきゃいけないのかなということを、お話ししました。
市橋:ありがとうございます。外のアウトプットのような、見えるところ以外の内部のところで、離職率とかもありました。離職率は、わりかし後でわかってくるところのような気もするんですけども。社内でのエンゲージメント調査で、いろんな調査項目があると思うんですが、「こういう指標が高い」とか「こういうチームの関係性が見れてると、うまくいってますよ」と出てるものはありますかね。
渡邊:すごく具体的な話になりますけど、エンゲージメントは、会社と自分の関係性を測っています。
一方で、身の回りのチームという意味では、Self-as-Weが指標になります。そういう自分と会社やチームとの関係性に対する認知は、「その人がその場所にいようと思うか」という上ではすごく大事かなと思っています。
市橋:ドミニクさんの立場とかご経験から、今のところで付け加えていただくようなことってありますか。
ドミニク・チェン氏(以下、ドミニク):そうですね。問題はウェルビーイングについて、どう互いにコミュニケーションを取るのかということだと思っています。
今のところGDP的な数値指標として国のほうで、「じゃあGDW(国内総充実:既存のGDPでは捉えきれていない、社会に生きる一人ひとりのウェルビーイングを測定するための指標)をやってみよう」とか、国民規模で主観的ウェルビーイングを測って見てみようとか。そういう大まかな傾向を見ていくって意味で、社会動向の指標としてウェルビーイングを測っていくことは1つ新しい動きなのかなと思います。
でも例えば会社の中とか自分の働いてる部署で、全員の(ウェルビーイング)を測ってみようみたいにするといきなり不気味なことになってくる可能性があります。
それを評価主体の、上長とか人事部が把握していて自分には知らされないとか。もしくは、毎日会社の入り口のマイクに「じゃあ発声してください」「おはようございます!」って言って。
でも、それがディープラーニングされて解析されると、威勢だけよく言っていて本当は元気がないのがバレるみたいな。いや、そういう技術を最近体験して、これやばいなぁと思ったので(笑)。だから人のウェルビーイングを測る権利というものを考えないといけない。
私はミクロな現場に興味関心があって、ウェルビーイングを測定するテクノロジーがあること自体の「ディストピアさ」をちゃんと考えてやっていかないと、一気にウェルビーイングとは程遠いことになるなと思います。
すでにけっこう大企業とかでは、例えば残業禁止で22時にPCがブラックアウトした時に「あなたの今日の1日の気持ちのスコアを教えてください」と出てくる。その機能自体がすごくウェルビーイングに反してるという声を、いろんな企業の現場から聞いたりもします。
なので測ればいいってもんじゃないし、測り方もちゃんとケアしないと測られる側が傷つくこともあるということも含めて、ウェルビーイングの共有の仕方についてのコミュニケーションが大事だと思うんですよね。
その前提としては、ビジネスの現場においてはウェルビーイングが高い人ほど仕事のパフォーマンスが高いというエドワード・ディーナー先生の有名な研究もあったりもするので。そういう意味ではウェルビーイングが総体的に上がっていく方向になればいいと思うんですけれども、それは数値目標化した瞬間、一気にディストピアになる可能性があります。
ドミニク:じゃあ数値評価じゃないかたちで、どうやって(やるのか)。それこそSelf as Weと一緒にそれ(ウェルビーイング)が上がってるのか。Self as Weも、もしかしたらそういうスコアにすればすべてよしじゃなくて。
スコア化するとどうなるかと言うと、おそらくハックできるようになると思うんですよね。「じゃあスコアが上がるように回答しといてよ」みたいな同調圧力が増えるとかね。
たとえば真摯な切実な話し方が職場でできていないという悩みを、すごくいろんな人から私は聞いています。職場では先輩や上司に一切質問ができないとか、けっこうびっくりするようなことがいろんなところで聞こえてくるんですね。
だからそこをまずどうにかしないと、トップダウンでウェルビーイングとか言っても、ぜんぜん本質に近づかないなという懸念があるので。今あるウェルビーイングを阻害している問題について、いかに開かれた状態で話し合いができるか。それが私の見ている限りだとまずは一番大事なところかなと思ってますね。
市橋:ありがとうございます。
渡邊:ちょっとだけいいですか。すごく難しいのが「説明しなきゃいけない」ということで。結局「数値で説得しなければ、次のことに進めません」という世界がある一方で、実際問題大事なのは目の前の人たちとどう関わるか。その行ったり来たりがある中で、「数値として示さなくても、それはいいことだ」というある種の権限委譲がなされてないことが、とても難しくしていると僕は思うんですよね。
市橋:いや、本当にそのとおりです。僕も(ウェルビーイングを)「数値で測りましょう」「こうやっていきましょう」という答えを求めていたわけではなくて「実はやっぱり難しいよね」という逆の割り切りは必要になってくるなと。
それが私たち、ビジネス側のマネージャーであったり、経営者側にこれから求められるところになってくるんじゃないかなと。
市橋:それからウェルビーイングとか多様性があって、Self-as-Weの感覚で私たちを主語に(することで)、「本当にベストなことって何だろうか」とフラットに会話できる環境が(できる)。それが生き生きとしたチームとか成果を上げていくことにつながるんだと信じてやっていく。
それが、この「ビジネスの未来」を作っていくために必要なんじゃないかなと、1年半「QUINTBRIDGE」を運営する側の立場にいて感じているところなんですね。
私たちは年間400回、毎日のようにイベントを開催してるんですけど、7割ぐらいは実は会員の方々に企画を持ち込んでいただいて、うちのメンバーと一緒にブラッシュアップをしています。みなさん、それは無償でやってくれるんですよね。それ以外に勉強会なんかもどんどんやってくださっている。
この方々を見ていると、もう本当に生き生きしてるんですよ。そこから、その生き生きした人たちが連れてくる人たちも、新しく知り合った人たちも、すごく生き生きしていて。もうこれがウェルビーイングだなと感じています。
だから次のビジネスの未来において言うと、こういう場の設計が、あらゆる場で必要になってくるなと。「QUINTBRIDGE」のようなオープンイノベーション施設だけじゃなくて、各組織に必要になってくるなと感じているところです。
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