2024.10.10
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人が辞めないためにはどうしたらいいか、人を育てるためにはどうすればいいのか。本イベントでは、こうした悩みを抱えるリーダー・マネジメント層に向けて、これまでの価値観を変え、組織活性化につながる方法が語られました。本記事では、スコラ・コンサルトのプロセスデザイナーである髙木穣氏が、社員のモチベーションを高めるための対話のコツを明かします。
髙木穣氏:ここからは本の中身にいきますね。本の中にはいろいろな図を15個ぐらい入れています。できるだけいろいろ認識してもらえたらいいなと思っていて、人によっては「これがいい」とか「何章がいい」とか好みが違うみたいなんですけど。僕が中心的に言いたかったのはこの図ですね。
今まではほとんど、組織を無意識に機械と見立てて運営していたんです。機械というのはインプット、信号があったら期待どおりのアウトプットが出ますね。
自動販売機でコカ・コーラのボタンを押したら、コカ・コーラが出てくるのが正常な機械。コカ・コーラのボタンを押したのにファンタが出てきた場合は入れ替えのミスですが、コーラのボタンを押したのに何も出てこなかったら故障になるわけです。
上からの指示に対して、受け取った人がちゃんとそのとおりの行動、アウトプットをしたら正常な機械となるわけですね。上から指示して、方針を落としたにもかかわらず、そのとおりの機能をしていなかったりアウトプットが出なかったら、人間はこれでいうと部品になりますので、不良品ということになりますね。
不良品になるとどうなるかと言うと、他の部品に入れ替えられるか、指導という名の修理をさせられる。「この部品の機能を果たしなさい」となるわけですね。だからインプットを受け取った側の部品のせいになるのが、この機械論的組織観です。だから指示命令・管理が基本ですね。
コントロールする側とされる側が分けて見られます。あとこの組織図を頻繁に変えるのもこっち側の発想ですね。「この電子回路をこう変えたらうまくいくかもしれない」みたいな。僕も前のコンサルの時に中小企業の社長さんと組織図をよく作ったりしていたんですけど。
「この人はここに置いて、こういう部門も作ったらうまくいくんじゃないか」とパズルみたいで楽しいんですけど、現場の社員はそう簡単に切り替えられないので大変です。「部品を入れ替えればうまくいくだろう」的な感じでやっています。当然部品になるので人の感情は、いらないものになってくるわけですね。
極端に言うと、個性もいらないものになってくるわけです。右肩上がりの時代は、これでうまくやってきました。これにちょっとひずみが出てきた、うまくいかなくなってきた時にもう一方の見方、生命体的組織ですね。組織を生命体に見立てる見方です。
生命体は、人体が一番わかりやすいと思うんですけど、細胞があります。それぞれの細胞が連携し合って、人体で言うと生命を維持する方向に向かう感じですね。胃を切除したら、そのあと胃みたいなのが出てくるらしいですよね。
たぶん切除された周りの細胞たちが「胃みたいなのを作ったほうがよくない?」と話し合って、「俺、こう変わるから君はこう変わって」と。そんな会話はしないと思うんですけど、生きるために自然とそういうものを作るのが生命体です。機械と生命体の一番の違いは、生命体の場合はこの細胞一つひとつが自発的に動くところですね。
こっち(機械論的組織)は指示がないと動かないです。信号が来ないと動かない。生命体を組織に当てはめてみると、この細胞一つひとつが個人になりますね。一人ひとりが自発的に動く。そして細胞同士が双方向のコミュニケーションを取る。機械論的組織は一方向で上から下にしか流れません。生命体は双方向に取る。
そして全体としての方向性を持っている。人体で言うと生命の維持ですかね。企業で言うとミッションやビジョン、パーパスですね。業績を上げるというエンジンもあると思うんですけど、その方向で動いていくことになります。こうすると、一つひとつの細胞が生き生きするんですね。
逆に生き生きしないと、うまく活性化しないということになります。これは組織の設計というよりもこういう場を作ることが大事で、我々スコラ・コンサルトはそれをやってきたわけです。通常のコンサルの多くは仕組みを入れてバーンとやりますけど、スコラ・コンサルトは、まずクライアント企業さんに自分が行って1つの細胞になるんですね。
それで場を作ることによって、こういう思いとか問題意識を表に出して、それを組織化して動かしていくアプローチを取っているので。もともと機械論的組織からこれに入れ替えるというよりは、機械論的組織の中にこういう生命体的組織をハイブリッド、入れ込もうという発想で組織変革をやっていました。
この要素をより強めることによってモチベーションは上がっていくんじゃないかという仮説であり、それでいろいろ実践してきました。ここが一番言いたかったところですね。
モチベーションに関して言うと、これはダニエル・ピンクさんという人が2010年に、「モチベーション3.0」を提唱しました。モチベーション1.0は生きるために、食べるためにとりあえずがんばる。
2.0はアメとムチ。3.0は内発的(動機)。これからは3.0だろうと言っています。2.0の時代が終わったということですね。アメとムチ、特に企業では昇進とか昇格はアメとして機能していたんですけど、今は機能しないですよね。
そうすると、この内発的動機にフォーカスせざるを得ないかもしれない。内発的動機は面倒なことに、外から働きかけてそう簡単に生まれるもんじゃない。だから僕らは場を作って、本人が気づき、本人が思いを育てることによって引き出そうとしてきました。
生命体的なものを作ろうとすると、その場を作っていかないといけないわけですね。そうする時に大事なのが対話です。ここで言っている対話は、普通の会話とはちょっと意味を別にしています。普通の会話は言葉同士のやり取りなんですけど、対話は人と一緒にものを考える行為と僕らは定義づけています。
考えるというのは、自分の頭に問いを発して答えを出す行為ですね。「今日の晩ご飯は何を食べようかな」「カレーライスを食べよう」みたいな感じですね。それを人と一緒に問うて考えて、人の意見を聞いてまた問う、考えることが対話という行為だと思っています。
対話をしたあとにはする前と違う認識が生まれていないと、対話はうまくいっていないという見方をします。ただ企業は先ほど言ったみたいに機械論的組織観、昭和の価値観でできています。昭和だけじゃないかもしれませんが。
人を上と下に区分して、下が上の言うことを聞くというメカニズムで人をコントロールしてきたので、対等に話すのはあまり慣れていないんですね。だからなかなか導入しにくい。そんな中で場を作って導入していっているわけです。その時に対話が進化していくためのフェーズは、この対話の4フェーズです。
ウィリアム・アイザックスさんが、先ほど紹介したフィールドブックの中で提唱していたのを、僕らの経験でちょっと作り変えたものですね。人と人とが集まると安定し、差し障りのない会話をします。それから一人ひとりが自分の意見を言い出すと混沌にいきます。バラバラ感が出てきます。
普通は、会議の進行とかで話がバラバラになってくると嫌な感じがしますよね。バラバラにならずに収めたいと思いますけど、僕らはバラバラになってきたほうが進化だと言います。揉めないできれいにいっていると、なんか不安なんですよね。
そして混沌の究極系が対立なんです。慎重派と大胆派の対立とか、営業と事務の対立とか、職種対立もあります。ここでだいたい物別れに終わるんですけども、お互いの言い分を聞くことによって相互理解する。
本に書いてあるのは、僕と嫁さんの事例ですね。新婚当時、僕と嫁さんは晩飯を一緒に食うかどうかで論争がありました。僕は自由にしたいので、「今日飲みに行こうぜ」となったらすぐ飲みに行きたい。嫁さんは一緒に晩飯を食べたい。自由にしたい僕と晩飯を一緒に食べたい嫁さんとの対立があったわけですね。
対立があったらどうするかと言うと、対話のコツに関するコメントは今日ここしかありません。いったん自分の意見を脇に置きます。これを保留と言います。それで、相手がなんでその意見を言っているか、背景を聞く。
背景質問というものを僕もやったわけですね。俺の自由にしたいという気持ち、嫁さんからコントロールされるものかという気持ちは置いておいて、「なんでそんなに一緒に晩飯を食べたいんだ」と聞いたわけです。
うちの嫁さんは三姉妹で、高校1年生の時に大好きなお父さんを病気で亡くしました。お父さんはビール会社に勤めていましたが、晩飯はできるだけ一緒に家族で食べていた。
それが幸せの象徴として嫁さんの意識の中にインプットされていたということで、やはり結婚したからには一緒に晩ご飯を食べようと。なんなら一緒に食べないなら結婚しなくていいぐらいの、「そこまでは言い過ぎよ」とあとで言われたんですけど、そのぐらいの感じで僕は受け取ったんですね。
(嫁さんが)お父さんのことをどれだけ好きかも知っていたので、「それで一緒に食べたかったんだ」と。僕の家はバラバラなのでそんな思い出もないし、同感はできないんですけど、共感的に理解はできるわけです。「そういう立場で、そういう思いだったら、それは大事かもしれんな」と。それによって相互理解が生まれます。
人間はミラーニューロンという鏡、相手の気持ちがわかる神経細胞を持っていて、背景を聞いていくと相手の立場に立って物事を見られる能力を持っているんですね。だからいったん自分の意見を置いて背景を聞いていくと「そういうことなのか」と、相互理解のフェーズになります。
混沌の時は相手の意見を潰そうとしますけど、相互理解の時は「俺の意見もあるけど相手の意見もわかる」と、なんとかしようという葛藤になります。ここまでいくとけっこう良い関係になりますね。そういうことが積み重ねでできていくと、阿吽の呼吸で動ける関係になるという4フェーズになります。これは1対1でもいいですね。
この前クリエイターの方がこれを見て、「これはクリエイターと同じプロセスです」「いろいろ意見を出して、いろいろ検証して、つなぎ合わせて発想するんです」と言っていたので、そういうのとも関係しているのかもしれませんけど。こういうフェーズで場作りをやったりしています。これも(本に)書いていますが、生の声で聞いていただくとまた印象が違うかなと思います。
最後に、書いている内容は最初に言ったように、すぐにできるようなテクニックではありません。みんなで認識を変えていく新しい知恵とか、チームでやっていく知恵とか、それぞれが本音で動ける知恵とか、本音でしゃべり合う関係をどう作るか。こういったチャレンジの1つの改革場面でうまくいった要素を取りあげて並べています。
たぶんすぐにはできないけど、この「タテマエ駆動」。あるべき論、やるべきことをがんばってやるという世界から、それぞれの本音を大切にしながら、本音自然(じねん)と読みますけど、自ずからそうなる動きができるような、スモールグループのチームにしていく。
大きいチームにするとやはり大衆として扱わないとうまくいかないので、一人ひとりが自分らしくいられて、チーム・集団でやっていけるのはやはりスモールグループが適切だと思います。まずそこからそれぞれのモチベーションがアップして一緒に働ける。
喜びを分かち合えるようなグループを作っていただきたいと思ってこの本を書かせていただきました。もしよろしければ、読んでらっしゃる方が多くてありがたいんですけど、うまく使っていただければなと思います。ご清聴ありがとうございました。
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