2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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御立尚資氏(以下、御立):他のお二人からも一言ずついただいて、そろそろ会場のみなさんからクエスチョンもインプットしていただければと思います。じゃあ島田さん、ぜひ言い残したこと、ならびにこれから総合的にこんなことを見ていくべきだということを。
島田太郎氏(以下、島田):そうですね。言いたいことは山のようにありますが、せっかく今日来たからには、あすか会議でみなさんに何かをギブしなければならないという責任感のもとに言いますと、「違和感のあるもの、自分の嫌いなものをよく調査せよ」と、一言だけ申し上げたいと思います。
御立:地政学も含めてですね。
神保:そうですね。地政学ということで(笑)。今の世界では、経済発展と自由がパラレルに進行しないんだと思います。おそらく、みなさんがこれから世界でビジネスをしていく市場は、自由ではない社会の中でどのようにビジネスを展開するのかという課題に直面するんだと思います。
したがって、おそらくビジネスを展開する上でも、政治地政学が依然として重要な時代なのではないかなと思っているところです。
御立:ありがとうございます。
御立:いろんな質問が来ています。さすがですね。エネルギーについての質問がいくつかあります。
特に日本におけるエネルギーの現状を考えると、正直に言うと当面は石炭火力も回さないといけない。我々は停電のリスクを取ることは受け入れられない。それこそ、ソーシャルアクセプタンス(社会的受容)はすごく低い国だと考えられている。
これについて、武田さんと島田さんにおうかがいしましょうか。短期の話と長期で再生エネルギーにくると、エネルギーはたぶん両立せざるを得ないんですが、今我々が考えるべきエネルギーに対するスタンスについて、需要サイドと供給サイドでどうやるか。どの部分のお話でもけっこうです。
特に経済のお立場から、それからテクノロジーを俯瞰的に見ていらっしゃるお立場から、エネルギーに対して我々が考えておくべきことを、それぞれ一言ずついただければと思います。
武田洋子氏(以下、武田):今お話にも出ましたが、短期と中長期の戦略をしっかり持つことだと思います。足元ではドイツが余儀なくされていると思いますが、まずはエネルギーの安定供給をどう確保するか。日本も含めて、それが各国にとって非常に重要な課題になっています。
しかし、実際に欧州がEUとして掲げているように、再生可能エネルギーへの投資、それからカーボンニュートラルに向けた動きはむしろ加速すると思うんですね。
なので、長期のビジョンと短期のエネルギーの安全保障、安定供給についてしっかり戦略を持っておくことだと思います。特に中長期に向けてのグランドデザインと、それを実現するための工程表は日本として早急に描いていく必要があると思います。
御立:新しい現状に即した工定表の書き換えも含めてですね。
武田:そうですね。
御立:島田さんもお願いします。
島田:はい。短期的には、節電するしかないですね。
御立:そうですね。需要サイドをコントロールする。
島田:はっきり言いまして、短期的にはそれしかない。長期的には、これ以上は私の立場では申し上げられませんが、いろいろなことをしなければならないと思います。
御立:私が勝手に言うと、原発も含めてそれはあるだろうと思います。
御立:神保さん、このエネルギーが、実は地政学を含むずっと大きい要因であり続けたわけですね。
そういう意味において、例えばアメリカは、少なくとも自分だけはエネルギー需給ができる。ヨーロッパはロシアに依存している。中国も含め、我々はみんな中東に依存している。これが、これから何か大きな影響を与える部分はあるんでしょうか。
神保:そのとおりだと思います。これは70年代のオイルショックからの議論です。当時は、輸入元の多角化・多元化を進めて脆弱性を分散するのが重要だったんですが、アメリカなんかはシェールも含めて、依存率自体を減らすことができる。これはやはり、エネルギー産大国だからこそできる転換だと思うんですね。
日本のような国はどうしても海外に依存します。けれども1つのエネルギー源ではなくて、多様なエネルギー源をより代替可能なかたちでバリューを高めていくことは、非常に重要です。先ほど申し上げた原子力は、おそらくその中での重要なコンポーネントになると思います。
島田:私は原子力とは言っていないんですが、はっきり言って自然エネルギーでできることが一番いいです。これは限界費用がものすごく高くなっていきますので、初期投資は大変ですが、だからみんなでもっとがんばらないといけない。これは、僕の嫌いな地政学の問題を極めて良くします。
だからやはりイノベーションを含めて、みんなもっとグリーンエネルギーに対して真剣に取り組まなければならない。それは、データのプラットフォームも含めてです。
御立:レジリエンスに近い話とロバストネス(堅固な仕組み)、それから何かあった時に耐えられる仕組み。これを、安全保障も経済も、いろんなところで作らないといけない。
その1つがエネルギーで、そこで何をやっていくかを考えていかないと、我々は単に安全保障上のリスクのためだけではなくて、言いたいことも言えない、スタンスも取れない国になってしまうんです。
島田:そうですよね。その中でも、エネルギーが一番クリティカルかと思います。そのせいで、第2次世界大戦では日本はインドネシアまで行くことになっているわけですから、そのことを忘れてはならない。
御立:もう1つ、これもいい質問です。今回の話も含めて、冷戦時代のように世界はグローバリゼーションを諦めざるを得ないのか。もう少し端的な質問としては、そこにかけるESG、SDGs。クライメートチェンジ(気候変動)を考えると、サプライチェーンを含めた効率化はもう無理なのか。
新しい中で、どうやって競争力を持ったサプライチェーンを作っていくのかというご質問が来ています。みなさんそれぞれのお立場で、何か一言ずつ。武田さん、まずグローバル化が一定程度以上進まなくなるのかどうか。そうなった場合に、企業経済としてはどう考えていくべきだとお考えですか?
武田:貿易や海外とのやり取りなしの暮らしは、もう成り立ちません。以前以上に、経済安全保障等を意識した効率性重視からの転換は余儀なくされるのだと思います。
ハーバード大学の(ダニ・)ロドリック教授という方が「グローバリゼーションの棺桶に釘を刺した」と、おっしゃっています。グローバリゼーションが進む中で、効率性だけではないものに価値を置く。つまり、レジリエンスでサステナブルな社会をより追求していく時代になったと考えています。
御立:実は今回の話がある前に、2000年ぐらいから世界のGDPの伸びと貿易量の伸びはだんだんマッチしなくなってきていたんですよね。中国を中心に地産地消型になってるので、貿易は実は増えなくなっていった。
今後、効率と安全保障と、それから単純な地産地消でもない中でどうやって組み替えるか。おそらく簡単な答えはないんですが、本当はそこに巨大なビジネスチャンスもあるはずだなと思っています。
御立:神保さんは今の話をどう思われますか? 本当に新冷戦で別れてしまうんですかね。
神保:2020年4月、中国の中央財経委員会での習近平の発言は「中国はグローバリゼーションを進めたい」。なぜかというと、相互依存が進み、中国により依存する国が増える。その依存を使って、中国は反撃力を形成すると言ったんですね。
つまりこの考え方によると、相互依存とはお互いのパイを増やしてみんながウェルフェアを増やすものではなくて、中国自身が国益にしたがって、この反撃力を形成するツールになるという表現です。
これを最近「相互依存の武器化(The weaponization of interdependence)」と呼んでいるんですね。この考え方をとられてしまうと、中国は今、日本企業が1万4,000社あってほとんど黒字で、投資リターン率は17パーセントぐらいですから、日本にとってはすごく魅力的な市場です。そこに潜むリスクを考えて中国市場を見ざるを得ないわけですね。
だけど、ここから全部切り離すことはもうできない。だとすると、もし何かがあっても代替できる、あるいはもしWeaponizationされても日本からも反撃できる考え方をグローバリゼーションの中に仕込んでいくことが、非常に重要だと思います。
御立:経済安全保障の政策でもあり、企業としてもその両面を見ないといけない。
神保:そのとおりです。
御立:でも、金融的に言ってしまえば、17パーセントのうちリスクファクターが高くなっているんだから、それは実質何パーセントですか? それへの備えはどうするんですか? という話だと理解しました。
神保:そのとおりです。
御立:同じ話で、島田さん。企業の経営者として、特に東芝のような巨大企業になって国家との関係も当然あるわけですから、ある程度自分たちを縛りながらやってきたサプライチェーンだったと思うんです。
さらに「これからこういうことに気をつけてやっていこう」、あるいは「これが自分たちの戦略としては大事だと思っている」とか、何かサプライチェーンとグローバル化についてコメントがあればお願いします。
島田:そうですね。今のサプライチェーンの議論は、実際に問題が非常に歪んでいるんですが、これは地政学のせいです。ポリティカルにすごくプレッシャーがかかっているので、そういう意味では本来やりたいこととはかけ離れてる状態になると思いますね。
企業としては対応せざるを得ないんですが。それを超えた先に何があるのかを我々は見つめて、それに対して着実にそれを仕込んでいくことが一番大切だと僕は思ってます。「それ」についての内容は申し上げることはできませんが、いろんな手を打っています。
御立:ある意味、経済合理性だけではないところも含めて、受け入れざるを得ないというね。
島田:会社は社会の公器ですから。社会的アクセプタンスや、「東芝っていい会社だな」「東芝の製品だったら買ってあげよう」と思われるような、いわゆる非財務系の行動をとらなければならない。
これは今や当たり前のことだと思いますし、我々は日本人としては最も得意な国だと思っていますので、その価値を前面に出せるチャンスだと思っています。
御立:ありがとうございます。いろんな質問をいただいています。私の不手際で申し訳ないですが、すべての質問をお受けできないので、今後のセッションでもお話しになる方もいらっしゃいますし、ぜひみなさん同士でも議論していただきたいと思います。
その中で出てきている質問を拝見しますと、「今の話はけっこうつながっているんだけど、自分のビジネスとか自分のこととはまだつながりにくいんだよね」とあります。なんだかマクロな話であって、それが自分にとってどういう意味を持つか、どうやったらもっと実感を持って感じられるか? と、質問してくださった方がいます。
これは我々自身も問うていくわけですが、最初に申し上げたみたいにいろんな見方はあると思います。スタートポイントは、こういう大きなトレンドが組み合わさっていった時に「世の中は方向としてはこうなりそう。だから、我々は意志を持ってこう変えていく」という掛け算だというのが、あすか会議も含め我々も含めたみんなの基本的な立場だと思っています。
その意志を込める部分を考える前提が変わってきてしまった。じゃあ、そこにどんな意志を込めようか。グリーンイノベーションをどうパーパスにするのか。あるいは、どう儲けの種にするのか。
これはいろんな立場があってぜんぜんかまわないですし、サプライチェーンがひずむのだとすると、その時に自分がどんなポジションを取るのか。これを工夫することが増えれば増えるほど、経済総体としても社会総体としても日本が強いものになるし、世界の中でも貢献できる価値が高まるのではないかなと思っています。
若干スタートが遅かったのもありまして、最後の質疑が短くなってしまいますが、このセッションをこちらで締めたいと思います。
3人のパネリストのみなさん、ストレートなお話をしていただきましたので、失礼なこともあったかと思いますけれども、我々はみなさんの参考になればという思いでおります。もう1度、みなさんからの拍手を3人の方にどうぞよろしくお願い申し上げます。
(会場拍手)
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