2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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上田渉氏(以下、上田):今までが自己紹介のパートでございまして。ここから先が今日の本題となりますので、ちょっとゆっくり目にしゃべっていきたいと思います。「『人的資本』の伸ばし方」というテーマでございます。
先ほど石川さんから人的資本について、たっぷりみなさんお話を聞いたと思うんですけども、そもそも人的資本とは何かといったところですね。またあらためて話してみたく、せっかくなのでChatGPTに「人的資本って何?」って聞いてみました。
そうしたら人的資本とは「組織や企業内の従業員の知識、スキル、経験、教育、健康状態など人間のリソースの総称を指します」と。
赤線のところだけ読み上げますと「人的資本経営のアプローチは、従業員を単なるコストではなく、組織の最も重要な資源として位置づける考え方です。従業員のスキルや能力を最大限に活用し、組織の持続的な成功を実現するための重要な手法とされています」と書かれているわけですね。
要するに人を資本と見て、じっくり成長に寄与していきましょう、というようなところが人的資本になるわけです。その人的資本がなぜ重要なのかっていう話になるんですよね。そこをよく考えてみると、企業の成長には当然優秀な人材は不可欠なんですよね。
ところが我々中小企業にとっては優秀な人材の確保って極めて難しくて、特に中途採用等で優秀な人材を採ろうとしても、なかなか今は採れない時代になってきてしまってると。大企業が好条件をボーンと打ち出せば、それで行ってしまったりとかいうこともよくある話でございまして。優秀な人材を確保するために中途採用をがんばっても、うまくいかないっていうこともよくあるんですよね。
上田:となると、その中で人的資本をどうやって確保していくかというと、もう話は1つ。プロパー社員をいかに成長させて、いかに優秀な人材にしていくかということが、もうそのまま、ダイレクトに企業の成長につながるということなんですよね。
だからこそ、いかに人材戦略をきちんとして人材育成をしていくかということが極めて重要になってくるというのが、人的資本経営をやっていく上での重要な考え方になるわけでございます。
そうした中で、企業を成長させていくためには「継続学習の風土」が大事だという話があります。ピーター・F・ドラッカーという偉い経営学者の先生がお話ししてるんですが、「イノベーションを行うには、組織全体に継続学習の風土が不可欠である」ということをおっしゃってるんですね。
これを現代に置き換えてみるとどういうことかというと、人的資本の成長のためには学習、社員の学びと、リスキリングが重要なんですよね。
この時に学習もリスキリングも、社員が自ら行う必要があるわけです。素材を与えるだけではできなくて、やはり学んでもらわなきゃいけない。そうすることで人的資本が成長します。
人的資本が成長すると、効果的なアウトプットが会社として出せるようになってくるんですね。そのアウトプットの積み重ねが非連続的な成長のイノベーションにつながっていくといった話でございまして、とにかく社員を成長させて、そしてより良い成長に結びつけていくということで、「継続学習の風土というものが極めて重要である」といった話になるわけです。
上田:その中で継続学習をどうやって実現していくのかという必要条件は、2つかなと思っております。1つは「学びに関する面倒くささを消す」ことなんですよね。要はいかにやらない理由をなくすかって話です。これに関しては「個別最適化」というのがキーワードだと思っています。
もう1つが「動機付け」です。学びたくなる理由作り、モチベーションの源泉というところで、これに関して「ビジョン」と「仕組み化」という2つが鍵になっていると思っていますので、この順番でご説明していきたいと思います。
まず、学習には「認知特性に応じた個別最適化」が非常に重要だと考えています。「認知特性」とは何かと言うと、「目で見る」とか「耳で聴く」とか、そういった情報のインプット手段ってあるんですけども、その時に個人個人で、目からのインプットが得意な人もいれば、耳からのインプットが得意な人もいるという話です。
これはどういうことかというと、今写真にかわいい赤ちゃんが写っていますけども、実は我々人間というのは、言葉を音で記憶しているんですね。これは赤ちゃんが生まれた時に、お父さん、お母さんからいろいろ話しかけられて、「パパ」とか「ママ」とかしゃべり出すわけですよね。その後から幼稚園とか小学校で文字を学んでいくという、そういった発達プロセスを取っています。
なので、言葉は人間の脳においては、まず音声で記憶されて、文字は後から学んでいる。言葉はすべて音声で記憶しているというのがポイントになります。
その上で、本を読む時に脳がどうやって読むかというと、まず文字を目で見て、文字を頭の中で音声に変換して、それから言語として認識・理解するというような流れです。なので、目で見て音声に変換して言語で理解する。これが1つの流れになるわけです。
この時、実は「目で見て音声に変換する」というプロセスが得意な脳と不得意な脳があるんですよ。得意な脳は当然本を読むのが早いんですけども、不得意な脳に関してはどういうことが起きているかというと、要は文字を目で見ても、頭で音声に変換できないということなので、いわゆる「ディスレクシア」、難読症とか読字障害とか、そういったことが言われる症状になるわけです。
このディスレクシアという方がいったいどれぐらいいるかと言うと、だいたい全人類の人口の10パーセントぐらいいると言われています。おおむね左利きの方と同じぐらいの割合です。実は多いんですよ。実際、例えばトム・クルーズとかスティーブ・ジョブズとか、こういった著名人の方もけっこうディスレクシアだと公言している方も多いです。
この文字を音声に変換する速さには程度がありまして、目で見て音声に変換するスピードが極端に遅い方がディスレクシアなんですよね。この流れが早い方というのは、本を読むのが早い方なんですよ。認知特性で言うと、目のほうが強めな方が本を読むのが早い。ディスレクシアは当然、認知特性で言うと聴覚型になるわけです。
問題は、真ん中の流れが遅い方なんです。流れが遅い方というのはどうなるかと言うと、本は読めるし字も読める。ただ、本を読む、字を読むのが遅いんです。なので、本を読むのがしんどかったり、苦手だったり、疲れたり、眠くなったりという症状が出ます。
こういった方は、実際人口の6割ぐらいいるんです。ディスレクシアが10パーセント、流れが遅い方が60パーセントなので、早い人が30パーセントいるといった話でございまして、おおむね70パーセントの方が、認知特性で言うと耳が優勢な方であると言えるようになっています。
ということで、認知特性は私が書いた『超効率耳勉強法』という本に、「学習スタイルチェックテスト」というのがあって、簡易的なチェックはここでできるようになっています。興味がある方はゲットして見ていただければと思います。
このチェックテストを実際に弊社の取引先等を含めてやっていった結果、実際同じような結果が出てきまして、音声系のほうが70パーセントぐらいあるといったところで、おおむね統計的にも有意な数で検査してそれになったといった結果になっております。
結果的に、目のインプットが得意な人よりも、耳のインプットが得意な人が圧倒的に多くなったわけですよね。目からのインプットが得意な人の場合は、読書とかeラーニングとか既存の学びでいいんですよね。そういったものはおおむね目からのインプットになるわけです。なので、目の認知特性が高い方にとっては、このやり方でいいんです。
ところが、耳の認知特性が高い残り70パーセントの方にとっては、今現在はそういったものに最適な教材が提供されていないわけです。なので、目の認知特性が高い人と耳の認知特性の高い人では、実は提供されている学習手段に差があるんですよ。理解で差が出てしまうということなんです。
視覚重視の教育になってしまった結果、社内に教育の格差が生まれている状態になっているんですよね。そうすると、継続学習の風土を実現するためには、誰でも格差なく学べる必要があるわけでございまして、そうなると音声学習の活用が必要になってくるといったことになるわけです。
続きまして、動機付けの話に移りますと、動機付けには「ビジョン」と「仕組み化」の2つが重要になるわけです。ビジョンというのは、個人のビジョンと会社のビジョンがあるんですけども、個人に関しては「なぜ私は成長しなければならないのか」「なぜ私は勉強しないといけないのか」「私はどうなりたいのか」。
それが会社のビジョン、「なぜあなたに成長してほしいのか」「あなたにどうなってほしいのか」という、この2つを統合することによって、個人のビジョンと会社のビジョンを統合することによって、モチベーションを湧かせることができるわけです。
仕組み化をしていく上では設計のポイントが3つあります。社員が勉強をやりたくない理由をなくして、勉強をやりたくなる理由を増やして、「勉強をやらねばならない」を増やす。この3つです。
やりたくない理由を潰すというのは、当然「面倒くさい」とかを潰すこと。それこそ認知特性の話ですよね。あとは、やりたくなる理由を増やす。査定が良くなるとか、先ほどのビジョンとかが一致することです。
勉強をやらなければならない理由。これは勉強をしないと、例えばTOEIC700点を取らないとマネジャーに上がれないとか、そういった資格制度と組み合わせたり、勉強時間(を業務)と見なしたり、いろんなやり方があるわけです。
実際に仕組み化していこうとすると、例えば勉強と学習のハードルを下げて、面倒くささを消すという意味では、音声学習も採り入れましょうみたいな話で。学びをシェアして実践する場という意味では、コミュニティとか仕事のOJT的なことで、仕事の現場で実践して、学びを定着させていく。
学びを客観的に評価できる機会というところでは、上司との1on1で話があったり、評価制度で学んでいるということ自体が組み込まれて、勉強することが評価されるとか、そういったモチベーションが上がる仕組みがあったりとか。
最後に、評価を受けて必要な部分を取捨選択して学べるという意味では、研修も読書も音声学習も、追加で学んでいける仕組みを準備していくと。そういった中で、学習のハードルを下げるところで、音声学習が1つの仕組み化の潤滑油として機能するといったことが言えるかと思います。
ここまでが今回のポイントでした。私からのご説明は以上となります。どうもありがとうございました。
石川哲也氏(以下、石川):上田さん、ありがとうございます。ここから質疑応答のお時間にさせていただけたらと思います。上田さん、すみません、私がちょっと押したので。
上田:いえ、僕もがんばって早口になりました(笑)。
石川:(笑)。上田さんに質問が来ています。
上田:はい。
石川:こちら、回答をお願いできますでしょうか。
上田:「『ながら聴き』でもきちんと知識が定着されるのか?」と。「聴き流していると覚えてないのではないか」。これは慣れが必要なんですけども、オーディオブックを最初にいきなり聴いた時に、いきなり「ながら聴き」から始めると、たぶん集中できない部分ってあると思うんです。
最初は目をつぶって聴くとか、聴くのに慣れた状態からスタートして、そこから移動中に聞くとかに変えていくと、実は「ながら聴き」でもかなりの率で頭に入るようになります。
要は言語感覚が混ざってないことが重要で、例えば本を読みながら耳でも違うオーディオブックを聴くと、当然頭に入らないんですよ。言語感覚が混ざってしまうので。ところが車を運転しているとか歩いているとか、そういった他の言語感覚が混ざらない状態で聴く分には、非常に脳に入りやすいというのがわかっているんです。
そこから先は認知特性の話になってしまいます。耳の特性が高い70パーセントの方にとっては、耳で聴いたほうが圧倒的に入りやすいといった差がありますので、このあたりはちょっと試してみていただければなと思います。
石川:私個人も、相当オーディオブックを使わせていただいていますが、慣れてくると食器を洗いながらの「ながら聴き」がすごく効いてきます。
私個人のノウハウをご紹介させていただくと、一回も読んだことのない新テーマの本をいきなりオーディオブック(で聴くの)は私はしんどくて、最初はある程度知識を持った上で、それを補完していくようなオーディオブックは、2倍速でもガンガン入ってきます。そういう使い方は、私にとっては良かったなと思います。
上田:ありがとうございます。
石川:「石川さんに質問です。おすすめの人的資本の指標の事例を知りたいです」。先ほどお伝えした通り、探求して自社オリジナルを見つけられるかどうかがまず分岐点です。見つけられたらかなりいいんですけど、そこを見つけられなくても、鉄板と言えるのが2つあります。
1つ目は、先ほど上田さんが出していた、継続学習の比率なんですよ。「人を大事にしていこう」となった以上、人が成長してくれると、それだけでどの方向性であろうと資本の価値は上がっていくので。
それこそうちの会社もやっていますけども、平均の月間の読書数とか。上田さんと私が会ってから、読書数を紙の本もオーディオブックもどっちも良しにしたんですけど、うちのコンサルタントは「月10冊読む」というのを指標にしています。これでずっと追っていくのは1ついいと思いますね。
上田:10冊というと、けっこうな冊数ですね。
石川:それがうちの資本なので。コンサルのパッケージがないのと、コンサルタントは広い知識を持っていないとダメなんですよね。その戦略性からきています。
もう1つが、ミドルマネジャーの量と質です。その会社特有のミドルマネジャーの質を設定したら、その数を指標として追っていく。「ミドルマネジャーの量と質」と「継続学習」。この2つは、どの企業でもある程度ハマってくるのでおすすめかなと思います。私の回答は以上です。
上田さん、本日はありがとうございました。みなさん、ご参加いただきましてありがとうございます。本日のセミナーは以上となります。
上田:ありがとうございました。
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