
2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
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社会の大変動に対抗し、新時代の組織づくりと経営戦略の本質を掴むヒントをお届けすべく開催されたSmartHR Next 2023。本記事では、株式会社メルカリ執行役員CHROの木下達夫 氏、株式会社SmartHR 執行役員・VP of Human Resourceの薮田孝仁氏、高倉&Company合同会社共同代表/ロート製薬元取締役(CHRO)の髙倉千春氏が、公平な評価をするための「枠組み」の重要性をお伝えします。
髙倉千春氏(以下、髙倉):薮田さん、今のお話を聞いていて共通項もあると思いますけど、どうですか?
薮田孝仁氏(以下、薮田):(共通項は)ありますが、今日は学びなのでもう話すのをやめておこうかなと思ったりして(笑)。
髙倉:(笑)。
薮田:本当におっしゃられたとおり、多様化していく上で、わかりやすい言語化は確かに大事だなと思います。
髙倉:そうですね。
薮田:今、我々の企業規模は1,000人を超えるか超えないか、メルカリさんの半分ぐらいで、人事制度ポリシーなどが言語化されているわけではありません。
(メルカリさんの)「Go Bold」に対して「Bold Challenge」でしたっけ? バリューに連携している人事制度ポリシーはわかりやすいなと思います。今後Webサービスのように制度をどんどん変えていく考えもあると思うんですけど、変える時にはポリシーがないと軸がブレちゃうじゃないですか。
髙倉:そうですよね。
薮田:これがしっかりあるのがすばらしいなと思います。
髙倉:何を大事にしている会社なのか。そこに求心力を求めていかないと、多様性が活きないというんですかね。
木下達夫氏(以下、木下):そういうことですよね。
薮田:(メルカリさんは)言葉選びがすごくて、英語ネイティブでもネイティブじゃない人でもわかりやすい英語を使っていて、そこが浸透の1つのポイントになっているんじゃないかなと思います。
木下:言葉選びは御社もこだわっていますよね。
薮田:そうですね。我々は日本語ネイティブなので話しやすい、社内で使われやすい言葉をバリューにしています。
髙倉:今、バリューやメッセージの話を薮田さんから聞いたんですけど、SmartHRさんではどんな人事制度を作って改革してきたのか。
薮田:そうですね。我々は今1,000人前後の規模ですが、「well-working労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる」をミッションとして運営しております。
(社員数は)今は913名、そろそろ1,000人になるかなと思っています。私が入社した5年前はまだ100人未満だったので、ここ5年でかなり増えていきました。
髙倉:すごい成長ですね。
薮田:当初はSmartHRのような労務サービスが世の中にたくさんあったわけではなかったので、早く作って早く展開していこうと。そのため即戦力として100パーセント中途採用で採用してきました。
そんな中で「納得感のある評価制度を作らなくちゃいけないな」と評価制度も作ってきました。今後は「育成文化の醸成」「将来の経営人材を増やす」を重要視していこうと思っています。
髙倉:なるほど。
薮田:1,000名まではいったんですけど、これから持続可能な組織にしていく上で人材の育成はかなり大切だと。もう1つ将来のリーダー層をもっと増やさなくちゃいけないし、リーダー自身の成長も必要なので、そこを伸ばしていこうと考えております。
髙倉:なるほどね。すごくおもしろいですね。
薮田:(人事)制度もちょっとご説明させていただきます。今の人事制度には「制度タイプ・等級・評価・報酬」とあって、(スライド)左(制度タイプ)から順番に決めています。一番左が「制度タイプ」で、SmartHRにはエンジニア、デザイナー、営業もいれば、たくさんの職種があるので、職種に応じて制度タイプの性質を決めます。
次にその職種に応じて「こういう能力がある人はこの等級だ」と「等級」を決めます。等級が決まれば等級に基づいた評価の難易度が決まるので、その後「評価」を決める。最終評価が決まれば、それに応じて成果給を決め、ベースとなる「月額昇降給」が決まる。こういった流れの制度になっています。
昔はこのタイプの制度はなかったんですよ。50名、100名の時は全員が同じだったんです。でも職種が増えると求めるものが変わります。
薮田:例えば(スライドの)上の評価で「ボラティリティ(資産価値の変動率)が大きい」とあります。例えば半期で成果が上がる営業の方であれば、良い成果を取れる時もあれば、半期の調子や市場の環境でちょっと悪くなることもある。その時に給与を下げるのかと言うと、ベースを下げるのはかわいそうですよね。
木下:そうですよね。
薮田:だからインセンティブで影響を与える。
髙倉:なるほど。
薮田:(スライド)真ん中のところはエンジニアの方などに多いんですが、一定の能力があればボラティリティはそんなに大きくない。この方たちにはインセンティブより、ベースに影響を与えるようにしましょうと。こうやって職種に応じて、制度に柔軟性を持たせていった。これが50人から1,000人になってくる間の変換ですね。
髙倉:おもしろいですね。人事制度は組織の成長のステージごとに違ってきて当然だと思うんですよね。(組織の規模が)小さい時は一人ひとりが見えるから。
薮田:ああ、そうですね。
髙倉:「そんな枠組みなんかいらないじゃん」というところから始まるんですけど、さっき50人から次の段階、100人から次の段階になると、公平性や納得性がいるから枠がいる。いろいろな職種の人が集まらないとビジネスにはならない。だから「評価の基準はどうするのよ」と評価のかたちを作られた。
薮田:おっしゃるとおりです。
髙倉:作られる間のディスカッションというんですかね。まさに木下さんのところも納得感の醸成にすごく苦労されたと思うんですけど、職種ごとにいろいろあるじゃないですか。「うちの職種はそんなんじゃ困る」とか、ここらへんの内部の意見調整はどうしてきたんですか?
薮田:とりあえずは2軸あって、1つはメルカリさんと同じように毎月サーベイを取っています。
髙倉:へえ。
薮田:評価の後だけに取っているサーベイで、評価の満足度を聞いています。まず従業員(評価されている方)の満足度がどれくらい高いかを聞きます。これが1つ目の軸です。もう1つは、実際に評価する方(マネジメントされている方)のリアルな声を聞くという、2軸でやっております。
髙倉:なるほどね。きっと何のために評価をしているかにもよるんですよね。私も25年ぐらい人事の執行(役員)をやっていて、評価の納得感は永遠の課題なんですよね(笑)。
でもどこかで納得してもらわなきゃ困る。ここらへんはそれぞれにうかがいたいんですけど、薮田さんは社員の満足度と評価する側の2軸とおっしゃいました。具体的にはどんなことをしてきたんですか?
薮田:そうですね。その前に、評価は満足度が高いだけでは良くないと思っていて。
髙倉:なるほどね。
薮田:成果を出してない人を評価しちゃっていたり、逆に全員評価が高いけど事業が良くなかったり。それは良くないことなので、そこと比べて問題ないかをまずは見たほうがいいかなと思いますね。
髙倉:なるほど。個々の評価は高いのに「そこの事業部の成果が出てないじゃん」という話だと。
薮田:ああ、そうです。
髙倉:よくありがちな「それは何だったんですか」という話(笑)。
薮田:半期に一度評価会議をやって、執行役員や経営陣の目でどのグループがどのくらいの評価分布になっているかを見る会議をちゃんと設定しています。
髙倉:なるほど。目線を合わせるということですよね。そのあたり木下さんはどうですか? やはり評価者の目線はすごく大事だと思うんですよね。言ってみると、上司力をどう作るかみたいな。外資では「ピープルマネジメント」と言っているんですけど、このあたりはメルカリではどんなことをしてきたのか。
木下:そうですね。最初の1回から同じ目線になるのは難しいなと思うので、ある程度何回かは評価サイクルを回して。
髙倉:そうですよね。
木下:それをやりながら学んでいくところはあるのかなと思っています。何が軸なのかが大事で、我々にはバリューが明確にある。メルカリで言うグレードの3であれば「こういうバリュー行動を求める」と言語化して、それをマネージャーがお互いに自分の言葉で話せるぐらい理解をすると、キャリブレーション(調整)の会議でも目線が合いやすいのかなと思いますね。
髙倉:なるほど。
木下:例えばさっき職種の話がありましたが、エンジニアの方だと「エンジニアの仕事の性質においてどんなバリューが発揮されるか」に翻訳が必要じゃないですか。
髙倉:そうですね。
木下:そうすると、3つのバリューは一緒でも、エンジニアはエンジニアのバリュー定義があった方がいいねと。(メルカリには)エンジニアキャリアラダーというものがあるんです。例えばエンジニアにおける「Go Boldはこういうことだよね」と、もう少し踏み込んで言語化しているんですよ。それをやっていくことによって、より目線は合いやすくなるかなと思います。
髙倉:具体的な行動がどういう評価であるのかを、みんなで話し合って目線をそろえていくんですね。
木下:そうです。キャリブレーション会議はかなり時間がかかりますが……。
薮田:あれはかかります。我々も言語化しています。「エンジニアのこのバリューの具体的にグッドな行動はこう」「これはNG」ということが5~6行でザーッと書かれていて、みんなが認識してそれに基づいて評価しています。
髙倉:なるほど。もう1個聞きたいんですが、評価とは戦略の成果だと私は思っていて。でも戦略の方向性は変わっていくじゃないですか。だからその期において「この戦略の意味が大事だな」「この価値が大事だな」と思ったら、ちゃんと追わなきゃいけないと思っているんですけど。
評価者とその戦略性というのかな。「全社戦略はこれなんだ」というのを評価者が知らないとつけられない気もするんですけど、薮田さんはどんなふうにしていらっしゃいますか。
薮田:おっしゃる通りですね。これ(スライド)はSmartHRの評価の軸です。左側が「成果(評価)」です。期初に「ミッション」を立てて、その目標の「達成度」がどうか。右が「行動評価」で「7つのバリュー」と「チームワークで働く技術」を見ます。右側はバリューなので、事業の状態が変わったとしても変わらない。左側は変わることもあるので、ここは変えていいかたちにしています。
髙倉:なるほど。
木下:(メルカリでは)全社のOKR(目標管理ツール)があって、部門のOKRがあって、チームのOKRがあって、自分のOKRがある。ある程度OKRが連動しているので1対1の関係にはしてないんですけど、一人ひとりにちゃんとつながってブリッジすることを求めています。
髙倉:そうですよね。
木下:マネージャーや部門長たちには、そこのコミュニケーションはすごく丁寧にやってもらっていて。評価の納得が低い方のほとんどは、期初の期待値設定が適切じゃなかった。
薮田:本当にそうです。
髙倉:そこですよね。最初が大事。
木下:最初が本当に肝心ですね。期待(値)がちゃんと設定されているから、期待以上だったのか、期待未達だったのか、期待どおりだったのかという話ができるので。かなりそこが一丁目一番地だと思います(笑)。
髙倉:これができると、グローバル規模で経営に絡む全員の意識が高まってくる、いい制度になると思うんです。
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