2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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西田徹氏:続きまして、戦略が実行されない理由の2番は「組織戦略と組織(特にソフトな部分)が一致していない」。これは3つの「コペルニクス的転回」の「組織ファースト」の話と密接に関連しています。
我々バランスト・グロースが非常に重視するモデルに「コングルーエンスモデル」というものがあります。デービッド・A・ナドラーとマイケル・L・タッシュマンが開発したモデルです。
マッキンゼーの7S(組織の全体像と要素間の連携を捉えるためのフレームワーク)とも非常によく似ていますが、時系列で言うとこっちのほうが先ですので、たぶんこれをもとにマッキンゼーがブラッシュアップして7Sを作ったんじゃないかなと思います。
コングルーエンスとは、「一致してる」ことが大事なんです。まず外部環境があって、それに対して戦略を作る。そして企業の中にTransforming Process(トランスフォーミング・プロセス)というプロセスがあり、Outputs(アウトプット)が出る。
Transforming Process(トランスフォーミング・プロセス)とは、重点課題、組織文化、組織構造や業務プロセス、そして人材がぐるぐる回って結果が出るということです。
イガグリ(戦略)、丸(外部環境)、そして三角(組織)の話をもう一度思い返してみると、このTransforming Processのところが組織ですね。コングルーエンスというのは、それら(外部環境・戦略・組織)の足並みが揃ってるということです。
そして、外部環境は変化します。それに合わせて戦略を書き換えます。戦略が書き換わったら、それに合わせて重点課題、組織構造、業務プロセスを変えます。上手くいくでしょうか、うまくいかない場合がほとんどなんですね。
なぜかと言うと、この組織文化の部分や人材といった、マッキンゼーの7Sで言うところの「ソフトS」は簡単に変えられないんです。ここが追いついていかないんですね。
これをうまく扱った例として、IBMのルイス・ガースナーさんの話をしたいと思います。「IBMももう倒産だな。6つの子会社にバラバラに分けるしかないか」と思ったところにガースナーが就任し、V字回復させました。このあたり、みなさんもよくご存知だと思います。
一般的にはガースナーの勝因は、優れた戦略だと思われています。どんな戦略かというと、顧客向けにオーダーメイドのソリューションを提供する。そのためのサービス事業とソフトウェア事業を強化し、それまでのIBMのタブーを破って、お客さんが必要とするなら他社製品も取り扱うようなサービスを行うという戦略です。
優れた戦略が成功要因だった。これって本当なんでしょうかね。この種明かしは実は「組織ファースト」のパートの話なので。ちょっとネタバレを一言言いましたけど、じゃあガースナー本人の声を聞いてみましょう。
(映像再生)
私がIBMの経験で学んだ最もすばらしいことをお話ししましょう。組織文化は、大企業を経営するためのさまざまな重要要素の1つに過ぎないと、最初は思っていました。そうですよね。マーケティング、ファイナンス、製造があります。そしてようやく組織文化のことを考え始めるのが普通です。
でも違うのです。組織文化がすべてなのです。組織文化はるつぼです。そこにアイデアが生まれ、どのように行動すべきかを人々が決定し、どのように振る舞い、どのように相互関係を構築し……そして、私は発見しました。組織文化は紙に書かれていません。
「顧客を大切にします」「品質にこだわります」といった紙に書かれたもののことではありません。組織文化とは、従業員がオフィスでどう行動するのか? 同僚のことをどうとらえるのか? 時間をどう使うべきなのか?
そしてIBMの組織文化は数十年にわたって非常に生産的なものであるはずでした。なぜなら、IBMは20年~30年間にわたり、世界で最も成功した営利企業であるからです。であるなら、組織文化は生産的なものであるはずでした。ところが、それは間違った方向に迷い込んでいたのです。なので私が登場し、私が組織文化を変えねばならなかったのです。
ということで「Culture is everything」、組織文化がすべてだと彼は語っているわけですね。最初に「Culture is everything」のところだけ見て見てもらって、あとから続きを見てもらおうと思っていたところ、ちょっと動画が不調だったので、最初からいきなり全体を見ていただきました。
ポイントとしては、ガースナーはマッキンゼー出身の方です。ハーバードを出てマッキンゼーに就職なさった方だから、経営戦略の人かと思いきや、彼は「組織文化がすべてだ」と語っているわけですね。我々のコペルニクス的転回で言うところの「組織ファースト」というところと、非常に近いことをおっしゃっていることになります。
じゃあカルチャーってどうやって変えていくのか。少し一般論から入ります。組織文化というのは実は、自己増強化サイクルがあります。だからこそすばらしいんですけども、なにかの組織文化があり、メンバーはそれに照らして行動を行います。
うまくいってる企業の場合は、当然良いパフォーマンスが出るわけですね。その良いパフォーマンスを見て、「やっぱり俺たちの組織文化はこれで合っているじゃん」ということで、組織文化がさらに強化されてぐるぐる回る。うまくいっている企業がどんどん強い会社になっていくという、成功パターンです。
でもそこから脇道に迷い込んでしまった企業がありまして、その場合は組織文化を変えなきゃいけない。これがまさにガースナーがやったことなんですね。
よくある残念な打ち手ですけれども、企業文化を直接変えようとなさる方がいます。標語を貼りだしたり、ハンドブックを配ったり、朝礼で「〇〇十則」をみんなで唱和したりと。ムダではありませんけども、これでは変わらないんですね。
例外はあります。例えばオーナー企業で(経営者に)強烈な(リーダーシップがある)。例えば三木谷浩史さんが「楽天こうあるべき」としゃべられる時の、「スピード!スピード!スピード!」のような話ですね。
組織文化そのものを強く動かすことは、創業オーナー社長、あるいはそれに準ずる方ならできます。でもガースナーでさえそれはできなかったので、ガースナーは違うことをしました。
何をしたかというと、「行動」です。ここに手を打つ。組織文化そのものじゃなくて、行動に手を打つ。多少強引でも組織の構成員の行動を変えさせる。その結果良いパフォーマンスを得たならば、従来の組織文化に準拠しない新たな行動をとったんだけど「うまくいったじゃん」となります。
そうすると組織文化が書き換わります。自動的に書き換わるわけですね。だから組織文化そのものにアプローチしてはいけない、行動にアプローチするんです。
もう1つのガースナー動画でおもしろいものがあります。「白シャツ禁止令」なんですが、これはまさに行動にアプローチしたものですね。これを見ていきましょう。
(映像再生)
「ドレスコード」の逸話、覚えていますか? みなさんは、私がIBMでの1年目に行った最大の意思決定は、「白シャツを着るな!」だと思っていますよね。IBMの従業員、特に男性は、白いシャツ、ダークスーツ、ダークネクタイを身につけねばならないという概念。これはジョージ・ワトソン・Srの時代に始まりました。
とてもシンプルで、とても意味があるアイデア。1940年代、1950年代。顧客がそのような服装をしていたわけです。彼はこう言ったはずです、「セールスパーソンとして成功したければ、顧客と同じような服装を身にまとえ」。
ところが1990年代になると、我々の顧客はそのような服装をもはやしていませんでした。よって、私が行ったことは「顧客と同じように身だしなみを整えよ」と命じただけです。私はワトソン氏が話していたことに回帰したのです。「ドレスコードはIBMのためにあるのではない。顧客が我々に対して心地良いを覚えるような服装をせよ」。
ということで教訓は「組織ファースト」ということでした。
1つ、付け加える情報がございます。確かにガースナーは組織開発に手を打った。「Culture is everything」「白シャツ禁止令」ということで、この組織開発のところに手を打ったわけですけれども。
そうは言ってもサービスを重視して、ほかのメーカーのハードとかも売るという戦略は、「これもガースナーさんが考えたんでしょ」という誤解があるんですけども、違うんですね。
みなさんご興味があれば、有名な『巨象も踊る』という書籍の176ページを見ていただくと、ものすごく大事なことがしれっと書いてあるんです。
ガースナーは顧客ファーストという組織文化、「白シャツを着ずに今お客さんが着てる服と同じような服を着ろ」という顧客重視の文化を、もう一度再構築したわけですが、そこから自発的に出てきた戦略を単に拾い上げてるんですね。
ちょっと読み上げます。「最初の幸運は、1993年に長年IBMに勤務しサービス部隊を統括していたウォルシュと会ったことだ。ウォルシュが話す内容は『それが顧客にとって最適なソリューションであれば、サービス部隊はMicrosoftやHP、SunなどのIBMの主要な競合相手の製品を推薦できねばならない』。もちろんこれらの製品を維持・補修する必要もある」。このアイデアが、内発的にIBMの組織の中から出てきたわけです。
出てきた理由は、たぶんガースナーさんが「顧客が一番大事だ」という雰囲気を作ったから。そして内発的に出てきた戦略を拾い上げて「この戦略でいくんだ」というのは、そこはもう彼のCEOとしてのランクをうまく使ったわけです。まさにこの図の流れを実施したということかと思います。
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