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HRテクノロジーを活用した人材育成方針とその実践 ーセプテーニグループが定義する「人材育成方程式」とは?ー(全3記事)

入社後の活躍予測は、面接官より「AIのほうが精度が高い」 新卒の採用活動にAIを導入してわかったこと

「人的資本経営」の推進が求められ、人材の価値を最大限に引き出すための取り組みにも注目が集まる中、株式会社SmartHRが主催した人事・経営者向けのセミナーに、セプテーニグループ 株式会社人的資産研究所の平岩力氏が登壇。「HRテクノロジーを活用した人材育成方針とその実践」をテーマに、AIを活用した同社の新卒採用について語られました。

活躍度の予測は、面接官より「AIのほうが精度が高い」

平岩力氏(以下、平岩):ここからは具体的に、人事戦略の実行について、実際のデータを活用した「採用」「適用」「育成」「アルムナイ」のフローのお話をしていきます。

採用に関しては、データを活用して、活躍するであろう人材の目利き「アセスメント」と口説き「クロージング」での各施策についてお話しします。

こちら(スライド)は、セプテーニグループの新卒採用で実際に使っているスキームになります。毎年、年間で120人ぐらい採用を行っていますが、最初の要素が3年後の業績・定着の予測です。このあたりを当グループ独自に定めているデジタルHRガイドラインに基づいたAIの分析をもとに割り出しています。。

2つ目は、活躍の仕方が、どのタイプの社員と似ていて、どんな感じに成長するかといった要素。3つ目が選考中の評価に関するデータです。

そして、オンラインもしくはオフラインで一度の面接を通じて人による最終判断をするスキームになります。「AIデータ判断+面接1回」みたいな座組ですね。データを活用して、できるだけ再現性高く採用判断を行おうとする仕組みです。

薮田孝仁氏(以下、薮田):面接はオフライン、もしくはオンラインのどちらか1回ということですね。

平岩:どちらか1回ですね。プラス、データで進めています。そこに至った検証の背景もあります。入社1年後に、先ほどのレピュテーションのデータを取ります。(スライドは)戦力化した人材の出現率をパーセンテージで表したものです。

面接官とAIで見た時に、面接官の判定がグレーのグラフで、AIによる判定が赤のグラフです。これは、面接官がS判定をつけた人材よりも、AIがSとつけたほうが戦力化した人材の出現率が10ポイント高かったというデータになります。

実際にやってみて、「AIのほうが精度が高い」という結果がでたこともあり、面接は1回でいいかなと。データの分析と組み合わせれば再現性を持ってできるということで、このプロセスに至りました。

内定辞退率の低下にもつながる「キャリア・シミュレーション」

平岩:(スライドの)面接が1回になったことで採用担当が一人ひとりにしっかりコミュニケーションを取る時間が生まれました。そこで新たに5年前くらいから行なっている取り組みとして、「個に最適化したキャリアプラン」を内定時に提供しています。

「AIデータ判断+面接1回」なので、学生からすると「面接で何を見て判断していたの?」みたいに、ちょっとドライに感じるところもあると思いますので、内定の後、一人ひとりに120ページぐらいのボリュームのキャリアプランの資料を提示しています。

学生のデータに応じて、「入社後にどんな活躍をしそうか、またどんなことにつまずきやすいのか」など、個にカスタマイズされたとても細かな内容になっています。一人ひとりに、採用担当が2時間ぐらいかけて、手厚くフィードバックをしていくイメージですね。

なので、アセスメントに多くの時間を割くのではなく、個別最適化したフィードバックやコミュニケーションに採用担当のリソースの大部分を投入する構造です。

薮田:データ傾向から、その方の入社後のキャリアプランを描いて、内定後キャリアプランについてお話をするということですか?

平岩:そうですね。例えば、3年後の活躍予測みたいな感じで、「こんな感じのキャリアになる可能性が高く、こんな評価を得る可能性が高い。だから、このタイミングではこんなことをやったほうがいいよね」といった内容になります

一人ひとりに合ったキャリア形成に対して、何がポイントになるかをまとめる。入社後の自分の成長の解像度を高めるアプローチに力を入れることで、内定辞退率の低下にもつながっています。

薮田:これを個別にされているんですね。

平岩:はい。面接自体や面接調整等のオペレーションはできるだけ効率化し、学生に個別最適化されたコミュニケーションに注力しています。

解析結果への納得感を高めるフィードバック

薮田:質問の前に、前提を1つおうかがいしたいんですが、このプログラムは新卒採用、キャリア採用のどちらになります? どっちもですか?

平岩:基本的には新卒採用のプログラムになります。キャリア採用は、今その仕組みを構築したばかりで現在検証中です。キャリア採用だと、新卒と比較して職歴などキャリアに関するデータ数が増えますので、プログラム構築の難易度が上がること、また、セプテーニグループは新卒の割合が多く、キャリア採用自体のn数も新卒に比べてまだ少ないことがその背景です。

薮田:なるほど。じゃあ新卒採用向けとして、職種によって違いがありますか? 例えば、エンジニアだったら精度が高い・低いとか。

平岩:一人ひとりの個性(パーソナリティ)をベースにしたプログラムですので、職種による違いは理論上は特にありません。業務スキルなどとは切り分けて考えています。

薮田:なるほど。キャリアプランを作っていくのはすごく大変だなと思います。質問が届いてます。「これは市場の動向とかを含めて試算されているんですか?」とのことですが、いかがでしょうか?

平岩:基本的には、セプテーニグループでこれまでにストックしたさまざまなデータをもとに試算しています。冒頭に申し上げた20年分ぐらいの従業員データがありますので、パーソナリティやレピュテーション(評判)、業績・離職、さまざまな行動履歴や職務経験等の情報を「成長ログデータ」と捉え、伸びるタイミングやつまずきやすいタイミングと要因を探索し、試算できるようなプログラムを構築してきました。

薮田:ありがとうございます。ちなみに、「『解析結果でこうでした』という話だけで納得を得られるのでしょうか?」という質問も来ていますが、いかがでしょうか?

平岩:わりと淡泊にお伝えしてしまいましたが、パーソナリティ診断や履歴書的な情報、そして弊社独自のアンケートなど、学生からはけっこう多くのデータをもらっています。そこに選考過程の情報などもあわせてフィードバックしていきます。

受験結果だけをポンと示すというよりは、選考のログなどさまざまな情報をすべて集約してアウトプットしています。かつ、入社後のイメージも、個性に合ったかたちで提供し、伝えます。

また、このあとで出てきますが、チームや仕事内容との相性の良い配属先にすることなど、「個性にあった人材育成施策をしていくよ」とオンボーディングの話なども添えて口説いていきます。

薮田:ありがとうございます。

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