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仕事はできるが組織を衰退させる人(全5記事)

デキるビジネスパーソンは、数字の前に「人の心」を動かす 離職→人手不足→売上低下の“負の連鎖”を避けるには

年商300億円超の企業から個人事業主まで、これまで1,200件超の経営改善を行ってきた経営心理士の藤田耕司氏。心の性質を実例に基づいて体系化した「経営心理学」の観点から、「仕事はできるが組織を衰退させる人」というテーマで講演を行いました。部下が思うように動かない、売上がなかなか伸びない……と悩んでいる経営者に足りていない“視点”を解説しながら、組織を成長させる人材の定義を語りました。

「仕事はできるが組織を衰退させる人」が会社を潰すケースも

藤田耕司氏(以下、藤田):本日のセミナーは「仕事はできるが組織を衰退させる人」というテーマでお話をさせていただきます。サブタイトルは「今、企業が渇望する『組織を成長させる人』とは」です。

仕事ができる人が、果たして組織を成長させているのか。「どこの会社にもこういった人はいるな」と、私は見ていてすごく思うんです。私はいろんな経営のコンサルティングをやっておりますが、経営者からのご相談でだいたい多いのが、こういった人(仕事はできるが組織を衰退させる人)の扱い方なんです。

「こういった人に対してどう対処していけばいいか?」というご相談がすごく多いですし、こういった人が原因で会社が潰れることもあります。それぐらい深刻な事態に至るケースも、実はめずらしくないんです。

今日はそういう状況をまず知っていただいて、そしてみなさん自身の仕事の仕方をあらためて考えていただく機会にしていければと思います。

まずは私の自己紹介からさせていただきたいと思います。藤田耕司と申します。出身は徳島県です。徳島県の人ってあんまり東京にいないんですが、徳島県は関西弁みたいななまりがありますので、ちょっとなまりが出るかもしれませんが、あらかじめご了承いただければと思います。

公認会計士、税理士、心理カウンセラーという肩書きで、数字と心理の両面から経営改善をしております。その経営改善の中で培ってきた手法を、日本経営心理士協会というところで経営心理士講座でお伝えしております。

今日は講座の受講生の方が何名かおられますが、経営心理士協会の代表理事をやっております。それから、FSGマネジメントという経営コンサルティングの会社の代表と、FSG税理士事務所という会計事務所の代表もやっております。

経営者の多くは「心の勉強」をしていない

藤田:私が、心理と数字の両面から経営改善をするようになった背景としまして、いろんな経営者のご相談を受けている中で、業種は違えど、経営者が悩んでいることってよく似てるんです。

大きく分けて2つあるんですが、1つは部下が思うように動かない。もう1つが、売上がなかなか伸びない。こういうお悩みがとりわけ多いんです。もちろんこれ以外のお悩みもございますが、この2つにまつわるお悩みがとりわけ多いです。

結局は人の悩みなんです。「人が動かん」って悩んでるんです。部下という人が思うように動かない、あるいはお客さまという人が商品を買う方向に動かない。「人が動かん、人が動かん」と悩んで、「経営がうまくいかん」と言ってるわけなんです。

なので、「部下」という人と「お客さま」という人が思うように動いてくれたら、おそらく経営ってうまくいくと思うんです。ところが、この2つのタイプの人がなかなか思うように動いてくれないことで経営がうまくいかない。その結果「決算書の数字が悪い」と悩んでおられる経営者が多いわけです。

人を動かしているのは心ですから、「じゃあ社長は心の勉強をしてますか?」と聞くと、「してない」って言うんです。だって、人が動かんって悩んでるんでしょう。人を動かしているのは心ですよね。「なんで心の勉強をしないんですか?」と聞いたら、ほとんどの経営者の方は黙ってしまうんですね。

売上という数字の背景には「人間の行動」が必ずある

藤田:結局、人が動かんと悩んではいるけれども、人を動かしている心については勉強していない。それで経営を進めて「うまくいかない」と言っている方が多いわけです。なので私は心理学の観点から、そもそも人間の心の性質っていったいどうなってるのかをお伝えします。

その性質に基づいた経営改善の指導をすると、経営者の方がよろこんでくださるんです。「なるほど、そういうことか」「その内容を試してみたら部下の動きが変わった」「売上が伸びた」といったご報告が続々と来るようになりました。そこから内容を体系化して、経営心理学というかたちで今はお伝えしています。

経営者やビジネスマンの方は、最後には数字を残したいんです。成果を残したいわけですね。数字というのは決算書に書かれている数字ですが、そこに書かれている売上や利益という数字を良くしていきたい。ただ数字とにらめっこしているだけでは数字は変わらないんです。数字の背景には、必ず人間の行動があるんです。

例えば「売上高」という数字の背景には、「お客さまが商品を買う」という行動があるわけですね。あるいは「人件費」という数字の背景には、必ず「従業員が働く」という行動があります。

量と質を高めていけば数字が良くなるわけですが、その行動を最終的に司っているのが心や感情なわけです。ですので、心や感情の性質に則ったマネジメントをし、お客さまや部下という人の行動を変え、そして数字を変えていくことが経営をしていく上では重要です。

成果を出す経営者は人を動かすのがうまい

藤田:数字というのはまさに行動の集積であり、もっと言うと心や感情の動きの集積なわけです。ですから、私は会計士・税理士という数字の専門家ですが、数字の専門家だからこそ心理学を教えなきゃいけないと思ってます。

なぜかというと、数字の本質は「心の動き」なわけですね。ですので、心の性質に基づいた経営をしていきましょうということで、実際に高い成果を出している人たちや、事業を拡大している経営者、人望の高いマネージャー、記録的な営業成績を残している営業マンといった人たちの行動分析をずっとしているわけです。

こういった人たちに共通しているのは、感情の性質に則ったやり方をしていることなんです。こういった人たちは、感覚的に人間がどんな感情の性質を持っているかはわかってるんですね。そのセンスが良いもんだから、人を動かすのがうまいんです。その結果、経営がうまくいっている。

ですので、こういう感情の性質を経営心理学として体系化して、これまで1,200件超の経営改善をやってきました。その手法を、心理学的解説と現場の成功事例とともに学んでいただき、現場を変える力を身につけていただくのが経営心理士講座になりますが、今日はこの経営心理士講座の中の一部をお伝えしていきたいと思います。

モチベーション向上、離職防止、採用の成果を高めるために、経営心理学のニーズが高まっているということで、ほぼ毎日いろんなところで今日のような講演をさせていただいております。

組織を成長させる人材を定義した「PM理論」とは

藤田:さっそく本題に入っていきたいと思いますが、組織を成長させる人材を定義している「PM理論」というものがあります。これは組織心理学者の三隅二不二さんという方が提唱しているもので、組織学の業界ではかなり有名な理論です。

「組織を成長させる人は、P機能とM機能の2つの機能を発揮している」というわけなんですが、P機能は「Performance function」の略で、目標設定や指示・叱咤等により、成績や生産性を高める力です。

そしてM機能は「Maintenance function」といいますが、人間関係や雰囲気を良好に保ち、組織のチームワークや一体感を強化・維持する力。この2つの機能を発揮して、初めて組織を成長させる人材と言えるんだと定義されています。

一般的に仕事ができる人というと、P機能が高い人のことを指すことが多いです。「P機能が高い。だから自分は仕事ができる」というふうに思っている方が、果たしてM機能をちゃんと発揮できているのかどうかがいろんな会社で問題になってるんです。

特に今は、いろんな会社の中での一番の悩みは何かっていうと、おそらく人手不足だと思います。特に中小企業、あるいは特に地方は、とにかく人手不足で困っている会社がすごく多いです。

人手不足の今、従業員の退職は死活問題

藤田:人手不足によって事業縮小や廃業が多発している今、複数の部下の離職の原因となるM機能が弱い人が、P機能では補えないほどの甚大な悪影響を及ぼしている。その人がいくら仕事ができたとしても、組織の雰囲気を乱すとか、部下に対する当たりがきついとか、そういう人が原因で複数の部下が辞めている。

今、採用で募集をしても人が採れない会社が多いんです。人が採れない状況で、今いる人に辞められてしまったら、辞められた穴を埋めることができないんです。

そうなるとどうなるかというと、純減、ただただ(従業員が)減っていくんです。それで現場が回らなくなる。そうすると、今まで受けられた仕事が受けられなくなって売上が下がっていきます。

そんな状況では「仕事をやってくれ」と依頼が来ても、とにかく人が足りないので「人が足りないんだ」「受けられないんだ」と断っている。それで廃業に至る会社もあります。

なので、募集すれば人が採れる状況であれば、「人に辞められてもまた採用すりゃいいや」というかたちでどうにかなるんですが、募集しても人が採れない状況になってきますと、人に辞められることは会社の死活問題になってくるわけです。

そういった状況で、複数の人を辞めさせる人は、いくら仕事ができても組織に甚大な悪影響を及ぼすということで、今はこういった人への対応がいろんな会社で深刻なテーマとなっています。

仕事はできるのに、会社の雰囲気を乱す人

藤田:人間関係の雰囲気を良好に保ち、組織のチームワークや一体感を維持・強化するM機能を発揮して、組織の居心地の良さ、雰囲気の良さを醸成して、離職者を出さないようにするマネジメントをできる人が今後はものすごく求められます。

いくら仕事ができても、部下を辞めさせる人は組織に甚大な悪影響を及ぼします。場合によっては、P機能よりもM機能を重視するという会社も今後は増える可能性が高いと思ってます。

ただ一般的に言うと、「仕事ができる」ということはP機能を指すことが多いです。なので、「『自分はP機能が高いから仕事ができる。十分組織の成長に貢献してる』と思っている人のM機能が弱かったりして、組織の雰囲気を乱す」というご相談が多いんです。

「仕事はできるんだが、雰囲気を乱す人間がいる。仕事はできるんだが、統率を乱す人間がいる。どうすりゃいいだろうか?」「その人が原因で、複数の部下が辞めて、現場が回らなくなっている。どうすりゃいいんだ」というご相談を、本当にいろんな会社から受けます。

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