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亀山流、今日本の企業に必要なものとは?~オープンイノベーションと事業創出~(全3記事)

この30年、日本はお金以上に「勇気」を失った DMM亀山会長が語る、日本企業を転換させるためのカギ

「失われた30年」を打破し、日本がオープンイノベーション先進国へ変わるため、国内のオープンイノベーションの雄が集結したイベント「JAPAN OPEN INNOVATION FES2023」が開催されました。今回はその中から、DMM会長の亀山敬司氏と株式会社eiicon中村 亜由子氏のセッションの模様をお届けします。本記事では、亀山氏が大事にしている「空気を読まない行動力」の大切さなどを語りました。

前回の記事はこちら

“資金は出しても勉強はしない”トップ層

中村亜由子氏(以下、中村):しっかり事業が生まれて、Jカーブを描いて黒字化して、それがだんだん上っていくのって、だいたい7年から8年ぐらいのスパンが多いなと思います。

事業が生まれるまで3年、事業が黒転するまで5年、隠しておけるような予算というか出島を取れたら、わりと成功させられる可能性が高まるんじゃないかなと見ていて思います。

亀山敬司氏(以下、亀山):ただ中には、大手とかでたまにいるんだけど、金だけ出してぜんぜん勉強しない人もいるんだよ。

中村:大手企業の方で。

亀山:なんとなく「出してあげるよ」と、あっちこっち適当な話に乗って投資する。だいたいその場合は全部スッちゃうんだけどね。企業側からすれば、そのへんに関しては理解をしないといけないし、勉強しないといけないんだよね。

スタートアップ側は、自らをうまいこと売り込んで、なんとか資金を引き出すなり仕事を引き出すなりすればいいと思うんだけど。

やはり企業側の立場として、ただお金だけ出して、何も勉強しないで理解しませんというんじゃあまりおもしろくないからね。せっかくマッチングするんなら、中に入り込んで本質の話も聞いていく。

「大人は、過去は知っているけど未来はわかってない」

亀山:俺なんか、今でも20代のスタートアップやってるやつらに会って、今のトレンドとかを聞いている。六本木で毎週金曜日に「awabar(アワバー)」とか、そういうところに行ったらいろんなやつが集まってくるから、そんなやつらと話ができて、今どきのトレンドがわかるのよ。

その情報は、インターネットよりも半年早い。テレビはさらに半年遅いからね。だからそれで半年、1年早い情報も入るし、その中で新しいトレンドや、今後どうなるのかも理解しやすいし、もしかしたらビジネスのパートナーが見つかるかもしれない。

俺たち大人は、過去は知っているけど未来はわかってないのよ。未来はやはり20代とか30代のやつに聞くしかないということで、もっと謙虚に学ばないといけないと思ってるよ。

村田宗一郎氏(以下、村田):ありがとうございます。トップからの歩み寄りや権限委譲はどんどんしていったほうがいいと理解しました。ただ、やはり学ばないといけないというのはすごく重要だなと思います。

不確実な時代、ビジネス商機をどこに見出すか

村田:まさにトレンドの話が出たところで、設問3に移ります。特にプラスに転換させるトレンドや事例、まさに日本の未来を語っていく上で学ばないといけないということもあって、現時点で亀山さんや中村さんが「転換させそうだな」というトレンドや事例って何かお持ちだったりしますか? では中村さんから。

中村:先ほど「不確実」という話が出ましたが、本当にVUCAの時代で、一歩先もわからないというところはあると思うのですが、あとは何かが変化してゲームチェンジが起きそうなもの。例えば法改正などが挙げられますが、やはりそこにはビジネス商機が非常にあるなと思っています。

例えば今日は生成AIのセッションがありますが、あれは研究者の方々も「こういうふうになるんじゃないかな」とお考えですけど、結局それがどうみんなの生活に根付いていくのかとか、どこまで変化させるのかは、まだわかりきっていない部分が多分にあると思います。ただ、やはりチャンスが非常にある部分なので。

私も最近、大学生の方の起業ピッチを審査することもあるのですが、私が想像しているものとはまったく違う状態のものが出てくるので。これをどう捉えているのか、これからの未来を作っていく若手がどう捉えているのかを聞きながら、キャッチアップしていくのは非常に大切だなと思います。

さまざまな変化が日々ある中で「これはどうしよう? どう対応しよう?」ではなくて、そこを商機と捉えられるかというのは、だいぶ違うんじゃないかなと思っています。

村田:ありがとうございます。

ブームを予測できても“実際に行動する人”は少ない

村田:亀山さんは最近のトレンドとか、どのあたりに注目されていますか?

亀山:最近だとオンラインクリニックとか、あとはEV充電サービスとかはあるけど、それもどっちかというと現場が持ってきたからで、俺が見つけたわけでもないよね。

さっき「直接(若者と)会うと半年、1年(トレンドが手に入るのが)早いよ」と言ったけど、ガセネタもいっぱいあるわけよ。「これからはVRの時代ですよ!」と熱く語っているから乗っかったら、「ぜんぜん来ないじゃない。いつになったら来るんだよ?」みたいな(笑)。

なので、別にテレビでも十分。『Nスペ』とか、『クローズアップ現代』『WBS』とか、あとはNewsPicksとか日経を読んでおけば十分かな。そういうメディアで、ちょっと遅くてもそのタイミングである程度トレンドが来ているかどうかはわかるから。

例えば「ロボットの時代が来ます」「AIの時代が来ます」とか、偉い人たちがしょっちゅうテレビでやっているじゃない。

偉い人たちの話を聞いていれば、だいたい未来は見えているわけよ。見えているけどやっていないだけなの。だから、昔も「インターネットの時代だ」とか言っていたけど、結局はやる人とやらない人がいただけなんだよね。

中村:確かに、行動した人は少なかったかもしれません。

大事なのは「空気を読まない行動力」

亀山:5年か10年前に航空会社が経営破綻したことがあったよね。たまたまテレビで見たんだけど。

中村:ありました。スカイマークですね。

亀山:そう、スカイマークだ。ニュースで飛行機を見た時、ここに「DMMスカイマーク」という名前が入ったらカッコいいなと思ったわけ。もちろん飛行機なんてやったことないんだけどね。

だけど、もし投資に入れて財務体質を改善すれば、運営はもともと専門家でやってる人がいるだろうから、やれるかもしれないと思ったんだ。だけど、別に何のコネもないわけよ。

そこでスカイマークの予約受付のところに電話してみた。「1の方は予約、2の方はナントカ、3の方は、その他の方は4」と音声ガイダンスに沿って順番に押していくと、最後にオペレーターが出たわけよ。

「こういうことで社長に会えませんか?」と話したら、翌日ぐらいに秘書から「聞いてみます」と電話があって、その翌日に「お断りします」と速攻で来た。

中村・村田:(笑)。

村田:亀山さんが直接オペレーターと話して、社長につないでもらって。

亀山:うん。それって、ただの予約サイトから伝わっていったわけよね。結局は断られたけど、これが「空気を読まない行動力」というやつかな。だから「恥を恥とも思わない」というのは大事なことで、実際には、途中で恥ずかしいと思うこともあるんだけど(笑)。

だけどそんなふうにすれば、その時に社長までは会えなかったんだけど、とりあえず社長の秘書まで行ったので、やろうと思えば何でもやれるということなんだよね。

1年調査するより1個作るほうが、早くノウハウが手に入る

亀山:だからさっきの話で言うと、テレビを見ただけでも、すぐに動けば十分時間的に間に合うってこと。連絡を取ってみたら、意外とつながることもある。10回やったら1回ぐらいは、もしかしたらそこからチャンスがあるかもしれないということなんだよね。

そういった面では、結局トレンドというのは、ほとんどの人がわかってはいるけど、やっていないだけかなという気がするんだよね。だって別にEV充電サービスなんて、「なんで今、EVなんですか?」と聞かれたら、なんか時代の流れ的にEVっぽいじゃない(笑)。

中村:(笑)。

村田:(笑)。ぽいです。

亀山:「ぽい」なら、いけそうじゃない。太陽光発電の時も、​​買取保証制度ができた時は、時代がソーラーっぽいじゃない。​​

いけそうだったら早急にそれを調べに入って、1個作ってみたらだいたいわかる。素人が作ったらもちろん1個目は赤字。でも1個作ったら、工事費がどれだけかかって、売電でいくらになったら収支が合うかはだいたいわかるんだよね。

1個作るのと1年調査するのじゃ、当然1個作るほうが早い。そこで1億円スッたとしても、その後、実戦のノウハウが手に入って、次の段階に早く行けてチャンスがあるということかな。だからそういった面では、さっき言ったようにジャブっぽいのを打ってみたら、だいたい業界がわかるというのはそういうことなんだよね。

中村:確かにそうですよね。

調査データだけを見ていても当てにならない

亀山:高いコンサルを雇って「市場調査をしました。市場規模は何兆円で、そのうちの何パーセント」とか言われても、そんなことぜんぜん当てにならない。コンサルの言っている市場規模のうちの何パーセントを取れるかなんて誰もわからないじゃない。

でも実際やってみたら、売れるものは売れるし、売れないものは売れないわけよ。1個目の太陽光発電所を1億円で作ったとして、5,000万円でしか売れなかったから失敗なんだけど、4,000万円で作れたらビジネスになるというのはわかる。という感じだから、太陽光の市場規模が何兆円あろうが関係ないんだよね。

実際、自分たちが作ったものが売れるかどうか。だからトレンドなんて、たぶんテレビを見ていたら勝手に情報が入ってくるし、「未来はこうなるんだ」と偉い人が言っているとおりで十分かな。

中村:そうですよね。今日も日経新聞で「8つの県がバブルの時よりも個人の所得が多くなった」という記事が出ていて。農作物の高付加価値化で、収益が上がったと書かれていたかと思います。

なので「日本の賃金が下がっている」とすごく言われているけど、確かに平均では下がっているんだけども違うんじゃない? とも思いまして。「日本の農作物いいよね」と言って輸出が増えてきて、普通にそれが反映しているんだなと思ったので、そういうところにヒントはけっこうたくさんありそうですよね。

亀山:そうだね。

この30年、経済以上に「勇気」が失われた

亀山:「失われた30年」で、金とか経済以上に「勇気」が失われたという気はするよね。その中で育っていって、未来が良くなるイメージを持てない若いやつが多いから。でも経済成長率も、いろんな国と比べて10パーは景気が良いし、1パーだと景気が悪いという世界じゃない。

「日本に生まれて最悪ですよ」みたいなことを言っているんだけど、せいぜい違っても5パー、10パーなわけよ。だったら別に日本の中でも、20~30パー成長させる企業にすれば成長するという話になるから。

うちは、だいたいずっと平均130パーぐらいでコツコツと成長してきたんだよね。もちろん5パーの時もあれば50パーの時もあったりして、平均したらそんなものかなと思うんだけど。

それで言うと、世界的には日本は5パー、10パー落ちたのかもしれないけど、30パー上げたら20パー上がるわけよ。日本と海外の差なんて、せいぜいその程度。

日本経済全体が悪かろうが、資本主義ってそもそも「自分さえ良ければ」というマインドを原動力にして成長してきたわけ。中国人だって「中国の国家の経済力を上げよう」とは誰も思っていない。「自分の会社さえ良くなればいい」と思ってやっていて、そのパワーが重なって重なって、10パー成長になっているんだよね。

全員がちょっとだけ勇気を持ち、暗い未来を打破する

亀山:中には100パー成長したやつもいるし、失敗して0になったやつもいる中の、単なる集団でしかないんだよね。だからその集団の中で比較して、「俺は日本人であっちは中国だから有利なんだ」と言っていても始まらない。個人ベースで言えば、中国の中にも0パーのやつもいるし、日本の中にも30パー、50パーのやつもいるわけよ。

そんな括り方で見ているから、勇気がなくなったり未来が暗いんじゃないかと思うんだけど、「うちだけは」とか「俺だけは違うんだ」ぐらいでいいんじゃないかなという気はするんだよね。

みんなが身勝手にちょっと勇気を持って、前向きにいろいろやって、それが束になって日本全体が5パー、10パー良くなるなら、結果としてそれでいいんじゃないかと思うんだよね。

村田:ありがとうございます。

亀山:なんか説教臭いですね。すみません(笑)。

村田:いえいえ(笑)。「失ったのは勇気です」は、本当に明言です。ありがとうございます。

中村:組織に埋め込む2日間なので。

亀山:ちょっといいこと言っちゃった(笑)?

中村:はい。金言。

亀山:じゃあ、今日のタイトルは「失ったのは勇気」にしておいて(笑)。

村田:ありがとうございます。

必要以上に未来を悲観することはない

村田:もっといろんな話を聞きたいところなんですが、早くもお時間が来てしまいました。

亀山:会場の質問とか、できなかったね。

村田:(笑)。そうですね。やりたかったんですが。最後に、まさにこれからの日本を含めて、イノベーションを起こしていく方々が集まっている中で、それぞれ一言ずついただいて終われればと思っております。じゃあ中村さんからお願いします。

中村:実は、この1個目のセッションに亀山さんにどうしても来てほしかったのは私で、この日本をちゃんと捉えていらっしゃる第一人者だなと思っています。「失われた勇気」「権限委譲」、やはり金言がたくさんあったと思います。

若手にちゃんと未来を見据えている人がいるから、その人たちにちゃんと意見を聞くこと、それから勉強すること。

あとは、今のトレンドをどう捉えるかというのは、自分でちゃんと新聞を読んで、メディアを見たらわかるよねみたいなところって、本当に今日からすぐできることばかりだと思いますし、心の持ちようはこの瞬間から変えられるものかな思っています。

オープニングでもお伝えしましたが、そんなに悲観することはない。けれども、待ったなしというのは間違いない。

なので、今からみんなで変えていくことができれば、私たちが労働人口の世代の間に、日本からまた時価総額のトップ10に返り咲くような企業が出てくるんじゃないかなと思っていますので、ぜひこのセッションの「これは響いた」というものを持ち帰っていただけたらいいなと思っています。

村田:ありがとうございます。

しょぼくれる前に「熱いやつら」から刺激を受けたほうがいい

村田:では最後に亀山さん、会場にいらっしゃるみなさまに、ぜひ一言いただければと思います。

亀山:私ももう62になりまして、いい歳なんですけども。

中村:え、62?

亀山:はい。

中村:そうでしたか。

亀山:たぶんみなさんは俺よりも若そうな雰囲気なので、「もうちょっとやっていこうよ」という感じかな(笑)。というか、やっていれば楽しいし。気が向いたら、俺は毎週金曜日に六本木のawabarというところにいるからさ。たぶん1杯500円ぐらいで飲める安い店だからね。

そういったところに来れば、俺じゃなくてもいろんなやつが集まっているし、別に俺じゃなくてもいろんなやつとコミュニケーションを取ったり、他のいろんな人間と会っていくのも1つ。イベントとかそういったところにも、もしかしたら熱があるかもしれないし。

しょぼくれた会社の中でしょぼくれたことをやっていたら、ずっとしょぼしょぼしているよ。だからせめて、なんとなく熱いやつらと出会っていったほうがいいかなと思います。

スタートアップのやつらは野心があってガツガツしているところがあるし、少なくともそういった何かに刺激を受けてもらって、できればそれを会社内に広めてもらえたほうが、本当は会社全体にとっていいと思うんだよね。なので気楽に、よかったら金曜日でもおいでましということで。21時ぐらいから4時間ぐらいいますので。

中村:「awabar」です。

亀山:ということで、とにかくいろんなことで動いてもらえたらうれしいかなと思います。どうもお邪魔しました。

中村・村田:ありがとうございます。

(会場拍手)

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