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脱! 名ばかり管理職! 管理職が陥る13のジレンマ(全4記事)

プレイヤーとして優秀な管理職は“過去の成果”に執着しがち 「名ばかり管理職」を脱し、人材を育てる3つのポイント

大企業・中小企業合わせて、新人以外の層に教育を施している企業は全国で22パーセントというデータが出ています。管理職が育たない理由はどこにあるのか、原因や改善策について、株式会社PDCAの学校 代表取締役の浅井隆志氏が解説します。管理職の多くがプレイングマネージャーの日本において、「脱プレイヤー」させるための打ち手を紹介します。

プレイヤーとしての仕事に魅力を感じる管理職

浅井隆志氏:(視聴者からの質問で)「現在は毎月部長・課長との1on1で、目標管理をもとに個別にフォローを始めました。業績達成の行動はすばらしい管理職である人が、特に部下育成やマネジメントが苦手です。本人も業績達成に取り組むことが楽しいので、部下育成の考えになかなかいかない」。

簡単に言うと、1on1ミーティングをしてちゃんと伝えたりフォローすることを始めたんだけれども、すばらしいプレイヤーが管理職、部長や課長になっちゃったので、そっちの仕事に魅力があるというか、自己肯定感があるということですよね。

まず1つご提案できますのは、これは力技になりますが、評価をめちゃめちゃ変えちゃうこと。

「この評価は最高だな」と僕は自画自賛しているんですが、どういう評価がいいかというと、おそらく一般的には個人の評価・チームの評価とか、チーム全体評価だけにしている企業さまはいらっしゃると思います。

だけどチーム全体の評価だとすると、(管理職自身が)成果を上げちゃえばチームの業績が上がっちゃうので、「部下を指導しなくていいよね」になっちゃうんですね。

“逃げ道”を作らない評価制度の作り方

管理職の方に逃げ道を作らない評価の作り方として、「チームの業績(定量)×マネジメント(育成・教育・部下指導)」を掛け算にして、その掛け算を0.5から2.0ぐらいの幅にします。

仮に業績の目標が1,000万円だとして、チームで月々1,000万円のチームを達成しましたと。でも、マネジメントはぜんぜんできていないとなると「×0.5」になるので、500万円分しか評価されない。(掛け算の数値は)「0.0」も作っていいと思います。

だから、自分がどれだけ数字を作ったとしても、「こっちが評価されないと絶対に評価されない」というかたちにしてしまう。これは力技ではありますが、「数字、数字」「成果、成果」になってる方のマインドを変えるんだったら、このかたちかなと思っております。

僕なりに一番好ましいなと思っておりますのは、社員がいて管理職がいますよね。ご質問いただいた方も、定期的に1on1のミーティングによって指導すると言ってるわけじゃないですか。なので、1on1でちゃんとフィードバックをする。

もう1つ。これは現場の上長でいいと思うんですが、係長とか課長レベルといった、さらに上役の管理職がいますよね。この(管理職の)フィードバックに対して、(さらに上役の管理職が)フィードバックしていくことはすごく大事なんです。

課長はどうやって現場指導をしたらいいか、どういう観点で指導するべきなのかというのは、OJTで受けてないんですよ。だから、実際にどうやってフィードバックしたらいいのかがわかってないです。(管理職から一般社員への)フィードバックがいいとか悪いとかをフィードバックしてあげないと、指導能力は高まらないです。

管理職の責任感がないのではなく、単にやり方がわからない

質問者の方が「教育がなかなか進まない」というのも、はっきり言ってまだ本当の意味で理解ができてないからなんです。現場でどうやって指導するべきなのかがわかってないから、意識はあっても行動に移せないんですね。

思うにこれは、管理職も一般社員も同じく意識がないんじゃなくて、みんなやり方がわかってないんです。だから研修とかを受けさせて、ある程度「やっぱり部下指導や育成は大事だな」という意識になっても、自分の業務にどうやって落とし込んでやったらいいのかまでは、正直イメージができないんですね。

なので、いくら教えても実行されないのは、管理職にマネジメントの意識が足らないとは思わないでほしいんです。(管理職に)責任感がないって思ってほしくないです。ただ単純に、具体的なやり方がわかってないんですね。

一般社員の例でお話をさせていただくと、私たちはどうしても「責任感」「危機感」「当事者意識」「主体性」という曖昧な言葉で人をジャッジしたり当てはめる傾向が、僕もみなさんも必ずあるんです。

例えば、みなさんの会社にいらっしゃるかわかりませんが、責任感がない、危機感がない、当事者意識もない、成果を出さない社員はいらっしゃいますか? みなさんがそういう社員を見た時に、なんて思いますか?

「責任感がないなぁ。危機感がないな」って思いますよね。そう思ってしまうんです。ただ、本人は責任感や危機感を持ってる可能性もありますよね。

部下への指導は、具体的なアクションプランで提示する

僕の話をさせていただいて恐縮ですが、若い頃に不動産営業を始めた時に、「浅井、お前は報連相がぜんぜんねえな。だらしないし、仕事やる気あるの?」と、上司に言われたことがあったんです。

当時は仕事めちゃめちゃがんばって、「自分の人生、変えてやる」ぐらいの感じで不動産営業を始めたんです。ただ、お恥ずかしながらその時は報連相を知らなかったんですよ。

営業なんて、自分でやって、自分で完結して、自分で成果を出せばいいと思っていたので、「上司に相談する」とか「上司に報告をする」という意識がまったくなかったんですね。

知らなかっただけなんですが、それなのに「お前、何やってんだ。だらしねぇな。やる気あるのか?」って断罪されたちゃった。けっこうつらいです。なのでやってないということは、意識ではなく行動を知らないのだと、まずは思っていただいたほうがよろしいかなと思います。

「具体的にどうするのか」という、アクションプランが大事になってくるんじゃないかなと思います。

ちなみに今年、とある取引先の若手から相談をいただきました。「先生、ちょっと相談があります。最近、営業成績が出なくて、上司から『お前、人間力を磨け』と言われました。先生、人間力ってどうやって磨くんですか?」と、そういう「人間力がない」という言葉で括っちゃう。

実際に僕がその管理職に確認をしましたら、その若手がお客さまと会話していて、話をかぶせる癖があると。それを「人間力」って言い方をした。それじゃあよくないでしょ。具体的にどうすればいいのか、行動レベルで言っておかないとわからないわけですね。

管理職・一般社員への教育指導は「根比べ」

管理職の教育についても、概念や意識はもちろん大事ではあります。もちろん、まずはそれを認識させることからスタートではありますが、具体的にどうやって部下と関わっていくのか、教育をしていくのか、指導をしていくのかというアクションプランまで制定していかないと、行動が取れないです。

「そうだな。部下の育成は大事だな」と、自分なりにアクションプランを考えて行動に移せる人は、そういないということですね。ある程度、会社の枠組みで決めてやっていく。

これを言うと無責任かもしれませんが、僕がコンサルに入ると「これをやってください」「あれをやってください」と、定期的に集めて強制的にやらせます。部長職の方なのか、人事の方なのかを集めて、「これをやってください」「これできていますか?」みたいに、ある程度の強制力をもってやる。

一般社員と同じですよね。「やれ」と言ったってやらないので、習慣化するまで、組織風土や文化になるまで見守っていきながら、管理・監督してずっとやらせていく。

一般社員に対する指導・教育と、管理職が行動が取れるかどうかは、それこそ根比べでやっていくしかないということです。

社員同士でフィードバックを行い、PDCAを共有する

まとめさせていただきます。「意識改革」というところで、管理職としての視座を持たせる。教育、必要性を伝える、評価を変えるでいいと思いますし、部下の育成がどれだけ自分の評価に落ちていくのかは、モチベーションに変わってくると思います。

ただ「スキルアップ」につきましては、ある一定のスキルや知識も必要になってきますので、社外研修なのか社内の勉強会なのか、それから「こうやったらうまくいくよね」というお互いの情報共有なのか、施策はどちらかでもいいかなと思います。

重ねてお伝えしますが、管理職と社員の面談も必要ですし、管理職とその上長のフィードバックをする面談も必要です。

ほとんどの企業さんは、ヒエラルキーがバリバリで指揮命令系統のかたちだと思いますが、社員を育成する、もしくは管理職を育成することを考えていきますと、(管理職同士、一般社員同士の)横軸の共有が重要です。これは「ナレッジ共有」と言います。

例えば、マネージャー同士が集まって、「こういう指導したらうまくいった」「こういう指導したらうまくいかなかった」と、お互いにフィードバックし合う、マネジメント層のナレッジ共有、部下を育てるPDCAの共有。社員同士で成果を出す共有会を実施することは非常にいいなと思っています。

もちろんハイブリッドでやっていただくのが一番いいと思いますが、いずれか導入していただくのが、とにかく管理職を変える方法です。管理職(に対しては、さらに上役の管理職)、もしくは外部の人がちゃんとフィードバックをする。

それから、この(横軸の)内容を含めて管理職がナレッジ共有をして、社員同士でもナレッジ共有をする。解決策はこれです。

今日お話しした管理職の課題や問題、若手が育たない問題は、これやっていただければすべて解決できます。おそらく今、見ていただいている方は人事の方が多いと思いますので、ぜひこれを制度として作って、人事の方が主導で「会社のルールとしてやっていきましょう」と声を上げてやっていただきたいなと思います。

定性的な言葉は、定量に落とし込まないと実現しづらい

コメントをいただきました。ありがとうございます。最後にもう一度読ませてください。

「確かに(自分も部下に対して)『主体性に尽きる』と、よく言ってしまいますね。報連相の大事さもよくわかります。本当の報連相の仕方をしっかり教育してあげることも重要です。そして浅井さんが言われるように、『やり方がわかってない』ということに特化します。具体的に何をやっていくことが必要か、あらためて話してみます」。

すばらしいですね、ありがとうございます。具体的な行動レベルに落とし込むのがめちゃめちゃ大事です。「みんながんばろうよ」「『がんばる』ってどういうことですか?」となってしまうので、定性的な言葉は最終的に定量的に落とし込まないと、実行可能性はものすごく低くなると思うんですね。

「みんなで社内のコミュニケーションを活性化していきましょうね」って、どうするんですか? という話ですよね。これは極論ですよ。

「じゃあ月に1回、みんなでランチ会をやろう」「みんなで飲み行こう」という行動レベルに落とし込めるんだったら、それは確かにコミュニケーションの活性化と言いますが、「コミュニケーションが大事です。部下の指導は大事です」だけだと、結局は前に進まないです。

管理職をメインにしたナレッジ共有か、「管理職の指導」に対する指導を強化することによって、マネジメント能力はOJTとして成立します。ぜひこれは制度として、アクションプランで落とし込んで、「最低限、週にいっぺんくらいはやってくださいね」と発信して制度に落とし込んでいくのが一番かなと思います。

みなさまも随時お悩みがございましたら、ウェビナーに参加してご質問いただいてもけっこうですし、お気軽にご相談いただければ、よろしければオンラインでいつでもお答えしていきたいなと思っております。本日は以上でございます。ありがとうございました。

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