2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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中川英高氏(以下、中川):小野澤さんには女性経営者という文脈でうかがいたいと思っておりまして。
日本では女性経営者は不自然なぐらい少なく、当社もそれを増やすお手伝いをしたいなと思っているんですが。小野澤さんは女性特有のご苦労されたこと、逆に得したことがありますか。あと女性経営者を増やすために、個人が大事にするべきことが何かありますでしょうか。
小野澤香澄氏(以下、小野澤):得したことは、「カスタマーの感覚がわかる業界にいると得する」はあると思いました。今の業界だと男女両方の感覚がわからないと商売が成り立たないので、そういう意味だと得する業界という位置づけになるだろうなと。得する業界はほかにもあると思います。
あとは愛嬌とかもあるんじゃないかな(笑)。どちらかというとあまり男女で分けて考えないタイプなので、そこはフラットです。苦労したことは、子どもを産むこと。やはりその時期のキャリアが1回ガラッとと変わるというのは本当にそのとおりだと思うので。
今はちょっと時代が変わっているといいなとは思うんですが、10年前だとやはり女性が活躍しづらい実態はあっただろうなと。「下駄を履かせる」という言葉がありますが、日本でもある程度は履かせた上で「やっぱりできるじゃん」というのを作っていくのがいいかなと思っています。
アメリカの会社で働いてる時に、日本と比較すると本当に男女関係なく仕事をしていました。その時、こういう時代は日本にも必ずくるという感覚があって、働く女性がそういう(男女関係なく仕事をする)世界を1回見てみることは大切だと思います。
女性は「私がここで出ちゃダメなんじゃないか」「遠慮しろ」というのを、自分が自分に課したりすると思うんですよね。そういう社会環境の中で育ってきたリアリティがある中で、自分の感覚を変えるためにも、違う世界を1回見てみる価値はあると思います。
中川:なるほど、ありがとうございます。経営者になりたかったかどうかは三者三様ですね。上田さんはなりたいと思っていて、野本さんは手段として、小野澤さんが本当に結果としてという。本当にいろいろな背景があるなと思いました。
中川:じゃあ次のパートに移っていければと思います。みなさまは仕事上のパフォーマンスが高いからこそ、チャンスをつかまれてきたのだと思います。どのようにしてそのパフォーマンスを発揮されているのか、うかがいたいと思います。
上田さんから、仕事上で大切にしている考え方や価値観はどういったものか、その考え方や価値観はどのようにして身についたのかという点を、うかがえますでしょうか。
上田顕氏(以下、上田):ちょっと抽象的になってしまうんですけど、この何年もずっと考えているのは、やはりゴール設定です。あとは行動として、これも月並みですけど「前向き」「ポジティブ」というのがあります。
実はうちの会社でも今、全社員の行動指針の1つにビジョンとして「前向き」を入れています。それを人事評価の仕組みに取り込んでいて、半期に1回全員に採点させています。自己申告と上長とかがあって。
ゴール設定を見失わず、前向きなドライバーさえ持っていれば、どんな社員やスタッフでもその組織はイケるというチームワーク的な価値観を持っています。昔からぼわーっと思っていたんですけど、野球の「本当に優勝するぞ」と決めて動く時のモードに近いです。
幸い私も、野球で楽天が日本一になった経験が1回あるんですけど。あの年はそういうモードがしっかり作り上げられていて、経営で言うとゴール設定がしっかりできていた。「絶対黒字化するぞ」「絶対上場するぞ」「絶対抜け出すぞ」と同じで、やはり経営はトップや経営陣がしっかりとゴールを提示し、ひたすら進んでいくという。
どう軍隊を動かしていくかというようなもので、私は非常に好きです。当然ストレスには感じるかもしれないんですけど、そこが好きと思えるかどうかは1つのポイントだと思います。今でも気をつけて、意識してやってるところですかね。
中川:ゴール設定やポジティブさを身につける時に、人や本など何か影響を受けたものはあるんですか?
上田:ゴール設定について言うと、どこの本にもよく書いてある。
中川:ドラッカーとか。
上田:そうですね、ドラッカーも書いてますし(笑)。コンサルティングの世界にいくとそういう話がよく出る。楽天で一緒にやってた球団社長、立花(陽三)さんやオーナーの三木谷(浩史)さんもそうですけど、「これをやると決めたらやるんだ」みたいなゴール設定力。
そこのゴール設定が甘いと、当然事業計画も甘くなる。うちの会社もそうですけど、例えばコロナ中に「コロナを抜け出そう」というゴール設定をしても、たぶんコロナは抜け出せないんですよ。いくら投資銀行やコンサルの方がガリガリ分析してやっても、もうちょっと上を目指すとか、そのさじ加減は最後は経営者がコミットして判断しなきゃいけない。
参考になったのはやはり楽天の時の礎。その後、ポップコーンの時には、アドバンテッジパートナーズの投資先のいろいろな社長がいらっしゃって、みなさんに話を聞くとだいたい同じことをおっしゃっていました。そのたびに「やっぱりトップレベルの経営者は、こういうことをやっているんだな」と答え合わせをしていました。
中川:なるほど、ありがとうございます。
中川:では小野澤さんにうかがいたいと思います。同じく仕事上で大切にしている考え方や価値観と、それをどのようにして身につけられたかという点。いかがですかね。
小野澤:大切にしている価値観は、座右の銘なんですけど「適材適所」かなと思っております。私が得意なところと相手が得意なところはぜんぜん違うし、それをどう組み合わせられるかが自分の関心ポイントにあります。そこを見間違わないように「本質的に相手が大切にしているものは何か」をよく見ようとする癖はあると思います。
あとは本当に個人のパフォーマンスで言うと、「真似る」のはけっこうやります。ほかの人がやっていていいなと思ったらもう遠慮なく、笑顔で真似るっていう(笑)。「恥ずかしい」と一切思わないでやります(笑)。
中川:(笑)。その適材適所の考え方や、相手が大切にしているものを見ようとするのは、何か背景があったんですかね。
小野澤:もともと幼い頃にちょっと海外にいたことがあって。40年前って、欧米人の中ではアジア人は価値観も違うし、あまり受け入れてもらえない感覚がありました。ぜんぜん顔が違う、見た目も違う、しゃべる言葉も違う、考え方も違う人がなんとか一緒にやっていくのは生活する上で大切だと思ったんですよね。それがずっとコアとして残っていて、今ここにたどり着いている気がします。
みなさんが経営者だったり何かお仕事をされる時、「そのコアは何なんだろう」と考えるのはいい機会だと思います。もうすでにここにいらっしゃる方は考えられている気もしますけど(笑)。
中川:なるほど、「相手のコアが何か」も見ようとすることなんですかね。わかりました、ありがとうございます。
中川:次に野本さんにうかがいたいと思います。同じく仕事上で大切にしている価値観と、どう身につけたか。
野本周作氏(以下、野本):ちょっと違うかもしれないですけど、僕の……特に戦略や施策を考える上で大切にしている価値観でもいいですか。
中川:もちろんです。
野本:性悪説や性善説ってあるじゃないですか。善と悪のところを「弱」に置き換えた「性弱説」、これって……今、国際大学の学長をされてるのかな。昔一橋(大学)にいらっしゃった伊丹(敬之)先生が書かれてる本で僕は出会ったんですけど、「人は性善なれど弱し」という考え方です。
「人は基本的に怠惰だ」「怠け者だ」と性悪説で考えてガッチガチに規則で縛るのではなく、「基本的にみんなちゃんと話せばわかってくれる」「ワクワク働いてくれるんだから」という性善説でもなくて。がんばりたい気持ちはみんなあるし、良くしたいと思ってはいるんだけど、そんなに強くないので長く続かない。
それは気持ちの弱さだけじゃなくて、例えば「家庭でトラブルがあって、そっちのほうに心を持っていかれて」ということも多い。弱さをどうやって見える化して補完し、すぐに助けてあげるか。「弱いことを前提としたシステムを作っていくといいよね」ということが書いてあるんです。
ちょうど僕が28歳の後半から29歳ぐらいの時、「ザ・経営企画」にいって社長の原稿書きをし始めた頃、「経営って何だ」とめっちゃ悩んだんです。本を何冊も読んだんですけど、そこで(性弱説に)出会ったんですよね。(僕自身も)1兆7,000億円の会社の仕組みを作るにはやはり相当悩んだので、いろいろ試行錯誤していました。
そのあとコンサルに行って、自分で事業をやるようになり、サービス・小売・外食、この3次産業は「右向け右」みたいな業界でもない。そうした時にこの性弱説という考え方でいろいろなものを整備したり、「そうだよね、やりきれないよね。じゃあここらへんでちょっと何かカンフル剤を」……ニンジンなのか鞭なのか、それは時と場合によってですけど(笑)、そういうのをちゃんと整えておく。
僕も仕事のよくできる部下から「ほかのみんながこういうことをできてないから、これじゃダメだ」と言われることがあります。そうすると僕は「いや、みんながお前みたいにできる人だったら、この会社はこんな大変なことになってないから」と言うんですけど(笑)。「みんなができていないことをどうやってサポートしていくかを作るのが、お前の仕事じゃん」と、歴代の部下たちはみんな僕から同じことを言われてる。
だからその性弱説という考え方に出会ったのは、僕のキャリア、ビジネスのベースになっています。仕組みを作ることが僕の仕事なので、実際にもそうやってますね。
中川:ありがとうございます。いや、非常に参考になりますね。次のパートに移っていきたいと思います。
中川:次に「パフォーマンスを発揮するために重要だと思うスキル」についてうかがいたいと思います。
みなさま、経営者として非常に高いパフォーマンスを発揮されていると思うんですが、そのために重要だと思うスキルを1つ挙げて、それをどのように獲得されたかを教えていただけますでしょうか。小野澤さんからお願いできればと……順番変えましょうかね(笑)。
小野澤:大丈夫です(笑)。1つなんですね。今「1つって、指定されたわ」と思って(笑)。
中川:いや、複数でもいいですよ。
小野澤:いえいえ、1つで。自分ができてるかどうかは横に置いて、やはり「人間力」じゃないかと思います。ハードシングス(困難な局面)があったりするので、そこをどうやって一緒に乗り越えていけるかを……自分ができてるかどうかは別として、最終的には人間力かなと思いますね。
どう鍛えているかというと、できるだけ多くの違う価値観の人と話すことを繰り返してきました。正直うまくいかないことのほうが多かったし、特にアメリカにいた時に「越えられない壁はあるんだな」と意識できたことも大きかったです。
ずっと自分自身の中で、価値観の多様性が重要であると思って生活してきて、その相手との壁を越えられないのは自分の責任だと、自分自身を責めていた時期もあったんです。でも、どうしても越えられない壁、生まれてからここまで育てられた思いの壁はあるんだなと思った時に、ちょっと気持ちが楽になったのもあります。だから「価値観の違う人と話す」がポイントかなと思っております。
中川:なるほど、ありがとうございます。
中川:小野澤さんがこの中で唯一コンサルファームのご経験がないと思うんですけれども、経営者にコンサル経験が必要か。実際の当事者としてどう思われますか?
小野澤:もし私の4歳の息子が「いつか経営者になりたい」と言ったら「一番最初にコンサル行きな」と言う気がします(笑)。
中川:なるほど(笑)。
小野澤:そう言う気がしますが、それがないとダメかというと(それだけではない)。コンサルで、すごく優秀な方と一緒にビジョンを持って進める人間力があるかどうかも……大切なんじゃないかなと思っています。
中川:本当に各自、武器が違うんだなとすごく感じますね。
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