
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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薮田孝仁氏(以下、薮田):では、次のテーマに進みましょう。お願いいたします。
平岩力氏(以下、平岩):次に(スライドの)適応。
オンボーディングの領域ですね。データを活用した相性の良い配属、相互理解に使う適応プラン、また、ピアレビューというサーベイを定期的に実施した、レピュテーション(周りからの評判)のスコア化。
大きくこの3つの施策を取り入れています。まず、最適な配属先ですね。これ(スライドの表)は、新卒社員の配置で実際に使っているものになります。
左の行に配属候補先のチームが並び、右の列に新卒の個人名が並んでいます。どの個人が、どのチームとの相性がもっとも良いかを、スコアで算出しています。これはFFS診断の結果に基づき算出していますが、理論上、数値が高ければ高いほどチームとの相性が良いということになります。
(スライドの)右側になりますが、何年か実証研究を続けた結果、相性のスコアが高ければ高いほど、高いレピュテーション(評判)を得やすいというデータも出ています。
早期に現場で良い評判を得た人材のほうが業績が高く辞めにくいといった構造は、お伝えしたとおりです。なので、初めにチームとの相性を良くしてあげたほうが、現場から良い評判を得やすい新人が増えます。配置の時はここを意識します。
現場からのどのチームに何人といったニーズを確認したうえで、配置の判断に必要な情報としては、「①新人の希望職種や勤務地」「②相性スコア」の2つになります。どういったタイプが欲しいといった現場の意向は聞きませんが、現場からすると「自分のチームと相性の良い新人が来る」というイメージを持っていると思います。
平岩:そして、現場のチームや上司の方との相互理解を促す「適応プラン」も提供しています。
(スライドの)マトリクス図が、チームの関係性をマップ化したものです。誰と協働すべきか、どう関わるべきかが簡潔に理解できるようになっています。
新人も受け入れ先のみなさんも、お互いのことがわかるとコミュニケーションをしやすくなり、無駄なストレスが減ります。事前に分かって接し方を工夫できるので、良い関係性で付き合っていただけるかなと思いますね。
3つ目が(スライドの)ピアレビュー。3ヶ月単位で、新人の適応度合いを定量的に取得して、フィードバックと改善を提供します。
新人の先輩方に3つの設問に答えていただく。4月から3ヶ月単位でとりますので、10段階での状態の推移を確認できます。このスコアが1年目に8を超えると、実証研究結果では、3年後の業績が(8未満の人と比較して)3倍ぐらい違ったり、離職しにくくなったりします。(スコア)8を基準に、現場やHRBPが新人に向き合います。
右側はどんなスキルが周りから評価されたかを示しています。あと、良かった点や今後の期待値などの良いコメント(ピアボーナスのようなもの)を提供することで、新人の「成長や存在の承認」につながるようなフィードバックを提供しています。
最適な配置にしてあげて、良い関わり方をして、良いフィードバックをすると、新人が現場で育ちやすくなる。これが適応(オンボーディング)のフェーズでやっていることです。やり続けた結果、レピュテーション(評判)の高い社員が年々増加している傾向にあり、それによりその先の活躍、定着が改善します。
平岩:適応の次のステップでは、育成の領域に入ります。セプテーニグループで目下取り組み中(構築中)ですが、ちょっと紹介させていただければと思います。
「育成プラン策定」では、過去のさまざまなデータ、成長のログや、つまずく、もしくは伸びるタイミングの要因と傾向をもとに、キャリアプランを提供します。一人ひとりの個性別育成プランですね。
個性 × キャリアステージ別に、「何が課題になりそうで、どこが鍛えるべきポイントか」など、課題と対策をプランとして策定してあげるイメージです。
「ソリューション」も一人ひとりの個性に対して提供しています。ビジネススキルや専門知識などのe-Learningや、副業やMBA、自己啓発プログラムの推奨など。
また、ビジネスプランコンテストなど新規事業イベントもセプテーニグループとして定期的に運用していますので、こういうものへの参加を促すことも行っています。一言でいうと、個性への刺激のような施策イメージです。
あとは環境ですね。同じところでずっとやっていくことがいいとは思っておらず、戦略的ジョブローテーションで、できるだけさまざまなポジションを経験をさせてあげる。うまくいっていないポジションだったら、新しいポジションで活躍の場所を見つけてあげるとか、環境への刺激も行っています
重要なのは、P(Perspnality)とE(Enviroment)の双方に、できるだけ最適なタイミングで刺激を提供してあげることです。そして、刺激によりどうなったかをピアレビューにより計測し、本人への定期的なフィードバックを提供する。そこで溜まったデータで、よりプランの精度を高めていくような構造を、今、鋭意構築中です。
一人ひとりに個別最適化された育成プラン、ソリューション、レビュー。これらのPDCAを回しながら、年次関係なく、必要な時に必要な学びをちゃんと得られるスキームを、リスキル的な文脈も含めてやっていきたいと思っています。
薮田:個人によって、いろんな育成プランやフォーマットが用意されていることがよく理解できました。
薮田:「AIに判断を委ねていますが、職場のAI倫理の監査みたいなものはどうされていますか」という質問が来ています。
平岩:セプテーニグループでは、「デジタルHRガイドライン」といったものを策定し、運用しています。特に、AI倫理監査のような観点ですと、取り組みの目的や範囲、また個人の利益やリスクに対して求められる配慮についての指針や、取り組みの運用体制などを整理しています。
薮田:例えば社内から、「これ(AIによるデータ分析)は、本当に正しいんですか」といった声はなかったのでしょうか?
平岩:そういった声はもちろんあったとは思います。ただ、あるタイミングで突然「AI人事を導入します」と全社向けにリリースしたわけではありません。
進め方としては、協力的な現場事業や部門などとさまざまなデータ検証を重ね、各現場で良い反応があったものをより広げていくようなかたちでした。なので大事にしていることは、「まず現場の役に立ち、結果としてデータを取得させてもらう」というステップです。
また、現場へのフィードバックを通してデータへの理解や有効性が高まると、AIやデータ分析といった施策に対して徐々にフレンドリーになってくれる人が増えます。そうすると、「本当に正しいの?」といった疑心暗鬼ではなく、なくてはならない必需品のようなものに変わっていくのだと思います。
薮田:なるほど。
平岩:なのでいきなりトップダウンで変えたのではなく、試行錯誤しながら現場の良い口コミと共に広がっていったような流れになるので、10年以上の時間軸で今に至っているのは、そういった背景です。
薮田:なるほど。成功事例の特定の部署から作っていくところから始めるということですね。
平岩:そうですね。データを活用した配置や初期適応の支援などの取り組み、検証を、協力的な現場の部門長やマネージャーと行っていく感じですね。
薮田:続いてアルムナイについてお願いします。
平岩:離職後の辞めた方の人的資本の価値という観点で、将来的な再雇用や業務委託的なつながりも含めた施策です。
退社後、アルムナイネットワークに任意で参加をしてくれた人に対して、セプテーニグループとしてのサービスを提供する。例えば個々のキャリア価値貢献につながる、キャリア支援ツールのようなものの提供を今後考えています。
また、アルムナイネットワークで案件情報のようなものを掲示して、卒業生とビジネスパートナーシップを組んだり、出戻りによる再雇用の促進など、仕組化して運用していきたいと考えています。
実際にアルムナイから再雇用に至った社員は活躍するレベルもスピードも速いですし、再雇用の方が離職率が低くなるといった傾向も出ています。人材の流動化がより一層高まるであろう労働市場においては、卒業生との付き合い方は今後より重要になってくると思っています。
薮田:ありがとうございます。特に採用と適応のところが、今までの実績をもとに成果が出てきたところになりますか?
平岩:そうですね。新卒採用を中心とした比較的若いグループになりますので、採用・初期適応(オンボーディング)のところのデータ蓄積・検証を数多く行ってきた結果、その領域の成果が中心にはなっています。
今後は育成領域のデータ活用も含め、もうちょっと中長期の時間軸で従業員の人材育成支援ができればと思っています。先程ご紹介したアルムナイはもちろん、ミドル~シニア層のリスキリングなども、今後は重点的なテーマになってくると考えています。
薮田:質問が来ています。「適応のところで、マッチングで配属した後にあまり合わずに異動となる割合はどの程度ありますか?」という質問です。
平岩:年度によって違いはありますが、早いと入社半年後、その後は3ヶ月単位くらいで必要に応じて異動をしていくイメージです。かなり感覚的ではありますが、入社1年目の社員がどこかしらに異動する割合でいうと、20パーセントくらいはあるかなと思います。
薮田:なるほど。合わないという定義が、なかなか難しいと思うんですけど、20パーぐらいなんですね。
平岩:そうですね。セプテーニグループでは新人に関しては特にレピュテーションのスコアを重要視しています。例えば、一定の水準以下のレピュテーションスコアが複数回連続で出ているような場合、異動や部署内での配置換えなどを検討します。
「レピュテーションが低い=チーム内の評判が良くない」新人ということになるので、人材育成方程式で言うところの、環境(「チーム(T)」や「仕事内容(W)」)を変えてしまったほうが上手くいく可能性が高くなるといった判断です。
薮田:なるほど。
平岩:レピュテーションが低いという状況は、新人も先輩も、お互いのストレス要因につながる可能性が高いと考えていますので、であれば、現在のうまくいっていない環境で耐え忍ぶより、組み合わせを変えた方がお互いの生産性も高くなりそうですよね。そういった意味で、特に新人の1年目のレピュテーションには気を配っています。
薮田:なるほど。
平岩:以上が当社の取り組みとなります。構築中や検証中のものも多く、やや粗めの情報提供になってしまった部分は多かったと思いますが、みなさまのご参考になっていましたら幸いでございます。
薮田:ありがとうございます。もっとたくさん聞きたかったのと、あとご質問にも回答したかったんですけど、時間の関係で回答できなかった方、申し訳ないです。あらためて平岩さん、ありがとうございました。
平岩:ありがとうございました。
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