2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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関厳氏(以下、関):お時間となりましたので、これより最終セッション「創業者と仕事をした最後の世代が語るソニー流事業開発と企業進化の興亡史」を進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
「事業開発SUMMIT2023」の最終セッションということで、さまざまな事業開発規模やステージがあると思いますが、ここでは、より大きな規模の事業開発を考えていくうえでのポイントや動き方を中心に進めていこうと思います。
同時に最終章なので、事業開発のみならず経営面やスケール感もつけ足していきたいと思います。事業開発や新しいものが生まれていく組織風土をどう作っていくのか。そこも含めて、みなさんにお伝えしたいセッションです。
ではモデレーター紹介をさせていただきます。私、株式会社リブ・コンサルティング代表の関でございます。よろしくお願いいたします。そしてゲスト登壇者をご紹介します。ソニーグループ株式会社執行役 副社長 CSO、知的財産、事業戦略、ビジネスディベロップメント、事業開発プラットフォーム担当の御供俊元さんです。どうぞよろしくお願いいたします。
御供俊元氏(以下、御供):よろしくお願いします。
関:御供さんは1985年にソニーへ入社され、キャリアの長くはアメリカで経験を積まれており、知的財産で「知財マフィア」という(笑)インタビュー記事も拝見したことがあります。
さまざまな領域の新規事業に関わり、今は新規事業のみならずスタートアップへの投資を行うCVCなど、かなり管掌範囲を広く担当されています。こちらの資料を見るだけでも管掌範囲がかなり広くありますが、やはり全体的に事業開発やそれを統括されている位置づけでよろしいですかね。
御供:一番最後のセッションが一番年寄りで申し訳ないんですが。
関:いえいえ(笑)。
御供:会社生活が長いので、結果的に担当領域がどんどん増えていったんだとは思いますけど。
関:なるほど。さまざまなものを見たり、事業の投資に関わったり、この知財の部分がスタートというか、広がってくる一番のきっかけなのでしょうか?
御供:そうですね。もともとの仕事のアサインメントは知的財産の仕事なので、それをずっとやってきました。20年間アメリカにいるといろいろな仕事を頼まれますから、知らない間にやることが増えていきました。
もともとは知財のプロですし、そこでの貢献がベースになります。知財の担当者が価値を発揮するためには、どうするのが一番いいのかなと自分なりに考えてきました。
その結果、自社や他社の技術を客観的に俯瞰して、鳥の目で状況を見ながら新しい事業の立ち位置を確認したり、先を考えるのは、知財の業務で培ったノウハウだと思います。
関:なるほど。技術の見極めも、このあとテーマになってきますので、よろしくお願いいたします。
関:こちらはセッションアジェンダです。企業概要、事業開発のポイント、そして組織カルチャーですね。このあたりはソニー流を中心にお話しいただければと思います。
まず、みなさんもご存じかと思いますが、ソニーグループ株式会社をご紹介します。
売上は全体で11兆円を超え、連結での社員数も11万人を超える、当然ながら大きな会社さんになります。また世界中で売上を伸ばしておられます。
こちら(スライド)は事業ポートフォリオです。
約40年前の1980年は、約1兆円の売上をエレクトロニクスという1事業領域で作っています。昨年度は、売上規模約11兆円で1980年の10倍以上になり、事業ポートフォリオがこれだけ分かれています。
比率を見ていただくと、いずれも1兆円を超えるような領域になっていますし、これ以外でも今さまざまな取り組みをされています。2020年には「VISION-S(ビジョン エス)」というモビリティ関連の発表もされていますし、常に事業の柱がそのまま事業規模につながっているのかなと思います。
この比率の事業が複数あることがすごいと思います。御供さんは1985年に入社ということですが、やはりさまざまな変化がありましたか?
御供:そうですね。ただ僕が入社した1985年は、ちょうど連結で約1.5兆円でした。その数年後に、CBSレコードを買収して、そのあとコロンビアピクチャーズの買収があって、まだ盛田(昭夫)さんがご健在で会長としてやられていたわけです。
我々はもともとハードウェアを作って売っていましたが、ラジオもテレビも、コンテンツを見るアウトプットデバイスであり、また、デバイスを提供するだけではなく、コンテンツを楽しむ環境を提供しようということで、その道筋として音楽事業や映画事業に参入したり、ゲームやアニメにつながったので、中にいる人間としてはあまり違和感はなかったですね。
関:グラフを見るとさまざまですが、1本流れが通っているから違和感なく、なんですね。
関:まさに今日はこの大きな売上を支える複数の事業や、そこを生み出す事業開発の流れをうかがっていきたいと思います。さっそくですが、ど真ん中で聞きたいことが、大規模な事業開発です。
今日は「事業開発SUMMIT2023」ということで、いろいろな企業さんの参加がありますが、そこそこのサイズ感の事業開発という企業もあると思います。特に大企業では何百億円、何千億円となる事業開発こそが……ということだと思うんですよね。
ここに向けてのポイントをお聞きしたいと思います。いくつかのケースをお話しいただきながら、ポイントに触れていただいてもよろしいでしょうか。
御供:事業開発のやり方はいくつかありますが、僕の経験でいくと大きく分けて2つあります。
1つはトップダウンと言いますか、会社全体で大きな投資をしながら大きく事業開発をするやり方。もう1つはボトムアップで、最初は小さいけど、ピボットしたり、点と点をつないで面にしたりしながら、拡大していくやり方。この2つがあると思います。
前者は、例えばメディカル事業や少し前のデジタル一眼カメラへの参入などがあてはまります。
これらは我々の強みを活かして、我々の持っていない価値を持っているパートナーを見つけて合弁を作ったり、M&Aしたりしてスケールしていく事例です。
関:なるほど。トップダウンとボトムアップの両方を使い分けていくのがソニー流、といった感じでしょうか。
御供:そうですね。大規模にやると必要な資本投資も大きくなるので、それなりの確率がないといけません。また掛けた資本に対して、どれだけ我慢強く成長を支えられるかもあります。
小さい場合は必ずしもうまくいくわけではないので、ピボットさせながらかたちをつけて、最終的に集中投資するものを決めていく。そんな2つの流れになると思います。
ファンドなどの一般的な投資もだいたい7~8割は手堅いところに投資して、残りをリスクマネーにあてているのではないでしょうか。それと同じだと思います。
関:なるほど。新規事業の投資のポートフォリオができているんですね。
御供:ええ。
関:メディカル事業ではソニー・オリンパスメディカルソリューションズ。ソニーの強みのイメージング技術と、オリンパスの医療技術という事業アセットを持ち寄った医療事業合弁会社として大きくなった経緯ですが、すでに一定の規模で動いている以外のケースも、いくつか教えていただいてよろしいですか?
御供:どちらかというと、後者の小さい規模で実験をするケースはいくつかあります。ソニーの中で独自にボトムアップでやるものもあれば、ある程度の規模感があれば、パートナーを見つけて一緒にやる方法もあります。
(スライドの)これは川崎重工(川崎重工業)さんと小さなジョイントベンチャーを作らせていただいた例です。
ちょうどコロナ禍でリモート環境で働く方がたくさんいらっしゃいました。工場で働くようなロボット操作技能者も、リモートで働ける環境を作ってみようと始めたのがこの事業ですね。
川崎重工さんのロボティクスの強みと、我々の強みであるソフト、UIの部分を合わせたものです。
関:今のリモートロボティクス社ですよね。事業者とワーカーをつなぐリモートロボットプラットフォームを提供されていて、まさにそれぞれの会社の強みの掛け合わせですね。
ちなみにソニーさんが事業をやる時、自社単独でやるのか、外部と組むのかについてはどちらかしかやらないということではなく……?
御供:その状況によって変わります。このケースはロボット作業者や工場のBtoBのロボットがメインだったので、川崎重工さんと組ませていただきましたが、特に決まっているわけではないですね。
関:柔軟にケースに応じて、ですね。組む意味があるかどうかは、強みの掛け合わせになるのでしょうか?
御供:そうですね。我々の強みはセンシング(センサー技術)や画像を中心にしたデータのキャプチャリングで、最終的にそれをどうやってアウトプットデバイスとして出すかという一連の動きなので。
そのノウハウが活かせる領域として、我々はエンタテンメントを中心にやってきました。でもBtoBの工場であったり、ヘルスケアや医療になればエムスリーさんとの連携になったり、我々の技術がどういう価値を生むかで判断しています。
関:確かにエンタテインメントはBtoCで、BtoBのロボットはまったく違う領域ですけど、ソニーさんの活かしている強みは変わらずというか。
御供:変わらないですね。また最近は特にメタバースが流行っていますが、BtoCはなかなか大変じゃないですか。
関:そうですね。
御供:だけど、固いのはBtoBです。まずリモートの工場管理やCADで、VRやARを使ったらどうなるか。それがおそらく先に来て、そこで経験値を得ることで、結果としてこの事業でうまくいけばいいし、そこで得られたノウハウをBtoCに利用できるメリットもあると思います。
関:先ほど組む組まないは、ケースバイケースだという話がありましたが、強みが明確なことによって組む相手を選んだり、相手にとってソニーさんと組む意味もありますね。なんとなく有名なところと組むとか、ソニーさんが有名だからではなく、この掛け算が見えるかどうか。
御供:そうですね。確かに名前のバリューもあります。例えば、僕はコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)もやっていますが、だいたい僕らが投資したい会社は、オーバーサブスクリプションなので、お願いしてお金を入れさせていただくことが多いんです。
関:人気の会社は人気ですもんね。
御供:スタートアップから見て「ソニーからお金を受け取るメリットって何ですか?」と考えなきゃいけない。なんらかのエンゲージメントをする時、会社の大小に関係なく「相手にとっての我々の価値は何だろう」と真面目に考えます。
関:ありがとうございます。ここでは紹介しきれませんが、事業内容や資料、ホームページなどを見ていただくと、背景にある思いや実現していきたいことなどがわかります。非常にすばらしい内容なので、ぜひ見ていただくといいと思います。サービス内容やサービス展開のロードマップも書かれています。
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