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CxOキャリアの歩み方 ~プロ経営者・CxOの思考理論・行動理論~(全6記事)

「経営者」のキャリアはあくまでも手段の1つ CXO3名が語る、経営者になると意識したタイミング

プロフェッショナル人材やビジネスリーダーに特化したハイクラス人材の転職を支援するキャリアインキュベーション株式会社主催で行われたオンラインセミナー「CxOキャリアの歩み方 ~プロ経営者・CxOの思考理論・行動理論~」の模様をお届けします。 株式会社withCEO小野澤香澄氏、株式会社エー・ピーホールディングスCEO 野本周作氏、株式会社セラヴィリゾート泉郷CTO上田顕氏の3名が登壇し、経営者やCxOキャリアの魅力や必要な考え方について語られました。

5つの質問で紐解く、プロ経営者・CxOの考え方

中川英高氏(以下、中川):本日のタイトルの副題が「プロ経営者・CxOの思考理論・行動理論」となっています。その思考理論・行動理論をどのように定義しているかをまずお話しさせていただきます。

思考理論とは、キャリア選択における考え方や価値観と、仕事上パフォーマンスを発揮するための考え方や価値観を表しています。行動理論とは、仕事上パフォーマンスを発揮する上で重要なスキルやメンタリティを表しています。

5つの質問から、みなさまの思考理論や行動理論をひもといていきたいと思います。ではまずは登壇者のみなさまに、現職の会社紹介と自己紹介をお願いいたします。小野澤さんからお願いできますでしょうか。

小野澤香澄氏(以下、小野澤):株式会社withの小野澤と申します。去年の8月からwithにジョインしました。with自体は2012年からマッチングアプリの運営をしています。「マッチングアプリとは何ぞや」というと、みなさん聞いたことはあるかなと思うんですけれども。まずはご登録いただいて、より多くの方と会いたいなと思ったら課金をしていただくというtoC向けのアプリサービスです。よろしくお願いいたします。

中川:では続いて、野本さんもお願いいたします。

野本周作氏(以下、野本):エー・ピーホールディングスCEOの野本周作と申します。どうぞよろしくお願いします。よく塚田牧場と言われるんですけど(笑)、塚田農場という居酒屋を中心とした外食企業です。国内外でだいたい180店舗あるんですが、そのうち約半分弱が塚田農場で、残り半分がその他のブランドとなっております。

私は、約4年半前に執行役員として(会社に)入って、最初は海外や新規事業を担当していました。それがコロナと同時にCOOになり、去年の11月15日付で代表取締役社長CEOになりました。今日は何の話ができるかまだよくわかっていませんけれど、お話ししたいと思います(笑)。よろしくお願いします。

中川:(笑)。お願いいたします。では上田さん、お願いできますでしょうか。

上田顕氏(以下、上田):はじめまして、上田顕と申します。私は今セラヴィリゾート泉郷でCTOという肩書でやっております。弊社は日本企業成長投資(NIC)という投資ファンドの投資先でもあります。CTOのTというと普通は「テクノロジー」のTですが、そうではなく「トランスフォーメーション」のT。約1年半前から事業変革の責任者としてやっております。

会社の事業は創業50年ちょいで、主にリゾートホテルの経営をやっています。付随して会員権事業や不動産、八ヶ岳で別荘事業などもやっております。あとは、今「Wan's Resort わんわんパラダイス」という、ワンちゃんと一緒に泊まれるホテル事業もやっております。こちらはおかげさまで日本で今一番多くの部屋数を持っています。

私もちょっとどんな感じになるかわからないんですが、よろしくお願いいたします(笑)。

中川:(笑)。ありがとうございます。

28歳から5年間、松下電工社長の原稿書きをやることに

中川:それでは今までのキャリアについて、踏み込んでお話をうかがいたいと思います。

野本さんから、これまでのご経験を大学卒業からお話しいただければと思います。また経営者になりたいと意向を持ってキャリアを作られたのか、そういった意向はなく結果として経営者になられたのかも、お話しいただけますでしょうか。

野本:何分ぐらいでしたっけ?

中川:5分ぐらいを目安に。

野本:わかりました、短めにいきます。僕は(今の会社で)5社目です。先週45歳になりました。留年してるので23歳から働き始めて、22年経ちます。最初は松下電工の経営企画に10年いました。もうパナソニックに三洋電機さんと一緒に吸収合併されちゃった会社なんですけど。もともと(大学では)理工学部の管理工学科という経営工学を学ぶところだったので、そこから学校推薦で就職しました。

松下電工では経営企画にマーケットリサーチの部門があり、そこで5年間。そのあと本当だったら商品企画などの事業部に行かせてもらえるんですけど。ひょんなことから、28歳から5年間、社長の原稿書きをやることになりました。

当時親子上場していたので、約1兆7,000億円の会社の社長の原稿や方針、中期計画策定、いわゆる経営企画の仕事をやっている中で、パナソニックに三洋電機さんと一緒に買収をされることが決まって、自分の愛する会社をバラバラにするプロジェクトで「もういいや、辞めよう」と転職をした2社目が、戦略コンサルのローランド・ベルガーですね。

ローランド・ベルガーには2年半ぐらいいました。コンサルタントとして入って、1年後シニアコンサルタントになりました。コンサル自体も非常に刺激的で、ハードワークだったんですけど楽しく働いていました。ただ、やはり33歳で入ったので、まあ大変で。でも実は40歳までには1回PLを回してみたいなという気持ちがもともとありまして。

いろいろな人に「何かいい話があったら」と話していたら「結婚式以外のビジネスを伸ばしたいから、そこの責任者やらないか」という話をいただいてですね。結婚式場の会社なんですけど、それがポジティブドリームパーソンズという、ちょっとびっくりするような社名なんです(笑)。そこに統括ゼネラルマネージャーとして入ったのが、3社目です。

コロナ禍で全店休業している最中に、取締役に就任

野本:そこでやったのが結婚式以外の5つの事業。一般宴会の法人営業、フラワー、レストラン、あとなぜか韓国事業と、高級ホテル向けのウエディングセールスコンサルティングというBtoB。5つの事業の統括じゃなく事業部長を兼務するというひどい目にあいまして(笑)。ビジネスモデルが違う5つの事業をバーッとやり尽くし、3年で40億から55億ぐらいまで(売上を)伸ばせました。

そこで「もっとチャレンジングなことはないかな」といろいろなお話を聞いていたら、PEファンドさんが投資をされたデコルテ・ホールディングスという会社がありまして。去年ぐらいに上場された、結婚式場の前撮り専門フォトウエディングの会社の経営企画とマーケティングの責任者として入ることになりました。別に僕はウエディングが好きなわけでもないんですけど(笑)。

1年半ぐらい単身赴任だったのですが、たまたま友だちからうちの会社の代表(今は会長)を紹介されました。「同時に5つの事業部長をやっていました」という話をしたらすごく刺さって「うちに来ないか」となり、東京に戻りたいなと思っていたこともあり、2018年の8月にエー・ピーに入りました。

最初は、手を広げすぎちゃった海外事業や、日本の新規事業が大赤字だったので、そこの赤字をどうにかすること。中国の撤退から始まり、いろいろなことを全部黒字化し、だいたい一段落したからちょっと楽できるなと思っていたら……。

今度は「ボロボロになった塚田農場をなんとかしろ」と言われ、なんとかしたら今度はコロナがやってきて。コロナ禍で全店休業している最中に取締役になり、COOになり、まったくうれしくない昇進をした上で、ずっとなんとかしてきました(笑)。

「経営者」はあくまでも手段の1つ

野本:入って4年半たちますが、最初の年は赤字だったんですね。次の年、塚田(農場)をがんばって上げていって黒字にしたのに、コロナ1年目でまた赤字になって。去年協力金などでがんばってまた黒字にして。4年間で2回黒字転換をしてるという、ひどい目にあってるんです。

そんなこんなでコロナの出口も見えてきたので「じゃあ野本、社長をやろう」と、創業オーナーのうちの元社長が会長になり、僕がCEOになったのが11月15日です。

ようやく12月には久々にいい感じの売上が上がり、(コロナが)5類になるのがいいのかどうかはあるんですけど、第8波の終わりがようやく見えてきました。3回目の黒字転換を早く成し遂げたいなと思っているところです。

「経営者になりたいという意向があったか」というと、あんまり明確に意識してなかったんですよね。もともとうちが商売をやっていたのもあって。僕は一応三代目になる予定だったんですけど、大学時代に親父が他界してしまい、いきなりその道がパーンとなくなっちゃった。別に経営者になりたいと意識したことはなかったけれど、たぶん意識のどこかにはあったんだと思います。

やはり日本の国力の伸び幅は、僕が生きてきた「サービス・小売・外食」という分野だと思っています。その国力を上げるために何をしたらいいかなと考えた時に、まあ経営者になるのがいいなと思った。

経営者というのはあくまでも手段の1つだと思っていて、どちらかというと「日本の国力を上げるために、いいサービス・小売・外食のポテンシャルを持っている企業をもっと花開かせたい」というほうが強いかな……と美しい感じで次に(笑)。

中川:(笑)。ありがとうございます、あくまで手段として経営者になられたということですね。では次に上田さん、お願いできればと思います。キャリアの変遷と、経営者になりたい意向があったかどうか、うかがえればと思います。

プロ野球にファイナンスが必要な理由

上田:プロフィールにもあったと思うんですけど、私はまず最初にSMBC、三井住友銀行に入りまして、そこに3年間いました。本部や営業など、実はいろいろとやらせてもらって、そのあとアクセンチュアの戦略コンサルに入りました。そこが1年半ぐらいです。

3社目が、プロ野球チームの楽天イーグルスです。ビズリーチの南(壮一郎)さんがいらっしゃったので有名だと思うんですけど、よく「珍しいね」と言われます。ここでは、最初は球団ビジネスのマーケティングで入ってたんですけど、途中から珍しいことに、選手の(マネジメントの)ほうに移りました。野球に詳しくない方だとつまらない話になるんですけど(笑)。

プロ野球ではとにかくチームを強くすることがミッション、そのためにけっこうお金を使うので、実はファイナンスが必要なんです。良い選手を取って、育てて、どう強くしていくかという、全般のチームマネジメントを任せていただきました。その過程でわかったんですが、実はデジタル施策がすごく入ってきてる産業で。プロ野球には毎日とにかくデータがたくさんあるので、いろいろとデータ分析をやっていました。

実は前々から私は経営者をやりたいなと思っていたんです。そんな時に、日本ポップコーン株式会社のHillValley(ヒルバレー)というポップコーン屋の投資案件の話がきました。ちょっと野本さんのエー・ピーと混乱しそうですが、PEファンドのAP(アドバンテッジパートナーズ)からたまたまお話をいただいて。

最初はCOOとして入りました。ただポップコーンがピークアウトしブームが去った時期で、正直けっこうヤバい状態でジョインしまして。そこで3ヶ月ぐらいいろいろなことをしていたら、すぐに社長になりました。

実は2年続けて1年で社長が替わっていった状況で。ファンドの投資先なので、正直言うと最悪のケースはちゃんと損切りもしなきゃいけない世界。そこを一応なんとか抜け出すことができ、業績も良くなりました。

経営に興味を持ったのは、野球の世界でのチームマネジメントから

上田:3年半ぐらい経ち、ちょうど株主変更した任期満了のタイミングで一度抜けさせていただき、今はCTOという立場で、より幅広い領域の改革をやっています。社長ではないので、今日いらっしゃるお二人とは違って最終責任者じゃない。そこはやはり、責任感がぜんぜん違うなと思っています。

先ほどお話ししたように、私の場合はけっこう早い頃から経営者をやりたいなと思っていて、今もポジション的には経営が非常におもしろいです。投資ファンドの方たちは優秀な方が非常に多くて、どっちかというと私は戦場でガリガリ戦うほうが好きなので、今は現場の経営を授かることに楽しみを覚えています。

中川:なるほど、ありがとうございます。経営者になりたいと思うようになったきっかけや理由はあるんですか?

上田:私はもともと野球好きだったのもあるんですけど、小さい頃から監督や「チームをどうマネジメントするか」に本当に興味があって。実は中学の時に(ピーター・)ドラッカーの本を読んでいました。

中川:早いですね(笑)。

上田:当時は経営というよりは「どうやってチームが強くなるのかな」というちょっと変な観点で。自分が野球チームをやっていた経験から、なおさらチームマネジメントには特化してきています。これは、やはり経営の世界でも本当に大事だと思っています。ずっとそこ(チームマネジメント)には興味があって、今も続いている感じですね。

中川:野球の世界でのチームマネジメントがきっかけで、ビジネス世界のチームマネジメントもやりたいと思うようになった感じですね。

上田:やはり一般の世界とスポーツ界の毛色はまったく違う。ただマネジメントという観点だと実は一緒です。スポーツの場合はゴール設定がめちゃくちゃ明確で、嫌でも毎日(結果が)晒される産業。

世の中、黒字か赤字かなんて上場企業ですらあんまりわからないですけど、野球の場合は勝った負けたが毎日報道され、優勝しないと叩かれまくり。そういう違いはあれど、ゴール設定してひたすらそれに向かって全社を挙げて取り組んでいく、そのプロセスが楽しめるかどうかは同じかなと。

NPOは人が変わると変わってしまうという課題

中川:わかりました、ありがとうございます。では小野澤さん、キャリアの変遷、経営者になりたい意向があったかどうか、そのあたりはいかがでしょうか。

小野澤:今日いらっしゃっている方、見に来られてる方は、経営者になりたいと思われてる方が多いんですかね?

中川:おそらく、目指しているとか、考えている方が多いと思います。

小野澤:なるほどです、そうするとちょっとお役に立てない感じはあるんですけれども(笑)。今なぜ私がここにいるのかのお話になるんですが、親がNPOをやっていてビジネス畑の人ではないので、もともと「ビジネスはすごいな」と思っていました。

個人的にNPOはヘッドが変わるとやはり止まっちゃう感じがあります。やりたいことの意思の強さによっては残されていくんですが、人が変わると変わってしまう。ビジネスは儲かっていれば誰かが引き継いで、ずっと伸ばしてくれる。その永続的な感じが「ビジネスはやっぱりいいな」と思っていました。でも「社長になりたいか」と言うと、特にその意識はないまま生きていた結果、なぜかここにいるという人間でございます。

キャリアもすっごく覚えやすく「リクルート、グリー、ポケモン、マッチングアプリ」というキワモノの端っこみたいな……。キワモノって言ったらみなさんに失礼ですけど(笑)。楽しそうなところにずっといました。

マッチングアプリはずっとやりたいなと思っていて、実はリクルートにいた時の新規事業の提案コンペで、良い仲間と一緒に提案させていただける機会があったんです。テーマが「結婚」や「婚活」で、そこでマッチングアプリを出したのが今から十数年前のことです。

そこから1回ちょっと海外に出たくて、ポケモンの現地子会社の現地社員として、7年間くらい働かせていただきました。その時はアメリカでポケモングッズをECでいかに売るか、というテーマで現地の人と仕事をしていました。「Tシャツの一番大きいサイズは、4XLにするべきか、3XLにするべきか」みたいな話をする仕事をしていました(笑)。

今まで働いてきた環境とは違う働く価値観をもった方たちとお仕事をさせていただく機会でしたので、(自分の価値観にとらわれず)頭をオープンに開くような経験をさせていただきました。そのあと、以前から戻りたいと思っていたマッチングサービス業界のTinderで日本と台湾のカントリーマネージャーを2年弱やらせていただきました。そしてwithさんとご縁があって今、このお仕事に就いております。

ご質問のお答えで言うと、まったく(経営者を)目指してはなく、かつコンサルの経験もなくてごめんなさい(笑)。ここにいるみなさんとは並べる世界にいないので、すみませんっていう感じでございます(笑)。

中川:いやいや(笑)。「いろいろなバックグラウンドの方が経営者になり得るんですよ」ということをお伝えしたいなと思ってお願いしている次第でございます。

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