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脱! 名ばかり管理職! 管理職が陥る13のジレンマ(全4記事)

「謙虚さ」と「適度な自信」のバランスに悩む管理職たち 多くのマネジメント層が抱く“葛藤”の解決策

大企業・中小企業合わせて、新人以外の層に教育を施している企業は全国で22パーセントというデータが出ています。管理職が育たない理由はどこにあるのか、原因や改善策について、株式会社PDCAの学校 代表取締役の浅井隆志氏が解説します。本記事では“謙虚なリーダー”と“力強いリーダー”のそれぞれがもたらす影響や、管理職が陥りがちな「ジレンマ」から抜け出す方法について語りました。

謙虚なリーダーと傲慢なリーダー

浅井隆志氏:(管理職が陥る「13のジレンマ」の9つ目が)「自信の罠」。傲慢の一線を越えないようにしつつ、適度な自信を保ち続け、謙虚さを持つにはどのように立ち振る舞えばよいのか。これは極めてパーソナリティの部分です。

謙虚なリーダーが好ましいとは思いますが、多少傲慢でも、力強くてみんなをグイグイ引っ張っていくリーダーも実際は成果をすごく出してるんですね。

企業のトップを見ていきますと、スーパーワンマンな社長の会社と、非常に民主的でみんなの意見を聞いて、みんなで対応してやっていくような会社も成功してますし、正直どちらがいいとは言いにくい側面があります。

一方で、最近の人事業界の潮流とはちょっと逆のこと言いますが、力強いリーダーシップを発揮している会社さんのほうが、結果的に業績はいいことがわかってます。

「社員の満足度」とかは一回置いておくとして、コンサルタントの立場で「業績」だけを見ていきますと、ある程度強いパーソナリティを発揮した会社経営・チーム運営のほうが、結果的にうまくいっているなという状況をよく見ております。

“能力が低い人は自分を過大評価しがち”という見解も

ちょっと余談で、僕の個人的な考えも価値観も入ってきますので、セミナーとは別枠で聞いていただきたいです。最近、『バカと無知』という本を読みました。おもしろいので、ぜひみなさんにも見ていただきたいんですが、その本では「民主的な会話は本当に意味があるのか?」ということが書いてありました。

これは本に書いてあった話で、僕の意見じゃないですよ。能力が低い人は傲慢になって自分を過大評価をしがちで、能力が高い人は謙虚になる傾向があると言われてるんですね。

じゃあ、「能力の低い、過大評価をした人」と「能力の高い、過小評価する人」が話し合うとどうなるかというと、能力が高い人は能力の低い人に引っ張られちゃうそうなんです。

最近では「みんなで話し合ったほうがいいよね」という民主型のリーダーシップがいいってずっと言われてはいるんですが、能力が低くて過大評価する人は自信満々に言うもんだから、能力が高い人(過小評価する人)は謙虚さがあるからそっちに引っ張られちゃって、みんなで話し合うほうが生産性の低い答えが出ちゃうことがあるんですね。

100名、200名、300名の中小企業を僕はずっと見渡してきましたが、社長が強烈でワンマンで、「変わった社長」みたいな会社は、だいたい極めて業績がいいんですよ。そうじゃないですか? 「あの社長は、みんなの意見を聞いてくれてすごくいい人」みたいな社長で、業績がものすごくいい中小企業って実はあまり見たことがないんです。

「ワンマン社長」がもたらす功罪

(業績の高い会社の社長は)本当にみんな強烈ですね。「うわぁー!」ってマシンガンなので、最初から怒っているし、「浅井さん、いくらぐらいもらってるの?」とか、最初から無神経な人がいるんですけど、そういうちょっと変わったパワーがある社長が業績を出してるんですよ。不思議だなと。

『バカと無知』を読んでなるほどと思ったのは、そういうワンマン社長は人の話を聞かないわけですよ。だからある意味、ビジネスセンスという嗅覚がすばらしいし、能力が高いし、人の話を聞かないで推進するから業績が出ちゃうわけです。

それがいいか・悪いかは、業績だけで言ったらいいんです。だけど次世代を考えると、そういうワンマン社長は自分の考えで突っ走ってしまうので、結局人を育てないから、企業としての存続はどうなんだ? という話ですよね。

(推奨する解決策として)「日頃のコミュニケーションを心がけ、信頼関係構築やエンゲージメントを高める」というところで、管理職は社員と友だちになる必要はないと思っています。

だから、飲みに行く必要はないと思うんです。僕は好きなので、社員と飲みに行ったり、忘年会でわざわざ飲んだり、一緒に旅行やゴルフへ行ったりしてますよ。これは「好きだから」やっているんですね。もちろん僕はそういうところで、コミュニケーションを図りながら関係性を築いております。

権限を与えることが、管理職のモチベーション向上につながる

ただ、コンサルタントとして企業さまにご提案するのは、別にそれはやってもやらなくてもいい。ただ、やりたくない社員もいますので、会社としてプライベートのお付き合いを推進するのはどうなんですか? と、僕は正直思います。

業務時間中には、「尊敬に値する人だな」「この人の言うことは間違いないな」という姿を見せることが大事だなと思っております。一言で言うと、部下のことに興味関心を持って、「君の成長や成果を出すために、俺はそれをサポートするよ」という姿勢を見せられるかどうか。

特に2つ目の「相談機会の捻出」。「いつでも話を聞くよ。どんどんチャレンジしなよ。失敗しても大丈夫。俺が全部責任を取ってあげるから」と。これがいわゆる「lose-lose」の関係性で、リスクを引き受ける態度がものすごく大事だなと思っております。

「行動の曖昧さ」は、微妙な差異が大きな影響を及ぼすような環境下において、マネージャーは何を元に判断し、決断力を発揮すればよいのか。

課長レベルですべてを判断するのは、やはりなかなか難しいなと思います。だから、「どこまでは判断していいのか」という権限を明確にしておいてあげないと、現場の判断は非常に難しいなと思っております。

「自分で判断していいよ」と、権限をどんどん与えることによって、「自分が権限を持って仕事ができるんだ」という管理職のモチベーションにもつながりますので、これは明確にしておいたほうがいいと思いますね。

「それぐらい自分で考えろよ」と「なんで相談してこないんだよ」が混在するから、理不尽だと感じるんですよね。

行動指針は“上っ面”では意味がない

11番目が「変化の不思議」。継続性を保つ必要がある状況下で、どのようにして変化や革新、成長をマネジメントすればいいか。このあたりは、「そもそも私たちは何を大事にしてるのか」という価値判断ですよね。

そもそも企業には、企業理念、ミッション、ビジョンと経営目的になるものがあって、それのもとに「価値」、最近ではかっこよく「バリュー」とか言っていますけど、昔の言い方をすると「行動指針」ですよね。これが、実態に合ったものが作られているかどうかがものすごく大事なんですね。

それ(実態に合った行動指針)があれば、現場で判断できるわけです。「うちは顧客第一主義で、今はお客さまに迷惑かけている状況なんだから、うちの立場や利益よりは、まずお客さまのことを考えなきゃ」という発想になってくるわけじゃないですか。

現場のジャッジをしっかりしていくためにも、会社としてどういう方針なのか・方向性なを常日頃から発信していく。紙に書いてペタッと壁に張り出したところで、みんなが意識するかというとなかなか難しいです。

朝礼で唱和するだけで仕事をするかというと、はっきり言ってそんなのはそらんじることができるレベルで、まったく意味がないですよ。「現場に落とし込んだらどういう判断をするべきなのか」を、常日頃から話し合っておく必要があると思います。

管理職が陥る「ジレンマ」から抜け出すために

そろそろまとめますが、12番目の「究極のジレンマ」。管理職は、どのようにして数々のジレンマに同時に対処すればいいのかということで、管理職がめちゃかわいそうですね。

正直、昔はとにかく「行け行け! 俺が成果を出すよ! お前ら、やれー!」みたいなことで成り立っていたんです。

20年前、30年前の管理職と比べると、今や指導もしなければいけない、教育もしなければいけない、(部下の)メンタルヘルスも、よしよしもしなきゃいけない。メンターもしなければいけない、会議もたくさん。そして自分の成果の達成と、ものすごく大変なんですね。

そして「管理職が直面する数々のジレンマは、すべて個別の問題として捉えられるが、根本原因は同じようなことであり、どのように解釈するべきか」ということで、これは僕の意見でもありますが、実は管理職の個々の能力の問題じゃなかったりもするんです。

簡単に言うと、そういう管理職に育ててしまった会社側の風土や文化が問題です。ですから「ワンマン社長」の責任なんですね。会社の業績をバーンって出すのはワンマン社長なので、それはすばらしいです。ただ、右にならえの管理職を作ってしまうことが問題なわけですね。

「部下育成の重要性」を管理職に伝えている企業は少ない

ご質問を1ついただいていますので、読み上げさせていただきたいと思います。

「本日は管理職の本来の役割・行動について、ご講演ありがとうございます。管理職はプレイングマネージャーであることも、まったくそのとおりの状況です。管理職育成の中で、部下育成の重要性と、目標管理に「部下育成」を課題として明記するようにしていますが、まだまだ道半ばとなっております」。

部下の指導・育成の重要性と、目標管理で部下育成を課題として明記されているのは、すばらしい取り組みだと思います。

「上を見て自分自身で覚えてきた経験しかない人が、部下育成を本気で必要と思い、そのために真剣に考えることがとても難しいことに直面しております。いくら研修で『部下育成があなたの仕事だ』と教育しても、その時はなるほどと思っても、ふだんの仕事をやりながら部下育成の時間を作るかというと、やれないのが現状となっています。粘り強く部下育成の必要性を言い続けてはおりますが、なかなかやれないです。こういう企業は多いと思いますが、どうでしょうか?」。

まず、部下育成の重要性と目標管理を、しっかり管理職の方に伝えている企業さまは多くはありません。それから研修において、管理職の方に「部下の育成があなたの仕事だよ」と、ちゃんと教育をしてる企業さまも多くありません。……ということで、すばらしいです(笑)。

(今はまだ)望まれる成果は出てないと思いますが、まったくやってない企業さまが8割、やってる企業さまが2割ぐらいでしょう。(質問者の会社は)やってる企業さまなので、2割に該当するんだけれど、成果がなかなか出ないということですよね。このあたりは僕なりの答えがありますので、このあと回答させていただきたいと思います。

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