2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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遠山正道氏(以下、遠山):さて。私は最近「ピクニック紀」なんて言ってます。これは今年1月の年賀状で書いたんですが、新年なので、今後の大きな時代を「ピクニック紀」と呼んでみることにしました。
生活と協調。「企業も個人も、競う時代ではなくなる。競う意味や動機が失われ、むしろ弊害ばかりが目立つようになる。ビジネスより生活に重心が移り、生活が主体となる。勝敗のあるスポーツとは異なる、協調を生むピクニックに関心が集まる」。
環境という前提。「ピクニックは、オフィスや商店ではなく、野山で行う。地球環境の意識と実践を持たぬものは、参加の前提すら得られない」。
あらためて人。「ピクニックには、改めて朗らかで豊かで魅力的な人間性が求められる。技術や方法論や経験は、プロやAIで安く調達できる。多様性という言葉で安心してはいけない。選ばれるか、選ぶか、しかない」。
一人ひとりの中で。「ピクニックには明確な目的やゴールはない。アートのように正解はなく各人の中で育み、育まれる」。
一人ひとりから、外へ。「今後のよきピクニックは宇宙で行われるだろう。もちろん地球でも。あなたの周りでもまだ沢山」。
「幸福? それは、今あなたが想い描いたピクニック感のことである。それらが伝播しあい重なりあって振り返ると、ピクニック紀となる」。
……ということですね。まとめるとピクニック紀とは、企業のようにミッション・ビジョン・ゴールもない。スポーツのように勝敗もない。あるのは「野原」だけ。
遠山:ちょっとわかりづらいですが、3つのきっかけがあったんですね。(スライドの)下の「成功か、安定か」からいこうかな。
今の若い人って安定志向って言うじゃないですか。だから、私がある大学で講義をした時に、「成功か、安定か」って聞いたんですよ。そしたら、7〜8割が「安定」に手をあげたんですね。
「いやいや。成功したら、もれなく安定もついてくると思うんだけど」って言ったんだけど、どうやら安定がいいというよりも、成功に対する嫌悪みたいなものがあるんですよ。「自分が良ければいい」という感覚。
ユーグレナ社の出雲(充)くんが最近メディアでよく言っていて。2025年にはミレニアル以降世代の人が社内の過半数を占めて、生活者も過半数がミレニアル以降になる。そうすると何が起こるかというと、彼らはデジタルネイティブであり、かつかなりの人数の多さで、ソーシャルマインドが高い。
なので、内側から・外側から、かなりソーシャルな目線に晒されて、世の中の仕事のやり方もガラッと変わるだろうと彼は言ってるんですね。私もそれをすごく感じるんです。
「その利益は何のためでしたっけ?」「その利益は何に使うんですか?」とか、売り上げや利益(に対して)社内からもつぶらな眼差しで問われる。そこに明確な意義を持たないと、「ちょっと親の介護が必要で……」と、親は元気なのに辞めていく。
要するに、文句すら言ってくれないで、「ダサいな……」みたいな感じでスルーされる。「我々は搾取されるかもしれないし。何のためにこの企業ってあるんでしたっけ?」みたいな、本当にそういう時代になると思うんですね。
遠山:そして、コロナもあったし、AIやロボット(の普及)が急速に来ましたよね。簡単に言うと、人生から「仕事」の割合がかなり減っていくと思うんですよ。物理的な割合も重要度も減るし、人生の中(における「仕事」)の価値基準の優先順位が6番目ぐらいになっちゃったりとか。
でも、そういう時にむしろ何が重要なのかというと、一人ひとりの幸福にどうやって耐えられるか。どうやって自分自身の価値を築いて、他者に提供できて、他者と関係性を結べるか。
ピクニックはミッションもゴールもなくて、野原と自分と人しかいないんですよ。「一生懸命やっていれば評価される」とかそういうのじゃなくて、「一人ひとりの価値観って何?」みたいな。だから、けっこう難しい時代だと思う。
この間、3万人の社員がいる、一部上場のある大手運送会社の社長と話したんですが、「早晩、トラックも自動運転になるのは絶対にそうだよね」と。
ピッキングも、ロボットがめちゃくちゃ楽しそうに腰振りながらやってくれたりして、24時間残業代がつかないし、派閥を作らないし、文句を言わないし、パワハラとかもない。ボーナスは、油を刺すだけ。だから、人ってどうしちゃうんだっけ? と。
もし仮に、5年後、10年後に3万人をまだ社員として雇えている体力があり、その社員も自分の会社に興味を持ってくれてるとしたら、会社がすることって何だろうね? という話をしました。
社員と呼ぶ一人ひとりの人生を、どう豊かに昇華していけるか。要するに、知識なのか経験なのか、平たく言えば「幸福」を会社がどうサポートしてあげられるのか。「てか、それぐらいしか(会社に)できることはないよね」という話をしました。極端な話に聞こえるかもしれないけど、そんな感じがしますよね。
遠山:私は今、「新種のimmigrations」というコミュニティをやってるんです。(コミュニティ参加者が)百何十人いて、1人1万円、私も1万円を払うと毎月百何十万が集まるので、みんなで「これで何をやろうか?」と。
今年もあることを考えてるんですけど、お金も払いながら一人ひとりのスキルも提供して、何か新しいことをやろうと。だからこれから会社って、ひょっとしたらお金をもらうんじゃなくて、お金を払って集まるようになるかもしれない。
要するに、イケてる企業ってそんなに多くないというか。そういう会社があればあるほど、発達すれば発達するほど、世の中は良くなるよね。社員も、生活者も、みんながより良くなることを本当にできている会社は、たぶんそんなに多くなくなっちゃうと思うんです。
そういう素敵な会社に参加するには、仲間みたいにみんなでお金も出しあいながら、そして自分の持てる価値を提供しながら、全体に対しての価値を提供していこうという時代になってくると思うんですよね。
遠山:さて、みなさん。じゃあ具体的に何をしたらいいんだ? って、私もわかりません。例えば最近は「多様性」なんて言葉もありますけど、私は「仕事」「表現」「拠点」「人」の4つをそれぞれ2つ以上、全体で8個以上持つようにしています。
私の「仕事」でいうと、会社は5つぐらいあるのかな。もっといろいろあるかもしれない。「表現」でいうと、またアーティストの活動もまた復活したり。
2022年に60歳になったので、「新種の老人」と自ら言ってみたんですね。そういうことを言ってみることで、何かが生まれるかもしれない。そして私は『新種の老人』というYouTubeをやり出した。これもおもしろい。
あとは「拠点」。私は、代官山と北軽井沢に二拠点があったり、他にも物理的には河口湖にもある。そして「人」は、ある種のコミュニティ。家族もあったり、スマイルズがあったり、教授としての学生さんとの関係とか、いろいろある。
そういうことを8個以上を組み合わせながら、社長だろうが、新入社員だろうが、創業者だろうが、一人ひとりが自分の人生は自分でちゃんと設計していかないといけない。
誰かのせいにはもちろんできない。自分の人生は自分が主役でしかあり得ないんだから、一人ひとりがそうしなきゃいけないですよね。
遠山:冒頭で私が「中小企業の時代」と言ったのは、大きな産業みたいなものが生まれることは、もうあんまりないと思うんですよね。それよりも、もっとプロジェクト化した“映画”みたいなものだと思うんです。
映画を1個作るために、監督、女優さん、ヘアメイクとかを集めて映画を作って、できたら解散する。今度は時代劇を撮る時には、時代劇に適した監督、女優さん、スタイリストとかを連れてきて、できたらまた解散する。
(これからの企業のあり方は)そういうプロジェクトであり、監督にも女優にもスタイリストにも、ずっと給与を払い続けてる会社なんて、今後はないと思うんですよね。だから、一人ひとりが力をつけてプロジェクトを生み出していくような時代です。
そういう時には、さっき言った4つの現象(仕事、表現、拠点、人)を組み合わせる。そして個人にできることは限りがあるので、組織として分業もして、チームワークを組んで、個人ではできないようなことを世の中に対して提案していく。そういうふうになっていくと思う。
遠山:そういう意味で言うと、中小企業は1番いい立ち位置です。おもしろい。その代わり「本気でやってる」というか。本気でやってるというのは、無理した本気じゃなくて、「楽しい」「やりがいがある」「意義がある」とか、そういうのがないと難しい。
私がよく行っていて、利益も出ているすごくいいレストランのオーナーから、訳あって「引き継いでくれないか」と言われて。「わかった」と言って、「このレストランを引き継ごうと思う」って、うちの経営会議にかけたんですね。
そしたらうちの経営陣から、「それ、誰がやるんですか? 我々のモチベーションは何ですか」と言われて、そっかと。「儲かってるいい店」というぐらいしか、彼らにとっての理由が湧かない。「あ、ダメだね」と言って、却下。
「儲かる」というのは、なかなか本質的なものになりづらい。だから、もっと一人ひとりが自分ごとで、従業員や若い人からも学んだり、若い人の発想も聞く。それを世の中に提供できるのは、個人より中小企業のほうがずっとパワーがあります。
それをもって、楽しい人生を社員と共に歩んでいく。ぜひ、そんなふうに会社を使い倒して、プラットフォームにしていただければと思います。中小企業の時代だと思いますので、みなさんがんばってください。遠山でした。ありがとうございます。
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