
2025.02.18
「売上をスケールする」AIの使い道とは アルペンが挑む、kintone×生成AIの接客データ活用法
リンクをコピー
記事をブックマーク
今井裕平氏(以下、今井):ちょっと話は戻りますが、「(デザイナー)3.0を通して身についたこと」って他にもありますか? 今根本のところをたぶんお話しいただいたと思うんですけど、もっとディテールとか具体の話でもいいんですけど。
青木亮作氏(以下、青木):そうですよね。かなり抽象的な話が続きましたね。
今井:それこそテクニック論でもなんでもいいんですけど、3.0的なことをやって、結果的に身についたこと。
青木:なにかあるかな? わりと若いデザイナーさんのような話で言うと、「明日できることだから、うそでもいいからやってみてよ」という気持ちはあって。ここから学び取ったことは、それこそ“自転車の乗り方”なので、僕が言葉で言っても仕方がないなというのがあるので。
あと、例えばメルカリでみんなものを売ったりしているじゃないですか。あれで商売の片鱗を誰でも感じられるような時代になったなと思っているので、あれと一緒だと思っているんですよね。
今井:なるほど。わかりやすい。
青木:だから、メルカリで売ってもいい。その時にどう書くかとかどう見せるかとかってあると思います。それの延長線上に実はでかいビジネスもつながってなくもない。あくまでストライダーに過ぎないんですけど、ゼロじゃないので、言葉とか学び以外に、「ちょっとやってみようかな」というのがすごく大事だとは思っていますね、常々。
今井:なるほど。
青木:そこのハードルをすごくみんな上げているなと思いますね。
今井:今までお話しいただいたようなことが身につくと、経営者とデザインを使ったプロジェクトがわりとスムーズにやれると思います? それとも、まだ足りない部分があると思いますか?
青木:そうですね。わりと小規模なところからやられている方だと、経営者の方とめちゃくちゃ話が合うというのはあって。もう分業化がされている大きな会社で、経営として雇われたかたちの方とだと、齟齬は生まれます。ほぐしたり、あるいは合う・合わないはあるんじゃないかなとは思いますね。
今井:でも行き着くところは、先ほどのガソリンの話なんですかね? その話がわからずになかなか通じ合わないというより、解像度がぜんぜん違うんですかね?
青木:そういう気はしますね。
今井:あとおうかがいしたいのは、自分でやるとなった時に、販売チャネルの話と、その前の「伝えたい」というので、記事をしっかり書かれていたところがあるじゃないですか。「ああいうことをやりたいな」と思いつつ、「なかなかあんな風には」というのも頭をよぎる。それもストライダーに乗ってみろという話ですが……。
青木:(笑)。はい。
今井:スタートは3.0的な、「BOOK on BOOK」があったから書くという話だったのか、それとも元から記事のようなものは書かれていたんですか?
青木:そうですね。もともとをたどると、僕はオリンパス時代にプロダクトデザインでICレコーダーを担当していまして。要は録音機ですね。録音機って録音しかできないけど、使ってみないと良し悪しは判断できないなと思って。
担当機種のサンプルをもらえたので、プライベートで友だちにインタビューを録って文字起こしして、かっこいいフォーマットにして渡すのを遊びでやっていたんですよ。それがめちゃくちゃおもしろくて。
今井:(笑)。
青木:インタビューを録って記事として渡すことをずっとやりたくて。それでTENTを結成してから、担当者さんにインタビューして、終わったプロジェクトを記事化するというのを趣味でやっていたんですね。その流れで、自分にインタビューしようと思って。
青木:だから「BOOK on BOOK」も記事が、「そうですね。確かあの時は」から書き出しなんですよ(笑)。「自分に取材されているとして」と思って書き出していて、「確かあの時は〜だったと思います」とかいってスタートしています。
そういう出自というか、ボイスレコーダーがあったから、インタビューをして記事を書くのにハマって、それをやってみた感じですね。だから売りたいというより、インタビューが楽しくて(笑)。
今井:そうですよね。もともと好きだったというのがあって、それが3.0的な武器にもなったという。
青木:結果的に時代とたまたま合って、Webをみんなが見る時代になったからハマったところはあると思うんですよね。ここ5年前ぐらいから、「ストーリーを語れ」とか「世界観を語れ」とかいろいろ出てきて、オウンドメディアとか出てきたんですけど、あのへんは居心地悪いなと思っていて。
今井:へえ。
青木:あのへんって、ある材料をどういかに伝えるかとか、「ストーリーを作れ」とかなんなら言われているんですけど。僕のやってきた感想からすると、別に誰の人生にも、インタビューすればおもしろいストーリーなんて山のようにある。同じようにどんなものの開発にもあるじゃないですか。
「ここ、大変だったんだよね」とか。それをただただ書くと、編集は必要かもですけど、どのプロジェクトも全部わりとおもしろいんですよね。失敗は失敗でおもしろかったりして。なので、ああいうメディアをわざわざ作って広報でやるというのは、スタンスが違う気がしますね。
今井:なるほど。スタンスというのは、作ろうとするのではなく、そもそもあるんやから、ってことですね。
青木:そうですね。
青木:「モノを売ろうとしてストーリーを作る」とか「モノを売ろうとして魅力を語る」だと、「モノを売ろうとして」というのがどうしても見えちゃうじゃないですか。見えちゃうと、人ってつまらないなと思うんですよね。
それよりは、たまたまおもしろい物語があってとか、映画館へ行ったらグッズを買いたくなるじゃないですか。
今井:(笑)。
青木:おもしろくさえあれば(売り上げは)後でついてくるので、「おもしろい部分はどこかな?」というのをちゃんと抽出しておもしろく書くと、自然とモノもついでに見てもらえる。
先ほどの「HINGE」のページを書いた時もすごくがんばったのは、「今回はこのプロダクトはグッズということにしよう。おもしろいページがあって、『おもしろかったわ』と思った人が買ってくれればいいや」という気持ちで割り切って書いて、あの時が切り替わった瞬間でしたね。
今井:グッズとモノの違い。
青木:グッズというのは、映画館に行った時の帰りのグッズみたいなイメージです。本体がどっちかというか。バンドのライブへ行ってTシャツを買うみたいな気持ちで、まずはそこが入り口になってもいいんじゃないかなという気持ちです。
今井:そのへんはまさに「HINGE」という物語を読んで。
青木:はい、開発の話自体がもうおもしろくて、「いやあ、楽しませてもらった、じゃあ買ってみるか」というのでいいかなと思って。結果、買って使ってもらえて気に入ってもらえたというのは本当に想定外だったんですけど、その手前の「おもしろい話だったよ」という。
その時参考にしていたのが、たまに好きで見ていた「デイリーポータルZ」という、笑える記事がいっぱいあるサイトです。そこって笑って「わあ、おもしろかった、この記事」という場所なんですね。そういう気持ちになる場所として、プロダクトの何かがあってもいいんじゃないかなと思って。「何、このおもしろい記事。笑ったわ」という場所としてやったという感じですね。
今井:僕は昔から拝見していて、記事の分量とか、クオリティももちろんなんですけど、あれをずっと書かれているのって、もともと何があってずっとやられているのかなって。もともと好きやったという話もあるし。
青木:でもそこはもう1つあって、怒りのエネルギーみたいなものも実はありまして。
今井:そうなんですか?
青木:デザイナーが「大先生」という時代がすごく長かったじゃないですか。ご立派なことを言って、上からものを言うみたいな。
今井:わかります。
青木:僕は父が実はフリーランスデザイナーなんですけど、浮かばれない地方で、僕から見たら「いい仕事をしているんだけどな」と思うんだけど、ぜんぜん良い目を見なかった人だったんですよ。一方でそういう大先生という人をいっぱい見て、違和感があって。
もうちょっと、本当におもしろいものづくりのおもしろみって、もっとプロセスの、凡人があがくところにおもしろみがあるじゃないですか。だからそれを伝えたくて、それで「デザイナーというのは上からものを言って、何でも真理を知っている者だ」なんて話は嘘だということを暴きたくて。
今井:へえ(笑)。
青木:「そうじゃないよね」って、すごく暴きたいというミッションが自分の中にあって。「いいものづくりというのは、そういうやり方じゃなくてもできるんだよ」という、白鳥のバタバタみたいな、ああいう足元が一番おもしろいんだよねというのを暴きたくてしょうがないというのが、もともとモチベーションとしてあったんですね。
今井:それはいつぐらいから思った話なんですか?
青木:会社を辞めて、ジワジワずっと思っていたんでしょうね。例えば小学生の時に、UNICORNが出てきた時。おもしろいバンドじゃないですか。
今井:そうですね。
青木:かっこいい曲のバンドはいっぱいいたんですよ。「おもしろくてかっこいいってすげえな」というのはたぶんあったと思いますし。あと、『Dr.スランプ』で(則巻)千兵衛さんって実はすごい人なんですけど、どうしようもないおっさんじゃないですか。かっこいいなとか。
そういう、ジタバタしているけど、やる時はやるみたいなのが、一番の究極のかっこいいかたちだとしたら、そういう僕の価値観から照らし合わせると、当時僕が見ていた大先生的なデザイナーは、みんな格好つけていて、本当のかっこいいじゃないイメージがあって、それでというのは。だから今だと、岡崎体育さんとかはめちゃくちゃ好きで。
今井:なるほど。
青木:マジでかっこいいとか思っちゃうんですけど、そういう感じ。でもデザインってそういうやり方とすごく遠い。みんなすごく怖い感じだったんですけど、実際やっている身からすると楽しいんですよね、毎日すごく試作したりとか。楽しくて仕方ないし、子どもから見たら遊びにしか見えないようなことなのに、みんなして難しい顔をしているのは、あれは違うんだよと暴きたくて。
青木:その「暴きたい」というモチベーションの中には、若い人が入ってこなくなっちゃうじゃんというのもちょっとあって、こんなに楽しいのにみんな難しい顔をして、哲学的みたいなことを語らねばならなくて、かつ高学歴しか勝たないジャンルだってなっちゃうと、例えばうちの子どもなんかはもう(デザインの世界に)入ってこないと思うんですよ。
今井:(笑)。
青木:ともだちの小学生とか憧れてくれないなとか、そういうところもあって。もっとめちゃくちゃ楽しんだよという。
OK Goとかもわりと衝撃としては。OK Goという海外のバンドがいるんですけど、ミュージックビデオですごく変なことをいっぱいしていて、曲はかっこいいんですけど、すごく変なことをしているんですね。伝わってくるのは「楽しそう」しかなくて。
そういうのって大きい目で見ると、「かっこいいな、この音楽。すげえ」じゃなくて、「俺もやってみたい」に近い感情だと思うんですよ。だから僕はどっちかと言うと、「俺もやってみたい」とシフトさせたくて暴きたいし、「楽しいんだよ」と言いたい。楽しいというのは、チヤホヤされて楽しいんじゃなくて、毎日あーって悩むのってめちゃくちゃ楽しいんだよというのをすごく暴きたいと思っていますね。
今井:だから記事がおもろいんですかね?
青木:どうですかね? おもしろいと思ってもらえるんだったらめちゃくちゃうれしいですけど。
今井:記事にもいろいろあって、インスタントにサクサクと見るのもあれば、「これはブックマークしておいて、時間がある時にゆっくり読みたいな」という。青木さんの記事って、僕の中では後者だったりするんですね。
青木:まあ、短くはないですね(笑)。
今井:すごく理解できました。ありがとうございます。
スキルを「掛け算」してこそデザイナーという潮流への“違和感” TENT青木氏が考える「デザイナー3.0」の働き方
デザインは「問題解決」と言いながら「完成度」に評価がいきがち 企業が求める「成果」を出す、ビジネスデザインの視点
「経営」の目線ができないのは「お金」と紐づきすぎているから デザイナーが起業してわかった、本当にお金をかけるべきこと
プロジェクトが成功するとハマってしまう「らしさの沼」 成長するブランドの中で「新しいこと」をする難しさ
「デザイナー=大先生」という嘘を暴きたい TENT青木氏の「おもしろいものづくり」へのモチベーション
価格を決める基準は「友だちにプレゼントするならいくらか」 新しいプロジェクトを失敗させない「見切り」のポイント
2025.02.13
“最近の新人は報連相をしない”という、管理職の他責思考 部下に対する「NG指示」から見る、認識のズレを防ぐコツ
2025.02.13
AIを使いこなせない人が直面する本当の課題 元マッキンゼー・赤羽雄二氏が“英語の情報”を追い続ける理由
2025.02.06
すかいらーく創業者が、社長を辞めて75歳で再起業したわけ “あえて長居させるコーヒー店”の経営に込めるこだわり
2025.02.12
マネージャーは「プレイング3割」が適切 チームの業績を上げるためのマネジメントと業務の比率
2025.02.14
報連相ができない部下に対するコミュニケーションの取り方 「部下が悪い」で終わらせない、管理職のスキル向上のポイント
2025.02.13
上司からは丸投げ、部下からはハラスメント扱い、業務は増加…プレイングマネジャーを苦しめる「6つの圧力」とは
2025.02.12
何度言っても変わらない人への指示のポイント 相手が主体的に動き出す“お願い”の仕方
2025.02.13
「みんなで決めたから」を言い訳にして仲良しクラブで終わる組織 インパクトも多様性も両立させるソース原理
2025.02.10
32歳で「すかいらーく」を創業、75歳で「高倉町珈琲」で再起業 「失敗したからすかいらーくができた」横川竟氏流の経営哲学
2025.01.07
1月から始めたい「日記」を書く習慣 ビジネスパーソンにおすすめな3つの理由
着想から2か月でローンチ!爆速で新規事業を立ち上げる方法
2025.01.21 - 2025.01.21
新人の報連相スキルはマネージメントで引きあげろ!~管理職の「他責思考」を排除~
2025.01.29 - 2025.01.29
【手放すTALK LIVE#45】人と組織のポテンシャルが継承されるソース原理 ~人と組織のポテンシャルが花開く「ソース原理」とは~
2024.12.09 - 2024.12.09
『これで採用はうまくいく』著者が語る、今こそ採用担当に届けたい「口説く」力のすべて
2024.11.29 - 2024.11.29
第20回エクゼクティブメンターイベント「今、「ひと」と組織が共創する〜働き方の未来へ」
2024.12.07 - 2024.12.07