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年上部下コミュニケーション「成果が出る期待のかけ方」 (全3記事)

遠慮して注意できない若手管理職、居心地の悪さを感じるベテラン社員 配慮が難しい「年上部下」へのマネジメントの注意点

管理職の社外メンターサービス「Good Team」を運営する株式会社Hitoiroが主催したイベントに『「働かないおじさん問題」のトリセツ』著者の難波猛氏が登壇しました。年上部下とのコミュニケーションや仕事の任せ方に悩む管理職に向けて、「成果が出る期待のかけ方」のポイントを解説。本記事では、年上部下との“ズレ”を埋めるための打ち手をご紹介します。

各企業でも課題にあがる「年上部下」への接し方問題

山田聖子氏(以下、山田):管理職のための社外メンターサービス「Good Team」を運営しています。株式会社Hitoiro 代表取締役の山田聖子と申します。

本日は、近年多くの管理職の方々からご相談いただいている「年上部下問題」について現場での事例を取り上げながら、難波さんと共に、管理職の方がへのヒントを見つけていくための対談セミナーとして1時間皆さんとご一緒させていただきます。

難波さん、今日はよろしくお願いいたします。

難波猛氏(以下、難波):よろしくお願いいたします。今回は山田さんにお声がけいただいて、「年上部下とのコミュニケーション」というテーマでご一緒させていただきます。マンパワーグループ株式会社で人事コンサルタントをやっている難波猛と申します。

みなさんもチャットでも、再雇用後の処遇や定年とか、年上部下のお話をされていますが、各社でこういったテーマに困っていらっしゃるケースがけっこう多いです。

私自身も、主に40代、50代のミドルシニア層と呼ばれる方のキャリアデザインや、「上司がどうやってコミュニケーションを取ればいいのか」という管理職向けのトレーニングもやっておりますので、今日はみなさんと双方向でいろいろとお話ができたらと思っています。

あとは、人事関係や心理学、キャリア関係のコミュニティで、こういった外部でのコラボ登壇もよくやっています。

「年上部下マネジメントの問題」の難しさ

難波:本も何冊か書いています。今回のテーマである「年上部下」や「ベテラン社員」という話に関しては、いろんな企業でも問題になっています。

数年前からずっと「働かないおじさん問題」みたいに言われていて、「期待されていること」と「出してくれている成果(アウトプット)」にどうしてもギャップ=ズレが発生してしまうケースはけっこうあります。

本人の意欲やモチベーションも、年齢や環境、雇用形態が変わっていく中で変わってしまうケースがあるので、立て直しの仕方を本で書いていたり、YouTubeで紹介されたりもしていますので、ご興味がある時にご参照いただければうれしいです。

今日は山田さんと一緒にいろんな観点でお話ができたらと思っていますので、よろしくお願いいたします。

山田:難波さん、ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。今の難波さんからの自己紹介で、この後のお話にみなさんもワクワクしていらっしゃるのではないかと思います。

さっそくなんですが、今日は人事の方も多くご参加いただいているので、まずはマネジメントされる管理職の方が現場でどういうことに悩んでいるのかというお話ができればと思います。

「年上部下マネジメントの問題」に対して、私の運営しているGoodTeamでは、直に管理職の方からお声をいただくこともすごく多いので、そちらも取り上げながら今の問題を一緒に見つめていっていただけるとうれしいです。

難波:はい。

元上司が部下に……注意がしづらく関係性が悪化することも

山田:先ほど、年上部下のコミュニケーションの課題やイメージをチャットでも出していただきました。「再雇用後の処遇が下がることで、自分の仕事の幅を決めてしまう」「今までのキャリアを捨てきれず、上から目線で話されることが多い」とありますね。

「残りの年数は現状維持でよいと考えられている」という、モチベーションのようなところでもお困りのようですが、GoodTeamのご利用者から一番最初によく上がる年上部下の方々に対するお悩みも、本当に似たようなところがあります。

「チーム全員でもっと働きがいを感じながら成果を出していきたい」という想いから悩みを抱えている管理職からは、「年上部下のモチベーションを高めたい」「気持ちよく働いてほしい」「毎年同じことをしている感がどうしても生まれてしまう。どうしたらいいだろうか?」とか。

また、「自分が年下だから年上の方々の強みを引き出すことをおこがましく感じてしまうし、『こういうところ素敵ですね』というのも言いづらいし見つけづらい」という声も上がっています。

あとは、もともとある関係性が影響して、「マネジメント上必要なことでもきまずくて本音を言えない」「元上司が部下になっちゃった」など、本当にやりづらくて注意ができない。

年上部下と関係性が悪化してしまっている状態の方々からは、「何か1つ依頼をしてもいい返事がもらえない。すべて否定される」「もう何にも期待できないから諦める。手をかけない。もう知らない」みたいに、管理職の方が自分自身でバリアを張ってしまうことも生まれたりしています。

年上部下に対して、妙に距離を取ってしまう

山田:またスキル面では「『ITリテラシーがないからしょうがないでしょ』みたいな態度を取られちゃう」「どこまで配慮すればいいんですか?」という声がけっこう上がるんですよね。

よくよく話を聞いていくと、最終的には「自分には経験がないことだから年上部下の気持ちや状態を自分が経験したことがないから、正直わからないことが多い」「わからない。見えない。理解できないことが多すぎる。踏み込みづらいしどうしよう?」という声がよく上がるんですよね。

こういう現場の声を聞いてみて、難波さんは何か感じられることがありますか?

難波:画面に書いていただいていることもそうですし、みなさんからチャットで書いていただいているお話もそのとおりだと思っています。

年上部下問題やベテラン社員問題って、若手の方とのギャップの問題とは微妙に違うところがあります。「スキルがからっきし足りない」「ぜんぜんダメダメなんだ」というケースではないパターンのほうが実は多いんです。

(視聴者コメントで)「妙に距離を取ってしまう」「ズレてしまう」「言いづらい」というお話があるんですが、ベテランなので実は能力はあるんですよ。でも、コミュニケーションのフックがかけにくかったり、仕事に対する取り組み姿勢や動機づけに物足りなさを感じていたり、お互いに遠慮してしまったりしている。

当事者も「周りから遠慮されている」と感じている

難波:70歳までの就業機会の努力義務化が始まっている中で、この微妙なズレが、今までの(定年の)60歳、65歳よりも長く続いてしまうので、管理職の方にとってはけっこう苦しくなってきているし、実は本人にとっても苦しいんですよね。

実は相手側も「周りから遠慮されている」という空気を感じているので、このあたりについては率直に話し合うことです。

もう1つあるのは、「年上部下側が言うことにも、もっともな側面があることを理解しなければならない」ということです。例えば「定年再雇用されて処遇が下がるのでモチベーションが落ちました」という話がありますが、当たり前ですよね。合理的に考えると、給与が6割になるのに100の力を出すはずがないんですよ。

例えば20年、30年働いてきた人は、今までの仕事のやり方のほうが圧倒的に楽だし、成果が出る可能性が高くて失敗するリスクが少ないので、現状維持や今までどおりのやり方をしようとすることは、人間の本能として正しかったりします。

だから、相手が思っていることにも一定の合理性があることや、相手の立場になると「そりゃそうだよね」ということを把握をした上で、「でも、それだとちょっと困るんですよ」と話し合うことが、1つの切り口かもしれないですよね。

なので、わからないところは想像してみる。「自分がその年になって肩書きを外されて、処遇が変わって給与が6割になったら、モチベーションが1回落ちますよね」というところからスタートしてみるのは必要かもしれないですよね。

山田:ありがとうございます。

相手の目線に立ち、お互いのズレを埋めていく

山田:相手の立場に立つ。相手を知っていくための視点の置き方をどう工夫するのかがすごく大事だし、大前提として、その時間をしっかり自分で意識して持つことが必要なんだなと、お話をうかがいながらあらためて感じていました。

これは難波さんにいただいたスライドなんですが、今お話しいただいたことが少し入っていると思います。こちらについてうかがってもいいですか?

難波:先ほどお話ししたとおり、ベテラン社員の方は能力がまったくないという話ではなく、何かがズレてしまっていてうまくいかないパターンが多いんですよね。「期待をかける」ということが、このズレやギャップを埋めていく作業になると思います。

ベテラン社員の場合、パターンとしては大きく5つくらいあると思っています。やはり、意欲面(意識のギャップ)ですよね。ワークモチベーションやワークエンゲージメントが下がっていく。それは身体的な衰えの場合もありますし、「残り5年だし」みたいな話や処遇の変化、肩書の喪失で意欲が落ちるケースもあります。

あとは期待のギャップです。今回の「期待をかける」ところもそうなんですが、上司側が諦めてしまっていて、「あなたにはこういったことを期待しているんですよ。あなたの成長に期待しているんですよ」と、ちゃんと伝えられていない。また、本人も「今までのやり方でいいんだ」と思ってしまっているパターンもありますよね。

過去の成功体験によって、従来のやり方にこだわってしまう

難波:成果(能力)のギャップというのは、どうしてもITリテラシーやオンラインリテラシーがあります。50代後半になったから、今までのスキルを取り崩して生活する・働いていくことになると、キャリア上はリスクを抱えていくので、「学び続ける」「成長し続ける」「能力開発をし続ける」ことが必要になることはありますよね。

時代(環境)のギャップに関しては、世の中の環境変化によって求められる能力が変わってきます。今回もオンラインで(セミナーを)やっていますが、コロナ禍で、必要なスキルや働き方がガラッと変わったじゃないですか。

ベテラン社員の方は、経験が長いぶん成功体験も多いので、「今までのやり方が正しい」「今までのやり方でやりたい」というバイアスがすごく強い。なのでそのバイアスが、環境へ(自分の考え方を)アップデートしていくことを邪魔をしてしまうケースが若手社員よりもありますよね。

評価(認知)のギャップに関しては、自己評価と周りからの評価です。「自分はイケている」と思っているんだけど、周りからは「そうではないよ」と思われている。

特にベテランで元部長だった人だと、周りからネガティブなフィードバックを受ける機会が少ないので、自分のやり方が正しいと思ったまま10年、20年行っている。そうすると、軌道修正がめちゃくちゃきつかったりします。このあたりの自己評価と周囲評価のギャップが起こり得るケースですかね。

山田:ありがとうございます。

“なんとなくお互いモヤモヤ”な現状を打破するために

山田:今日ご参加いただいている管理職の方々が、「どういうところに着目して考えればいいかわからないことが多い」と悩まれているので、すごく指針になる5つだなと感じました。

まずは、意欲のギャップ、期待のギャップ、成果のギャップ、時代のギャップ、評価のギャップから考えて、ちょっとしたズレを埋めていく。この観点を頭に入れておくだけでも、チャレンジを一歩しやすくなると思って拝見していました。

私が感じていたのは「評価のギャップ」です。特に部長職をされていた方々は、指摘されることが少ない環境にずっといたのに、年下からいきなり指摘されると怖いし不安になる。立場を脅かされる気持ちにもなったりしますよね。

だけど(年下の上司からしたら)その気持ちが理解しづらかったりするなと、あらためて気づかせていただきました。

難波:そうですね。本人にも問題があるけど、会社側が役割に応じた期待や仕事のメッセージをちゃんと伝えていく。

役職から外れる時がキャリアの節目のキャリアトランジションなので、その時に適当に済ますのではなく、ちゃんと話し合うことがすごく大事ですよね。それがないと、お互いなんとなくモヤモヤした状態がずっと続いてしまいます。

なので今、チャットに書いていただいたとおり、会社と本人があらためてそこについて話し合うことはすごく有効だと思っています。

山田:難波さんありがとうございます。そして、チャットもありがとうございます。

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