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経営者力診断スペシャルトークライブ:キーエンスに学ぶ!高付加価値経営はこうして実現する(全5記事)

営業利益率50%のキーエンスに学ぶ組織のあり方 焦って人を増やそうとするベンチャー企業に欠けている視点

本イベントは、高付加価値経営や生産性の高い組織開発を目指す経営者、マネジメント層に向けて開催されました。本記事では、キーエンス出身の株式会社カクシン代表取締役CEOの田尻望氏と、株式会社経営者JP・代表取締役社長CEOの井上和幸氏が、競合に埋もれない、商品を差別化するための方法についてお話しします。

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営業利益率50パーセントを実現するキーエンスの理念

井上和幸氏(以下、井上):それにしても営業利益率50パーセントは本当にすごいなと、あらためて思っちゃいますけどね。

田尻望氏(以下、田尻):あれは本当にすごいです。

井上:あの規模にまでなって、それが保てているのが本当にすごいなと思いますね。僕もリクルート出身でリクルートも高収益企業ではあると思いますし、かつてはさらに高かった。今はどっちかというと収益力はありますが、(収益)率ではそんなに高い会社にはなっていないんですよね。

ただキーエンスさんは規模が大きくなりながら、営業利益率がずっと一緒というのは本当にすごいなと思いますね。

田尻:そうですね。もちろんしっかりと営業利益率を保つ秘訣はあるんです。例えば営業利益率を下げて30パーセントや40パーセントで展開していたとしたら、おそらく売上規模は今の5倍や6倍、もしかすると10倍あるかもしれない。

でもキーエンスは「最小の資本と人で最大の付加価値をもたらす」という経営理念のもと、去年よりも今年、今年よりも来年、1人当たりの付加価値生産性を高めることを経営理念の最大に置いている。おそらく最大のポテンシャルに対して考えると、実は規模拡大はしていないと思います。

井上:なるほどね。

田尻:たぶん商品企画の方々が「営業利益率30パーセント、40パーセント程度でいい商品だったら、ほかにもいっぱいネタはあるよ」と言うと思いますよ。

井上:すごいな。一般の会社からすれば相当高いですけどね。

田尻:いや、もう本当にそうですよ。すごい組織体だなと思います。

井上:今の話もすごく重要なポイントですよね。トップラインを見ているのか、その収益力を見ているのか。もちろんそれぞれのあり方だと思うんですけど。

人員を増やして失敗するパターン

田尻:例えばベンチャー企業さまで、とくに資本を受けているわけでもないのに、焦って人を増やそうとする会社さんを見ると、僕は「やめておいたほうがいいのにな」と思ったりしますね。

例えば1人当たりの付加価値生産性、いわゆる1人当たり粗利益高が1,000万円以下の会社さまが「もっと人を増やさないといけないと思っているんですよ」と言っていたら、「まぁ待とう」と言いますね。

1人当たり粗利益が1,000万円ない状態で人を増やしたところで、取り分が減るだけ。高付加価値化ができていない状態でそれをやってしまうと、人を増やした時にクオリティが落ちて、1人当たり粗利益高が600万円、700万円になったらもう利益は残らないです、と。

逆に今いる人たちでもっと高回転できる仕組みにして、同じ人数で1人当たり付加価値生産性、粗利益が2,000万円までいった状態で何人か雇うのなら、理解できます。

1人当たり500万円という年収を与えることができていても、雇用することで1人当たり粗利益高が1,500万円ぐらいまで落ちる。そこからまた2,000万円まで磨いて雇用するならわかるのですが、順番を間違えている会社さんが多いなと思いますね。

井上:そうですよね。最初のお話でもありましたが、高付加価値であることと差別化の2つを満たすこと、そして差別化がないと価格競争になると。僕もいろいろな業界を見ていて、それを前提にしている領域があるなと思うんですよね。

一般的な日用品をメインで扱っている流通系の小売さんだと、基本的には同じものを扱うからとにかく安くする。利益率はかなり極小なんだけど、プラットフォームであることが大事だから、とにかく規模を大きくする。

ただかつてはそれでやれていたのが(今は)うまくいかなくなっています。差別化商品をPB(プライベート・ブランドの略)で出しているところはうまくいき始めているし、それがないとなかなか厳しい。結局は一緒なんでしょうけどね。

差別化が難しい時代の突破策

田尻:例えば流通・小売の方々のプラットフォーム化はコストダウンなんですよ。大量にお客さまから発注をいただくことによって、流通コストをギュンと下げる。

大量に生産できるようになって製造コストを下げることができる。だから粗利益を担保することができる。(かつては)大量生産、大量流通の中でのコストダウンがある意味価値だった。でも流通の発展とともに流通で差別化ができなくなったから、今みんな困っている。

スーパーや小売店と卸の間、メーカーの間の流通に差別化がなくなった。するとお客さまに対してどうやって差別化をするかがポイントになってきます。

みんな品質や流通しか考えてこなかったわけですが、それとエンドユーザーの考え方はまったく違うんですよね。このtoCにいかに強くなるかがポイントなんです。基本的にこれまで卸をやってきた人たちはtoCにとても弱い印象があります。

井上:そうですよね。

田尻:いかにそこを鍛えるかが、これからのブレークスルーポイントかなと思うところです。実は僕はtoCが強いほうでして、お客さんには結婚式場、鍼灸整骨院、美容外科、コールセンターなどがありましてBtoCが得意なんですよ。ここが我々の強みでもあるなと思います。

井上:すばらしい。本当におっしゃるとおりですね。僕らは人・組織から見ていますが、本当にそう感じますね。当然予兆として先ほどのPBも1つですね。アパレルで言えばユニクロさんが強いのはやはりSPA(製造小売業)だからだと思うんですよね。開発から末端まで責任を持って見ているという。

実は(ユニクロさんと)ちょっとお付き合いもあって、ある程度中を知っているんですけど、柳井さんは昔から「売り切る力」のことを言っていました。自分たちが作ったものを責任持ってちゃんと届けて、フィードバックを受けて新しいものを作る。「届けようと思ったらちゃんと届け切るんだ」という執念が根底にあって、あれだけ成長していると思うんですよね。

作るところから売るところまで、分断されずに一気通貫で見ているから強い。最近だとDtoCでネットをベースにしながら自分たちが作って、自分たちが売るという新しい会社が増えています。そのへんとも今日の話はすごくつながると思います。

高品質低価格を実現できる日本製品の価値

田尻:先ほどのユニクロさんの話を聞いて思い出したことがあります。今年私は1ヶ月ほどカナダに行っていたんですが「これは日本がちゃんと価値に気づけば、海外で勝てるところはあるぞ」と思いましたね。

おおよそですけど、日本の方々は海外に住んだことがないんですよね。海外に住んだことがないから、日本に入ってきている海外商品を見て「海外製品はすばらしい」と思っている。でもぜんぜん違います。

例えば日本でマクドナルドを食べると、1,000円も食べればお腹いっぱいじゃないですか、1,000円分も食べれないですよ。実は2023年6月に、戦争前のイスラエルにも行ってきたんですよ。イスラエルのダブルチーズバーガーセット、2,200円ですよ。

井上:高っ! すごいな(笑)。

田尻:ごめんなさい、僕の感想ですけど、肉がパサパサだと感じました。

井上:(笑)。

田尻:おいしさで言うと、絶対日本のほうがおいしかったんです。でも、あっちのほうが高い。

井上:まぁそれはありますよね。

田尻:日本は儲からないから、海外製品は入ってきにくいですし、参入できたとしても日本の中で高付加価値を取れる商品しか入ってこない。つまり世界のトップ0.何パーセントの会社しか入ってこられないんですよね。

つまり、自分たちよりも優れたすごい会社が(海外から)入ってきて、「うわ、海外製品はすごい」と思っているかもしれないですが。でも世界には日本のクオリティ以下の商品がたくさんあります。その最たる例として、カナダでは殺虫剤で虫が死なないという。

井上:それ、すごいですよね(笑)。売っている意味があるのかという感じですけど。

田尻:一応2分後ぐらいに死ぬんですよ。でも2分後なので、なんかちょっとかわいそうなぐらい苦しんでいる。しかも液体なので、壁につくんですよ。

井上:汚れますよね。

田尻:だからKINCHOさんの製品のようにシュッ、バシュッとはいかないのですね。それが1本1,000円するんですよ。

井上:日本はそういうところでは埋もれているんでしょうね。

海外市場で勝つためのポイント

田尻:現地の方々の困りごとに対して提供できれば、もちろん売れる。あとなぜユニクロさんの話をしたかというと、僕がカナダに行ってびっくりしたのが、おしゃれな人をあまり見かけないなと感じたのです。

ユニクロは日本の中では「機能性がいいよね」「価格よりはいいよね」と。でも、そこまで独自性のあるおしゃれだとは言わない。

でも正直なところ、それで十分なんですよ。だからもし日本人がお客さまの足るを知るニーズで作った製品を海外で売ろうとしたら、その市場のニーズを捉えなおす必要があるわけで、商品のスペックをどんどん上げていくことではない。

「そんなハイクオリティなものでお腹を満たしたいわけじゃない。飯をくれ」というニーズを理解する。このへんはマーケットに対してのアプローチを考えなきゃいけないところかなとは思います。

井上:なるほど、ありがとうございます。ここまでお話しいただいて、みなさんもだいぶイメージはできてきたかなとは思うのですが、ほかに何かお話しいただけることはありますか?

たぶん今日みなさんも「本当の意味でマーケットを捉えきれているのだろうか」「取り組みきれない」と思っていらっしゃると思うんですよね。

「ニーズとは、利用シーンの中にある困りごと」

(チャットを見て)

井上:今ちょっとご質問をいただきました。「私の会社はBtoC向けで多くの方に認知されており、それなりの規模の市場やシェアを持っています」、すばらしいですね。

「その組織の中で私の部門はBtoB向けに独自で営業をしています。なかなか付加価値をつける戦略が出せません。BtoC向け商品をビジネス向けに転換できないでしょうか」というご質問をいただきましたが、田尻さん、どうですか?

田尻:なんの商品なんですかね?

(チャットを見て)

おぉ、なるほど。結局BtoBでもBtoCでも変わらないのですが、ニーズとは「利用シーンの中にある困りごと」、これがキーポイントです。

もう1回言っておきます。ニーズとは、利用シーンの中にある困りごとです。これはもう絶対に変わらないです。例えばキーエンスのセンサーであれば、工場という利用シーンの中にある困りごとを解決していますし、BtoCであれば、生活者の日々の生活の中にある困りごとを解決するのがBtoC商品です。

BtoBの製品だと例えばオフィスや倉庫、さまざまなところがあると思うんですけど、その中にある困りごとに対応するのがソリューションになります。今挙げていただいた会社さまだと「BtoBの利用シーンの中に、その製品が解決できる困りごとはありますか」というのが答えです。

この会社さんは違いますけど、例えば飾り物系だったら、生活シーンの中では友だちを呼んだ時に「殺風景な部屋ね」と言われるのと、「この部屋、きれい」と言われる差によって、「こういうのを飾っておいたほうがいいよね」となるんですが、これをBtoBの中でやりたいか。

BtoBだとできる限り仕事に集中できるように、利用シーンの中に飾り物はいらなかったりする。でも社長室にはいるかもしれない。そんなふうにC向けに売っていた商品が解決できるニーズが、BtoBの利用シーンの中にあるのであれば絶対に売れます。

ないのであれば、残念ながらそれはニーズがないのでお客さまは買わない。BtoBの購買担当の方がそのニーズに気づいているかが不明なので、そこに気づかせてあげると売れることもあるかと思います。

会社名だけでなく商品が何かまでわかると具体的なアドバイスもできるかと思いますので、またご相談いただければと思います。

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