2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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ーー前島さまは筒井工業で行った「働きがい改革」を、他社でも実践できるようにパッケージ化した「T-CX」(ツツイ式カルチャートランスフォーメーション)というサービスを提供されています。なぜ自社だけに留まらず、他社にもノウハウを教えようと思われたのか、きっかけを教えていただけますか?
前島靖浩氏(以下、前島):この仕事が大事だと思った一番のきっかけは、若手の社員に、長期の休み明けに「どんなふうに過ごしてたの?」って聞いた時のことです。
だいたい「友だちと飲みに行った」と言うので、「そこでどんな話を聞いた?」と聞くと、「友だち4人に会うと3人は『もう会社を辞めたい』と言っている」となるんです。「残りの1人はどうしたの?」と聞くと、「もう辞めた」と。
「やっぱりよそはうまくいってないんだな」と思って、何人かの若手に同じ話を振ってみると、同じようなことを言ってくるわけです。あっちでもこっちでも、同じことが起きている。
日本は世界で戦っていかなきゃいけない中で、生産性とかDXとか言っているけど、「いや、そんなことをやる前にやることがあるんじゃないの?」という感じがしたんです。
僕は、日本人は特に「何か人の役に立ちたい」と強く思う文化があるような気がしているんですよね。そういう思いを引き出せずに、やらされ感で仕事をさせちゃっているマネジメントって、どれだけ日本の資源を損失しているのかなと。自分自身もまさにパワーマネジメントをやってきたので、反省しているところがあるわけです。
でも、そんなことしなくても、社員が働きがいを見出せれば、本当に経営者が欲しがっていた成果が出せるとわかったので、T-CXを伝えることで、パワーマネジメントの下で歯を食いしばってがんばっている若手の人たちが「仕事、おもしれー!」となってくれたらいいなと。それが生産性を上げていく1つのパワーになると思うんです。
日本全体の生産性が上がり、海外と戦えるようになっていくといいなと。そんなことが頭の中でなんとなくつながっていって、やろうと決めました。
ーーなるほど。最初は働き方・働きがい改革が他社との差別化戦略になると思い始めたということでしたが、そのうちに「他の会社も同じようになってほしい」という思いのほうが強くなったんですね。
前島:そうですね(笑)。
ーー具体的にどんな会社から、どんな悩みでご相談が来ることが多いですか?
前島:一言で言うと、昔の私のようなパワーマネジメントをやっていた人たちからの問い合わせが、やはり圧倒的に多いです。ただ1つ言えるのは、その中でも「なんとか会社を良くしなきゃいけない」と必死にもがいている方ですね。6年前の私を見ているようで、人ごとじゃないです(笑)。
一応事業としてはコンサルティング事業ですが、僕はコンサルタントの先生なんて偉そうなもんじゃないんです。だって、自分がやらかしてたんですから。その償いのように、同じように苦しむマネジメントのガイド役をしています。そういう仕事をしたいんです。
ーー「役に立ちたい」という日本人の特性を前島さまご自身も持っているんですね。
ーーサービス内容を拝見する中で、「自主的考動」という言葉が使われていました。この「自主的考動」という言葉の意味や意図について、少し教えていただけますか?
前島:はい。「自主性」と言うと大雑把な感じですけど、逆の言葉を考えると非常にわかりやすいんです。例えば「やらされ感」とか「他人ごと」。会社のことって「自分ごと」のはずなんですけど、「誰かやってくれるでしょ」とか。あるいは「他責」という言葉もありますね。何か人のせいにするとか、上司や会社のせいにするとか。
こういう状態では会社の仕組みはうまく動かないと確信をしています。チームがばらばらの状態で、どれだけいい仕組みを持ってきたって、やらされ感が上乗せになって失望感が増えるだけで、むしろ信頼関係はさらに悪化していく。何もいいことはないんですね。
もうちょっと加えると、僕自身、実はサラリーマンとして会社に入っているので、サラリーマンのみんなの気持ちもよくわかるんです。会社への怒りとか、上司への怒りだってずっとあった。そういうものがどれだけ自分のエネルギーを削いでいくのかも知っています。
その反対側にあるのが自主性です。あまり過剰になると1人で突っ走っちゃうんですけども、「自分がやらずに誰がやるんだ」「いっちょやったるか」という自主性こそが、経営者が求めるところだなと思います。仕組みも営業も製造も、自主性があれば何をやってもうまくいく。
ーー考動の「考」を「考える」にしている理由は、自主性というところからも来ているんですか?
前島:そうですね。自分で考えるというのは大事です。ただ製造業の構造上の課題として、上意下達というのはどうしてもあるんです。トップダウンでの指示命令はゼロではない、むしろそれがほとんどを占める会社が多いので、自分で考える力を削いでいくような構造になっているんですよ。
「コーチング」は相手に考えさせるスキルになります。要は質問をすることで相手に考えてもらう。ただ、製造業は質問を投げても、訓練されてないのですぐにはうまく答えられないんです。だからこそ相手を信じて、粘り強くアプローチをしていく。そうすると、いずれ彼らは自分で考えられるようになりますから。
ーーもう1つ、T-CXは「経営者の方や管理者の方に受講してほしい」というメッセージを出されていますよね。
若手の成長機会を作るための取り組みとして、企業では新卒などの若手に対して研修をすることが多いと思うんですけど、どうしてT-CXは若手社員ではなく経営者、管理者の方にアプローチしているのか、おうかがいしてもよろしいですか?
前島:「課長・係長にコミュニケーションを教えてやってくれ」という問い合わせが多いんですが、私は、「いえ、代表の方あるいは幹部の方が研修を受けてくれないんだったら、私は仕事をお受けできません」とお伝えしています。
コミュニケーションのセミナーを中間管理職の方にやってもらうのもいいんですけど、だいたい「これ、上の人が受けるべきなんじゃないですか?」と受講生の誰かが言うんですよ。本質がわかる人はすぐわかっちゃうんですよね。その通りなんです。
仮に中間管理職からセミナーをやったとして何が起こるかと言うと、社内はいったん活性化するように見えると思います。いろんなところで会話や面談が始まるかもしれないです。面談している時は笑い声も出るかもしれない。
それを上司が見ていて、どう思うか。セミナーを受けてないので、彼らが何をやっているか知らないんですよ。そうすると「なんだお前ら、遊んでるのか。仕事しろ。成果はいつ出るんだ?」って踏み潰していくわけです。
前島:さっきから「文化」の話をしているんですが、特に中小企業は経営者が文化そのものになっています。経営者がパワーマネジメントならば、中間管理職もパワーマネジメントを真似してしまうわけです。
そもそも、僕らは研修をやりたくてT-CXを立ち上げたんじゃないんですよ。経営者の方に「このまま行って、あなたがリタイアする時に『幸せな経営だったな』って思えるんですか?」と問いたいのです。僕らの仕事の本質は会社の風土・文化を変えてもらうことであって、それはマネジメントの変容の旅そのものなんです。
そうして風土が変わり、社員がイキイキとすることで、人が集まる、つまり採用できる会社になり、そこで働く人がここで続けたいと言う会社になることが、大きなエネルギーの束になって、会社の幸せな継続に繋がっていくんじゃないかなって、私は信じています。
入り口は「セミナーをやります」と見えているんですけど、実は経営者の方の「心の変容」をサポートをすることが僕らのミッションだと思っているんですね。
ーーなるほど。前島さまご自身、経営者として気づいて変わっていったからこそ、同じような立場の方に受けてほしいんですね。
前島:そうですね。
ーー最後の質問になるんですが、今回のテーマである「若手の成長機会」を作るために、特にベンチャー・スタートアップを含む中小企業では、どんなことに気をつけるべきか、前島さまのご意見をおうかがいしたいです。
前島:そうですね。一番大事なのは、信頼関係をどう再構築するかかなと思っています。だいたいうまく仕組みやら制度が回らない、社長の想いが伝わらない会社は、信頼関係が崩れているところが多いんですね。
例えば社員から見て、経営者に対して「どうせ話を聞いてくれないじゃないですか」「言っても否定されるじゃないですか」とか、「がんばっても評価してくれないから、こんなのやったってムダじゃないですか」という不信感がある。
実はその逆もあって、経営者だって人間なので社員への不信感があります。「どうせお前らに任せたってやらねえだろ。やれねえじゃねえか」とか、「お前ら、どうせ経営のことなんか人ごとだろ」という感じです。
相互不信になっている状態で、「仕組みだ、制度だ、デジタル化だ」なんていうのは夢のまた夢ですね。その逆の状態が作れたら、会社は変わる。つまり、社員を信じて任せて、そして感謝して認めて、褒めてあげるようなことも必要でしょう。
それはまず経営者がやらないと、社員から進んで経営者を信頼し続けてくれるなんてあり得ないんですよね。だから経営者が覚悟して、社員の可能性を信じて、社員との信頼関係をもう一度構築するというスタンスに立てるかどうか。ここがポイントかなと思っております。
ーーなるほど。経営者自身が気づいて、信頼関係をまた再構築することが、あらゆる施策のスタートなんですね。貴重なお話をありがとうございました。
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