2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
心理的安全性(全1記事)
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心理的安全性とは、メンバーが自由に考えや意見を述べることができ、恐れや居場所の不安から解放された状態です。チームや組織全体が、エラーや失敗を恐れずに率直なコミュニケーションやアイデアの共有ができる環境を提供することで、メンバーの意欲と創造性を引き出し、チームのパフォーマンス向上につなげることができます。
心理的安全性の欠如が招く問題は、社員やチームメンバーのモチベーション低下やストレス、パフォーマンスの低下、プロジェクトの失敗、組織の信頼性の低下など、さまざまな形で現れます。
人は、不安や恐怖心を感じる環境では、自分の考えや意見を言い出せなくなります。それによって、個人が能力を発揮できなくなり、目標や成果を出すことの妨げになってしまいます。このような状況に陥ると、社員やチームメンバーのモチベーションは低下し、ストレスや不満を感じるようになります。
次に、心理的安全性の欠如は、パフォーマンスの低下やプロジェクトの失敗を招くことがあります。例えば、失敗を恐れる組織では、新しいアイデアや取り組みを試みることができません。そのため、チームのクリエイティビティやイノベーションは低下し、プロジェクトの成果にも影響が出てしまいます。また、チームメンバーが自分の考えや意見を言い出せない場合は、重要な情報や問題が見落とされ、プロジェクトが失敗する可能性が高くなります。
最後に、心理的安全性の欠如は、組織の信頼性の低下を招くことがあります。社員やチームメンバーが自分の意見を言い出せない状況にあると、問題を抱えていても放置せざるを得なくなってしまいます。それによって問題が長期化し、深刻化してしまうことがあります。こうした状況では、社員のエンゲージメントの低下はもちろん、社会的な信頼性にも悪影響を与えるリスクがあります。具体的には、下記のような問題が起こりやすくなると言えます。
パフォーマンスが下がる
・アイデアが出ない
・メンバーが主体的な行動を取らなくなる
トラブルやミスの増加
・コミュニケーション不足で行き違いが増える
・適切な報連相が行われず、トラブルの被害が拡大する
企業成長への悪影響
・エンゲージメントが低下し、人材が流出する
・イノベーションが起こらず、業績が悪化する
■スペースシャトル・コロンビア号の帰還失敗
2003年2月1日、アメリカのスペースシャトル「コロンビア号」が、大気圏再突入中に空中分解し、7人の乗員全員が死亡しました。事故原因は、コロンビア号の打ち上げ直後に、外部燃料タンクの断熱材が落下し、シャトルの左翼に当たったと見られることでした。
この事故では、発射時に断熱材の破損を検知していた技術者たちが、上層部に報告することを躊躇していました。彼らは、安全性についての懸念を報告することで、チーム・リーダーの気を悪くすることを怖れていました。このように心理的安全性が欠如していたため、報告すべき情報を上層部に伝えることができなかったことが事故の原因となりました。
■福島第一原子力発電所事故
2011年3月11日に発生した東日本大震災により、福島県の福島第一原子力発電所で原子炉の冷却が停止し、爆発や放射線漏れが発生しました。この事故は、世界の原子力史上でも最悪レベルとされており、数千人もの死傷者と16万人以上の避難者が出るなど、深刻な影響が出ました。事故原因は、地震や津波による緊急事態に対応する計画が不十分であり、適切な指示がなかったことが挙げられます。
国会事故調査委委員長の黒川清氏は、この事故が「天災」ではなく「人災」であったとしています。原子力発電所の運営会社である東京電力は、原子力推進と利益追求のもとに、心理的安全性が欠如した状態にあり、十分な対策をしてこなかったことが、事故の拡大につながったとされています。
■電通の過労自殺事件の例
2015年12月に電通の新入社員だった高橋まつりさんが過労自殺した事件では、社員が長時間労働を強いられ、上司からの暴言やパワハラなどにより、心理的なストレスを抱えていたことが報じられました。
この事件は、電通の業績や成果至上主義が、社員の心理的安全性を軽視する原因になっていたことが指摘されています。また、この出来事が長時間労働などの労働慣行を見直すきっかけとなり、2018年に残業の上限規制を盛り込んだ働き方改革関連法が成立しました。
心理的安全性を高めることには、組織とそこで働く人々にとって多くのメリットがあり、下記はその代表的なものです。
■コミュニケーションが円滑になる
心理的安全性が高まると、人々は自分の意見や感情を自由に表現することができるようになります。そのため、コミュニケーションが円滑になり、チーム内での意見のすり合わせや問題の解決がよりスムーズに行われるようになります。
■イノベーションが促進される
心理的安全性が高まると、人々は失敗を恐れずに新しいアイデアを提案することができるようになります。そのため、イノベーションが促進され、より創造的な解決策が生み出されるようになります。
■モチベーションが向上する
心理的安全性が高まると、人々は自分の考えやアイデアが尊重され、評価されていると感じることができます。そのため、自信を持って仕事に取り組むことができ、モチベーションが向上するようになります。
■ストレスや不安が軽減される
心理的安全性が高まると、人々は自分自身や周囲の人々との関係について不安を抱くことが少なくなります。また、ミスをした場合でも罪悪感やストレスを感じることが少なくなります。そのため、ストレスや不安が軽減され、より健康的な心の状態を維持することができるようになります。
心理的安全性を高めるためには、ふだんから質問や相談がしやすい環境を作り、アイデアや改善提案をしやすくすることが重要です。また、お互いに尊重し合ったり、失敗を批判するのではなく受け入れ、その経験から学ぶことが重要です。そのほかにも、下記のような取り組みが有効です。
■開かれたコミュニケーションを促す
チーム内のメンバーがオープンに意見を出し合える環境を作ることが必要です。リスペクトフルな意見交換を通じて、全員が参加しやすくなります。
■批判的思考の尊重
問題を解決するためには、意見を正しく判断する能力が必要です。批判的思考を尊重し、より良い解決策を見つけるために、チームメンバーは意見に基づく論理的な分析を行うようにする必要があります。
■失敗を受け入れる
失敗は成功の原動力です。失敗を批判するのではなく、その経験から学べるようにすることが大切です。失敗に対してポジティブにアプローチすることが、チーム全体の心理的安全性を高めることにつながります。
■フィードバックを促す
フィードバックは成長の機会です。チームメンバーが互いにフィードバックを提供し、受け入れる習慣を身に付けることで、互いのスキルを向上させることができます。
■チームメンバーの参加を奨励する
心理的安全性を高めるためには、チーム全員が積極的に参加することが必要です。全員が同じ目的に向かって協力することで、個人の自信を高めることができます。
■リスペクトフルな環境を維持する
全員がお互いを尊重し、個人的攻撃や批判的な言動を避けることが重要です。全員がリスペクトフルな態度を持ち続けることで、心理的安全性が確保されます。
心理的安全性についての誤解は、次のようなものが挙げられます。
1.完全な合意や賛同が必要であるという誤解
心理的安全性を高めるためには、常に意見が一致する必要があるという誤解があります。しかし、異なる意見や見解を尊重し、率直で建設的な議論ができることは、心理的安全性を高めるための重要な要素です。
2.心理的安全性は、性格の問題であるという誤解
心理的安全性は外向性と同義だと説明する人がいますが、『恐れのない組織―心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』著者のエイミー・C・エドモンドソン氏の研究結果では、内向性や外向性は、心理的安全性とは無関係とされています。心理的安全性は職場風土であり、心理的に安全な場であれば、人は内向的か外交的かによらず、アイデアを出したり懸念を述べることが可能です。
3.心理的安全性のために、肯定的なフィードバックだけをすべきという誤解
心理的安全性を高めるためには、肯定的なフィードバックだけでなく、改善点を指摘することも重要です。打ち合わせで活発な意見交換ができ、楽しく充実した時間だったとしても、それが成果を生み出すことがなければ、チームが評価されることはありません。
満たすべき基準や納期も守らなくていいような、勝手気ままなでゆるい職場環境で気楽に過ごすということではないため、組織文化において、フィードバックを前向きに受け止める文化を促進する必要があります。
4.心理的安全性があれば、組織が動き出すという誤解
心理的安全性は、組織が円滑に回るための土台として重要なものですが、これがあれば組織を動かせるわけではありません。「心理的安全性の高い風土を作って学習を促進し、回避可能な失敗を避けること」と、「高い基準を設定して人々の意欲を促し、その基準を達成できるようにすること」の2つが重要です。
心理的安全性を高めることは重要ですが、単なる馴れ合いや手抜きが横行しないようにすることが重要です。また、表面的な仲の良さではなく、本当に本心を話せているかどうかも確認すべきです。意見の衝突や健全な議論を受け入れ、叱るべき時はきちんと指導できることも、ゆるくて楽なだけの組織にしないための注意点と言えます。
「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」は、心理的安全性が高い組織に見られる4つの因子とされています。経営層やマネージャーは、「話せば理解してもらえる」という安心感の醸成、助け合いを推奨する仕組みづくり、失敗を咎めないカルチャーなどを推進していくことが大切です。
実は心理的安全性は、昨今注目されている人的資本経営とも深い関係があります。人的資本経営は、従業員が持つ知識や能力を「資本」とみなして投資の対象とし、持続的な企業価値の向上につなげる新しい経営の在り方です。
外部環境の変化に対応し企業価値を高めるためには、人材を「コスト」や「資源」ではなく「投資対象の資本」として捉え、人材の価値を引き出す経営スタイルが不可欠ですが、心理的安全性が低い組織では、そもそも人材の「資本」を高めることができないのです。
心理的安全性の高い組織を作るためには、日々のコミュニケーションの取り方や、アイデアや挑戦を否定しないカルチャーなど、経営層と現場が一体となった組織づくりが重要です。
経営層やマネージャーだけで実現できるものではないため、組織に所属するすべての人が、職場の心理的安全性を高め、お互いに働きやすい場を作っていく意識を持つことが大切です。
ログミーBizでは、他にも心理的安全性に関する講演やセミナーの記事を多数掲載していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
一人ひとりがより働きやすくなる職場環境を実現するために、組織の心理的安全性を高めていきましょう。
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