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なんとなく指導から脱却! 教えるべきか、任せるべきかの分かれ道(全4記事)

新人を潰す上司・伸ばす上司の差は“指導の順番”にある 社員の4タイプ別の特徴と、適切な指導のポイント

人材育成で悩んでいる人事担当者、部下指導を「なんとなく」で行っている管理職が、感覚的な指導から脱却し、部下の活躍を促すために有効な打ち手について、株式会社PDCAの学校 代表取締役の浅井隆志氏が解説。本記事では、社員を4つのタイプに分類しながら、タイプ別の適切な指導方法について語っています。

忙しい上司を見て「ああはなりたくない」と思う部下

浅井隆志氏:これは、繰り返しウェビナーでお話しさせていただいておりますが、特に最近の若手は自己成長、スキルアップ、キャリアアップを図りたいというニーズがあります。ただ一方で、管理職にはなりたくない。

「管理職になりたくない」という割合が、過去20年ずっと遡っても右肩上がりで増えてるんです。なんでかというと、責任を負いたくない。理由はここだけなんですね。自分の会社の課長や部署を見ると、大変そうだからなりたくない。

もう1つ余談になりますが、以前、千葉に十数店舗ある携帯電話の販売の会社のコンサルをさせていただきました。キャリア名は伏せます。

店長があまりにも大変で、社員が店長を見て「あんなに忙しくて、責任もあって、女子からも詰められていて、ああはなりたくない。だから上を目指す人がまったくいないんです」と、相談されました。

僕は会社に率直に「店長だから与えられる特権を明確に明示をする。なかったらちゃんと付与していかないと、そうなりたいなんて思いませんよ」と、しっかり提言させていただきました。

自社の管理職に“魅力づけ”をする

ということで、店長には思いっきりいろんな好待遇を準備していただきました。「店長のアイドル化作戦」というふうにテーマをつけて、採用もそのように打ち出したんですね。

「入社して何年ぐらいで主任になって、最短5年ぐらいで店長になれます。店長はこういう責務を担っていて、仕事としてはもちろん重責ではあるけれども、こういう待遇や特権があるんですよ」とアイドル化をして、採用戦略もサポートさせていただきました。

これがもう、見事にはまりました。というところで、管理職になりたくない層が増えているのは自社の管理職に魅力がないということで、そこをあらためていただく必要があるんじゃないかなと思っています。

あと、これはずっとずっと言い続けておりますが、若手からの会社に対する不満は「フィードバックがない」。管理職からの指導や明確な指示がないことが、やはり不満になっています。

ただ指導すればいいということでもないので、誤解を招かないようにカテゴリーを分けて、「どこまで指導すればいいのか」をお話ししていきたいと思います。

よくある社員の4タイプ

最近では「コーチングがすべてだ」とか言っていますが、はっきり言って僕からしてみたら、コーチングも万能ではないんです。なので、「コーチングがすべてだ」と言っているのに騙されないでください。「組織はこうあるべきだ」というのにも騙されないでください。当然、状況によって使い分けが必要になってきます。

1番が「モチベーションは高いが、スキルがない社員」。2番が「モチベーションが低く、スキルもない社員」。3番が「モチベーションが低いが、スキルが高い社員」。4番が「モチベーションもスキルも高い社員」。

「モチベーション」と書いておりますが、「メンタル」と置き換えていただいてもけっこうですし、「仕事に対する態度、意欲」「エンゲージメント」というふうに置き換えていただくと、要所要所がわかりやすくなると思います。

この図で解説をしていきます。横軸は能力(経験)、縦軸は意欲です。まずは左上から説明していきたいと思いますが、「指示型」と書いてありますね。

モチベーションは高いがスキルがない社員。主に新入社員をイメージしていただくとわかりますよね。

「よし、いっちょがんばろう」と意気揚々にして入社してきたにもかかわらず、もちろんまだ知識・体験・経験がありませんので、仕事はできません。ということは、仕事を積極的に教えることが大事になってきます。

ステップを間違えた指導は“マネジメントの放棄”

管理職の方と会話をしているとよくあるのが、「新入社員じゃないんだけれども、まだまだ一人前じゃない社員に対して、あんまり細かいことを言わないようにしているんです。自分で考えなくなっちゃうから」と言うんですよ。これってマネジメントを放棄しているなと思っていて。

わからないことはわからない。「考えろ」と言っても、何について考えていいかわからないというのが、仕事がまだ一人前ではない社員の特徴なんです。なので、「考えてみて」と言うのは不毛です。

「できるようになってから考えさせる」というステップを間違ってしまうと、逆に新入社員を潰しかねない。新入社員を早期戦力化できない企業さまは、このあたりが弱いんじゃないかなと感じております。

仕事を教えるだけでなく、考えさせることも大事

次に、モチベーションが低くスキルもない(参加型)。当然仕事を教えるべきなんですが、新入社員のように一から十まで教えるというよりは、「考えさせていく」という要素が必要になってきます。

「君はどう思うの?」という質問や、「達成に向けてどんな行動が必要ですか?」とか。例えば、営業がわかりやすいので営業に例えさせていただきます。

「先月は未達成でした」「うーん、未達成だったの。どれぐらい?」「10件の目標が7件でした」「じゃあ今月はどうするの?」「先月足りなかった3件を足して、13件がんばります」「13件を達成するためにはどうする?」「通常は電話が1日50件だったんですが、70件に増やしたいと思います」とか、こういう質問をして引き出していく。

もっと言えば、「数を増やすだけでも意味がないよね。質をどうやって高めるの?」ぐらいまで質問して、考えさせていくという働きかけが大事になってきます。

僕の感覚ですが、おそらくみなさんの会社の6割ぐらいの社員がここ(参加型)に該当します。「よし。いっちょがんばります!」「燃えてます!」でもなく、淡々と仕事をしている。じゃあ、「もう一人前だね」「優秀だね」と言えるかというと、そうでもない。会社に6割ぐらいはいませんか? 「2:6:2の法則」ですね。

ということは、社員が考えて自発的に仕事をしてもらいたいと思ったら、そうやって働きかけていくことが大事なんです。この領域は「コーチング」です。

仕事を任せることと「手放し」は違う

次に、モチベーションが低いがスキルが高い(支援型)。仕事を教えるべきなのか・任せるべきなのかというと、ある程度は任せていい。

どちらかというとモチベーションの問題で、スキルは十分にあるので、どうやってモチベーション、会社に対する貢献意欲、ロイヤリティ、エンゲージメント、つながりの意識、愛社精神、帰属意識を醸成していくのか。

それから、「将来的にあなたには会社でこういうポジションを担ってほしい」という、期待を中心にしたマネジメントがこの層には該当します。

それから、モチベーションが高くスキルも高い(委任型)。まさにみなさまのような方は、ある程度仕事をお任せという状態でもよろしいかなと思います。ただ、「任せる」という言葉もけっこう誤解があると思っています。

仕事を任せるといっても、組織なので全任せはあり得ないですね。当然、一から十まで業務を完結してもらうこともありますし、「細かいことは全部の決裁権を渡すので、自分で考えて決めて進めてね」というものもあります。

ただ、その進捗や、どういう判断をしたのかを適宜聞いて管理しておくことは絶対に必要になってきます。任せて、やらせて、育てるというのは、フェーズによって温度感は変わりますし、手放しはあり得ないということをご理解いただきたいです。

上司の役割で「ネガティブフィードバック」は必須

今は指導基準についてお話をしましたが、このあたりの基準も明確に持っておいていただくとよろしいかなと思っております。

「フィードバックがちゃんとなされない」ということで、「上司から褒められないんです」という不満もありますし、逆に「上司からいたずらに褒められて気持ち悪いです」という不満もあったり、じゃあどうしたらいいんだろう? みたいなところがあると思いますので、この基準についてお話ししていきます。

横軸は仕事の進め方で、縦軸は仕事の成果です。仕事の進め方が悪くて成果が出ていない時には「指摘」が大事なんですね。

2022年4月にパワハラ防止法の改正がありましたように、「あまり厳しいことを言ってしまうとパワハラになるのではないか」と恐れて、厳しいことを言わなくなってしまっている管理職が蔓延しています。これ、僕はすごく問題だと思っています。

もちろん、パワハラの件数が減っていないのも問題ではあると思っていますが、パワハラを恐れすぎて、部下に対してお客さまのように接してしまっていて、厳しいことを何も言わない上司は上司の役割を果たしてないんです。

上司の役割として、「指摘」「ダメ出し」というネガティブフィードバックが絶対に必要なんです。「あなたの仕事の責務はここからここまでで、ここを完結して責任を持ってやってください」ということは、ちゃんと言わないとダメです。

これを感情的に言ったり、「バカだ」とか何だとかって言うからパワハラになるわけです。淡々と事実だけ伝えればいいわけですね。

部下に指摘する時のポイントは「事実だけで淡々と」

例えば遅刻してきた人間に対して、「まず、遅刻というのは社会人としていけません。それから会社としての約束です。じゃあなんで約束を守る必要があるかと言うと、あなたは『この時間からこの時間は働く』という労働契約・雇用契約の下に会社に雇われています」。

「あなたはこの責務を果たすことによって、毎月決まった金額が給与として、決まった日時に振り込まれます。この約束が果たされなかったり、給料が1日延びたり、いきなり『すみません、今月は給料が5万円下がります』と約束を破られたら、あなたはどう思いますか? 不信感ですよね」。

「不信感が湧いた状態ではいい仕事ができませんよね。お互いに信頼関係があって、初めて仕事は成り立つわけです。だから遅刻というのは『約束を破った』ということになりかねない。そして信頼を失墜するということは、チームとして成果を得られない。だから遅刻はダメなんです」と、こうやって言えばいいわけです。

事実だけで淡々と指摘をせず、「遅刻した? 気をつけろよ」ぐらいだったらダメです。ちゃんと言わないとダメですね。

四象限で見る、適切な指導方法のポイント

(横軸の)プロセス。成果が出た時には「成果が出たから良し」じゃなくて、コンプライアンスやルール、いわゆる「イレギュラーは認めない」ということを統制していくフェーズもありますので、これは「戒め」が大事です。

ただ、組織としての創業期とか、事業部としての黎明期では、ある程度イレギュラーを繰り返しながらレギュラーを決めていくプロセスもありますので、なんでもかんでもイレギュラーを許してはいけないということではないですが、基本的には組織において戒めが必要になってきます。

それから、仕事の進め方が良くても成果が悪かった場合には「励まし」です。「どんなにがんばっていても、うちは運動会じゃないんだ。成果を出せ!」と言うのはNGですよ。

「とにかく成果だけを突きつけて、成果の責任だけを負わせていけば、あとは社員が勝手に動いて成果を出してくれるだろう」という説や、そういうことをうたっている会社もありますが、これは大問題だなと思っております。

成果の責任は管理職に、管理職の責任はもちろん会社にありますよね。社員の責任は何かと言うと、上司から言われたことをちゃんとやりきる「業務遂行の責任」があるわけです。成果の責任は誰にあるかと言うと、管理職です。

だから、管理職の言う通りに社員がやっているのに成果が出なかったのに、それで「(社員の)責任だ」と言うのはかわいそうですよね。逆に、社員に責任を被せたいから細かいことを言わない管理職が多いわけです。

仕事の成果が良くて結果が出たら褒める。最近は「褒める」も弊害があるなんて言われていますので、一応「共感する」という言葉にします。

成果が良くて結果が出たら、「ありがとう」が一番いいと思うんです。「ありがとう、助かったよ」「頼りになる。ありがとう」。こういう基準で現場の指導はしていただきたいなと思っています。

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