2024.12.03
企業の情報漏えいで最も多いのは「中途退職者」による持ち出し 内部不正が発生しやすい3つの要素
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小島瑶兵氏(以下、小島):次のテーマが「新規事業が失敗する理由と処方箋」です。ここまでPMFの重要性をお話ししましたが、実際の現場で新規事業がつまづく理由をご紹介します。
多くの新規事業のご支援をさせていただく中で、かなり似通った失敗理由が散見されます。新規事業の担当者や責任者の方が、「新規事業がこうなるといいな」という理想を持っているが故に、誤った打ち手につながっているケースが多いので、簡単にご紹介します。
4つありまして、1つ目が「リリースしたら計画通りに売れる」。2つ目が「安くていいサービスを作れば売れる」。3つ目が「マーケティングに投資をすれば売れる」。4つ目が「施策を細かくチューニングすれば売れる」という4つの理想で、これが現実的にはうまくいかないケースが多くあります。
まず1つ目の「リリースしたら計画通りに売れる」という理想。現実問題には計画通りに売れずに、軌道修正が必要です。当たり前に思われるかもしれませんが、実際に大手企業の新規事業では、計画通りに売れないことが想定されていないケースが多く見られます。
某大手メーカーの新規事業担当者の方から、教えていただいた課題感ですが、最も難しいのは、「リリースのタイミングで多額の開発費を掛けてしまっているので、もうプロダクトを変えられない」というご相談をたくさんいただいています。
スライドで、幻のステップ、幻想のステップと表現させていただいていますが、売れるものを作って、顧客を開拓する。
この2ステップ論で考えるケースが多いんですが、ほとんどのケースでこのとおりにうまく行くことはありません。
仮説を立てて、検証して、少しずつ売りながら製品を改善していく中で、最終的にPMFをしたというのが現実的なステップです。リリース後にチューニングをしていく中で、PMFをしたという例が非常に多く、売りながらPMFさせていくことが非常に重要です。
2つ目の「安くていいサービスが売れる」も大手企業の新規事業に多いポイントです。営業組織のメリットがないが故に売れないというケースもあります。多くの会社さまにお伝えしていますが、私も抱えていた課題です。
私が失敗した4事業の中ですが、営業が粗利益で評価される100名くらいの営業組織に対して、私が商品開発をして売ってもらうという立場でしたが、粗利益が評価であるにもかかわらず、私が月額サービスを提案しても「これを売っても達成しない」となってしまい、結局提案すらしてもらえなかったという事業があります。
ここで考えていただきたいのは、プロダクトとマーケットをフィットさせることはすごく大事ですが、大手の、特に商品開発と営業組織が分かれている場合においては、営業のメリットを作ってあげないと、PMFうんぬんの話にすらならないというケースもあります。
3つ目が「マーケティングに投資をすれば売上が増える」という理想です。ここで言うマーケティングは狭い意味でのマーケティングで、プロモーションに投資すれば売上が増えると考えられているケースが多いんですが、実際にはリードは増えても受注につながらないというケースが散見されます。
こちらは、最初にご紹介した新規事業の責任者の方の話ですが、リリース後、きちんとプロモーションに予算を張って、商談の獲得をしたものの売れなかったというケースです。プロモーションの前にPMFをするというセオリーどおりに行けなかったというところですね。まず売れる状態を作った上で、大きなプロモーション投下をするのが、理想的な順番です。
最後に「マーケ施策を細かく改善すれば、売上が上がる」です。これもプロモーションというニュアンスのマーケティングで、細かな改善では大きな成果にはつながらないというのが、現実的なところです。
これは、某大手通信会社の新規事業担当者の方がおっしゃっていたお話ですが、リリースしたけれども新規事業がなかなか売れない。どういう改善をされているかをお聞きすると、「ホームページの配色や文言など、Web広告の細かいチューニングをしたけれども、なかなか売れるようにならないんです」とおっしゃっていました。
最初にお話したように、PMFの取り組みに主眼をおいて、細かなプロモーションの調整等はうまくいったあとにやっていただくのがすごく重要です。
新規事業を成功させるポイントは、1つ目が「商談を重ねながら、顧客の声を製品に反映させる」。2つ目は「営業の目標達成に寄与する、評価制度を整える」。3つ目は「製品の魅力を高めてから、プロモーション予算を投下する」。4つ目は「事業成長に直結する、大通りに集中する」。この4つが重要なポイントです。
見ていただくと、2つ目の「営業目標に寄与する、評価制度を整える」だけ、社内調整のお話ですが、1、3、4に関しては、まずPMFに集中してくださいという部分です。
少し質問にお答えします。「新規事業じゃなくても、既存事業である日突然PMFしなくなるということはありますか?」というご質問をいただいています。
実際にあります。このあとの事例でご紹介するものもありますが、例えば、コロナの流行など社会情勢が一気に変わったタイミングで、PMFが外れた会社さんは非常にたくさんあり、その中でもう一度PMFをさせなければいけないというケースもあります。
PMFの活動は一度きりのイベントではなく、1回PMFしても、事業成長するために違うマーケットでもフィットしていく。さらに大きいマーケットでフィットしていくというかたちで、2回、3回、4回とPMFを段階的に繰り返して、事業成長をするのが一般的で、PMFは新規事業だけでなく既存事業でも重要な考え方になります。
次のご質問。「市場が存在しない場合と、市場が未成長の場合の見分け方はあるのでしょうか」。
存在しないのか未成長かというのは、未来予測みたいなお話になるので、私には「こうやったら予測できますよ」とお伝えするのは難しいと思いますが、この未来予測型の新しい市場を作る場合のPMFのさせ方は、後ほど事例としてご紹介させていただきます。
「実践した5つの事業のうち、成功した1つの事業は、他の4つの派生した事業でしょうか。失敗したものから成功が導けたのでしょうか」というご質問をいただいております。ありがとうございます。
そうですね。前職では、Web関連のホームページ制作やメディアの販売という事業をさせていただいていましたが、5つの事業はすべて隣接領域なので、4つの失敗の学びを最後の1個に投下したというかたちで、連続性があると言えます。
すごく実践的なご質問もいただいております。「商談内容を細かくCRMに入力するのは、実現が難しい理想ではないですか? 多くの場合、入力のワークフローを負担する人が受益者ではないので」というご質問をいただいております。ありがとうございます。
おっしゃるとおり、商談内容をCRMに細かく記載するのは重要ですが、できている会社さんをほぼ見たことがありません。私たちが支援させていただいている場合もそうですが、商談内容を全部録画して、1個ずつの録画を見て状況を把握したり、何百件もの乱雑なメモを見て、文脈を埋めていく作業をさせていただいたり、実際に商談した営業の方にインタビューをすることで補填するといったことをさせていただいています。
なので、細かく入力するのは理想ではありますが、今お伝えしたような商談自体を録画して、大量のデータを見ることで補填したり、インタビューで補填するといったことが現実的な解決策かなと思います。
ここからは、PMFの達成事例のお話をさせていただきます。最初にご紹介させていただくのは、経費精算システムのレシートポストというサービスです。BEARTAIL(現・株式会社TOKIUM)という会社のサービスです。
こちらの会社さんはもともと経費精算システムの提供をされていて、とはいえ、みなさんご存じかもしれませんが、業界的には楽楽精算など他社さんの経費精算ツールもたくさんあります。このソフトウェアのみを提供されていた当時は、他社さんとの差別化がなく、なかなか拡販が伸びない状態でした。
お見せしているスライドは、才流がご支援させていただいた事例ではなく、弊社がインタビューでお聞きした事例のお話です。差別化要素がない、同じようなツールを提供していて、抜きん出ることができない事業を抱えている方も多いと思いますので、そういった方の参考になるのかなと思います。
当時、PMFしていない状態で顧客の業務を観察されたり、顧客にヒアリングされていく中で、この会社さまが気づかれたのが、なかなか経費精算のソフトウェアだけでは解決されない申請作業があり、その負担が大きいということでした。
現場がしんどさに気づかれて、ソフトウェアの提供だけでなく、申請業務、オペレーション業務をセットで提供するというサービスに変更して、最終的にはレシートをスマートフォンで撮影して、ポストに入れるだけで経費精算ができるというわかりやすいコンセプトを打ち出して、一気にPMFを達成された例になります。
事前にいただいていた質問でも、「お客さんの課題はわかったけれども、なかなかプロダクトだけでは解消できない課題ばかりです。プロダクトで解決できる課題をどうやって見つけたらいいですか?」というご質問をいただいていましたが、プロダクト以外のサービスをセットで売ることで解決されたという事例であり、少し参考になるのではないかと思います。
レシートポストさん以外にも、もともとツールだけを提供している競合さんに対して、ツールに人をプラスして差別化したり、お客さまの課題を解消されて伸びた事例も多数ありますので、参考にしていただければと思います。
2つ目の事例は、CXプラットフォームの「KARTE」というサービスです。
これはプレイドという会社さまがやっているサービスで、いわゆるWebやアプリのデータ解析を行うツールを提供されています。ユーザーインターフェースを変更することで、PMFを達成した事例です。
「ユーザーのデータの解析をしている」という、一人ひとりのユーザーさまのデータをすごく解析できるのが当時の強みではあったんですが、それがなかなか伝わりづらいユーザーインターフェースになっていた。
「他社さまのユーザーインターフェースと何が違うんだ」「何がこのサービスの特長や強みなのかわからなくなってしまった」というところから、ユーザーインターフェースを大幅に変えて、お客さまの反応が変わったという例です。
サービスそのものを変えたという見方もありますが、サービスの見せ方を変えることで強みがきちんと伝わって解決した事例です。先ほどのように、ツール以外をセットにするケースもあれば、見せ方を変えるかたちでPMFを達成した例もあります。
3つ目の事例は、保育園などの施設のICTサービスを提供している「コドモン」というツールです。
これは、プロダクトの軸を変更して機能を開発することで、PMFを達成しました。
もともと保育施設に対して、保護者さまとの連絡アプリを提供されていましたが、認可保育園側からは保護者さまとの連絡アプリになかなか興味を示されず、当初はPMFしていなかったとおっしゃっていました。
実際に困っていたのは保護者さまとのコミュニケーションではなく、職員の数が足りず業務負担が大きいので「まずは職員の負担を軽減したい」という保育園のニーズがあったと。そこは、保護者向けの連絡アプリでは解決できなかったので、保育園側の業務を楽にするかたちにプロダクトの軸を変更して、何のメリットを提供するかを変えたということです。
保育園の書類業務を管理する機能を新たに開発され、補助金のタイミングとも重なって、一気に成長されました。
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