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評価制度が会社を長期自動成長させる(全3記事)

超優秀な営業マンを管理職にすると現場の数字が落ちる… 個人実績とチームマネジメントを両立させる目標の与え方

株式会社識学が主催した経営層向けのオンラインイベントに、創業当初から営業部門を率いてきた同社副社長の梶山啓介氏が登壇。「評価制度が会社を長期自動成長させる」と題して、評価制度の設計時にベースになる8つの項目上司の評価と部下の自己評価に「開き」が生まれる理由などを解説しました。

評価制度の設計時にベースになる8つの項目

梶山啓介氏(以下、梶山):ここからは具体的な評価制度の構築ポイントをお話します。我々は、(スライドの)この8つの項目を評価制度を構築する際のベースにしています。

アウトプットの出し方は企業さまによってまちまちですが、このポイントを押さえているかどうかを重視します。この中から今日は4つをご紹介して、講義のパートを終わりたいと思います。

まず(スライドの番号)2の「管理者は自組織の成績で評価される」。そして4の「結果で評価する」、5の「評価者は直上の上司のみ」。最後は8の「マイナス評価を入れる」の4点です。

まず1点目の、「管理者は自組織の成績で評価される」。これは「チーム成績に対する免責の余地を排除する」ということです。

管理者の個人実績を評価すると、チーム実績に対する意識が低下します。(スライドの)これは一番上に40パーセントの比重で、営業部長が個人でどれだけ売り上げたかという項目が入っているんですね。

それを含めた上で営業部の売上が40パーセント(スライドの真ん中)となると、部長としての役割を求めているのに、個人として売上をつくる動きが生まれる。役割と行動に乖離が起きてしまうので、これはだめです。

個人実績とチームマネジメントを両立させる目標の与え方

梶山:ただ、(他企業の)ご相談に乗っているとこのケースが多いんですね。課長に昇格するタイミングで起きることが多い。

営業マンAさんは極めて優秀で、非常に数字を上げてくれた。なので課長に昇格するんですけど、Aさん個人の売上を外すと数字が落ちるのが怖い。だから、「管理者だけど、個人数字の割合も残しておくよ」というケースが多いんですね。

気持ちはわかりますが、せっかく課長にしたのに役割との乖離が起きてしまいます。こういう時におすすめのやり方があります。A課長の個人数字が1,000万円だとする。A課長の部下であるBさん・Cさんがそれぞれ500万円として、1,000万円+500万円+500万円の2,000万円をA課長の目標数字にする方法です。

事実上A課長は1,000万円を売り上げないといけないんですが、内訳は問わず、全体で2,000万円を売り上げるかどうかであなたを評価するとしたほうが、言い訳の余地がなくなります。

自分で数字を上げてもいいですし、部下に数字を上げさせてもいい。そこの手段になるべく口を出さない。自分で決めていくので、達成感や成長感が生まれるという構造です。

それでも、課長になりたてだと管理職として張り切ってしまい、個人の数字を追わなくなることが心配であれば、ルール設定という術を使います。課長としてのマネジメントに注力してほしいけど、課長としての売上も重要なので、月間20件は決裁者とのアポを個人で入れなさいと。

評価する軸は変えず、ルール設定をすることで、個人の数字も追わないといけない状態にする。でもルールが多すぎると、自分で決めている感覚がなくなるので、最低限のルールにします。これが「管理者は自組織の成績で評価される」です。

部下の「経過アピール」が増えるメカニズム

梶山:2つ目は「結果で評価する」ですが、結果が曖昧で、経過アピールが増えるメカニズムをご紹介します。

先ほどお話しした、何をどれだけやれば何が得られるというところが曖昧だと何が起きるか。

(スライドは)「何を」が曖昧な例です。

社長「今期はみんなの積極性を評価するぞ」、社員「社長、積極的にチームの改善点を提案してきました」、社長「いや、それより積極的に営業活動してほしかったんだけど……」。

相互認識のずれによる誤解や錯覚ですね。社員からすると後出しされた感が出ますからね。「積極的にやってきたのに……」という。これでは、非常に生産性が低くなる状態になりますので、とにかく曖昧をやめましょう。

続いて、「どれだけ」が曖昧な例。

社長「今期はとにかく最大限採用活動を進めてくれ!」、社員「社長! 最大限に採用活動をして5名も獲得できました」、社長「いやいや、5名じゃぜんぜん足りないよ」。

これも後出し感が出ますよね。「10名必要なら、先に言ってほしかったなぁ」という状況。評価への不満や離職につながります。

最後は、「何が得られるか」が曖昧な例。

社長「管理部の翌営業日契約書作成率を98パーセント以上に高めなさい」、社員「社長! なんとか98パーセントで着地しました」、社長「よくやった。じゃあ、評価会議で最終評価を決めるね」。

「何を、どれだけ」を達成したのに昇格・昇給なしという状態ですね。ここは少しテクニカルな対応が必要で、あなたは60点取ったら1ポイントもらえて、1ポイントで給料がいくらに上がるとか。ブラックボックスがない状態が一番きれいですよね。

ただ、会社が大きくなると、評価項目の不均衡や(賃金や賞与の)原資コントロールが出てくるので、どこかしらブラックボックスというか、X(エックス)をかけるところが必要になってくる。

だけど、ブラックボックスが複数あると、それだけで評価制度が機能しなくなるので、それをいかに少なくするか。何かが曖昧になると走れなくなるので、いずれは「何を」「どれだけ」「何が得られるか」を明確化していきましょう。

結果ではなく「経過の評価」で起きること

梶山:識学では、明確になっている状態を「完全結果」と呼んでいます。これは「10キロメートルをなるべく早く走る」ではなく、「10キロメートルを60分で走る」のように、人によって解釈がずれないようにすることです。

「10キロメートルをなるべく早く走る」のような不完全結果が増えると、誤解や錯覚につながりますので、結果設定は完全結果にしていきましょう。

では、結果でなく経過で評価すると何が起きるのか。

目標数値未達成で残業の多い社員がいる。上司の手伝いも多い中で残業をしてがんばってくれたからと高く評価すると、「がんばれば認めてもらえる」と認識して残業が増える。機嫌うかがいや経過アピールも増え、生産性ダウンにつながっていく。

目標数値達成で、残業の少ない社員がいる。自分の数字ばかりで帰るのも早く、努力を感じないと判断して低く評価する。「数字を上げても認めてもらえない」ので、残業、機嫌うかがい、経過アピールが増えて生産性がダウンしたり、離職・転職につながる可能性が出る。

社長・上司の機嫌うかがいや経過アピールがうまい者と、かつては生産性が高かったが評価されずに生産性が落ちた社員だけが会社に残っていく。大袈裟なと思うかもしれませんが、こういうのは多いと思います。

私は大企業を中心に見させていただいていますが、結果での評価よりも、マイナスがつかない(人を評価する)傾向が強いので、(経過)アピールみたいになってくるわけですよね。上司側の好き嫌いで決められる領域がどうしても出てきて、「好き」を取るためにアピールしないといけないことが起きる。日本全体にこうした課題感があります。

これを避けるために「結果で評価する」。結果で評価する会社を作ったら、全員に勝ち負けが出てくるので、負けた人たちが会社を去るんじゃないかという恐怖があるかもしれませんが、そこは下げ幅でコントロールすればいいと思います。

小さい会社であれば、早い段階から結果での評価を会社の文化として残すほうが拡大もしやすいですし、新しく入る人たちを定着させやすいですね。

なお、(スライドの)評価シートの項目は多くても5項目以内を推奨しています。5項目以内にすれば、1つの項目の比重が10〜20パーセントになるからです。

みなさんもご経験があると思いますが、10パーセントを切るような目標は頭から抜けちゃうんですよね。意味のない目標値になる。どれだけこの比重を下げたとしても、10パーセント以下にならないようにしましょうということですね。

上司の評価と部下の自己評価に「開き」が生まれる理由

梶山:次に「評価者は直上の上司のみ」についてお話しします。

会社の構造は、市場からの評価を得るために社長が部長を評価して、部長は社長から評価を得るために課長を評価して、課長は部長からの評価をえるために課員を評価する。スライドのように評価の方向は上から下になります。

でも、360度評価みたいな制度で、本来は上からの評価を得るだけなのに、同僚や部下からも評価をされることになると、求められていることが相反して「結局何をやればいいんだ」と迷ってしまう。

昔と比べて「360度評価をやっています」というケースは激減したかなとは思うんですが、こういう相反が起きてしまうので、ご注意くださいという話です。

最後に「マイナス評価を入れる」。評価にゼロはないというお話です。人が新しく人に会った時、プラスかマイナスのどちらかに振れて、ゼロってないですよね。無関心はマイナスなので。人の「印象評価」と呼んでいますが、プラスかマイナスですね。「ゼロがあるように錯覚するとだめですよ」ということです。

どういうことか。上司の部下に対する評価がプラスの時はあまりずれません。数字の結果が良かったからプラス3で、部下本人の認識もプラス3になる。ただ、未達だった時に、ゼロという項目があると、上司はマイナス3をつけても部下は「今回はインセンティブもらえなかったな~」とゼロをつける。

次のプラスの時はずれないけど、未達の時にまたずれる。スライドでは、合計すると上司はマイナス1の評価ですけど、部下側はマイナス評価がゼロなので、プラス5になる。評価ギャップが6ポイントも開くのは、けっこう致命的ですよね。

この状況でやっていくと、会社としては戦力にならない人が出ているのに、本人は給料があまり落ちていないですし、下手したら「貢献できている」と思う人もいるかもしれない。

会社の環境が厳しくなった時、こういう人には生産性を高めてもらうか、残念ながら辞めてもらうかを選びたくなってきます。その時、プラス5だと思っている人に「マイナス1ですよ」と話すとすごく揉めるんですよね。不当解雇みたいな話につながったりします。

辞めてほしい人に辞めてもらうということより、もっと手前で「マイナスですよ」と小出しにしっかり伝えてあげれば、「今度はがんばってやろう」とプラスに転じる人もいるわけですよね。

マイナス評価を言うのが怖い、降格させるのが怖いと言わないでいると、会社としてのマイナスの蓄積が大きくなります。しっかりとマイナスがある制度を作って、現実に即したかたちでプラスマイナスの評価をしてあげることです。

ここまで、具体的な評価制度構築の8つのポイントから4つを紹介させていただきました。ご清聴ありがとうございました。

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