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社員はなぜやめるのか?離職発生の要因とは?(全3記事)

社員食堂、部活動、副業解禁は根本的な離職防止策にならない 従業員と会社の双方がWin-Winになる、関係継続のポイント

株式会社識学が主催した経営層向けのオンラインイベントに、同社シニアコンサルタントの岩澤雅裕氏が登壇。「社員はなぜやめるのか? 離職発生の要因とは?」と題して、従業員の離職課題を根本的に解決するための考え方を解説しました。

社員食堂、部活動、副業解禁は根本的な離職防止策にならない

岩澤雅裕氏(以下、岩澤):本日のテーマは「離職発生の原因」で、「組織と個人の位置関係」「リーダーによって防止できる離職」「組織成長の中で許容されるやむを得ない離職」の3つのアジェンダでお話をさせていただきます。

まずは、「組織と個人の位置関係」。最近お客さまと面談させていただく際に、こういったご質問をよく受けます。「離職を防止するために、社員の健康管理も含めて社員食堂を作ろうと思うんだけどどうかな?」「社員の仲間意識を高めるために、会社でスポーツや文化的な部活動をやろうと思うんだけど」とかですね。

あるいは「社員が仲良くするために、お互いに『ありがとう』の言葉を言い合おうと思うんだけれど」「社員の自由な働き方を許容するために、副業を積極的に解禁しようと思って」「社員間のコミュニケーションのために、社内にバーカウンターを設けようと思うんだけど」とかですね。

それぞれに効果はありそうですが、根本的かつ全社的な離職課題の解決にはならないと、私たちは考えます。では、根本的かつ全社的な離職課題の解決とは何か。まずはここから考えていきます。

組織と個人の関係性を考える上で、まず(スライドの)「有益性のバランス」という話をさせていただきます。

会社と個人(従業員)は、どちらが偉いとか、どちらが上か下かということではなく、お互いにメリットがあるので関係性が続きます。

従業員の立場であれば、この組織にいることで何か得られるものがあるから居続ける。会社・組織側で見ると、この個人がいることで会社にとってメリットがあるから居続けてもらう。この両者のバランスが成り立って関係性が続いていきます。

個人にとっていかに組織が有益か。ここにいたいと思うか。組織にとっていかに個人が有益か。いてもらいたいと思うか。この関係性が崩れると、個人は「この会社にいてもしょうがないな」と思うと辞めますし、従業員の方に「この会社にいてもらったら困るな」と会社側が思えば、極端な話では排除、退職していただくという流れになります。

従業員と会社の双方がWin-Winになる、関係継続のポイント

では、個人、従業員のみなさんが会社に所属することで得られる有益性にはどういうものがあるか。これは人によって優先順位はさまざまですが、例えば給料とか、ここにいると成長できるとか、仲間や人脈ができるとかですね。他にも所属することで満足度が得られたり、福利厚生が得られるとか、さまざまにあります。

では、こういった個人が組織にいることの有益性。給与、成長、仲間、所属、福利厚生の中で、組織にとっても有益なもの。お互いにWin-Winの関係にあるものはどれか。

「成長」と「所属」の2つですね。

「成長」とは個人の成長です。成長してうれしくない方は、あまりいらっしゃらないのではないか。組織にとっても、所属する従業員である個人が、会社が求める方向で成長することはメリットになります。

「所属」は組織の成長です。組織が成長することで存在感が大きくなり、多くの有益性を得られる。これは組織にとってのメリットです。個人・従業員は、成長する組織に所属していることで、ステータスが上がるなどのプラスの効果があり、所属の満足度も上がります。

このように「成長」と「所属」の2つが、個人と組織の双方にとっての有益性が合致するポイントになります。従業員にとっては、給料が自分の働き以上に青天井で上がっていくことは、非常にありがたいことですが、組織から見ると、個人の給料を青天井で上げていくことには限界があります。

仲間が増えるについても、やたらめったら人が増えることは、組織にとって必ずしもメリットがあることとは言い難い。福利厚生に関しても同様です。なので組織の成長、個人の成長があったのちに、給料とか仲間、福利厚生がついてくるというかたちです。

「成長」と「所属」を従業員に感じてもらうために必要なこと

あらためて「個人の成長」は多くの個人が有益であると認識します。成長して嫌な気持ちになる人はいないということですね。私たちは「成長感」について、「できなかったことができるようになること」と定義しています。

では、「個人の成長」を個人にいかに感じてもらうのか。これが組織に所属する上で根本的に必要な要素になりますが、できなかったことができるようになることですね。すなわち、自分が成長していることを自分自身で認識できる環境を作ることが求められるということです。

例えば、(スライドの)スキルの見える化と、チェック・フィードバック。あるいは成長の自己認識の先に、評価制度による査定の仕組みが連動する状況を作ること。このようにして、自己成長が認識できる環境を構築することが大切です。

もう1つが「所属」、組織の成長ですね。みなさんが所属する会社には目標や目的があり、そこに向かって成長して行くわけですが、目標や目的に向かって自分たちが進んでいるという「進行感」を感じられることが重要です。

社会性を持つ組織の目標・目的に向かって進行している感覚。成長している組織に自分が所属していると感じることですね。この進行感を感じるために組織は成長し続ける必要があるということです。

「組織の成長」を感じるためには、方向性と進捗を共有することが有効です。理念や中期計画の策定と共有ですね。私たちはどこに向かっているのかについて、従業員のみなさんと共有すること。

例えば、全社集会などで経営陣が中期計画がどのように進んでいるかという進捗を共有することが、組織の成長、進行感を感じるためには重要です。

そして、組織の成長をメンバーが認識できる環境を作ることです。例えば、経営の数字が昨年よりも伸びていることや、わかりやすいところでは従業員の数やお客さまの数が増えているとかですね。

個人と組織の関係性においては、成長こそが、お互いの有益性の合致につながりますよということですね。これが前提にあった上で、さまざまな施策を行うのであれば、意味があるかもしれませんが、こういった前提がない、もしくは曖昧な中で場当たり的な離職防止対策をやっても、根本的な解決にはならない。これが私たちの考えです。

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