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年上部下コミュニケーション「成果が出る期待のかけ方」 (全3記事)

若手には「Will」を求めるのに、ベテラン社員は“ほったらかし” 対話から始める、年上部下へのマネジメント

管理職の社外メンターサービス「Good Team」を運営する株式会社Hitoiroが主催したイベントに『「働かないおじさん問題」のトリセツ』著者の難波猛氏が登壇。年上部下とのコミュニケーションや仕事の任せ方に悩む管理職に向けて、「成果が出る期待のかけ方」のポイントを解説します。本記事では、上司・部下間に心理的安全性を生む方法などをご紹介します。

前回の記事はこちら

Will・Can・Mustで自分のキャリアを考える

難波猛氏(以下、難波):Will・Can・Mustのキャリア面談は、私も上司と1on1でやるんです。昨日もやっていました。

例えば、外部とコラボしてセミナーで登壇するのは私にとってはWillだし、その結果、今回もオンラインで何人かと名刺交換していただいています。それでつながりができることは会社にとってもよろこばしいことで、ここはWillとMustが重なっているんです。

一方で、事務作業はやらなきゃいけない=Mustなんだけど、私は死ぬほどやりたくない。Willとは何の関係もないので、「なんとかアドミのスタッフで巻き取ってもらえませんかね? その代わり、私は外でいろいろやりまっせ」という話をして、WillとMustの重なっていない部分をどうやったら重ねていけるかを考えていく。

(視聴者コメントで)書いていただいているとおり、円の大きさもけっこう大事だと思っています。Willが小っちゃくなっている状態に関しては、なぜ小っちゃいと感じているのかを考える。

例えば、Mustを過大に書いてくる方もいらっしゃるんですが、「このMustの中身って何ですか?」と聞いてみたら、嫌な言い方をすると、意外と大したことがないことを本人はすごく大きく受け止めてしまっています。

Canが極端に小さい方は、自己肯定感や自己効力感が低いところもある。このあたりはいろんなパターンが存在すると思いますので、ギャップをコミュニケーションで埋めていく・重ねていくことがすごく大事ですよね。

「真ん中とは改善の余地がある」とチャットに書いていただきました。そうですね。ズレているという話ですから、それを広げていこうよと。お互いに大きい状態ですからね。

上司が部下の「Will」を聞かないケースは多い

難波:ちなみにWillが小っちゃくてMustがデカい場合、一番怖いのはバーンアウトです。燃え尽き症候群になる可能性があるといわれています。あとは、やらされ感で仕事をするので、新しいチャレンジはしなくなることがあります。

理想で言えばMustとWillは、100パーセントでないにしても一定のレベルで重なっている。「自分がやらされていることは、やらされているわけではなくて、自分がやりたいことなんだ」ということとリンクしているのは、特にベテラン社員の方にとっては重要なポイントかもしれないですね。

山田聖子氏(以下、山田):ありがとうございます。

難波:次が「ギャップを埋めていく」というお話です。「Mustやチームの方針、役割分担を上司から提示してもいいでしょうか?」と(視聴者コメントで)書いてあります。

このギャップを埋めていくためのコミュニケーションに関して、本人がやりたいことをやっていた結果、会社の期待とズレてしまっても困るので、Mustについては上司から伝えないといけない側面があると思うんですね。

ただし、部下本人がなぜ働いているのかとか、組織の中、あるいは人生を通じてどういう状態になれたらうれしいのかを最初にちゃんと聞いてあげることが、すごく大事だと思っています。

管理職向けのトレーニングでご一緒してお話をうかがうと、(上司が)部下のWillをぜんぜん聞いてないんですよ。「君はなぜうちの会社に入ったの? お前は将来どうなりたいの?」と、20代や30代の若手には聞くんですが、50代や60代の方には聞きにくいと。

会社の期待と本人の気持ち、ギャップがある場合はすり合わせる

難波:照れがあるのかはわからないですが、「あなたはなぜ働いているのか」「人生、どういう状態であればうれしいのか」とか、仕事をやっていてうれしかった瞬間といったことは、最終的にちゃんと聞いてあげる。一方で「会社としては、あなたにこうなってほしいんだ」という将来像を考えてあげる。

Mustとして会社が期待していること、本人がやりたいこと、本人ができることについて話し合っていく。ギャップがある点については「ギャップがあるよね」と、コミュニケーションを取っていく。このあたりが、ベテランに対してもちゃんとやってあげなきゃいけないプロセスなんだろうなと思っています。

山田:ありがとうございます。WillとCanとMustは、若手にはやってあげているんですよね。

難波:そうなんですよね。

山田:なぜ年上になったらできないのかという、管理職自身のあり方を見つめていくのはすごく大事だなと、お話をうかがいながらあらためて思いました。

難波:意外と上司自身も、「自分のWillを考えたことないよ」という人がけっこう多いです。「会社に言われたまま管理職をやっているけど、ぶっちゃけやりたくてやっているわけじゃないし」みたいな状態で、上司も自分のキャリアを考えたことがないし、自分のWillを考えたことがない。

「先輩のベテラン社員と語るネタがない」「寝た子を起こしたらどうしよう」という状態のケースが多いから、上司自身も「なぜ自分が働いているのか」「将来どうありたいのか」を考えた上で、自己開示しながら部下の方と話し合っていくのは大事かもしれないですね。

山田:ありがとうございます。

ベテラン社員とフラットに話せる環境づくりを

山田:自己開示というのはすごく大事ですよね。「ジャッジされているんじゃないかと」思ってしまったり、話しづらかったりしますものね。

難波:一方的に聞かれるのって嫌じゃないですか。「お前どうなりたいの?」と上司から言われて、「『こうなりたいです』と言ったら、目標数字が上乗せされそう」という防衛本能は当然働きます(笑)。

山田:働きますね(笑)。

難波:だから、心理的な安全性を作ることと、「私自身もこんなことを考えているんだけど、あなたの場合はどう?」という双方向性のあるコミュニケーションをやってあげると、特にベテランとはすごくフラットに話ができるようになりますかね。

山田:ありがとうございます。GoodTeamを使ってくださっている方々の実際の成功事例の中で、「だからそこは成功したんだ」みたいな気づきにもなったなと思っています。

お互いがやりやすい「付き合い方」を一緒に模索する

山田:今話していただいたことも踏まえながら、実際に現場で今の管理職の方々が、年上部下の方々とどんなことにチャレンジして成功していっているのかをご紹介させていただけたら、みなさんのこれからのマネジメントのヒントにもなると思ったので、ご用意しています。今日は4つご紹介します。

まずは、難波さんがお話しされた「対話をする」というところで、1つ目の成功事例は、具体的に何についての対話をするのかという焦点を絞った対話方法の事例です。「上司部下としての2人の『付き合い方』について、ちゃんと対話をしましょう」ということです。

話すことはいろいろあるじゃないですか。でも、どういうふうに付き合っていくと、共に気持ちよく働きやすいのか、その前の付き合い方を1on1でもしっかり話しながら、日頃の会話でも小出しに確認し合う。

例えばミーティングが終わった後に「さっきみたいな話題の振り方、話しづらくなかったですか?」など、「あなたと一緒にやっていきたいと思っている」というスタンスも出しながら、付き合い方を一緒に模索して作っていくことにチャレンジされている方がいらっしゃいました。

上司・部下間に心理的安全性を生む方法

山田:それをする時のポイントとして、年上部下に対して、自分がわからないことを事前に言語化しておくことが大事です。これは、年上部下の何を知っていれば自分が上司としてコミュニケーションしやすいのかということも知っておく必要がありますね。

また、「年上部下って、みんなの空気を壊さずにちゃんとチームメンバーのモチベーションを上げるために働きかけてくれるのは当たり前でしょ?」みたいな、自分の中での当たり前にもちゃんと気づく。

それをいったん横に置きながら年上部下とコミュニケーションを図り、付き合い方の対話をする時には、それ以外のテーマを混ぜて話さないところを意識する。すると、「こういう付き合い方が私たちのあり方だよね」という2人のあり方がお互いにちゃんと作られていく。

そして、2人の間に心理的安全性が生まれ、年上部下の方も年下上司の方も、一緒にやっていきやすくなる。一番最初に難波さんも話に出してくださっていましたが、これをちゃんと話そうよと。そこにチャレンジしていくことは大事なんだなと、あらためて感じています。

大企業でも、評価制度が曖昧なことは少なくない

山田:成功事例の2つ目です。「人事制度の等級定義やコンピテンシーがあるんだけど、実はちゃんと使ったことがありません」「評価面談はしているけど、実は評価で使っていなくて感覚評価です」という方が、大企業の方でもけっこういらっしゃってびっくりしました。

このコンピテンシーをちゃんと使って、「第三者目線として今、こういうことがあなたの役割として求められているんですよ」と、お互いに見ながら、期待値を調整していくことにチャレンジされた方がいらっしゃいました。

等級定義って、「あなたはこれをMustでちゃんとやってくださいね」という一方的な渡し方ではなく、一緒に見て、年上部下の方がその時に感じた想いをいったん出してもらって、それをちゃんと聴く。

上司が自己開示していない場合、年上部下は、恥ずかしいし怖くて自分のことを話せないような状況が生まれます。

そんな時は、年上部下の表情から「苦しそうだな」「不安そうだな」と感じたことを「今、悩ましそうに見えたのですが、ぜひ今感じていることを教えてください」とそのままフィードバックして、その場でお互いに不安や想いを出し合える場を作って期待値を調整していく。

そういったことを、コンピテンシーを使ってチャレンジされた方もいらっしゃいました。コンピテンシーは管理職が設定したものではなく、会社という第三者が設定したものなので、管理職としても提示しやすいし、会話のベースとなるので話を進めやすいというメリットがあります。

結果、きちんとコミュニケーションが取れて、上司部下双方で自分が何を求められているのかが理解できるようになりました。

チーム全体が立ち戻れる「ビジョン」を設計する

山田:成功事例の3つ目は、チームで立ち戻れるビジョンをしっかり持つことです。先ほど、どなたかが(コメントで)出してくださっていましたが、この事例の場合も同じです。

年上部下の想いも含んで、チームメンバー全員がちゃんと納得できるチームビジョンを作るワークにがんばってチャレンジした方がいました。

年上部下の方も自分の想いを出しながら、メンバーと理解し合うことで納得したビジョンができると、それをチームで達成するための視点を共通で持つことができ、年上部下もチームに馴染み協力し合うことができた事例です。

このワークをする時に、年上部下との会話は、主語を管理職の「I」としてしゃべることも大事なんだけど、チーム全体で「We」として発信したりしながら、使い分けて会話を進めていく。

「私はこう思うんです」というコミュニケーションだと、どうしても上からの指示のように聞こえたり、対立しちゃう時がある。管理職も人間なので、ちょっと横にズレたい時があります。そんな時に「We」を使って会話ができると、衝突が和らぐことがあるとご報告いただきました。

「事実」と「感情」を分けて部下を指導する

山田:成功事例の4つ目としては、「事実と感情を分けて認識する癖づけを管理職自身が持つ」ということです。部下の行動メモと、自分自身の感情日誌をつけていくことにチャレンジされていた方がいらっしゃいました

「部下の行動に対して、こういうことがGoodで、こういうことがMoreで」と書き出していくんだけど、何がGoodなのか、何がMoreなのかを自分の感情で書いてしまっていることに気づいたそうです。

自分の感情と事実がごちゃごちゃになっていて、年上部下の方々に対して自分の感情でコミュニケーションをしてしまっている自分に気づいて、そこから事実と感情を分けてコミュニケーションできるようになったから、働きかけがしやすくなったと話してくださった方もいらっしゃいました。

ここまで4つの成功事例をご紹介させていただきました。今回、この4つを選んだ理由として、年上部下とのコミュニケーションベースとして、「必ず(あなたの)味方で、一緒に成長していく仲間だと、上司の私は思っている」と、常にしっかり伝えていく。

そんなスタンスでコミュニケーションできると、年上部下は、欠乏欲求を満たすことができ、安心してこの職場で働くことができる土台ができます。その土台を作るためにすごく良い成功事例だなと思い、この4つを出させていただきました。何かみなさんの参考になればと思います。

難波:特に最後の「事実と感情を分ける」は大事だと思いました。部下育成の時に、相手の性格面を変えようとしたり、感情的になってしまったりするケースがあります。でもそうではなくて、具体的に変えてほしい行動やよかった行動、残念ながらよくなかった行動を事実として話し合う。

「なんで変えないんだ。馬鹿野郎」みたいな話ではなくて、「よかった行動や事実は繰り返してほしい。よくなかった行動や、変えてほしい行動はこれなので、この点については変えてくださいね」と、事実と感情を分けてコミュニケーションするのはすごく有効かなと思いました。

山田:難波さん、ありがとうございます。

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