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異端の経営者が渡すバトンはAIへ? 全産業でリストラ対象拡大(全4記事)

AIの活用で“社長1人で回る会社”が生まれる可能性も? リストラ対象拡大中の今、経営者が悩む“社員の守り方”

「次世代の、起爆剤に。」をミッションに掲げる日本最大級のスタートアップカンファレンスIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)。2023年は京都で開催されました。本セッションでは「異端の経営者が渡すバトンはAIへ? 全産業でリストラ対象拡大」をテーマに、小笠原治氏、亀山敬司氏、寺田航平氏、三宅卓氏の4名が登壇しました。本記事では、急速なAIの台頭に対する経営者としての悩みを明かしました。

AIを「使う側」と「使われる側」で広がる差

亀山敬司氏(以下、亀山):先ほど言ったように、(AIによる雇用への打撃は)大企業が本当に一番やばくて。うちなんかもちょっとやばいというか、人数的には中企業で微妙なところなんだけどね。

社会全体感で言うとバランスが取れてきて、これからは外国人の雇用が入ってこなかったとしてもなんとかなる、ということにはなるんですが。

たぶん今ここにいる人たちは、先端的なIT系企業が多いと思われるし、世間のリアル企業に比べたら、どっちかというとAIに近い側にいると思っているんだよね。その前提でいうと、全体感以上に、みなさんは今後いろんな選択をしていくわけ。

小笠原治氏(以下、小笠原):ただ、ITに近いというか、AIに近ければ近いほど、AIに将来どうなるかを聞いて安心しているみたいな。

亀山:安心している? 安心と言えば、言っちゃなんだけどここにいる人間は安心だと思う。

小笠原:マジですか。安心ですか?

亀山:俺から言わすと、経営者のポジションでスタートアップをやっているトップはたぶん安心なのよ。俺も安心。俺はむしろ収入が増えるかも、ぐらいの話。というのは、AIを使う側と使われる側ですごく差がつくわけで、経営者はどちらかというと「使う側」になるよね。

「使われる側」というのは、AIに代わられる仕事を今までしていた人間。となると、ここにいる人間はみんな、むしろ自分のバリエーションが上がっちゃうんじゃないの? というイメージがあると思うんだよね。

AIに淘汰される人・伸びる人に二分される

寺田航平氏(以下、寺田):ただ、タイプによりますね。タイムマシン的なことをやっているような領域は、もう存在し得ることも難しくなってくるんじゃないかなと正直思っていて。

そういう意味でいうと、AIが答えを出せない新しいクリエーションが出せる人じゃないと生き残れないという話になります。結局のところその2つのタイプに分かれて、淘汰されていく人とグイッと伸びる人に二分されてしまうんじゃないかな、という気持ちもありますね。

小笠原:僕もVCをやっているのであれですが、なんとなくVCとして投資しやすいモデルって、後ろでアルゴリズムがありましたと。アドにしても、SaaSだったらこうだねというのがありました。同じ領域でも、その分野がけっこうきつくなる気がしているんですよね。

あとは亀山さんの言われていたことで言うと、すごく先進的に富める人と使われる人みたいになった時に、分断の間にAIが入るというイメージは持っていたりするんですけどね。

亀山:例えばAIの時給が50円だとして、時給が1,000円の人がいた時に、そのコスト比較がどうなるか。また、ロボットだったら、仮に(今は)購入価格が1台1,000万円だとしても、これがすごく手軽なコストになった時に経営者はどう考えるのか。

同じ仕事をやる時に「人の時給は1,000円だな。じゃあ、50円ならAIのほうがいいかも。さらにAIは間違いが少ないから」とか思ったりするよね。

今後、ホワイトカラーはどうなる?

亀山:今までは、投資家、経営者、ホワイトカラー・ブルーカラーの収入曲線が緩やかな右肩下がりだとしたら、それが投資家や経営者の収入が極端に多い感じになる可能性があるということね。それがすごく怖いことで、現実はまず受け止めないといけないと思うんだよね。その上で経営者がどう考えるかなんだけど。

小笠原:こういう感じですね。

亀山:そう。極端に言えば、L字っぽく。じゃあ、ホワイトカラーの人たちがどうなるかというと、例えばカフェとかいろんなサービス業に行くかもしれないんだけど、結果的にホワイトカラーとブルーカラーの収入の差があまりなくなって、むしろその富が投資家やAIを使う側にいきやすいのよ。

それで、たぶん日本政府はこの富裕層から税金をバコッと取る。90パーセントぐらいの税金を取って、ベーシックインカムだってばらまくかもしれない。こうしないと国がもたないし、暴動が起きちゃうからね。

ただ、収入だけでなく、みんながやりたい仕事ができるか・できないかということは、けっこう大きい問題じゃないかなと思うんだよね。

AIが台頭する時代、誰が生き残れるのか

小笠原:なんか寺田さん、言いたそうな……。

亀山:ボジティブ担当で(笑)。

寺田:その話にかぶせていくというよりは、逆に言うと、エージェンシーみたいな機能はけっこう消滅していくんじゃないかなと思っていて。そこで三宅さんに聞いてみたいと思います。

変な話、BSとPLと、ウェブ上の評判やサイト上の解析だったりを全部クローリングされちゃうと、システム上でM&Aが完結しちゃうという世界観になってしまう。そうなった時に、業界においてリードプレイヤーにならない限り生き残れないという世界が出てきちゃうんじゃないかと。

三宅さんのところは時価総額が1億円とかを超えていましたから、そのへんを聞いてみたいなと思います。

三宅卓氏(以下、三宅):まさにそのとおりですね。今、当社もすごくがんばってAIをやっています。5年前、AIを本格導入するためにデータベースを全部やり変えて、今はAIが活用できるデータベース構造をやっていて、順次データを蓄積している段階なんですね。

まさに、寺田さんがおっしゃったようなかたちでマッチングができてくるんですね。例えば、買い手と売り手を数量化解析して、その距離を弾き出してマッチングしていくということも、もうすでに我々は着手をしています。

小笠原:ベクトル化できているということですね。

三宅:ですから、AIを使ってどこまでマッチングしていくか。

人間が行うよりも、より良いマッチングが可能になるのか

三宅:例えば中小企業に限って言えば、買い手企業が約15万社ぐらいあって、売り手企業は約150万社あるんです。これをマッチングするわけですから、人間の能力よりもデータベースを使って網羅性を確保したほうが、より良いマッチングができる。

ただ、そこでやはり微妙なところがあって。企業文化とか、その企業が持っている使命感とか、経営者が持っている哲学みたいなものは、なかなか数量化・ベクトル化できないというテーマもあって。

そのへんは今の課題なんですが、マッチングそのものはAIでどんどんやっていく。それを完璧にリードできる会社が、次のM&A業界の覇者になっていくんじゃないかなという気がします。

マッチングだけではなくて、例えば当社はプレデューデリにおいてもAIを入れてやっていて、「この業界はどんなリスクがあるのかな?」というのもAIに学習させています。

それから企業評価もですね。M&A業界ってめちゃくちゃ遅れていて、いまだにディスカウンテッドキャッシュフローとか、マルチプルとか、馬鹿げたことをやっているんですよ。

小笠原:今もDCFを使うんですか?

三宅:やっているところがあるんですよ。いや、みんなやっていますよ。

小笠原:マジですか。

三宅:ええ。そんなんやっているセカンダリーマーケットなんてないんですよ。みんな経験値から弾いているんです。「この土地はいくらかな」「これぐらいで売買された」「経験ではこのくらいの収益を生むやろう。だからこのくらいの金を出してもええな」と、やっているわけですね。

「AIをどれだけ活用できるか」で覇者が決まる時代

三宅:これはM&Aもまったく一緒で、我々が今、世界で初めてチャレンジしているのは、そういう考え方で企業評価をできないかなというものです。

幸いなことに成約件数が世界一なので、そのデータを使って学習をさせているんです。M&Aという、どっちかと言ったら超文化系でフェイストゥフェイスの世界も含めて、あらゆるジャンルで「AIをどれだけ活用できるか」で覇者が決まっていく時代になっていくんじゃないかなという気がしますね。

小笠原:確かにね。AIは今、世界一と言われていて。「データ世界一」という話があったと思うんですが、ニッチであれなんであれ、独自のデータを持っているところがなんらかの強みを持つというのはパターン化しますよね。

寺田:間違いないですよね。そういう意味では、どれだけデータを貯め込むのかがポイントになるわけです。逆に言うと、三宅さんの会社の日本M&Aセンターが15年後、三宅さんとエンジニア1,000人とマーケッター100人の会社になっちゃうかもしれないと。

小笠原:僕、一応上場会社だからいじわるな質問をやめたのに(笑)。

三宅:いやいや、コアなところはそうなるんですよ。コアなところはそうなるんやけど、みなさん方もスタートアップで苦労して苦労して、血反吐を吐きながら会社を作ってきた。

5年とか8年やってきた会社を売る時って、やっぱりなんか寂しかったり悔しかったりするじゃないですか。その心情を理解して寄り添う人も必要なんですよね。

亀山:わかりますよ。

経営者の義務の1つは、現場の人間への教育

亀山:ただ、「会社を売りたくもないし潰したくもない」というのは、基本的な経営者の考え方じゃない。だからぶっちゃけ、ここにいる人は三宅さんのお世話になりたくないわけよ。

じゃあ、どうやったらそれをしないで済むかという話なんだけど、一方で今はAI自体を導入しないと勝てませんと。じゃあ導入するとしたら、もう一方で経営者は社員に対してどう考えるんだ? という話になる。

うちはもともとビデオレンタルやいろんな飲食店からやっていて、ヤンキーのやつらに「お前ら、今からITを勉強しないとダメだぞ」とか言って、それぞれ勉強させながら次にITの世界に入っていく、みたいな感じでやってきた。

「もうDVDを売っていても先がないから、太陽光発電を売れ」とかそんなことをやってきたわけで、売れるものや業種をどんどん変えてきたわけよ。だから、新しいテクノロジーを常に勉強しろと(社員に言っている)。勉強して、赤字でもいいからとりあえず会員数を伸ばしたら給料を上げてやるからと。

結局、経営者というのは、現場のやつらを教育することも1つの義務としてあるわけよ。ただ正直言って、ヤンキーに「ITをやれ」と言っても、やったやつは1、2割しかいなかった。できるやつがITに行ったから、できなかったやつはそのまま店長とかに格上げになったからね。

そして去年、コロナでビデオ屋が潰れちゃったから、今その店長は3Dプリンターの生成工場のほうに行っているわけなんだけど、ぶっちゃけそこは給料はあまり変わらないのよ。ITに移ったやつらは、けっこうな金をもらっているかな。

“社長1人で回る会社”が生まれる日も近い?

亀山:今、雇用を抱えている人もいるけど、結局俺たちはその人たちにチャンスを与えることが大事。うちらも今、Azureを入れたり、ほかの有料のAIソフトも「使っていいよ」って、全員に予算をみて「とりあえずAIやれるだけやれ」と。

「ついてこれないとまずいよ」というのを力説しながら、費用は持つから勉強しようということをやっているんだけど、少なくともそれは経営者がやるべきことかなと。

小笠原:そういうことですね。先ほどから言われていたように、社長1人で・AIだけで回る会社って、これから出てくるかもしれないですよね。

亀山:下手すると、本当に出てくるかなと思うんだよ。

小笠原:変な話そういう会社だったら、上場するよりM&Aで売っちゃったほうが心情的な負担もあまりないし、さっさと売れますよね。

亀山:でもそんな時は、はじめから雇用の責任を持たない経営者が登場するわけじゃない。

小笠原:ですよね。だから、すでに一定の大きさを持っている会社とそことでは、戦い方がまったく変わりますよね。

亀山:そうだね。極端なスタートアップはAIを使えないやつは雇わない。本来1,000人でやっていたところを、10人ぐらいで会社を作ろうという話になったら、たぶんそういうメンバーだけでやるよね。

AIの流れの速さに悩まされる経営者

小笠原:例えばですが、DMMは今、3,000人ちょっとおられるんでしたっけ?

亀山:4,000人超えている。

小笠原:4,000人超えるぐらい。これが400人で回せるようになりました、ほかはAIですとなった時に、残り3,600人ぐらいは「なんとかしないと」と。

亀山:だから俺も今、夜中うなされているんだよ。

小笠原:そうなりますよね。

亀山:どうしようって、もう寝られなくてさ。会社事情ではなるべくリストラしたくないじゃない。だからITの頃は、なんとか危機感を持ちながら次々と対応策を考えたんだけど、今回は早すぎるんだよね。

ITの頃よりも7倍速ぐらいで、短期間で来るわけよ。そうしたら、今までなんとか守れたものが守りきれるかというのは、けっこう悩みどころで。

小笠原:正直今、人間と同じ動きができるアクチュエーターやロボットみたいなものを月額25万円で貸すって無理じゃないですか。だから、そういう仕事を振るしかないですもんね。

亀山:だからぶっちゃけ、「DMM指圧」「DMM介護士」とか、一応そういうのも考えざるを得ないと本当に思っていて。そういう受け皿が必要かな、というのはあるわけよ。

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