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【手放すTALK LIVE#35】「規則も命令も上司も責任もない!」 のに業績が伸びるひみつ ゲスト: おふくろさん弁当前社長係 岸浪龍(全6記事)

全社員に経営状況から給料、意思決定の経緯まで隠さず公開 安心して働けるように、自社の情報を「透明」にして現れた変化

管理しない組織や上司がいない会社、給料を自分たちで決める会社など、ユニークな進化型組織を調査する「手放す経営ラボラトリー」。同ラボが主催するイベント「手放すTALK LIVE」に、一風変わった経営スタイルが注目される「おふくろさん弁当」(三重県鈴鹿市)の「前社長係」岸浪龍氏がゲスト出演。社会活動家の武井浩三氏やラボ所長の坂東孝浩氏を相手に、知らない人に囲まれて暮らす現代社会の課題や、田舎の「こうすべき」の強さについて語りました。

巻き込まれ上手

坂東孝浩氏(以下、坂東):たけちゃん、それを目指したいと言うか……。

武井浩三氏(以下、武井):俺はできるなら適当にやって生きていたいんですけど、これって意識したり、自分でコントロールできるものでもない気がしていて。

例えば俺がダイヤモンドメディアをやっていた時も、本当にフラットで自由に、楽しみながらやろうとめちゃくちゃがんばってた。

坂東:そうよね。

岸浪龍氏(以下、岸浪):(笑)。

武井:その時はわからないし、自分自身もそれをしたかったから、正解・不正解で語るほうが難しくって。

坂東:そっか。

武井:人として自分自身も継続的に成長してきているんだなでいい気がする。その時の自分なりの一生懸命を、今も昔もずっとやってる感じですね。

岸浪:武井さんは毎日のようにあちこち飛び回って、いろんなところに顔を出していて。Facebookを見ても「たけちゃん何人いるんだろう」みたいな。

坂東:本当、本当。絶対コピーロボットいるよね、みたいな。

武井:秋田、青森……。

岸浪:(笑)。だけど、そういうのって自分がやろうと思ってやっているというか、俺はこんなにやってんのに、なんで周りのやつはやらねえんだとか、そういう質のものじゃないと思うんですよね。

武井:そう。俺のたぶん性質とか性格もあると思うんですけど、俺って音楽をやってた時もスポーツをやってた時も、自分で手に入れたいと思うものを自分で手に入れられないタイプで。

坂東、岸浪:へぇ~。

武井:人から貰うことのほうが多くて。だから仕事も、めっちゃガーンと明確な目標を立てて、因数分解して、計画立ててやっていくよりも、人から「武井さんこれやってよ」と言われたものを、「お、いいよ」って、適当にやってるほうがなんかうまくいくみたいな。

だから、俺はできるだけ来るもの拒まず。巻き込まれていくほうが調子いいなっていうのが、今のところの結論ですね。

坂東:巻き込まれていくね。

武井:そうそう。俺、なんか人を巻き込んでいるように見えて、実は巻き込まれているんじゃないか説。

岸浪:(笑)。

坂東:なるほどね。

武井:というか、「手放す経営ラボラトリー」もそうですしね。坂東さんが俺を巻き込んだから。

坂東:確かに。

武井:そうそう。でも、そのうちどっちがどっちかよくわかんなくなってくるっていうね。

坂東:確かに、確かに。

岸浪:でも、やっぱり周りの人が巻き込みたくなるたけちゃんの人柄とかが大きいと思いますよね。

坂東:本当ですねぇ。

岸浪:「もうこの人とはやりたくない」と思わない(笑)。

坂東:巻き込まれ上手よね。

岸浪:周りの人から「来てほしい」って言ってもらえることが、人格というか。そういうのがすごく大きいと思ってて。

武井:巻き込まれ上手。いいっすね。それ、うれしいな(笑)。

岸浪:世界中の人から迎えられる人というか。

坂東:確かにねぇ。

岸浪:そういう人でありたいですよね。

知らない人に囲まれて暮らす現代社会

武井:そういう人でありたいけど、俺は今、世田谷に住んでて、隣のおばちゃんによく怒られるの。

坂東:え、そうなの!?

武井:「あんた、水、ここ撒かないで」って。「うちの前に水、流れるでしょう」とか言われて。朝からすげえ説教されて、超落ち込むみたいな。

岸浪:(笑)。

武井:これ、すげぇ言っちゃいけないかもしんないけど、うるさいおばちゃんがいますよ。

坂東:(笑)。バレちゃう、バレちゃう。誰かバレちゃう。

武井:本当に近所付き合いって難しい。でも、俺アズワンとか行って、現代社会って、なんでこんなにも知らない人に囲まれて暮らしているんだろうって思うの。

マンションとかもそうだけど、知らない人にめちゃくちゃ囲まれて生きるって人類の歴史から考えたらめちゃくちゃおかしな話で。

坂東:なるほどね。

武井:たぶん昔からしたら、ありえなくない? って話ですよね。

坂東:その時点で、安心が薄れるよね。

岸浪:そうそう。昔は周りに知らない人はいないっていう状態だったんで。

武井:そうそう。たぶん、せいぜいもうこの50年ぐらいですよ。

岸浪:そうでしょうね。

武井:だからこのほうが圧倒的にイレギュラーでおかしい。でも、俺は常にいいとこ取りをしたいスタンスで。やっぱり村社会の窮屈さもあるから、そもそも人は人間関係を切るために、地方から都市に出てきたんですよね。「こんな村嫌だ」つって。

でもそれは逆に良さでもあって、今度は人間関係が切れすぎちゃっている。また、仕事を引退したら知り合いがいなくなって、お金がないと生きていけない社会になっちゃって。

俺はアズワンを見て、いいとこ取りしてるなって思うんですよね。ちゃんと貨幣経済も扱うし、助け合いもするし。基本的には自然経営でいうところの開放性も出入り自由だし。

組織が「ここのルールはこうだから、お前こうしろ」って強制しないで、「あなたが好きなように出たり入ったりしたらいいじゃん」っていうのが、基本的なスタンスじゃないですか。

だから、アズワンに行った時に、俺はビジネスでそれをやってきましたけど、自然経営をやると暮らしでこうなるんだっていうのが、めちゃくちゃうれしかったですね。

自社の情報を隠さず「透明」にしたことで現れた変化

岸浪:そういう会社の経営や運営を「親しさ」でできないかなと思っていて。

坂東:親しさ?

岸浪:「休みたい」と安心して言えるとか、「来てほしい」と安心して言えるとか。「『休みたい』っていうのはどういう感じ?」とか、「仕事で何か詰まってることとかある?」とか。

そういうことを丁寧に繰り返すことで人同士がどんどん親しくなっていくんですよね。

その親しさをベースに会社の運営をしたら、どうなるんだろうっていう。最初の頃、みんなが安心して働けるようにと思って、例えばどういうふうに意思決定しているかとかをなるべく公開していたんですね。

透明な状態にして、みんなが安心して働けるようにすごく力を入れていた時期もあるんですけど。みんなが親しくなってくると、例えば「給料はこうなっていますよ」とか、「会社の経営がこうですよ」とオープンにしても、だんだん誰も見なくなっていくんですよね。

坂東:(笑)。なるほど。

岸浪:「信頼しているから、もういいよ」じゃないけど、「もう、やっといて」みたいな感じで、透明性みたいなのがあんまり重要視されなくなって、お互いに「なんかあったら言うわ」みたいな感じになってきて。

もちろん企業を経営する時に透明性はすごく大事だと思っているんだけど、その先があるかもしれないなって。

坂東:なるほど、なるほど。だからプロセスなんですね。透明性は、親しさを作るプロセスとも言えますね。

岸浪:そう。本当に親しい間柄になったら、「透明性じゃないとダメだ」みたいなこともあんまり言わないな(笑)。

坂東:それも「べき論」になりますよね。

岸浪:そう。そう。うん。

武井:いや、本当そう。

坂東:でも、こうするべきとかそういうのって、どんどん積み重ねていくと、生まれがちじゃないですか。

岸浪:うん、そうですね。

坂東:それをきちっと見て、できるだけ手放していくのって、不断のプロセスというか、終わらないプロセスなんですかね。

岸浪:そうですね。

田舎の「こうすべき」の強さ

坂東:最近の困り事みたいなのはあるんですか。

武井:聞きたいです。

岸浪:武井さんとか坂東さんはわりとちゃんと理論的に解説できるというか。DXO(ディクソー)とか読んでも、「なんでこんなふうに書けんの」みたいな感じにめっちゃ思うんです。どっちかと言うと、僕は現場でずっとやってきて、あんま人に説明できないんですよね(笑)。

だから、もうちょっと上手に説明できないかなとか、もうちょっと人に伝えられるように見える化できないかなというのは、けっこう悩んでるかな。あんまり得意じゃないから、そういうのはたけちゃんにやってもらえばいいかみたいな感じになってるんですけど。

坂東:なるほどっすね。さっきたけちゃんが言ったように、家族とかコミュニティが見えているとしがらみも出てくるじゃないですか。そういうものとはどう折り合いつけるというか、バランスってあるんですかね?

岸浪:それも今実験しながら見ているところなんですけど。村社会のああいうしがらみも、やっぱりベースはこうするべきっていうことがあるんじゃないかなと思っていて。

坂東:そりゃそうだ。

岸浪:田舎は田舎ならではの「こうすべき」があって。そこに窮屈さを感じるんだと思っていて。だから、こうするべきとか、こうしなきゃいけないっていうのを手放していくことで、その先が見えてくるような実感がちょっとあるんですけどね。

わりと公私の区別なく密に暮らしていますけど、今のところ縛りあう感じはそんなに出てなくて。「こうすべき」をそれぞれが手放していくプロセスで、そういう結果になっているのかなと思っていますね。

坂東:そうですね。

岸浪:やっぱり田舎の「こうすべき」はめっちゃ強いっすよね。

坂東:いや、強い。私も福岡で博多祇園山笠っていうのに入っているんですけど、あれも町内会のお祭りのめちゃくちゃでかい版なんですよね。その町内のしきたりがすごくてですね。1つ年上だと、もう絶対なんです。

武井:えぇ?(笑)。

坂東:完全な年功序列。もう気持ちいいんですよ。わかりやすいから。なんすけど、上の人の言うことは絶対で、「飲みに行くぞ」って言われたら飲みに行かなきゃいけないと。徹夜でもなんでもしないといけない。それはすごく「べき」です。強い「べき」。

岸浪:そうですね。だから本当に「自分は飲みに行きたくないよ」とか……。

坂東:言えないですよ。

岸浪:「あー、自分は祭りに出たくないよ」とかを言えるかどうか。

坂東:そうです。そうです。「今年はちょっと出たくないっす」とか、絶対に言えないもん。

武井:(笑)。マジか。

坂東:絶対言えないっす。「お前それでも男か!」です。

岸浪:(笑)。まあそういうのでコミュニケーションをとってきた面もあるんでしょうけど。

坂東:だからこそ強い絆ができるんだけど、そういう強い「べき」がなくても、親しさは追求できるんじゃないかっていうことですよね。

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