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なんとなく指導から脱却! 教えるべきか、任せるべきかの分かれ道(全4記事)

若手社員を“宇宙人”扱いし、他責思考な指導をする上司 管理職の「本音」から見えた、マネジメントの課題点

人材育成で悩んでいる人事担当者、部下指導を「なんとなく」で行っている管理職が、感覚的な指導から脱却し、部下の活躍を促すために有効な打ち手について、株式会社PDCAの学校 代表取締役の浅井隆志氏が解説。本記事では、「なんとなく指導」が起きてしまう原因と対処法について語っています。

各国に遅れを取っている日本の労働生産性

浅井隆志氏:日本のGDP、それから1人当たりの生産性とでいきますと、中国にはもうとっくの昔に抜かれています。

中国を筆頭にアジアの成長率は著しいんですが、自己啓発をしている割合はどれぐらいかというと、アジアの平均が80パーセント、中国で90パーセント、日本は44パーセントです。僕の感覚でいうと3パーセントくらいなので、天と地の差が開いてるんじゃないかなと思います。

もう1つ本当に余計な話をしますが、「詰め込み教育が良くない」と言われた時代がありましたね。それから、ゆとり教育が始まりました。ただ、日本の経済が良かった時を支えたのは、もちろんバブルとかいろんな要因があったと思いますが、その時の現役世代は詰め込み教育だったわけですね。

詰め込み教育も、良かった・悪かったといろいろあると思いますが、徹底的にいろんなことを勉強してきた人たちが日本経済を支えてきたと考えていきますと、しっかり勉強する、インプットする、自己成長していくことを今一度考えていく。

この何年か、日本の労働生産性がずっと微妙に下がっている状況で、各国と比べればものすごく遅れを取っている状態ですよね。やはり今一度、自己研鑽とか、学ぶとか、自己啓発するとか、しっかり教育することを会社でも見直す必要があるのではないかなと思っております。

管理職の「なんとなく指導」が起きる原因

じゃあ、学んだことがない人はどうするかというと、「なんとなく」で指導するしかない。自分がされたことを繰り返すしかないわけです。

僕は28歳の時に営業で課長になり、30歳の時に営業統括になりました。その時に、部下は60名ぐらいいましたかね。(部下指導で)どうしたかというと、自分がされたことを繰り返すわけです。

なぜかというと、当たり前ですが人間は「自分が成果を出している」ということは、自分の生まれ育った環境を肯定するわけです。僕が20代で働いていた頃は、「営業会議」というと数字を詰めることが会議でした。

目標に対して、「浅井、今は進捗何パーセント? お前、何やってんの? やる気あるのか」と、怒られるみたいな(笑)。しまいには椅子を投げられるとか、灰皿を投げられるとか、そういう雰囲気でしたね。

厳しく厳しく数字について詰めて、プレッシャーを与えて、踏めば踏むほど雑草は伸びる、踏めば踏めばうどんはコシが出る、みたいな。そういう発想で踏みつけられて生まれ育ったわけです。

僕は最終的に売れるようになったので、それが正義だと思っちゃったんですね。僕が課長になった時に営業部員は30人ぐらいおりまして、ガン詰めをしたんですよね。そうしたら3ヶ月で半分ぐらいは辞めてしまった経験があるので、「これはいかん」とマネジメントを勉強した。僕もこういう痛い経験をしてるんです。

なので、「マネジメントってどういうことですか?」「課長として仕事をしていて、課長の役割なんですか?」というのに明確に答えられない人にマネジメントを任せていることほど、危険なものはないですよね。

新人研修以降は「放置プレイ」

自分で勉強をしないというのもありますし、企業としても新入社員には教育をしているんですけど、新入社員以外の教育ってほぼしないんですね。

大企業においても、新入社員以降の教育は20パーセントぐらいしかしない。中小企業においてはほぼゼロです。みなさんの会社では、3年生教育とか5年生教育ってありますか? 「ある」という企業さんはかなり少なくて、いわゆる放置プレイをしちゃっているんですね。

管理職の方の傾向を実態調査して、「管理職として悩みを相談できる人いますか?」と聞くと、8割以上が「なかなか相談できない」。課長が部長に相談したところで、部長も気合い・根性の人なので、結局「気合い・根性」しか言われない。

これを役員や社長に言っても、「がんばろう」「ビジョンはこうだ」とか抽象的なことしか言わないので、それを咀嚼して「現場でどうあるべきなのか」という議論が進まない。一番困るのは末端の社員です。

経営者・人事が管理職に期待していることは何かというと、やはり「メンバーの育成」なんですよね。

ようやく最近は風潮が出てきたかなと思いますが、人的資本、いわゆる人に対する投資をしていかないと企業成長がないということは、少しずつ認識が高まってきたかなと思っております。

部下育成で悩んでいるのに“自信のある管理職”が多い

ちなみに、投資をする会社やベンチャーキャピタルが会社に求めてることは何かというと「人材育成」なんですね。株主を含めて「人材投資をしてくれ」と。しかし企業は何に投資するかというと、相変わらず「設備投資」なんですね。これが今の日本企業の実態です。

部下の育成が課題と感じていると、管理職としても悩みますよね。「最近の若手は言うことを聞かない」「生意気だ」とか、逆に「挨拶をしても返事がない」とかいろんなご相談をいただきますが、やはり育成がなかなか難しいと。

ただ、おもしろいデータが1つあります。「部下育成に対して自信がありますか?」というと、「自信があります」と言う人が多いんですよ。「部下育成で悩んでます」と言ってるのにもかかわらず、自信があると言ってるんです。これはどういうことか。

歴史ファンの僕は、実はここがマネジメントが機能しない本質だと思いますので、みなさんにお伝えしていきたいと思います。

「管理職として、僕はちゃんと育成できますよ。ただ、最近の若手はちょっとおかしいです」「僕は管理職として十分能力が高いです。ただ、最近の若い子は宇宙人なので、宇宙人の扱いに悩んでます」みたいな感じなんです。簡単に言うと他責思考で、自分が悪いと思ってないですよ。

「うちの会社は中小企業で、地方で不人気の業界でロクな奴が来ないから、何を言ったってしょうがないんですよ」という他責思考です。

他責思考で部下を突き放すことが問題

何か問題があった時に、自分に責任があるというのは自責。自分以外に問題があると言ったら他責。確かに、採用の問題とか諸々あるかもしれませんが、他責にした瞬間に成長は止まります。

「自分に何か問題がある」と思った瞬間、そこから改善、改革、工夫、イノベーション、成長が始まるわけですよね。(管理職の多くは)「最近の若手は受け身」「指示待ち」「チャレンジしない」「意識が低い」「ストレス耐性が低い」という言い訳をするわけです。

受け身の人間をどうやって主体的にしていくのか。指示待ち人間をどうやって自分で考えて動けるようにしていくのか。チャレンジしない人間にどうやってチャレンジを促進していくのか。

意識が低いんだったらどうやって意識を高めていくのか。ストレス耐性が低いんだったら、どうやってケアをしていくのかを考えるべきなのに、ポンと突き放しちゃう。これが問題です。

問題ばかりお伝えさせていただきましたが、「なんとなく指導」、それから「監視役の上司が蔓延」。

日報の文章量が多かったら、なんとなく「ふんふん、仕事をしているな」と判断する管理職もいらっしゃいますし、それから数字しか見ない管理職の人もいます。

マネジメントの「こうあるべきだ論」には要注意

この世の中には、いろんなリーダーシップ論、マネジメント論、組織論があります。どれが正しいのか、僕のスタンスをお伝えさせておきますと、(正しいものは)ないと思っています。

上場している人材系の会社でも、「組織がこうあるべきだ」「いやいや組織はこうあるべきだ」みたいな考え方をみんな持っています。PDCAの学校にはありません。なんでかというと、人によって価値観が違うからです。なので、厳しく言ったほうがいい時もありますし、何も言わないほうがいい時もあります。

プロセス、いわゆるKPIマネジメントを徹底したほうがいい場合もあれば、成果だけを授けたほうがいい場合もあるし、考えさせたほうがいい場合もあるし、教えたほうがいい場合もある。

社員の能力だったり、その時々の人間には感情や心情が絶対にあるわけじゃないですか。組織のフェーズだったり、そういう状況に合わせてマネジメントしていくことが正解だと思っています。だから、「こうあるべきだ論」にはちょっと気をつけていただきたいなと思っております。

じゃあ、どういう基準でマネジメントしていけばいいのか。そうは言っても基準があると思いますので、お伝えさせていただきたいと思います。

“対処療法”をやっている管理職は疲弊する

ちょうど今、コメントをいただいたので読み上げたいと思います。「今回も視聴させていただきありがとうございます」。毎回、僕が励みになってます。ありがとうございます。

「同じ課題に対して2つの捉え方があり、その差が大きいと感じます。①その問題がなぜ起きるのかを考え、次に起こさないように考える管理職。②問題に対して愚直に・一生懸命対応を繰り返すが、毎回苦労する管理職」。

「本来①のように考える必要があることを、毎回のOJT指導としても次のフォローの時にも②の対応をして苦労している管理職。このような②の管理職は、精神的にも負荷を感じている場合が多い。現実、いくらマネジメントのスキルや知識を教えても、実際に本質を理解できない管理職もいます」。

「この②の管理職に対する育成方法に悩んでおります。今は粘り強く育成を続けておりますが、切り口を変えて取り組む必要があるとも考えております。何かアドバイスありましたら、よろしくお願いいたします」。

問題が起きた時に、原因に対する対策立案を考えていくのが前者(①)。後者(②)はどちらかというと、起きた問題にどうやって対処するかという、対応策・緊急策ですよね。“対処療法”をやってる管理職は疲弊すると。これは可視化していくだけだと思うんですよね。

おすすめの業務の振り返り方

あまり宣伝っぽくないようにお伝えしますが、みなさんの会社でやっている日報がありましたら、うちの会社での振り返りをぜひ参考にしていただきたいです。

振り返りの中で、うまくいった時には「成功要因」、うまくいかなかった時には「原因追求」を必ずセットでやっています。PDCAの考え方の「C」、振り返り検証作業のところにも必ず項目を作って、事実・結果・成果に対する原因は何かを考えさせることを癖づけします。

例えば、会社で何か問題があった時にはそれを可視化して、「こういう問題がありました。原因はここです。だからこういう原因が起こらないように取る対策はこれです」という、3つのフォーマットの報告を定型で作ってしまったほうが一番わかりやすいんじゃないかなと思います。

もちろん、「そういう場合には原因を考えてやっていく必要があるよ」という現場での口頭の指導も重要ではありますが、問題や課題の報告の仕方として、「問題・課題・現象はこれです。原因はこれです。対策立案はこれです」というフレームで報告をしてもらうことをルールにしたほうが、一番わかりやすいんじゃないかなと思っております。

虫歯になって痛み止めを飲むのは疲弊します。いつまで経っても痛い。だから、根本的なところにアプローチをする必要があるので、報連相もしくは業務報告、相談においてのフォーマットを変えるところがポイントかなと思っております。お答えになっておりますでしょうか。

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