2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
戦力外通告・退職で見えた光とは?「ビジネスの退(ひ)く力」#1(全1記事)
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入山章栄氏(以下、入山):「浜松町Innovation Culture Cafe」、今週はお客さまに映像ディレクターで株式会社tonari代表取締役の高橋弘樹さんと、株式会社HERO MAKERS.代表取締役の高森勇旗さんをお迎えしました。
高橋さん、高森さん、どうぞよろしくお願いします。
高橋弘樹氏(以下、高橋):よろしくお願いします。
高森勇旗氏(以下、高森):よろしくお願いします。
田ケ原恵美氏(以下、田ケ原):高橋さんのプロフィールです。大学卒業後、2005年にテレビ東京に入社。『家、ついて行ってイイですか?』『吉木りさに怒られたい』などを企画・演出。2021年よりYoutubeチャンネル『日経テレ東大学』の企画・制作統括をスタートしました。
今年2月にはテレビ東京を退社し、自身が代表を務める株式会社tonariでビジネス動画メディア『Re:HacQ(リハック)』を開設。YouTubeチャンネルの登録者数は8月現在で40万人を突破しています。
また、今年3月には東京ニュース通信社から退職経験のある著名人と対談を行った、『なんで会社辞めたんですか? 経験者たちのリアルボイス』が発売されました。
入山:というわけで、高橋さんどうぞよろしくお願いします。
高橋:どうぞよろしくお願いします。
入山:高橋さんは今、僕の周りでも業界でも、とにかく引っ張りだこというか。もちろん、高橋さんの名前をよくご存じの方もいらっしゃると思うのですが、『日経テレ東大学』という、ものすごく人気のあったYouTubeチャンネルを企画された方です。
中でも有名なのは、この「浜カフェ」にも来てくれたひろゆきさんと、成田悠輔さんの『Re:HacK』という大人気番組があって。そして今は独立されて、tonariという会社を作って、『Re:HacQ』という動画メディアをやっておられます。
今どんな感じか、あらためて教えていただけますか?
高橋:おっしゃるとおり、株式会社tonariという会社を作って、ビジネス動画メディア『Re:HacQ』、昔はK(Re:HacK)だったんですけど、Q(Re:HacQ)に変えて、軽くパクって......。
(一同笑)
高橋:経済周りやスタートアップ、政治とかの同じようなチャンネルを作っています。あとは、映像制作会社ですので、芸能系のことから何から、映像を作っている状況です。
入山:今独立されて、あらためてどうですか? 「けっこう自由にできるようになってむしろよかったな」という感じなのか、「やっぱり大変です」という感じなのか。
高橋:難しいですよね。自由になって本当によかった面もあるんですけど、独立して、一応「ビジネス動画メディア」と言っているんですが、これがけっこう難しくて。
例えば、文化放送やテレビ東京みたいに、大義があれば政治家や経営者も出るんですけど、よくわからない高橋がやっているチャンネルに出る必要はないじゃないですか。だから、出ていただきたいんですけど、出ていただいたら、たまに僕らが怒らせたりしないといけない。
入山:なるほど。
高橋:そこの塩梅が難しいですよね。
田ケ原:どこまで切り込むかというか......。
高橋:切り込まないといけないんだけど、切り込んだことにちゃんと大義がないと二度と出ないし、悪評が広まったら経営者も政治家も出ないですから。そこが難しいです。ブチ切れさせる大義がないと難しいんですよ。
入山:今後の構想とかはあるんですか? 今すでに登録者数が40万人突破で、業界は正直注目していると思うんですよ。このあとやりたいこととか、こうしていきたいとか、何かありますか?
高橋:テレビやラジオはメディアとして確固たる地位を築いた会社があると思うんですけど、Web周りはやっぱり少ない。
『PIVOT』さんとか『NewsPicks』さんとか、何個か有名なチャンネルはあると思うんですけど、社会の公器までいけているかというと、「あそこにちゃんと出ないといけない」みたいな大義はないと思うんですよね。
そういうのを、僕らの会社だけではなくいろんなところと連携しながら、Web界隈にちゃんとしたメディアを作っていきたいですよね。
入山:もう1つ、高橋さんはYouTubeですごく人気のある『なんで会社辞めたんですか? 経験者たちのリアルボイス』という番組を、3月に東京ニュース通信社から、本にされたわけですね。
高橋:そうです。本の企画の時、僕は辞める予定ではなかったんですけどね(笑)。
入山:これはテレ東時代の本ですか?
高橋:テレ東にやっていた番組で、脱稿する頃に辞めることになっちゃって......。
入山:(笑)。
田ケ原:え〜(笑)。
高橋:「はじめに(まえがき)」と「おわりに(あとがき)」のエッセイだけ書いたんですけど、これはかなりいいエッセイになっていますからね。感情がかなり入っていますよ。
入山:なるほど。これはギリギリテレ東時代のエッセイですか?
高橋:テレ東時代の遺産ですね。辞める精神状態の時に、河津桜(2月上旬に開花し始め、3月に満開を迎える早咲きの桜)を自分に例えながらエッセイを書いた気がしました。
(一同笑)
入山:めっちゃおもしろい(笑)。みなさんこれ、「まえがき」と「あとがき」だけでもめちゃめちゃ読む価値があります。
高橋:エッセイとしておもしろいと思います。
入山:どうぞ今日はよろしくお願いします。
高橋:よろしくお願いします。
田ケ原:続いて、高森さんのプロフィールです。2006年に岐阜県の中京高校から横浜ベイスターズ、現在の横浜DeNAベイスターズに高校生ドラフト4巡目で指名され入団。
2012年、戦力外通告を受けて引退し、データアナリストやライターなどを経て、2016年、企業の上級管理職にコーチングを行う株式会社HERO MAKERS.を立ち上げ、代表取締役に就任。6月には日経BPから成果を出すための仕事への向き合い方を紹介した『降伏論 「できない自分」を受け入れる』を発売されています。
入山:というわけで、高森さんどうぞよろしくお願いします。
高森:よろしくお願いします。
入山:高森さんは、もともとプロ野球選手ですよね。
高森:はい。
入山:(横浜)ベイスターズにいらっしゃって、そこから今はビジネスコーチングをされているということですけど、これはどういう経緯ですか?
高森:今ご紹介いただいたように、もともと野球を辞めたあとに、ライターの仕事でアナリストをやっていたんですけど、もっとストレスのかかる仕事というか、プレッシャーのかかる仕事をしてみたくて。
企業の経営者に近いところ、そして何かコンサルティングのようないろんなところにかかわれるものに携わってみたいと思い始めて、コーチングに行ったのがざっくりとした経緯ですね。
入山:6年間、ベイスターズに所属されて、ちょっと失礼ですけど、当時の実績はどんなものだったんですか?
高森:これは誇りを持って言いたいんですけど、僕はプロ通算1安打です。1本のヒットで引退した。これが本当に僕にとってはよくて。2本じゃなくて、1本で本当によかったなと思います。
(一同笑)
高森:「1本だけ打って引退しました」。引退というと聞こえがいいんですけど、クビになっただけですけどね。
入山:2軍がけっこう多くて、1軍に上がった時に1回だけ打ったということですか?
高森:そうです。一応プロ3年目までなので、21歳のシーズンが一番調子がよくて。2軍でタイトルをガバッっと取りまして。2軍では本当に無双状態で、打ちまくりました。
入山:2軍では無双状態だったんですね。
高森:打ちまくりでしたね。一応、2軍で技能賞とビッグホープ賞を両方取ったのはイチローさん以来だったんですよ。
入山:へぇ〜。
高森:その年に、1軍に最後2試合だけちょろっと上げてもらって、ヒットを1本打って、そこから奈落の底に転落みたいな。別に怪我をしたわけでもなんでもないんですよ。ただただ、僕が勝手に転げ落ちていって、クビになりました。
入山:プロ野球選手の引退後はいろいろあると思うんですけど、ビジネスコーチをやって、今は何十社もの企業のコーチングというか経営コンサルみたいな。少し失礼な言い方ですけど、そうなれるものなのですね。
高森:なれたので、「なれました」という感じです。
入山:普通は、例えば「大学を出て大手のコンサルティングファームに入りました」とか、「1社か2社、大きな会社の経営者をやっていました」みたいな方を採用すると思うんですよ。
元プロ野球選手で、しかも、失礼ながら1安打じゃないですか。なぜ多くの企業が声をかけてくれるんですか?
高森:コンサルタントとして駆け出しの時は、最初のクライアントは本当に博打だったと思うんですよね。高卒、元プロ野球選手、ビジネス経験なしの人がコンサルティングしますって、怪しすぎるじゃないですか。
よく買ったなと思うんですけど、最初の経営者に買っていただいて、その会社で2ヶ月で経常利益が3倍になったんですよ。
入山:(笑)。
田ケ原:え~。
高森:これはある種、ラッキーパンチだったと思うんですよね。それで、その経営者がおもしろがっていろんな人を紹介してくださって、バンバン結果が出るのでつながっていった。
そして今ではおかげさまで、僕の会社はホームページもないので口コミだけで、成果が出た企業が「君のところがそう言うなら」「ここもここも結果が出たならうちもやってほしい」みたいな感じです。
入山:口コミでいったんだ。
高森:そうです。口コミしかないですね。
入山:なるほど。そして、高森さんも著書を出されています。『降伏論 「できない自分」を受け入れる』という本を日経BP社からつい最近出されて、めちゃめちゃ売れているんですよね。これはちなみにどういう本ですか?
高森:広い意味で自己啓発の括りに入ると思うんですけど、僕がプロ野球時代に何を得て、プロ野球を辞めてから何を施行して、どう実行してきたかという話です。
成果を出す人、出さない人、いろんな人をビジネスのコーチングをしながら見てきて、成果を出す人に共通すること、成果を出さない人に共通することをまとめた本です。
入山:このタイトルからすると、成果を出せる人のほうが、実は降伏しているんですかね。
高森:そうですね。降りるのが早いという表現ですかね。自分のこだわりやしがみついているものから、すぐに降りるという感覚ですかね。
入山:なるほど。降りられるから、本当に強いところに行けるんですね。
高森:そうですね。降りられるので、新しい情報も新しいやり方もすぐに試せる。
入山:逆に言うと、高森さんの以前の野球の時の経験は、自分は降りられなかった。
高森:降りられないどころか、自分のことをイケていると思っていましたから。しばらくそういう気持ちがありましたよね。
ところが、僕がプロ6年間で通算1本のヒットしか打っていないことを認めない限りは次に進めない。受け入れると、「まあそうだよね」と、そこからどう挽回していけるか、になるんですよ。それが早く降伏してくれというメッセージです。
入山:というわけで、今日はこんな異色の組み合わせのお二人をお招きしまして、まさにこの「ビジネスの退(ひ)く力」というテーマでいこうと思います。退くとは、まさに退却する、引退するの「退(たい)」ですね。
まずは高橋さんからおうかがいします。ご自身も会社を退くという経験をされて、あらためて、そういう経験をどう受け止められていますか?
高橋:会社を辞めるとか退くのは、悲しいことですよね。僕としてはネガティブなことだと思っていますけどね。
入山:やっぱり、それはそうなんだ。
高橋:思っています。僕だってテレビ東京で社長まで行きたかったし、高森さんだって、本当は大谷翔平になりたかったはずなですよね。
入山:なるほどね。
高橋:それを退くんですから、僕は根本的にはネガティブなことだと思っていますよね。
入山:高森さんはいかがですか?
高森:そのとおりです。僕は幸いなことに、かなりやりきって辞められたので、ポジティブに辞めていったほうだと思うんですけれども。
できればプロ野球で大活躍して、スーパースターになれるのが一番よかっただろうと今でも思います。今でこそ、辞めていろんないいことがあったので、美化されたものになっていますけど。一番いいのはプロ野球に憧れて入って、そこで大成功してスーパースターになる。そのほうが本当はいいはずです。
入山:高橋さん、ご著書でもYouTube番組でも、他にも辞めた方として、有名なテレ東の佐久間宣行さんとか、日経新聞の後藤達也さんとかにお話をうかがっているじゃないですか。そういった方々はどうですか?
高橋:基本はネガティブだと思いますよ。佐久間さんも基本は明るく前向きなことを言うんだけど、僕は会社を辞めた人でポジティブに辞めている人はいないと思う。
でも、確かに全部じゃないかもしれない。一部、すごく前向きな転職もあるかもしれないですけど、比較的そっちが多いんじゃないかなと思うんですけどね。どうなんでしょうね。
高森:僕は辞めて10年経っていますから、高橋さんは辞めてまだ半年ですよね。
入山:そうか。そうね。
高森:僕は10年経って、かなりポジティブに受け入れられるようになっています。
入山:時間の問題ですか?
高森:それはかなりあると思います。あとは、辞めたあとのキャリアが充実すればするほど、「辞めてよかった」という体験に変わると思いますね。
入山:高橋さん、いかがですか?
高橋:僕もそうは言ったものの、「辞めてよかった」と思っていますけどね(笑)。
(一同笑)
高橋:辞めたほうがせいせいしてはいるんですけど。ただ、「本当はこうなりたかった」ところに対する強い悔しさとかは、何か次のステップに行くに時はあったほうがいいんじゃないかと思いますよね。
入山:高森さんはどうですか? 辞めた時にネガティブだったわけじゃないですか。そういう時に、マインドセットとか、どうやって克服していったんですか?
高森:先ほどもちらっと話したんですけど、僕は辞めた瞬間からかなりポジティブに「ありがとうございました!」という感じで出ていけたんですよね。
そうは言っても、20年くらい野球をやっていましたから。20年くらい片思いしていた人に、急に「嫌いだから別れてください」と言われても、明日から切り替えられるかといったら切り替えられないです。
ソフトランディングするまでの期間は、野球をずっとやってきた感覚は急に止められない、急に止まれない感じです。
入山:要は慣性の法則みたいなものが働いているわけですね。
高森:そうですね。
入山:今日のテーマは「退く力」ですけど、退いた結果、ネガティブだったけど、今は退いてよかったと思われていますか?
高森:僕は圧倒的に思っていますね。
高橋:僕もちょっと思ってるんだよな、実は(笑)。
(一同笑)
入山:それはどのあたりですか?
高橋:結果、年収も上がりますしね。あとは自由を手に入れるとか、いろいろありますよね。そういう意味ではよかったですね。チャレンジの幅も広がりますから、結局、辞めてよかったですよ。
入山:なるほど。高森さんはどうですか?
高森:年に数回、球場に行った時に、やっぱり野球選手を見るとかっこいいなと思うんですよ。世の中にいろんな職業があって、お金を稼ぐだけだったら別に野球選手以外のほうが圧倒的に稼ぐことができるのも見させていただいた中で、でもやっぱり野球のほうがかっこいいなと。
すごくかっこいい職業だと思うんですが、でも、「こいつら初夏の南仏とか行けねえしな」とか思うわけですよ。
高橋:なるほど。シーズン中だから。
高森:そうです。「絶対夏に釣りとか行けないんだろうな」とか考えると、「俺ってなんて恵まれているんだろう」と思ってしまうわけですよね。
入山:おもしろいね。
高森:選択肢が広がるという意味ではとても自由を感じていますね。
高橋:やっぱり、話していておもしろいですよ。経営コンサルですよね。
高橋:常々思うんですけど、ビジネス、経営の人は「ポジティブ・自信」で、クリエイターは「ネガティブ・不安」です。それはマジで思うんですよね。
入山:なるほど。
高橋:いいクリエイターは不安が多くて、すごいネガティブな考えの人が多いんですけど、経営の人は、ポジティブで自信がないと成功しないなと思いました。
入山:でも、高橋さんはこれから両方やるわけじゃないですか。
高橋:大変ですよね。感情もそうだし、金銭的にも逆です。クリエイターは、例えば1,000万円もらったら1,000万円注入して、いいものを作りたくなってしまうんですよ。経営者は「粗利を半分取って」とか、考えないといけないじゃないですか。
「粗利半分、やっぱりいらねえ」と思うのが作り手なので、自分の中での議論がいつまで経っても終わらないですよね。
入山:とはいえ、僕の周りでも、すごい経営者で両立できている人は若干いますよね。
高橋:いますね。糸井(重里)さんとか思いつくんですよね。誰かいます?
入山:僕は柳井(正)さん。
高森:頂点でいくと、やっぱりスティーブ・ジョブズだと思います。
高橋:確かに。
入山:そうですね。
高森:スティーブ・ジョブズはビジネスとアートの交差点って、ずっと言っていましたね。
入山:彼は両方持っていますよね。どちらかというと、アーティストよりなのかもしれません。
高森:「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」って言っていたのかな?
入山:今日は「退く力」というテーマで、たぶん今、日本中で「会社を辞めたい」とか、「仕事を辞めたい」人はいっぱいいるし、そういう方にどうアドバイスをしますか?
高橋:辞めたらいいんじゃないですかね(笑)。
入山:やっぱり。そうなんですね。
高橋:辞めたいと思ったら辞めるのがいいのではないでかと思いますけどね。辞めたら辞めたで、めちゃくちゃ可能性が広がりますよね。今まで社内の人としか仕事がしづらかった部署にいても......。
僕はそうだったんですよね。テレ東を辞めた時、700人の人と仕事をしている感覚が強かったんですよね。だけど、(今は)顧客が全世界に広がった気がしますから、スッキリはすると思うんですよね。
入山:高森さんはいかがですか?
高森:本当にそのとおりですね。辞めたかったら辞めたらいいのではないでしょうか。ただ、何が理由で辞めるのかはけっこう重要ですね。
入山:なるほど。
高森:「会社が自分の力を認めてくれない」とか、「正当に評価されていない」という理由で辞める人は、たぶん次の会社に行っても正当に評価されないんですよね。
入山:なるほど。
高森:なので、「結果が出なくて辞めます」と認められない限りは、次に行っても同じことが起こるでしょう。
入山:まさにそれが「降伏論」なわけですね。ただ、辞めるのは自分のせいです。
高森:そうですね。「人間関係がうまくいかないので辞めます」も、「人間関係がうまくいかない状況を引き寄せたのは自分自身である」と認められたら、次の会社では人間関係を良好に気づけるかもしれないけど、「この会社は人間関係がダメなんだよな」と言っている人は、次の会社でも同じことを言うでしょう。
僕もかなりいろんな会社に携わりながら見ていくと、同じ人が同じようなことを起こしていくので。それを認められないと次の会社でも同じことが起こるでしょう。
入山:僕の周りだと、だいたい会社を辞める最大の理由は、ズバリ人間関係だと思うんですけど、人間関係で辞めるのはあまりおすすめしない。
高森:いや、理由はほぼそれですね。基本的に会社に入るくらいなので、そのサービスや社長のことは好きですよね。だから、「このサービスが嫌いで辞めます。この商品が嫌いで辞めます」ということはほぼない。「上司が嫌いで辞めます」がほぼ100パーセントですよね。
なので人間関係でこじれて辞めていくんですけど、その状況を引き寄せたのは自分自身であることを認められるかどうかですかね。
入山:タガエミちゃん、どうですか? お二人に何か質問はありますか?
田ケ原:逆に、必ずしも辞めて成功するとは限らないわけじゃないですか。特に高森さんは異業種に飛び込まれたわけなので。その時に、心構えとして何を持っているべきだったのか。どうすれば、辞めたあとに楽しく過ごせるのか。お二人のお考えが気になります。
高森:辞めて新しいところに行った時に、自分の過去に蓄積した何かが使えると思ってはいけないということじゃないですかね。何もない状態から始まると思わないといけない。
入山:なるほど。
高森:新しい職場ではルーキーなので、高校1年生が野球部に入ったら、玉拾いからやるくらいの感覚ですよね。どれだけ期待されて入ってもルーキーなので、それはそれで楽しんでいただければいいのではないかな。そこで「屈辱だな」と感じると、うまくいかないと思いますね。
入山:高橋さんはどうですか?
高橋:僕はけっこう真逆のタイプだったので。前の職種の延長線上にあって、失業する懸念はないというか。最悪、自分の時間を切り売りして何かVTRを作っていれば、ある程度は食えるなと思ったんですよね。その安心はあったので、専門職型の人はサクッと辞めても、比較的に大丈夫かもしれないですね。僕はディレクターで専門職なので。
あとは、どのへんまで生活レベルを落とすかという説明を、ちゃんと家族にするかじゃないですか(笑)。「3食食べられていれば」くらいの家族会議をちゃんとすれば大丈夫かなと思いますけどね。
(一同笑)
入山:なるほど。高森さんはいかがですか?
高森:そうですね、今の生活の質の話はいい話だなと思って、思い出しました。僕が野球を辞めた当時、付き合っていた彼女が今の奥さんですけど、僕は20歳で今の奥さんに出会って24歳でクビになって、25歳で結婚しているんです。
横浜ベイスターズを辞めて、当時、横浜の端っこに住んでいたんですけれども、辞めた翌月くらいには、彼女が当時住んでいた東京の世田谷に2人で家を借りて、そこで3年くらい住んだんですかね。2人で家賃を折半しながら、慎ましい生活をしていたんですけど、とっても幸せだったわけですよね。
それなりにお金を稼げるようになり、どんどん都心に引っ越していって、いいお家に住むようになって、生活の質もこれ以上ないくらい上がりすぎてしまったんですけど、全部なくなっても、あそこに戻るだけだなと考えたら、幸せだなという感じなので。精神的にはとてもいい状態だなと、生活の質という話で、今ぱっと思い出しましたね。
高橋:ラジオだと伝わらないと思うんですけど、高森さん、今めちゃくちゃいい表情で話していたんですよね。たぶん、その頃が1番楽しかったんだろうなと思うくらい。
高森:楽しかったですね。僕がすごく尊敬する経営者で、74歳くらいの、とても財を成した方がいつも言うのは、「手のひらに乗るだけでいいんだ」と。「とんでもない儲け話も俺も山ほど来た」と。でも手のひらに乗るだけでいい。
高橋:どういうことですか?
高森:手のひらに乗るだけのお金でいいんです。
入山:そういうことね。
高森:生活の質も、広げすぎようとしてだいたい人は失敗するんです。
入山:そうね。退く時って、結局失うものが怖いわけだものね。
高森:そうですね。
入山:だから、失うものを失っても、これだけで自分は幸せだと思えればいいわけですね。
高森:そうですね。
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