2024.10.10
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岩澤雅裕氏(以下、岩澤):ここからは質疑応答に入らせていただきます。ご質問をいただきました。「弊社は構成員の80パーセントが業務委託です。今日お話いただいた考え方は、業務委託のメンバーにも適用できるのでしょうか?」。
業務委託は、基本「離職」という考え方がないかなと思いますが、組織の中での関係性を維持することに関しては、一部有効だと思います。
例えば業務委託のメンバーとも、「一緒に働く上で、最低限これだけはやってほしい」というルールを設定して、業務委託契約を結んでいく。そうすると、組織の中に「コミュニティ意識」が生まれますので、初めに当たり前のルールを合わせることは、ぜひやっていただきたいと思います。
業務委託は成果が明確になっているので、目標が不明確とか、期の区切りがないということは契約上あり得ないと思うので、一緒にお仕事をする上で最低限守ってもらいたい当たり前の基準を初めに提示すれば、仲間意識や所属の意識が生まれて、お互いの位置関係も明確になると思います。
続いてのご質問は、「研究開発の組織において、組織のリソースを含めた全体最適の管理と、個別の能力を高める個別最適の運用とが対立することがあります。そのような場合のマネジメントについて、今回の知見を適用するとしたら、どこで折り合いをつければよろしいでしょうか?」。
個のパフォーマンスを重視するのか、組織としての規律を重視するのかというところは、職種に応じて、少しグラデーションがあるところかと思いますが、今日お伝えした所属意識を作るルールであったり、明確な目標、意識上の区切りがないと、組織と個人で合わせていくのが難しいということですね。
「どこで折り合いをつければいいか」というところで言うと、例えばルールの設定のあり方。「こうしてください」というポジティブルールは、ルールの粒度が細かくなります。一方で「これだけはしないでください」というルールだと、比較的その中での自由度は高くなります。
要は結果の設定のあり方、ルール設定のあり方の粒度、細かさをどうしていくかということですね。例えば経験が浅いメンバーであれば、細かいルール設定や目標設定の中で動くほうがパフォーマンスが上がる可能性があります。一方、経験豊富で能力が高い人間に、細かいルール設定、細かい結果設定をやると、働く上での意欲の減退が起こってくる。
なので、折り合いのつけ方は、ここの粒度を調整いただくというかたちですね。
続いて、「ルールを守らない場合の罰則は必要でしょうか?」ということですね。基本的にはルール、特に「姿勢のルール」に関しては、誰もが守れることなので、罰則ではなく指摘をし続けてください。安易に罰則を作ってしまうと、罰則を受けたことで許されたという錯覚を起こしてしまいます。
基本的には罰則は設けずに、守っていない場合は指摘し続ける。「できてないよ」「できてないよ」と言い続ける対応を取ってください。
どうしても守らないということがあるとすれば、時に罰則は必要ですが、「姿勢のルール」にあらかじめ定めてしまうことは、適正ではないとご理解いただければ幸いです。
続いて、「中途社員で年齢がいくと、経験や発言権が増して価値観が合わないため排除を促したのですが、離職者が仲間を募って退職を誘発して苦労しました。従業員同士が感情で関係性を結ぶところがあります。ここはルールを明確にすることが改善ポイントでしょうか?」というご質問です。
おっしゃる通りですね。組織内の集団とは異なる場所に集団が作られるケースがあります。本来の組織の目的ではないところで動く集団で、私たちはそれを「小集団」と呼んでいます。なので、こういった小集団をなるべく作らないようなマネジメントをしていく。そのためには、ルール設定やゴール設定を明確にすることが改善ポイントになります。
小集団が作られたのであれば、それを壊していくようなマネジメントも時に必要になるとご理解いただければと思います。
「本日のマネジメント手法ですと、イノベーションが起こりにくいという面はないでしょうか?」ということですね。ありがとうございます。これも目標設定とルール設定の粒度で調整していただきたいと思います。
イノベーションを起こりやすくする環境を組織的に作るのは難しいかもしれませんが、イノベーションを発生させる範囲をあらかじめ会社として作る必要があります。先ほどお伝えしたネガティブなほうのルールを作っていく。「これだけはやらない範囲でやっていこう」とかですね。
ゴール設定も「いつまでにどうする」よりも、「こういう構成で、こういうものを作ってほしい」という擦り合わせを随時していく。そこの粒度を調整していくマネジメントを行うことが大切です。
おっしゃられるように、細かいルール設定や結果設定をやるとイノベーションは起こりづらいです。ルール通りに動く人を作っていくということですね。そうではなく、そこの範囲をどう構築するのか。その中で自由に考えるマネジメントが醸成されるかたちです。
管理者は、イノベーションが起こりやすい環境をルール設定、結果設定の中でどう作っていくのかが重要になります。イノベーションが起こりにくい運用のあり方もありますし、起こりやすくなる運用のあり方もあり得るとご理解ください。
「では、Z世代のような帰属意識が低く、ワークライフバランスを誤って認識しているような世代も、このルールは受け入れられるのでしょうか?」というご質問です。すべての人にとって働きやすい職場はこの世に存在しないと考えています。
組織には組織の価値観があり、その最低限の価値観を表現しているのが「姿勢のルール」、当たり前の基準です。
みなさんの会社において、どういう人たちが働きやすい職場を作るのか。どういう人たちをしっかり評価する組織を作るのか。離職を防ぐ意味でも、それを明確にした中で組織に入っていただく。こういった状況を作ることがとても大切です。
例えば、甲子園に行くために野球をしているという高校生と、楽しければいいと野球をしている高校生。これは別にどちらもいいんですが、監督はどちらを目指すチームなのかを明確にすることが大切です。
Z世代と一括りにされていますが、ワークライフバランスを誤って認識している人たちにとって働きやすい職場を作るのか、そうではない認識の方々にとって働きやすい職場を作るのか。それを明確にした中で入っていただくということですね。
組織側の価値観にそぐう人が入ってこられる状況を作っていく。この考え方でないとなかなか難しいと思います。
ここまですべての質問にお答えさせていただきましたので、本日はこれで終了とさせていただきます。ありがとうございました。
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