
2025.02.06
ポンコツ期、孤独期、成果独り占め期を経て… サイボウズのプロマネが振り返る、マネージャーの成長の「4フェーズ」
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社会の大変動に対抗し、新時代の組織づくりと経営戦略の本質を掴むヒントをお届けすべく開催されたSmartHR Next 2023。本記事では、株式会社小西美術工藝社 代表取締役社長/元ゴールドマン・サックス証券金融調査室長のデービッド・アトキンソン氏、株式会社SmartHR取締役COOの倉橋隆文氏、株式会社We Are The People 代表取締役の安田雅彦氏が、これからの時代における、経営者にとって重要なマインドを語ります。
安田雅彦氏(以下、安田):ちょっと話のスコープを広げて、このセッションの最後のほうなんですけど。生産性を高めて豊かになるという話をしてきましたが、アトキンソンさん。そのためにいったいどんなことをすればいいんですかね。
デービッド・アトキンソン氏(以下、アトキンソン):生産性向上を実現するには何が必要なのか。一般的に言われていたことをイギリス政府がいろんな学者に頼んで、それで何十ヶ国の何十年間のデータを全部分析をして一定の科学的根拠を出したんですね。
まあ余計な話なんですけど、私としては日本はこういう分析が少なすぎると。
安田:なるほど。
アトキンソン:みんないろんな概念でいろいろ言い合いますけれども、根拠になってない。ここで見ますように、一番トップに来るのはEntrepreneurship(アントレプレナーシップ:起業家に必要なあり方)なんですよね。私が英語で残してるのは、発音がネイティブですねって自慢するためでは決してない。
(一同笑)
日本で「起業する」というのはよく誤訳されるんですよね。本来はそうじゃなくて、今までにないリスクを取って挑戦することがEntrepreneurshipなんです。
安田:オーナーシップとかいろんなものを含めたものということ。決して企業を起こすだけのことじゃないってことですね。
アトキンソン:そうです。だいたいイノベーションと言いますか、生産性向上の8割ぐらいは既存企業です。だから、新しい企業とか成長分野とかだけに依存してるわけではないです。
これが、相関関係ですけど0.91。決定的なものなんですよね。Entrepreneurshipって誰が決めることかと言うと、社長が決めることだと。
社長が「いや、もうやりましょう」ということで決めて、その次に何が必要なのか。新しいことをしなきゃいけないんで、それを実現するのにはコストがかかりますよね。そうすると設備投資(が必要になる)。
ただここにありますように、アイデアがないのに、ただ単に設備投資を増やせば良くなるということではなくて。アイデアを実現するための設備投資という順番を守らなきゃいけない。
今日は人的資本という話なんですけど、この3番目に出てくる社員教育です。今でも新しいことに挑戦すると、それを実現するためのコストをかけますと。ただ新しいことなので、研修が必要になってきますよね。
アトキンソン:だからいろんな新しいビジネスモデルとかを考えなきゃいけないっていうことで、その4番目として技術革新なんですよね。
日本だと生産性向上イコール技術革新。日本は技術大国だから技術革新でなんとかなるんだとか言いますけど、ここで見ると0.56しかないです。これがなぜ重要なのかと言うと、日本では国民1人あたりの特許の件数が世界2位なんですね。ただ1回も使われることのない特許については、ダントツ世界一なんです。
要するに、技術革新をしてるかもしれないけども、普及してないんです。さらに残念なことに、国内で使われてないのに海外でいっぱい使われていて、「日本人が作った技術なのに、なんで外資系がそれを全部活用していて、日本ではできないの?」という不思議な現象が起きてます。
この順番という流れで見るとやっぱりこれを回さなきゃいけない。これはものすごく重要なポイントなんですけれども。賃金を上げることは生産性向上を必要として、生産性向上がなぜできるかと言うと、今までにないイノベーションを起こしていくと。
要するに人口が増えない中で賃金を上げていくことは、イノベーションによってのみ実現できるものであると考えなきゃいけないんです。
さっきの海外の賃金のグラフがあったんですけど、Amazonがあったとはいえ、別に全部のアメリカ経済がAmazonで支配されてるわけではない中で、何が重要なのかと言うと、ほとんど全分野・全企業での、年率で1パーセントのイノベーションです。強烈なイノベーションじゃなくて、毎年毎年確実に1パーセントだけ上げていけばいい。
安田:小さなイノベーションを確実に起こすと。
アトキンソン:そう。海外の賃金との違いは、あれは日本の賃金がずっと横ばいで、海外がドーンって上がったんじゃなくて、海外は確実に小さな差が毎年毎年続いてるんですよね。あの賃金の差は30年間の毎年1パーセントの差です。
安田:なるほどねぇ。実際にそれを組織に起こすとなるとイノベーションが必要不可欠ということなんですけど。このへんはいかがですかね。
倉橋隆文氏(以下、倉橋):はい。そこはもうなんの反論の余地もないですし、それはおそらく経営者の仕事なのかなと、とことん思いますね。逆にアトキンソンさんとしては、従業員の立場に立ったらそういう経営者を探したほうがいいという見解なんですかね。
アトキンソン:まあ、それしかないですよね。最終的にはやっぱり経営者の問題なので。この社長についていくのか、見限るのかという時代になってると思いますけどね。そんなに難しい話じゃないんですよね。この社長についていくというのはカリスマ性じゃないんです。売上が増えてるのか、いろんな新しいことに挑戦しているのか。
例えばDXを実際に入れてるのか。組織として定期的に変えていってるのか。お客さんにきちんとした調査をしてるのか。ちょうど昨日別のところで講演会をやった時に「価格転嫁ができません」と散々言われました。
「なんでできないんですか」。「いや、(海外では)常識だからって日本ではできません」と。
(一同笑)
「そうですか」と。「これはなんの根拠があるんですか」と聞くと、「いや、それはみんなわかるよ」と言われて。「いや、でもお客さんに聞かないと、あなたが勝手にそう思っているだけで、実際にはそういう事実はないんじゃないの?」って、さっきの従業員に聞いてるかどうかの話と一緒ですよ。
出世の意欲があるのかないのか。これ以上の給料を上げるためには何が必要なのか。このやり取りをしてるかしてないのかと同じで、マーケットに聞かないまま勝手に価格を引き上げてもう「できません」と。
安田:でもなぜなんでしょうね。僕はずっと外資系大企業で、今は日本の中小企業ばっかり、コンサルを20社ぐらいやってるんですけど。僕はアトキンソンさんがおっしゃることがすごくよくわかるんですよね。アトキンソンさんから見ると、なぜこうなるんですか?
アトキンソン:個人的な見方で別に根拠があるわけではないんですけど、自分の実体験からすると、当事者には聞かないんですよね。
安田:直接ね。
アトキンソン:妄想だけで「価格転嫁ができるかできないのか」って、社内会議をやっても無駄ですよ。なんの根拠があるのかと。やっぱり市場との交渉をしていないと思います。
安田:あぁ~。
倉橋:それは市場との交渉になるんですね。なるほど。
アトキンソン:社員とそういう意見交換をしてると思えないんですよ。外資系ではもう直接上司とやりとりしていて、「人事部ってなんですか」と。辞める時と契約する時に行くだけであって、異動は人事部が決めるので理解できないんですよね。
安田:今アトキンソンさんのおっしゃってることとして、イノベーションを起こすためには、もうもともとの企業の文化とか関係性を見直すことが必要ということだと僕は理解するんですけど。倉橋さん、いかがですか。
倉橋:そうですね。今の話ですごくおもしろいなと思ったのは、さっきの従業員の給与交渉と同じだと思っていて。自分のスキルを上げて、その分交渉して給与を上げてくださいと。
同じ発想を社長はお客さんとやらなきゃいけなくて。自分のプロダクトサービス、イノベーション起こして、プロダクトが良くなりました、サービスが良くなったらお金をもっとくださいという。そういうマインドセットがおそらく必要なんだろうなと今すごく思いました。
倉橋:一方で、今回ご覧になっていただいてる方で、いわゆる中間管理職の方もいらっしゃると思います。経営レイヤーでやるべきこと以外もあると思って。まさに先ほどアトキンソンさんがおっしゃっていただいたように、DXみたいなところは比較的簡単に生産性が上げられることかなと思っています。
DXの具体的な効果は、やっぱり生産性向上だったりコスト削減だったりするので。経営者は経営者で、その価格転嫁、ビジネスモデル、商品のパワーアップを担っていただきつつ。中間管理職のポジションにいらっしゃる方はぜひ、設備投資(をしてください)。
要は人が少なくなっていってるんで、人にやらせる仕事をどんどんシステムとか設備にやらせたほうが生産性が良くなると思っています。
アトキンソン:でもこれは危険な結果ですね。
安田:危険な結果?
アトキンソン:うん。だってこれは業務効率化コスト削減っていう話でしょ。あれは日本国内と海外の典型的な違いです。海外のビッグデータを活用することによって売上を増やしたいという前向きな話ですよね。
コスト削減をするためとなると、ある意味で賃金を下げていこうというマイナスな発想ですよね。これには発展性がないんですよ。
コスト削減することによって、例えばそこに使われてる人を別の売上を増やすために転用していくっていう話であればわかりますけれども。ここで見るとたぶんそうなってないと思いますよね。
倉橋:コンビネーションになってることが必要ですね。
安田:でもアプローチとしてはそうなんですよね。余計なことをやってる時間・コストを含めて、よりクリエイティブ・イノベーティブなところにいけるようにすることが効果(的)だってことを、たぶんおっしゃってるんですよね。
アトキンソン:ここで見ると、例えば既存製品・サービスの高付加価値化が21パーセント。サービスの販路拡大が21パーセント。やっぱり2割ぐらいの会社はデジタルを使うことによって、どんどんプラスの方向に持っていこうという話で。
ビジネスモデルの変革もいいことだと思いますけど、ただこれで26パーセントですよね。ということは、ほとんどはやっぱりそう(プラスの方向に持っていこうとする発想)ではないです。今までの考え方は、やっぱり変えるべきもんだなとは思いますけどね。
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