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【手放すTALK LIVE#40】「教えて!指示ゼロ経営」ゲスト: 株式会社Tao and Knowledge代表/株式会社たくらみ屋代表 米澤晋也さん(全5記事)

口では「任せたい」と言いつつ、手を引けない経営者のジレンマ 関与・管理してしまうトップが経営スタイルを変えられる時とは

管理しない組織や上司がいない会社、給料を自分たちで決める会社など、ユニークな進化型組織を調査する「手放す経営ラボラトリー」。同ラボが主催するイベント「手放すTALK LIVE」に、『指示ゼロ経営』の著者・米澤晋也氏がゲスト出演。社会活動家の武井浩三氏を相手に、役割をまっとうできる場づくりや米澤氏が社長を辞めた経緯などを語りました。

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役割をまっとうできる場づくり

坂東孝浩氏(以下、坂東)10年ぐらいかけて出勤を楽しみにする配達員の方が増えたと言われていましたけど、そうしたら既存の社員もこうなったということじゃないんですか。

米澤晋也氏(以下、米澤):辞めていく社員もいましたけどね。

坂東:入れ替わりもありながらということですか?

米澤:うん、けっこう入れ替わりました。

坂東:そうなんですね。既存の社員でも、より良く変化した人もいたけれどもということですね。

米澤:うん、うん、そうです。

坂東先ほどの3人の命を救ったという方先ほどの3人の命を救ったという方は、もともとおられた方ですか?

米澤:そうですね。もう長いですね。今はもう退職してしまったと聞いたんですけど。

坂東:その方は仕事と思って見回りをやっていないですものね。

米澤:そうですね。なんて言うんですかね、そうせざるを得ない。

坂東:せずにはいられない。生きた見本ですね。

米澤:僕はそのオサダさんがたぶんイノベーターだったと思うんですよね。オサダさんがなんでそれを始めてくれたかと言うと、僕のメッセージがたぶん一番響いた方だと思うんですけど。

僕は『銀だら事件』の前科持ちすけど。これは最近気づいたんですけど、やはり「人を管理するのも管理されるのも嫌いなだけなんだな」と思ったんです。

僕は「人には役割がある」と思っていて。フリーランスにならずとも、ちゃんと会社員という立場でも、その役割をまっとうできるような場を作りたいという思いがあるんです。その人だからできることがあって、それは誰かに喜ばれた時に、自分が持っている種が開花すると思うんですよね。

それができる会社にしたい。だけど、それが先ほどのように「じゃあラーメン屋を始めるか」という方法もあると思うんですけど、自分たちの文脈をちゃんと考えないと誰も成功しないじゃないですか。誰も開花しないということになる。

「自由」と「好き勝手」はちゃんと区別しながら、「その人だからできる仕事をどんどん開発していきましょう」と言って、最初に響いてくれたイノベーターなんですよね。

坂東:なるほど。イノベーターなんですね。

米澤:僕はそれがすごくうれしいじゃないですか。喜んでいると、やる人が増えてきますよね。

坂東:なるほど。

米澤:僕がやっていない人を見てイライラすると、たぶんムーブメントって消えちゃうと思うんです。

「任せたい」と言いつつ、手放せない経営者の多さ

坂東:米澤さんとたけちゃん(武井さん)に共通しているのが、「指示するのもされるのも嫌い」「管理するのもされるのも嫌い」じゃないですか。そういう人にとっては、このスタイルが必然だというのはとても理解できるんですけど。

世の中、特に経営者は、「管理されるのは嫌いだけど、管理するのは好き」という人がけっこういないですか? 「指示されるのは絶対に嫌だけど指示したい」。こういう人に、これってできるんですか?

米澤:いや、どうなの? できるのかな? わかんない。

坂東:僕はそういう経営者にすごく出会うし、そういう方たちが「指示ゼロ経営とか自律型経営をしたいんだよね」って来るんですけど、けっこう行き詰まるんですよ。もうちょっとわかりやすい言葉で言うと、「もう任せたいんだよね」「もう自分は手放したいんだよ」と言いながら、プロジェクトを進めていくと途中で、「いやいや、やっぱり」みたいな感じで。

米澤:(笑)。

坂東:「なんだ、手放したくなかったんじゃん」みたいな。「結局、自分で何もかもやりたいんじゃん」という。なので、そういう人はどうなのかなと思ったんですけど(笑)。

米澤:それで経営がうまくいっていれば、たぶんそれでやり続けるでしょうし。

坂東:そうですね。

米澤:行き詰まれば、たぶん心が疲弊すると思うんです。疲弊する中で気づいていく可能性もありますよね。

坂東:そうですね。

武井浩三氏(以下、武井):確かに。人によっては、才覚のある人なんかは、今までのやり方でやれちゃったりするわけじゃないですか。

坂東:そうですよね、優秀だったりするとね。

武井:そうそう。「そういう人はそれでもいいんじゃないの」って僕は思うし。そういう意味では俺も(かつて起業に失敗したという)前科持ちなので。

坂東:(笑)。

米澤:(笑)。

武井:なんだろう、何でも自分でやるよりも、みんなで知恵を出し合ったほうがいいって本当に思っているから、そういう経営をしていったし。

Wikipediaの成功とEncyclopediaの失敗

武井:「Wikipediaみたいなものだ」と俺はよく言っているんですけどね。優秀な人が1人で百科事典を作るよりも、みんなで情報を寄せたほうがいいものができる。Encyclopediaプロジェクトというのが昔Microsoftであったんですけど、Microsoftが100人ぐらいの超優秀な学者とかを集めて、世界最高のデジタル百科事典を作ろうとしたんですよね。

そうしたら、Wikipediaに一瞬で負けたという(笑)。でも立ち上げ当初は、「Wikipediaみたいに素人が書いたものなんて信ぴょう性がないし、知識としての価値にならないから負けるわけがないじゃん」と言っていたら一瞬で負けたという。

経営もそれだと思っていて。だから、どこまで開くか。手放す経営ラボもだけど、僕はダイヤモンドメディアを辞めてから、さらに経営を外に開いていくということをしていて。みんなの叡智をどうやって集めるか。それを金で集めるんじゃなくて、楽しさとか一緒に作っていくやりがいとか、お金以外の報酬とか。

坂東:なるほどね。

米澤:なるほど。

米澤氏が社長を辞めた経緯

米澤:僕がいた業界は、要するにマスメディアですよね。

武井:うんうん。

米澤:ここまできつく言っていいのかわからないですけど、メディアによっては「民は馬鹿」って思ってる(笑)。

坂東:(笑)。はいはいはい。

米澤:賢い自分たちが民のために、情報を編集して伝えていると思っている人が、けっこうな割合でいるんですけどね。

武井:今はわからないけど、新聞なんてまさにそうだったんじゃないですか。

米澤:そうなんですよ。その配下にいる長野県のいち新聞屋さんがこんなことやっていたら、それは目をつけられますよね。

坂東:あ、そうなんだ!

武井:そうなんだ!

米澤:目をつけられるんですよ。僕はこの指示ゼロ経営を地域でやり始めたんですね。

15年ぐらい前ですけど、地域の課題は自分たちで解決していきましょう。行政におんぶに抱っこじゃダメじゃんっていう。地域の人たちがやる地域作りの事務局をずっとやってきたんです。

坂東:うんうんうんうん。

米澤:自分たちでお祭りを作ったり、イベントを作ったり、課題解決したりという動きが出て、それと行政をつないで、お金のやりくりをしたりという事務局的なことをやっていたんですね。

そういうのって、業界的にはおもしろくないと思う人もいたと思うんですね。けっこう虐められました。

坂東:虐められるっていうのは、例えばどんな感じですか?

米澤:僕が自分の地域にいるうちはいいんですけど、他のいろんなところに行って、Facebookに集合写真なんかを載せると、みんな見ているんですよね。「お前、地域密着型の商売しているって自覚あるの?」とかって言われて。「え? 見てるんですか?」と思わず聞いちゃったんですけど。「紙の媒体しか見ないんじゃないですか? デジタルメディアも見るんですね」みたいな。

坂東:「見てるんだ」みたいな(笑)。

米澤:そう。それである時、「お前、地域密着の仕事をするか、そうじゃない仕事をするか。この際どっちかを選んだほうがいい」と言われて。それを言った人がちょっと偉い人なんですけどね。

坂東:へえ!

米澤:僕もいつか言われると覚悟していたんで、「じゃあ僕は自分の道を歩ませてもらうけど、社長は今いる社員の中から立てさせて欲しい」という交渉だけして、2019年に社長を引退しています。

坂東:そういう経緯だったんですか。

米澤:そう、やはり異分子だったと思うんですよね。

退任後の新聞販売店の変化

坂東:そのあと社員の方から社長が出て、今はどうなっているんですか? ちょっと落ち着いた感じですか?

米澤:いろんな事業を始めるようになったんです。具体的には(スライドの)こんな感じですけど。資料がちょっと古いかもしれないですけど、最初はこんな感じで公民館に地域の人が集まって。

なんで人口減の問題を政治家じゃなくて、地域のおじちゃん、おばちゃんが話し合ってんのかっていう話なんですけど、こんなことをしたり。あと、こういうお祭り。

これはすごいですよ。人口1万8,000人ぐらいの町に、2日間で2万人近くが来場するの。

坂東:マジですか! すごいっすね。

武井:すげえ!

坂東:これは事件じゃないですか、事件。

米澤:こういうところに出展する人って地域の人だけじゃなく、いろんな人が来るんですけれど、行政の指定管理という制度があって、コミュニティスペースとかコワーキングスペースみたいなところを「管理してください」という仕事がすごく増えました。

あと、いろんな人が来る時に第3セクターでやっているホテルは、飯はまずいし汚いし愛想悪いしで、2度と泊まりたくないって隣町に泊まっちゃうってことで。

坂東:そんなに(笑)。

米澤:そう。施設はいいんですよ。こういう。

武井:ええ!

坂東:すげえ!

米澤:これは、今うちが経営しています。

坂東:この「うち」は、米澤さんのたくらみ屋ですか?

米澤:ううん、新聞屋さんで。

坂東:新聞屋さんでこれを経営しているんですか。

米澤:そう、新聞屋さんで経営していて。こういうふうに事業が変わってきているんですよね。

武井:すごい。

坂東:すごい。

武井:格好いいな。

米澤:僕が社長をやっていた時より、今の社長になって大きくなったので、今は分社して社長が2人になっているんですけど、2人とも僕よりもはるかに上手に経営しています。

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